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第十四章 まずはコレをどうにかしないと
第336話 お姉ちゃん達に仕事を割り振ったよ
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おいらは、『タクトー会』に拉致されていたお姉ちゃん達に、仕事を紹介することにしたの。
ちょうど、人手が足りなかったから渡りに船だったよ。
「まずは、おいらの指示する通り二手に分かれて。
読み書きが得意で、体を動かすことが苦手な人は右側に。
読み書きがあまり得意じゃなくて、体を動かすことが苦にならない人は左側に。」
おいらが娘さん達に指示すると、右手に行ったのは十人、左手に分かれたのは二十六人だった。
農村部から出て来た娘さんが多いせいか、読み書きより体を動かしている方が良いという人が多かったよ。
おいらは、最初に右手側にいた十人に対して言ったの。
「お姉ちゃん達、良かったら冒険者ギルドの管理職をしてもらえるかな。
お姉ちゃん達が監禁されていた『タクトー会』、あれ潰しちゃったんだ。
それで、あのギルドを役所の管理下に置いて、真っ当な冒険者ギルドを創りたいの。
因みに、おいらの隣にいるタロウが新しいギルド長ね。」
おいらがそう伝えると、十人はみんな良い顔をしなかったよ。
自分達が酷い目に遭っていた場所に勤めるのが嫌なのかな。
「あのう…、仕事を紹介して頂けるのは有り難いのですが…。
正直、あの場所は二度と足を踏み入れたくないです。
それに、私のような小娘が荒くれ者を御せるとは思えません。」
十人を代表するように一人の娘さんがおいらに答えると、他の人も頷いてたよ。
やっぱり、あの場所で仕事をするのはトラウマみたい。
「それは、分るけど。
お姉ちゃん達、自分達に酷いことをした冒険者共に仕返ししたいと思わない?
この話を引き受ければ、お姉ちゃん達はあのギルドの幹部になるんだよ。
ゴミ屑のような冒険者をアゴで使ってみたいと思わない?
もちろん、給金は十分なモノを保証するよ。」
更に、おいらはタロウが冒険者達に目を光らせていてくれることや。
実際にお姉さん達にしてもらうことは、タロウを補佐しての事務仕事が中心だと言うことも説明したよ。
それと、もし、冒険者に絡まれることがあっても撃退できるようにしてあげるとも伝えたんだ。
「確かに、仕事を世話してもらえるのは有り難いし。
あのゴミ溜めみたいなギルドを、真っ当にするってのも面白そうだとは思うよ。
でもね、冒険者って人間のクズの典型のようなもんだろう。
私らみたいな小娘の言うことを聞くとは思えないよ。
そっちのタロウさんだって、四六時中目を光らせてる訳にはいかないだろう。
冒険者が絡んで来たら、どうやって撃退しろって言うんだい。」
すると、さっきとは別のお姉さんは、冒険者を上手く御す自信が無いと言っていたの。
「ああ、それは秘策があるんだ。
極秘中の極秘なんで、仕事を引き受けてくれる人にしか教えられないの。
おいらを信用してもらえないかな、決して損はさせないし。
冒険者なんか、ちっとも怖くないようにしてあげるよ。」
おいらが、自信満々に言うと。
「私は謹んでギルドの仕事を頂戴したいと思います。
もとより陛下にお救い頂かなければ。
早晩病気で命を落とすか、連中の暴行に耐えかねて気が触れていたと思います。
助けて頂いた上に仕事もお世話して頂けると言うのです。
これで、不満を言ったらバチが当たります。」
また別のお姉さんがギルドの仕事をしても良いと答えてくれたんだ。
このお姉さんの言葉で、他の娘さんも思い浮かべたみたいだったよ。
もし、おいらが助けに来なければ、自分はどうなっていたのだろうかと。
それを考えると、不満を言える立場じゃないと思ったらしいの。
このお姉さんに同調して、他の娘さん達も仕事を引き受けてくれることになったよ。
**********
取り敢えず、ギルドの幹部になってもらう十人への詳しい話は後にして。
今度は、左側に寄った二十六人に話をするよ。
おいらは、さっきから気風の良い口調で率先して話をしてくるお姉さんを、指名して前へ出てもらったよ。
その後、全員の容姿を眺めてギルドの三階、四階で保護した娘さんの中からあと九人指名したんだ。
これで、二十六人は十六人と十人に分かれたの。
「ここに居るお姉さん達には、多少荒事をして欲しいんだ。
仕事の内容は二つに分かれるんだけど、両方とも市井の民を護る大事な仕事だよ。
正義の味方みたいな仕事は性に合わないと言う人が居たら申し出て。
民を護ると言う信念が無い人には任せられない仕事だから。」
二十六人を前にして、おいらがそう告げると。
「何だい、民を護るってのは? なんか面白そうだな。
わたしゃ、子供の頃から曲がったことが大嫌いなんだ。
女王様の言うような仕事なら、是非やってみたいものだ。」
例の気風の良いお姉さんがそう言ってくれたの。
「お姉さんなら、そう言ってくれると思ったよ。
名前を聞かせてくれるかな?」
「おっと、助けて頂いたのに名乗ってもいなかったな。
わたしゃ、ルッコラって名前だよ。
よろしくな、女王様。」
うん、それは女王様に対する口の利き方じゃないね。
身分制度に厳しい王様なら、首を刎ねられても文句言えないかも。
「ルッコラだね、よろしく。
他のみんなも、仕事を引き受けてくれると考えて良いかな?」
おいらの問い掛けに全員が頷くのを確認したおいらは、仕事の内容を明かしたんだ。
「最初に指名したルッコラと九人は、おいら直轄の騎士をしてもらうね。
『近衛騎士団』ってやつ。
仕事の内容は、王族の警護と王都の治安維持ね。
王都にいるならず者達を取り締まるのも仕事だよ。
他の十六人は『冒険者管理局』の職員として採用するね。
仕事の内容は、冒険者の育成と更生のための指導ね。」
おいらの話を聞いた二十六人はみんなポカンとした顔をしてたよ。
まさか、田舎から出て来たばかりの平民の娘が役人になれと言われると思ってなかったんだろね。
「女王様、ちょっと待ってくれ。
市中のゴロツキを取り締まるのは良いが…。
わたしが騎士だって? 町の衛兵じゃなくて?
