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第十四章 まずはコレをどうにかしないと
第337話 冒険者に負けない秘策(?)を授けたよ
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翌朝、再び拉致されていたお姉さん達を、サロンに集めて。
「じゃあ、冒険者をあしらうコツだけど。
冒険者ってのは、サルと同じだと思って。
あいつら、自分より強い者には絶対に逆らわないんだ。
だから、あいつらより強くなれば良いんだよ。」
おいらがそう言うと、サロンにシラケた空気が漂ったよ。
ルッコラ姉ちゃんがおいらを白い目で見て…。
「女王様、その冒険者より強くなるっての難しいんじゃないすか。」
半ば呆れたような口調で言ってきたの。
「いや、冒険者の連中より、強くなるのは簡単だよ。
まず、知っといて欲しいのは。
冒険者ってのは、強いことより、強く見えることが大事なんだって。
短い髪型の額の剃り込みを深くしたり、肩で風切って歩いたり。
そんな外見で威嚇して、周りを怖がらせているだけなんだ。
簡単に言えば、虚仮脅しのハリボテだね。」
まあ危ない存在ではあるけどね、殺しを躊躇することなく無闇矢鱈と剣を振り回すから。
それも、堅気の人に恐怖心を植え付けるためにしているんだけどね。
冒険者は虚仮脅しで堅気の人を怯るませ、金を巻き上げのが常套手段だと、おいらは話し。
基本自分より弱い者しか相手にしてないので、冒険者が鍛錬など全くしていないことを説明したの。
「うん?
冒険者なんて、腕っ節しか能が無い怠け者がなるもんだろうから。
鍛錬なんて地道なことをしてないのは分かるが。
それが、私達が簡単に冒険者より強くなれるということとどう結びつくんだい。
私達女にとっては男の腕力だけでも脅威だし、奴ら剣をぶん回すんだぞ。」
ルッコラ姉ちゃんはそう問い掛けてきたんだ。
確かに基礎体力は男の人の方が女の人より上だから、そう心配するのも頷けるよ。
「鍛錬をしてるかどうかは凄く重要なの。
だって、鍛錬をしてない連中を相手に勝つためなら。
単純に、レベルをあげちゃえば良いんだもの。
そして、おいらはみんなのレベルを上げることが出来るから。」
鍛錬を重ねて剣技を極めた人には、レベルを上げただけの付け焼刃じゃ敵わないけど。
お互いに鍛錬をしていない人同士であれば、圧倒的なレベル差で押し切れるからね。
「レベルだって?
レベルってのは普通の人間はゼロなもんだろう。
お貴族様だけがレベルを持っていると聞いたことがあるぞ。
そんなものをどうやって上げるんだ?」
ルッコラ姉ちゃんが、そう言うのも仕方が無いことなの。
市井の民は、『人前でレベルの話をするのはご法度』と親から教えられる時に、一緒にレベルゼロが当たり前と教えられるだけだから。
その時に強い魔物を倒せばレベルが上がるとは教えられるかも知れないけど。
『生命の欠片』の事は極一部の人しか知らなくて、具体的にどうすればレベルを上げられるかなんて知られてないからね。
「ルッコラ姉ちゃん、ちょうど良いから、これを取り込んでみて。
他のみんなにも、ルッコラ姉ちゃんの後に上げるからね。」
おいらはそう告げると、『生命の欠片』をルッコラの前に積み上げたの。
処刑した騎士から巻き上げた『生命の欠片』だよ。
既存の貴族の褒賞に与えるのではなく、市井の民のために役立てようと決めてたんだ。
「女王様、これ、いったい何処から出したんだい。
何も無いところから、突然湧いて出たんだが…。」
「ああ、これは、妖精の森の長アルトから授けられた『妖精の不思議空間』にしまってあったの。
『妖精の不思議空間』は、妖精に気に入られた人しか持てないものだからナイショにしてよ。
取り敢えず、それを取り込んでみて。
自分の体に取り込もうと意識して手を触れれば勝手に取り込まれるから。」
スキル『積載庫』の事は教えないよ、『妖精の不思議空間』で誤魔化しとく。
妖精って存在自体が不思議だから、『妖精の不思議○○』と言えば誰もそれ以上は突っ込んでこないからね。
「ふーん、あの妖精さんに随分と気に入られてるんだな。
そんな便利なモノを授かるなんて。
まあ良いや、これに触って、体に取り込もうとすりゃ良いんだな。」
細かいことは気にし無い質なんだろうね、ルッコラ姉ちゃんはそれ以上ツッコむことなく『生命の欠片』に手を掛けたよ。
と同時に、『生命の欠片』は金色の光の粒となってルッコラ姉ちゃんはの体に吸い込まれ…。
「何だ、この喧しい鐘の音は!
