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アイイロモンペ

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第十四章 まずはコレをどうにかしないと

第343話 タロウ、ギルドの会長になる

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 見せしめとして、町の人達に怒りの鉄槌を下してもらった『タクトー会』の幹部だけど。
 町の人達の気が済んで、制裁が止む頃にはみんなボロボロになっていたよ。
 特に素っ裸だった連中は固い石畳の上を小突き回されて、擦り傷だらけになってた。

 広場でその様子を見物している人の中には当然冒険者もいる訳で…。

「やべーぞ、武闘派でブイブイ言わせていた『タクトー会』の幹部があんなことになっちまった。
 そう言えば、幹部だけじゃなくて舎弟連中も大分しょっ引かれたって言うじゃねえか。
 そいつらはどうしちまったんだろう。」

 なんて言葉が耳に届いたんだ。

「あっ、お縄にした下っ端連中は、その日のうちに処刑してもらったよ。
 女王であるおいらに剣を向けた奴と娘さんを拉致監禁の上暴行を加えていた奴だからね。
 おいら、女王だからって威張るつもりは無いけど、剣を向けられたら大逆罪だもん。
 情状酌量の余地は無いよね。」

 下っ端はトシゾー団長にお願いしてとっとと処分してもらったの。
 生かしておいても無駄に経費が掛かるだけだし、叩けば余罪が沢山出るだろうから減刑の余地が無いもんね。

 その冒険者、おいらの言葉を聞いて顔を青くしていたよ。
 そして、ボロボロになって転がる連中の側にある立て看板に気付いた様子で書いてある文字を読み始めたんだ。
 立て看板には、騎士が取り調べて判明した罪状が一人一人細かく記してあるよ。
 
「げっ、女を拉致って輪姦したら死罪ってのマジだったのか。
 他にも、『みかじめ料』の強要や強請りゆすり集りたかりなんてのも取り締まられるんか。
 しかし、これ全部禁止されちまったら、俺達、どうやって食ってけば良いんだ…。」

 立て看板を読んで、そんな呟きをもらしていたよ。
 いや…、だから、真面目に魔物狩りでもしたらどうなの。
 スライム狩りやシューティング・ビーンズ狩りでも十分食べていけるよ。

 でも、その前に。

「ニイチャン、これからも冒険者を名乗りたいのなら『冒険者管理局』に冒険者登録をしないとダメだよ。
 これから掲げる新しいお触れに書いたけど。
 冒険者登録をしないと、冒険者と名乗れなくなるし、町中で武器を携行することが出来なくなるよ。
 依頼を出す人を除いて、冒険者ギルドへの立ち入りも禁止になるんだ。
 冒険者登録をするまでの猶予期間は今から一年ね。」

 今この国にいる冒険者全員にすぐ登録しろなんて言ったら、『冒険者管理局』の方が対応できないものね。
 一年の経過期間を設けたよ、その間に登録しなかったらタダの無職、いやタダのならず者かな。
 そして、ならず者冒険者の横暴がまかり通る原因ともなっている武器の所持を禁止することにしたの。

 そもそも、町中で武器を携行する必要は無いし、現に冒険者以外は武器なんて持ち歩いてないからね。
 町の外へ出る時は武器を持ってないと物騒なんで、その際は町にいる間は鞘に納めた上で布袋に入れて持ち歩く決まりにしたの。

「ええっと、女王様、その冒険者登録というのはすぐに出来るもんなんすか?」

 冒険者は恐る恐る尋ねて来たよ。

「『冒険者管理局』で七日間の冒険者研修を受けて、最終日の試験に合格すればね。
 安心して、真面目に研修を受ければ誰でも合格するようにしてあるから。
 研修期間中は、無償で食事と宿を提供するからお得だよ。」

