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第十四章 まずはコレをどうにかしないと

第342話 タクトー会の連中を晒し者にしたよ

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 トシゾー団長に騎士を十人ほど都合してもらい、おいらは町の広場に出かけたの。
 おいらの後ろには、明日処刑する予定の『タクトー会』のキンベー会長と幹部連中が縄で拘束されて歩いてる。

 広場に着くと、そこにいた人達は何事かとおいら達を見ていたよ。
 民衆の注目を集めるのも無理ないよね。
 何と言っても、縄を打たれている連中の大部分は素っ裸なんだから。
 全員が四日前に拘束した時のままの格好だから、服を着ているのは会長のキンベーと若頭補佐のオーキだけ。

 広場に一画で立ち止まると、おいら達は騎士に予め用意しておいた立て看板を立てるように指示したの。
 騎士が作業をしている間にも、やじ馬が沢山集まって来たよ。

 広場に着いたら、騎士達がタクトー会の連中の背中を蹴って地面に転がしていたよ。

「アイヤー、何するアル!
 ワタシ達、こんな所に連れてきてどうするアルカ?」

 地面に突き飛ばされてキンベー会長がそんな不満の声を上げると。

「あの胡散臭い話し方、あいつは『タクトー会』の大悪党、キンベーか?
 あいつ、お上にとっ捕まったと聞いたが本当だったのか。」

「おい、おい、他の連中も『タクトー会』のならず者共じゃねえか。
 なんだ、あいつら小汚い裸を晒しやがって。」

 やじ馬たちも、地面に転がされている連中がタクトー会の幹部だと気付いたみたいだったの。
 そのタイミングでおいらは、広場に集まった人達に向かって話したの。

「みんな、こんにちは。おいらのことは覚えてくれたかな?
 おいら、新しく女王になったマロンだよ。
 今日は、ここにいる冒険者の扱いについて、聞いて欲しいことが有るんだ。」

 おいらは、最初に少し前にお触れを出した冒険者の悪さを取り締まる法について説明すると。
 『タクトー会』の舎弟が、お触れに反して王都の繁華街で『みかじめ料』を脅し取ろうとしている現場に遭遇したと話したの。

「みかじめ料を脅し取ろうとしている冒険者は捕えたんだけど。
 『タクトー会』が組織的にみかじめ料をせしめている様子だったの。
 だから、『冒険者管理局』の局長と一緒にタクトー会に抜き打ちで家宅捜査をしたんだ。
 そしたら、お触れで禁止した『婦女子に対する拉致監禁と暴行』の現行犯に遭遇したよ。
 裸の連中は、現行犯で捕まえた時のままの格好なんだ。
 お触れで出した通り『婦女子に対する拉致監禁と暴行』は例外なく死罪にするよ。
 こいつ等は明日処刑する予定なんだけど。」

 おいらが、そこまで話すと。

「アイヤー、ちょっと待つアル。
 ワタシ達、死罪にする、本気アルカ。
 女を慰み者にする、それ、何処がいけないネ?
 今まで、そんな法は聞いたこと無いアルヨ。
 それに、そんな勝手許されないアル。
 貴族、皆、反対するアルネ。」

 今まで、女の人を拉致監禁しても、暴行しても罪に問う法が無かったそうだよ。
 おいらが今まで住んでいたトアール国と同じで、女の人が低く見られていたのが原因みたい。
 だから、おいら、ハテノ男爵領で出されていたお触れ書きをまるっとパクったんだ。

「勝手じゃないよ、ちゃんと十日くらい前にこの広場にもお触れを掲げたじゃない。
 お触れを出す前に、宰相達にもちゃんと相談したから独断でもないし。
 オッチャン達が、お触れ書きにちゃんと目を通さなかったか。
 もしくは、役人がキチンと取り締まる訳がないと侮っていただけじゃないの。
 それと、オッチャン達の罪を揉み消そうとした貴族がいたけど、取り潰したよ。
 タクトー会から賄賂をもらっていた貴族も減俸にしたよ。
 もう、オッチャン達に加担する貴族はいないよ。」

 おいらが、キンべーにそう伝えると。

「そんな、今まで何のために袖の下、沢山送って来たアルカ…。」

 何のためにって、そんなの知らないよ…。
 キンベーは、内心、買収した貴族が助けてくれると信じていたみたい。

「女王様、タクトー会のならず者共を退治してくれたんだな。
 助かったぜ、こいつらしつこくみかじめ料をたかって来て困ってたんだ。」

 おいらとキンベーの会話を聞いていた、お店の店主と思われる人からそんな声を掛けられたよ。

「それで、今日、これから夕方まで、こいつらをここに置いとくから。
 好きに仕返しして良いよ。死罪の前の見せしめだね。
 元々、死罪は確定しているから、殺しちゃっても良いけど…。
 人殺しは後味が悪いから、半殺しで止めておいた方が良いよ。」

 おいらがそう告げると。

「アイヤー、ちょっと待つアルネ。
 それは、あんまりアル。
 そんなことをされたら、ワタシ、ボコボコにされるアルネ。」

 キンベー自身、自分達が町の人達からどれだけ恨まれているかを自覚しているみたい。
 今頃になって、泣き言を言ってきたよ。

「そんなことは知らないよ。
 こう言うのって、『いんがおーほー』っていうんだよね。
 こうなるのが嫌だったら、恨まれるようなことはしなければ良いのに。」

 おいらが、冷たく言い放つとキンベーは絶望したような表情で、迫りくる町の人を見ていたよ。

「なあ、女王様、本当にやっちまっても大丈夫なのかい。
 こう言っちゃあなんだが、タクトー会の連中から仕返しされるんじゃ…。
 タクトー会ってこいつだけじゃないだろう。」