いきなりガンガンと頭の中で響きやがる。
まるで、深酒して二日酔いになった時のようだぜ…。」
ルッコラ姉ちゃん、そんな風には見えないけど、結構お酒を飲むんだね。
「それ、レベルアップする時に鳴るんだ。
レベルアップしたことを知らせてくれてるみたい。」
「うっ、レベルアップだと…。
本当だ、凄い勢いでレベルの数値が上がっていきやがる。
十二、十三、十四…、いったい何処まで上がるんだ…。」
おいらの言葉を聞いて自分の能力値を確認したんだろうね。
どんどんレベルが上がっていくんで驚いてるよ。
「レベル二十だって、これが高いのか、低いのか、さっぱり見当が付かないんだが…。」
レベルアップが終ると、能力値を確認したルッコラ姉ちゃんはそんな呟きをもらしてた。
その疑問に答える前に、おいらは他の三十五人にも同数の『生命の欠片』を渡して取り込んでもらったの。
全員が『生命の欠片』を取り込んだのを確認すると。
「さっき、ルッコラ姉ちゃんが口にした疑問に答えるね。
大概のならず者冒険者はレベルゼロだよ、本当に厳つい顔をしただけの虚仮脅しね。
きちんと魔物狩りをしている高位の冒険者でもレベル十が良い所だと思う。
トップクラスの冒険者になるとレベル四十とかの人が居るらしいけど見たこと無いね。
この国の騎士の小隊長がレベル三十くらいだと聞いているし、前の国王がレベル五十くらいかな。
おいらのレベルはナイショ。
みんなも親から躾けられてると思うけど、他人にレベルの話をするのはご法度だし。
自分のレベルをひけらかすのは一番の愚行だから、他人に教えたらダメだよ。」
お姉ちゃん達がレベル二十もあると知られたら、質の悪い冒険者に一服盛られるかもって脅しておいたよ。
一服盛られて眠っている間に殺されて、『生命の欠片』を奪われるかもって。
ガラの悪い冒険者が結構高いレベルの場合は、たいていが他の冒険者を殺して奪ったものみたいだからね。
一人の高レベル冒険者を、多数の冒険者で闇討ちしてレベルを奪っているらしいから。
おいらがそう脅したら、みんな、怯えて首を縦に振っていたよ。
「しかし、これは魂消たぜ。
レベルが上がるってのはこんなモノだったのか…。
まるで体の奥底から力が湧き出てくるようだ。
なんだか、体が凄く軽く感じるぜ。」
ルッコラ姉ちゃんが腕をぶんぶん振り回しながら、レベルアップの感触を口にしていたよ。
他の人も似たり寄ったりだった。
**********
「陛下、このようにレベルを上げて頂けたのは有り難いのですが…。
正直、冒険者というのは、狂犬のような顔つきで剣を振り回すような狂暴な連中ばかりです。
あの凶悪な容貌を目にすると、恐怖心が湧いて足が竦んでしまいそうです。
幾ら身体能力が増強されたと言っても、そうそう簡単に冒険者を御せるとは思えないのですが…。」
レベルが上がった後、気弱そうなお姉さんがそんなことを言ってたの。