「えっ、それは本当なんですかい。
 七日間、タダで飯と寝床を提供してくれるんですかい。」

 おいらの言葉にその冒険者は喰い付いて来たよ、強請り集りが禁じられた中じゃ、タダメシは魅力的みたい。

「おう、本当だぜ。
 数日後から、冒険者登録の受付を開始する予定だが。
 七日間の合宿研修中、食事と宿泊は無償で提供する事となっている。
 『冒険者管理局』の準備が出来たら、お触れ書きを出すから見てくれ。」

 冒険者の問い掛けに、おいらに代わって父ちゃんが答えてくれたよ。

「わかりやした、ダダの無職じゃ格好つかねえし。
 剣を取り上げられちまう訳にはいかねえから、すぐに登録に行きますぜ。」

 うん、そう言うと思ったよ。
 『真面目』に研修を受ければ誰でも合格するとは言ったけど、『簡単』にとは言ってないからね。
 おいらは、心の中でそう呟いてしめしめと笑ったよ、口には出さないけどね。
 是非、仲間の冒険者にも広めて欲しいものだよ、さっき、ここで目にした法を犯した者の末路と一緒にね。

「じゃあ、早速、仲間にも広めておきますわ。
 これからは強請り集りや女を拉致るのはヤバいし。
 冒険者登録がないと剣を取り上げられちまうってね。」

 おいらの目論見通りの言葉を残して冒険者は去っていったよ。
 
          **********

 おいらは、ボロボロになって転がる『タクトー会』の連中をトシゾー団長に託して場所を変えることにしたの。
 次に足を運んだのは『タクトー会』の本部だよ。

 タクトー会の本部に入ると、ホールには相変わらず冒険者がたむろっていたよ。
 何でこいつら、仕事もしないで昼間からこんな所でグダグダしているんだろう。

「おい、みんな聞いてくれ。
 俺が、今日からこのギルドの会長になったタロウだ。
 俺の後ろに並ぶ十人が俺の補佐をしてくれる新しい幹部だ。
 みんな、よろしく頼むぞ。」

 タロウがホール全体に聞こえるように大きな声でそう伝えたの。
 すると、ホールの奥の事務室から事務員のおじさん達が出て来て。

「これは、これは、陛下、ようこそお越しいただきました。
 そちらの方が、タロウ様、新しい会長さんでございますか。
 先日おっしゃられた通り三日で幹部の方を決めて頂けたのですね。
 助かります、私達では冒険者の相手は難しくて…。」

 どうやら、事務員さん達、この三日間色々と冒険者に難癖を付けれられて困ったいたみたい。
 事務員さん達とタロウ達が挨拶を交わしていると。

「なんだ、このヒョロッとした弱々しい奴が新しい会長だって?
 こりゃ良いや、こんな腰抜けみたいなのが会長ならこっちも好き勝手出来るぜ。
 キンベー会長がお触れに違反したとかでしょっ引かれちまったと聞いてよ。
 ここに居るチキン共はビビっちまって。
 今、町のモンにゴロ巻いたらヤバいって言うもんだから、この三日自粛してたんだがよ。
 こいつなら、町のモンを強請っても文句言わんだろうよ。」

 三日前にここをガサ入れした時に、こいつ、いなかったのかな。
 ここに居たのなら、タロウが強いことを知っているはずなんだけど。

「おい、バカ、やめろ。会長さんに逆らうと酷い目に遭うぞ。」

 タロウの強さを目にしていた冒険者がそう忠告したんだけど。

「ああ? オメエ、こんな青二才相手に何をビビっているんだ。
 こういう、ひ弱な輩には最初にガツンとやって、マウント取っておくもんだろうが。」

 タロウに絡んだ冒険者は忠告なんて全く聞きやしなかったんだ。
 更に…。

「おっ、よく見りゃ、後に並んでいる女共。
 ここで拉致ッてた女共じゃねえか。
 新しい幹部と言うから、ドンなのが来たかと思えば。
 そのタロウとか言うガキに腰振って、幹部に収まったってか。」