 町の人から、仕返しを心配する声が上がったの。

「その心配はする必要が無いよ。
 タクトー会は、『冒険者管理局』の直轄にしたから。
 『冒険者管理局』から、会長と幹部を送って。
 冒険者が悪さをしないように、厳しく監督するからね。
 仕返しなんて、絶対にさせないよ。
 ここにいるタロウが新しいギルド会長だよ。
 見た目は頼りなくて、弱そうだけど。
 無茶苦茶強いから安心して。」

「おう、俺が新しい会長のタロウだ。
 ギルドに出入りする冒険者が、悪さをしないように厳しく躾けるぜ。
 町のみんなも、これからは気軽に依頼を持ってきてくれよな。」

 おいらが紹介するとタロウが愛想良く街のみんなに声を掛けていたよ。

「おっ、『タクトー会』がお役人さんの直轄になるのかい。
 そいつは、安心できるぜ。
 『タクトー会』と言えば、クズみたいな連中ばかりで困ってたんだよ。
 冒険者共の性根を叩き直してやってくれや。」

「そうか、じゃあ、こいつらをやっちまっても。
 仕返しされる心配は要らないんだな。」

 おいらとタロウの言葉を耳にした町の人の中からそんな声が聞こえ。
 何人かの人が、地面に転がされたキンベー達の方へ向かって行ったよ。

 そして。

「この盗っ人やろう、今まで散々毟り取りやがって、地獄へ落ちろ!」

 そんな罵声を浴びせながら、キンベーの顔面に思い切り蹴りを入れてたよ。

「俺の親友は、テメエらのみかじめ料を断ったら…。
 ねちっこい嫌がらせをされて店をたたむハメになったんだ。
 親友の仇!」

 もう一人続けて顔面に蹴りを入れると、キンベーは歯を何本もへし折られて口から血を流してたよ。
 その二人が口火を切ると、広場にいた人達が次々と縄で拘束されて転がっている連中に群がって来たよ。

 町の人から相当恨みをかっていたみたいで、全員がタコ殴りにされたいたよ。
 『タクトー会』はギルドの中では後発で、ここ数年、だいぶ町の人を食い物にして勢力を伸ばして来たみたいだからね。  

       **********

 それからしばらく時間が過ぎ、大分街の人も気も治まって来た頃のこと。

 後から来るようにと伝えていた三十六人のお姉さん達がやって来たよ、ウサギに乗って。
 ウサギに乗った娘さんがゾロゾロと広場に入って来て、みんな、ビックリしてたよ。

 おいらが、三十六人を配属ごとに分かれて集合するように指示すると。
 父ちゃんとタロウが、それぞれ自分の配下になるお姉さん達の前に移動したの。

「みんな、聞いてくれ。
 俺が、『冒険者管理局』の局長のグラッセだ。
 俺の後ろにいる十六人が、『冒険者管理局』のメンバーだ。
 このメンツで、冒険者の指導育成に、冒険者ギルドの監視監督をしていく。
 もし、冒険者が迷惑行為をするようなら、気軽に通報してくれ。
 ここに転がっている連中のように厳しく摘発するからな。」

 そんな風に父ちゃんが『冒険者管理局』の紹介をすると、続けて…。

「俺の後ろにいるのが、タクトー会の新しい幹部だ。
 もっとも『タクトー会』って、頭の悪そうな名前も数日の内に変えるつもりだけどな。
 見ての通り、ギルドの幹部は若い女性が中心で。
 依頼の受付もなるべくここに居る幹部でやろうと思っているから。
 ギルドも依頼し易い雰囲気になると思う。
 さっきも言ったが、気軽に依頼に来てくれ。」
  
 タロウが新しいギルドのメンバーを紹介したの。

 そして、最期に。

「おいらの後ろにいる十人が、おいらの護衛を務める近衛騎士団。
 近衛騎士団はおいらの護衛が主な仕事だからね。
 側に四六時中男の人が侍るのは嫌だから、平民の娘さんから近衛騎士を登用するよ。
 この十人も全員平民の娘さんだよ。
 近衛騎士にはおいらの護衛だけでなく、王都の治安維持もしてもらう予定なので。
 増員を計画しているんだ。
 後日追加で百人くらい募集を掛けるから、私もと思うお姉さんは応募してね。」

 おいらが、ルッコラ姉ちゃん達近衛騎士の十人を紹介したの。

「そりゃ有り難いね、新しい女王様は女の人を重用してくれるのかい。
 今まで、そう言う仕事は男の仕事だと相場が決まっていたんだ。
 女は中々いい仕事にあり付けなくてね。
 女が騎士に登用されるなんて嘘みたいだよ。
 うちの娘にも教えておくよ。」

 新たに登用したお姉さん達を見てそんな声が上がってたよ。
 他にも、何か商売をしている人だと思うけど、ギルドに依頼を出しに行くのが楽しみだなんて声も上がってた。

 更に…。

「あっ、じょうおうさまだ!
 じょうおうさま、また、うさぎさん、のっけて。」

 この前、ウサギに乗っけてあげた女の子が友達を連れてやった来たよ。
 もちろん、おいらと近衛騎士が手分けをして子供達をウサギに乗せてあげたよ。

「新しい王様は、とっても可愛い女王様だと思っていたが。
 可愛いだけじゃなくて、民衆想いの良い女王様じゃないか。
 これから、この国がどこまで良くなっていくか楽しみだよ。」

 おいらが、女の子を乗せて広場を一周して戻ってくると、そん風に言ってくれる人が居たよ。
 そうだね、何が出来るか分からないけど、少しでも住み易い国を造りたいね。

 
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