冒険者ギルドで幹部をしてもらうことになったお姉さんで、最初から自信が無いと言ってた人だね。
「うん、その気持ちはわかるよ。
タロウも最初はそう言っていたもんね。」
おいらが一緒にいるタロウに話を振ると。
「ああ、俺はチキンだから、今でもパンチの冒険者に凄まれると足が竦むぜ。
誰だってそうだから、心配しなくても良いぜ。
冒険者って見た目は凄げえ怖えけど。
マロンが言った通り全然鍛えてないから、こっちが少し鍛えればレベル差で抑え込めるから。
相手を侮って油断さえしなければ、簡単に勝てるようになるよ。
先ずは、凶悪な顔で凄まれても、怯まない度胸を付けることだな。」
三十六人は全員、タロウと父ちゃんに救い出されていて。
その時に、タロウが冒険者達を打ちのめしているのを実際に見ているんだ。
冒険者を圧倒していたタロウですら、冒険者を怖いと思っていると聞き、みんな意外そうにしてたよ。
「タロウが言う通り、先ずは冒険者を前にしても怯まない度胸を付けることだね。
それさえ身に着ければ、あとはレベル差で何とかなるから。
と言うことで、今日はそのための訓練をするよ。」
おいらがそう宣言をしたところでちょうどアルトが帰って来たの。
何処からって? スフレ姉ちゃんの日課の訓練から。
「アルト、戻ったばかりで申し訳ないけど。
昨日お願いしたこと、これから行きたいのだけど、大丈夫かな?」
「ああ、もう、全員のレベルアップは済んだのね。
おやすい御用よ。
この王都を出てすぐのところにちょうど良い場所があったわ。」
スフレ姉ちゃんのスキル『積載量増加』をレベル十まで上げて、『積載庫』を取得させるべく。
アルトの『積載庫』にスフレ姉ちゃんを監禁してスキルの実を食べさせているのだけど。
一日中『積載庫』に押し込んでおくと、スフレ姉ちゃんは気が滅入っちゃうし、運動不足にもなっちゃう。
ということで、アルトは、スフレ姉ちゃんを朝昼晩と訓練に連れ出しているんだ。
ついでに、今回お願いしたことに都合の良い場所を見つけてくれたみたい。
と言う訳で、おいら達は早速三十六人のお姉ちゃんを訓練に連れて行くことにしたの。
訓練の目的は、レベル二十になった身体能力を活かすことと冒険者を前にして怯まない度胸を付けることだよ。
**********
アルトの『積載庫』に乗せてもらってやって来たのは、王都を出てすぐのところにある草原だった。
ウエニアール国の王都はかなり大きな町なのだけど、城郭に囲まれた町を出ると周りに草原が広がってるの。
そんなところは、トアール国の王都も、おいらが住んでた辺境の町もあんまり変わらないね。
草原で全員がアルトの積載庫から降ろしてもらうと。
「ねえ、アルト、スフレ姉ちゃんも降ろしてもらえるかな。
スフレ姉ちゃんにお手本を見せて欲しいんだ。」
おいらがアルトにお願いすると。
「あら、マロンがお手本を見せるのかと思ったら。
あの子にやらせて見せるの?