 後ろにいるお姉ちゃん達を見ながらそん言葉を吐くと、ニヤニヤといやらしそうな笑いを浮かべたの。

「ああ、あんた、悪いけど、新しいギルドにあんたは要らねえや。
 冒険者にも向いてないようだし、素直に足を洗って堅気の仕事でも探しな。」

 タロウが、その冒険者にギルドから立ち去るように言うと。

「このガキ、舐めたことぬかすと叩き斬ってやるぞ!」

 剝き身の剣を見せればタロウが怯むとでも思ったのかね、激昂した冒険者はいきなり斬り掛かって来たよ。

「会長に向かって無礼ですよ。
 剣を捨てなさい。」

 そんな言葉と共に、後ろにいたお姉さんがさっとタロウの前に出たんだ。
 そして、手にしていた木の棒で、斬り掛かって来た冒険者の剣を握る手を強かに打ち付けたの。

 その瞬間、「ぼきっ!」っていう音がして、冒険者は剣を取り落としたの。

「痛でぇーー!」

 苦悶の声を上げた冒険者は、棒で打たれた手首の辺りを押さえてその場に蹲っていたよ。
 
「口ほどにも無いですね。
 私達が、今までみたいにあなた方のようなならず者の言いなりになると思ったら大間違いですよ。」

 蹲る冒険者に吐き捨てるように言ったのは、最初、ギルドで働く自信が無いと言ってたお姉さんだったよ。
 トレントを一人で倒せるようになって自信が付いたと言ってたけど、本当みたいだね。

「おい、今の棒の一撃見えたか?
 俺、あんまり速い打撃だったから目で追えなかったぜ。
 あんな、一撃で攻撃されたら絶対躱せねえぞ。」

 周りで見ていた冒険者からそんな声が上がっていたよ。 
 
       **********

「見ての通り、この幹部たちは強いぞ。
 お前らじゃ、絶対敵わないから逆らわないことだ。」

 タロウがホールにたむろっている冒険者達に告げると、みんな、声も上げずに首を縦に振っていたよ。

 ただし、…。

「このアマ! 良くもやりやがったな、絶対に赦しちゃおかねえぞ。
 夜道を歩く時は精々気を付けるんだな。」

 目の前で蹲っている冒険者を除いてだけどね。
 こいつ、一撃で手首をへし折られていて良くそんな口が利けるもんだと感心したよ。

「あら? この人、彼我の実力差が分かっていないようね。
 こんなショボい人でも闇討ちされたら面倒ですね。
 もう少し、強いお仕置きをした方が良いでしょうか。」

 冒険者の手首をへし折ったお姉さんはそんな言葉を呟くと。
 手にした棒で、冒険者のもう片方の手首をへし折ったの。
 でも、それだけじゃなかったよ。
 両手首をおられて苦悶の表情を浮かべて蹲ってる冒険者の手のひらを床に広げさせると。
 手にした棒の先端で、手の甲に強烈な突きを加えたんだ、それを二回。
 両手の甲を砕かれた瞬間、耳障りな悲鳴が二回連続でホールに響き渡ったよ。
 見た目では、冒険者の手の甲は骨が粉砕されていて、もう剣は握れないだろうと思ったよ。
 余りの痛みに、冒険者は気を失っただけじゃく、ちびったみたいで水溜りが出来てた。バッチいな、もう…。

「さてと、これで分かったかな。
 こんな目に遭いたくなければ、このお姉さん達には逆らわないことだな。
 これからのこのギルドの運営方針を言っておく。
 一番守って欲しいのは、堅気に迷惑を絶対に掛けるなと言うことだ。
 堅気の人に対する強請り集りは絶対に赦さない。
 もし、これに背いたら、こいつみたいになると思っとけ。」

 タロウは他にも色々と冒険者達に注文を付けていたよ。
 昼間からギルドにたむろってないで依頼を受けろとか、依頼が無ければ率先して魔物狩りに行って素材を採ってこいとかね。
 そして、半年以内に冒険者登録が出来なければ、このギルドに出入り禁止にするって宣告していたよ。
 おいらが定めた規則では一年以内なんだけど、タロウの方が厳しいね。

 こんな感じで、タロウのギルド運営が始まったんだ。
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