でも、良いかもしれないわね。
あの子も最近、人と話もしてないし、気晴らしになると思うわ。」
そう言って、アルトはスフレ姉ちゃんを『積載庫』から降ろしたの。
「ふぇ?」
唐突に外に出されたスフレ姉ちゃんはボカンとした顔をしてたのだけど。
「「「「可愛いっ!」」」
スフレ姉ちゃんの隣で、モグモグと人参を頬張るウサギ(魔物)の『うさちゃん』を見たお姉ちゃん達から歓声が上がっていたよ。
戸惑うスフレ姉ちゃんもスキルを上げている最中だったみたいで、姫リンゴのような実をモグモグと食べている最中だったよ。
「じゃあ、冒険者をあしらうコツだけど。
冒険者ってのは、サルと同じだと思って。
あいつら、自分より強い者には絶対に逆らわないんだ。
だから、あいつらより強くなれば良いんだよ。」
おいらがそう言うと、サロンにシラケた空気が漂ったよ。
ルッコラ姉ちゃんがおいらを白い目で見て…。
「女王様、その冒険者より強くなるっての難しいんじゃないすか。」
半ば呆れたような口調で言ってきたの。
「いや、冒険者の連中より、強くなるのは簡単だよ。
まず、知っといて欲しいのは。
冒険者ってのは、強いことより、強く見えることが大事なんだって。
短い髪型の額の剃り込みを深くしたり、肩で風切って歩いたり。
そんな外見で威嚇して、周りを怖がらせているだけなんだ。
簡単に言えば、虚仮脅しのハリボテだね。」
まあ危ない存在ではあるけどね、殺しを躊躇することなく無闇矢鱈と剣を振り回すから。
それも、堅気の人に恐怖心を植え付けるためにしているんだけどね。
冒険者は虚仮脅しで堅気の人を怯るませ、金を巻き上げのが常套手段だと、おいらは話し。
基本自分より弱い者しか相手にしてないので、冒険者が鍛錬など全くしていないことを説明したの。
「うん?
冒険者なんて、腕っ節しか能が無い怠け者がなるもんだろうから。
鍛錬なんて地道なことをしてないのは分かるが。
それが、私達が簡単に冒険者より強くなれるということとどう結びつくんだい。
私達女にとっては男の腕力だけでも脅威だし、奴ら剣をぶん回すんだぞ。」
ルッコラ姉ちゃんはそう問い掛けてきたんだ。
確かに基礎体力は男の人の方が女の人より上だから、そう心配するのも頷けるよ。
「鍛錬をしてるかどうかは凄く重要なの。
だって、鍛錬をしてない連中を相手に勝つためなら。
単純に、レベルをあげちゃえば良いんだもの。
そして、おいらはみんなのレベルを上げることが出来るから。」
鍛錬を重ねて剣技を極めた人には、レベルを上げただけの付け焼刃じゃ敵わないけど。
お互いに鍛錬をしていない人同士であれば、圧倒的なレベル差で押し切れるからね。
「レベルだって?
レベルってのは普通の人間はゼロなもんだろう。
お貴族様だけがレベルを持っていると聞いたことがあるぞ。
そんなものをどうやって上げるんだ?」
ルッコラ姉ちゃんが、そう言うのも仕方が無いことなの。
市井の民は、『人前でレベルの話をするのはご法度』と親から教えられる時に、一緒にレベルゼロが当たり前と教えられるだけだから。
その時に強い魔物を倒せばレベルが上がるとは教えられるかも知れないけど。
『生命の欠片』の事は極一部の人しか知らなくて、具体的にどうすればレベルを上げられるかなんて知られてないからね。
「ルッコラ姉ちゃん、ちょうど良いから、これを取り込んでみて。
他のみんなにも、ルッコラ姉ちゃんの後に上げるからね。」
おいらはそう告げると、『生命の欠片』をルッコラの前に積み上げたの。
処刑した騎士から巻き上げた『生命の欠片』だよ。
既存の貴族の褒賞に与えるのではなく、市井の民のために役立てようと決めてたんだ。
「女王様、これ、いったい何処から出したんだい。
何も無いところから、突然湧いて出たんだが…。」
「ああ、これは、妖精の森の長アルトから授けられた『妖精の不思議空間』にしまってあったの。
『妖精の不思議空間』は、妖精に気に入られた人しか持てないものだからナイショにしてよ。
取り敢えず、それを取り込んでみて。
自分の体に取り込もうと意識して手を触れれば勝手に取り込まれるから。」
スキル『積載庫』の事は教えないよ、『妖精の不思議空間』で誤魔化しとく。
妖精って存在自体が不思議だから、『妖精の不思議○○』と言えば誰もそれ以上は突っ込んでこないからね。
「ふーん、あの妖精さんに随分と気に入られてるんだな。
そんな便利なモノを授かるなんて。
まあ良いや、これに触って、体に取り込もうとすりゃ良いんだな。」
細かいことは気にし無い質なんだろうね、ルッコラ姉ちゃんはそれ以上ツッコむことなく『生命の欠片』に手を掛けたよ。
と同時に、『生命の欠片』は金色の光の粒となってルッコラ姉ちゃんはの体に吸い込まれ…。
「何だ、この喧しい鐘の音は!
いきなりガンガンと頭の中で響きやがる。
まるで、深酒して二日酔いになった時のようだぜ…。」
ルッコラ姉ちゃん、そんな風には見えないけど、結構お酒を飲むんだね。
「それ、レベルアップする時に鳴るんだ。
レベルアップしたことを知らせてくれてるみたい。」
「うっ、レベルアップだと…。
本当だ、凄い勢いでレベルの数値が上がっていきやがる。
十二、十三、十四…、いったい何処まで上がるんだ…。」
おいらの言葉を聞いて自分の能力値を確認したんだろうね。
どんどんレベルが上がっていくんで驚いてるよ。
「レベル二十だって、これが高いのか、低いのか、さっぱり見当が付かないんだが…。」
レベルアップが終ると、能力値を確認したルッコラ姉ちゃんはそんな呟きをもらしてた。
その疑問に答える前に、おいらは他の三十五人にも同数の『生命の欠片』を渡して取り込んでもらったの。
全員が『生命の欠片』を取り込んだのを確認すると。
「さっき、ルッコラ姉ちゃんが口にした疑問に答えるね。
大概のならず者冒険者はレベルゼロだよ、本当に厳つい顔をしただけの虚仮脅しね。
きちんと魔物狩りをしている高位の冒険者でもレベル十が良い所だと思う。
トップクラスの冒険者になるとレベル四十とかの人が居るらしいけど見たこと無いね。
この国の騎士の小隊長がレベル三十くらいだと聞いているし、前の国王がレベル五十くらいかな。
おいらのレベルはナイショ。
みんなも親から躾けられてると思うけど、他人にレベルの話をするのはご法度だし。
自分のレベルをひけらかすのは一番の愚行だから、他人に教えたらダメだよ。」
お姉ちゃん達がレベル二十もあると知られたら、質の悪い冒険者に一服盛られるかもって脅しておいたよ。
一服盛られて眠っている間に殺されて、『生命の欠片』を奪われるかもって。
ガラの悪い冒険者が結構高いレベルの場合は、たいていが他の冒険者を殺して奪ったものみたいだからね。
一人の高レベル冒険者を、多数の冒険者で闇討ちしてレベルを奪っているらしいから。
おいらがそう脅したら、みんな、怯えて首を縦に振っていたよ。
「しかし、これは魂消たぜ。
レベルが上がるってのはこんなモノだったのか…。
まるで体の奥底から力が湧き出てくるようだ。
なんだか、体が凄く軽く感じるぜ。」
ルッコラ姉ちゃんが腕をぶんぶん振り回しながら、レベルアップの感触を口にしていたよ。
他の人も似たり寄ったりだった。
**********
「陛下、このようにレベルを上げて頂けたのは有り難いのですが…。
正直、冒険者というのは、狂犬のような顔つきで剣を振り回すような狂暴な連中ばかりです。
あの凶悪な容貌を目にすると、恐怖心が湧いて足が竦んでしまいそうです。
幾ら身体能力が増強されたと言っても、そうそう簡単に冒険者を御せるとは思えないのですが…。」
レベルが上がった後、気弱そうなお姉さんがそんなことを言ってたの。
冒険者ギルドで幹部をしてもらうことになったお姉さんで、最初から自信が無いと言ってた人だね。
「うん、その気持ちはわかるよ。
タロウも最初はそう言っていたもんね。」
おいらが一緒にいるタロウに話を振ると。
「ああ、俺はチキンだから、今でもパンチの冒険者に凄まれると足が竦むぜ。
誰だってそうだから、心配しなくても良いぜ。
冒険者って見た目は凄げえ怖えけど。
マロンが言った通り全然鍛えてないから、こっちが少し鍛えればレベル差で抑え込めるから。
相手を侮って油断さえしなければ、簡単に勝てるようになるよ。
先ずは、凶悪な顔で凄まれても、怯まない度胸を付けることだな。」
三十六人は全員、タロウと父ちゃんに救い出されていて。
その時に、タロウが冒険者達を打ちのめしているのを実際に見ているんだ。
冒険者を圧倒していたタロウですら、冒険者を怖いと思っていると聞き、みんな意外そうにしてたよ。
「タロウが言う通り、先ずは冒険者を前にしても怯まない度胸を付けることだね。
それさえ身に着ければ、あとはレベル差で何とかなるから。
と言うことで、今日はそのための訓練をするよ。」
おいらがそう宣言をしたところでちょうどアルトが帰って来たの。
何処からって? スフレ姉ちゃんの日課の訓練から。
「アルト、戻ったばかりで申し訳ないけど。
昨日お願いしたこと、これから行きたいのだけど、大丈夫かな?」
「ああ、もう、全員のレベルアップは済んだのね。
おやすい御用よ。
この王都を出てすぐのところにちょうど良い場所があったわ。」
スフレ姉ちゃんのスキル『積載量増加』をレベル十まで上げて、『積載庫』を取得させるべく。
アルトの『積載庫』にスフレ姉ちゃんを監禁してスキルの実を食べさせているのだけど。
一日中『積載庫』に押し込んでおくと、スフレ姉ちゃんは気が滅入っちゃうし、運動不足にもなっちゃう。
ということで、アルトは、スフレ姉ちゃんを朝昼晩と訓練に連れ出しているんだ。
ついでに、今回お願いしたことに都合の良い場所を見つけてくれたみたい。
と言う訳で、おいら達は早速三十六人のお姉ちゃんを訓練に連れて行くことにしたの。
訓練の目的は、レベル二十になった身体能力を活かすことと冒険者を前にして怯まない度胸を付けることだよ。
**********
アルトの『積載庫』に乗せてもらってやって来たのは、王都を出てすぐのところにある草原だった。
ウエニアール国の王都はかなり大きな町なのだけど、城郭に囲まれた町を出ると周りに草原が広がってるの。
そんなところは、トアール国の王都も、おいらが住んでた辺境の町もあんまり変わらないね。
草原で全員がアルトの積載庫から降ろしてもらうと。
「ねえ、アルト、スフレ姉ちゃんも降ろしてもらえるかな。
スフレ姉ちゃんにお手本を見せて欲しいんだ。」
おいらがアルトにお願いすると。
「あら、マロンがお手本を見せるのかと思ったら。
あの子にやらせて見せるの?
でも、良いかもしれないわね。
あの子も最近、人と話もしてないし、気晴らしになると思うわ。」
そう言って、アルトはスフレ姉ちゃんを『積載庫』から降ろしたの。
「ふぇ?」
唐突に外に出されたスフレ姉ちゃんはボカンとした顔をしてたのだけど。
「「「「可愛いっ!」」」
スフレ姉ちゃんの隣で、モグモグと人参を頬張るウサギ(魔物)の『うさちゃん』を見たお姉ちゃん達から歓声が上がっていたよ。
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