騎士と言ったら貴族がなるもんだろう?
わたしゃ、自慢じゃねえが、筋金入りの庶民だぜ。」
やっぱり、最初に口を開いたのはルッコラだった。
いや、その話し方を聞いていれば、だれも高貴な血筋だとは思わないって。
「そう、騎士だよ。
ただし、貴族じゃないけどね。
おいら、一応王様だから、護衛の騎士を付けないといけないんだ。
でも、今の騎士って男の人ばかりでね。
四六時中、身の回りに男の人が居たら気が休まらないじゃない。
だから、女騎士を募集することにしたの。」
おいら、自分の身は自分で護れるし、護衛の騎士は要らないと言ったんだけど。
それでは周囲に示しがつかないと宰相に言われ、王の威厳を保つためにも護衛の騎士を侍らすよう進言されたの。
それでも、男の騎士、しかも、お堅い貴族がずっとそばにいると気が休まらないと、おいらは抵抗したんだ。
宰相とおいらでお互いに譲らず意見を交わした結果、護衛として女性騎士団を創ることを認めてもらったよ。
千人以上の騎士を死罪にして、それ以上の騎士を放逐した後だから、騎士が減って予算面は問題なかったから。
ルッコラ姉ちゃんは、おいらが女王だと分かっても話し方を変えないところが気に入ったんだ。
この姉ちゃんなら、側にいても気疲れしないで済みそうだって。
とは言え、実際問題としておいらの護衛は必要性を感じないので、『近衛騎士団』に王都の治安維持も任せることにしたの。
ヒーナルの治世は騎士の素行が冒険者並みに悪くて、市井の民の鼻つまみ者になっていたものだから。
若くて美人の女騎士が、ならず者退治等の治安維持をすることで、騎士団のイメージアップを図ろうと思って。
迷子の保護や大荷物を抱えたお年寄りの手助けなんかをしてもらうのも良いね。
そうなると、結構な人数が必要になるんで、百人位の陣容にするつもりなの。
後日、大々的に女騎士の募集をする予定なので、今回は先行採用って感じだね。
ハテノ男爵領みたいに町の人から愛されるアイドル騎士団にするのが目標なんだ。
そのために、二十六人の中から飛び切り美人の十人を選んだんだ、ナイショだけど。
おいらがその辺の説明をすると、ルッコラ姉ちゃんは…。
「女王様直々に護衛の騎士に指名されると言うのは光栄だな。
これから、よろしく頼むぜ。」
その口調、変える気は無いんだね。
まあ、おいらはその方が気が楽だけど、宰相あたりは眉をひそめそうだよ。
**********
近衛騎士に選抜した十人は皆納得して仕事引き受けてくれたので、最後は『冒険者管理局』に配置する人達だね。
「私達は『冒険者管理局』と言われましたが、いったい何をすれば良いのでしょうか?
冒険者の育成や更生と言われましても、イメージが湧かないのですが…。」
十六人の娘さん達の中からそんな質問が飛んできたよ。
「細かいことは、後ほど、ここに居る『冒険者管理局』の局長から聞いてちょうだい。
ざっくりとしたことだけ話すと。
今後は一定の研修を受けて試験に合格した人以外は冒険者を名乗れないようにする計画なの。
その研修の指導をみんなにしてもらおうと思ってる。
研修の指導自体はそんなに難しい内容じゃないから安心して。」
現状、冒険者って、定職に就いてない人の代名詞になっていて、自分で名乗れば誰でも冒険者なんだ。
真面目に働くことが出来ないロクで無しが冒険者を名乗るもんだから、ならず者の代名詞にもなってるありさまなんだ。
でも、冒険者って、元々は名前通り『(危)険(を)冒(して稼ぐ)者』で。
危険な魔物を狩ったり、危険な山中で素材を採集したりして、稼ぐ者達のことだったの。
もちろん、父ちゃんみたいに、今でもそんな人は少ないながらいるんだけど。
大部分はならず者で、冒険者は世間の鼻つまみ者になっちゃったんだ。
そんな状況を、父ちゃんは凄く嘆いてたの。
おいら、物心ついた頃から冒険者の父ちゃんの憂いは聞かされたいたし、実際冒険者が世の中を乱しているのも見ているから。
おいらが、女王になったのを機にこの国では『冒険者』を本来の姿に戻そうと考えたんだ。
そうすれば、街の治安もずっと改善して、街も住み易くなるだろうからね。
ハテノ男爵領を参考に幾つか考えている事はあるんだけど。
まず、第一に冒険者を資格制にして、『冒険者管理局』に登録させることにするの。
もちろん、今の自称『冒険者』には一定の猶予期間を設けるよ。
まだ決まってはいないけど半年くらいを目安に、資格を取らないと冒険者を名乗れなくするの。
それと、もし、冒険者が町の人に迷惑行為を働いてお縄になった場合には、『冒険者管理局』で厳しい更生教育を受けてもらうの。
それも、今回、採用した十六人にしてもらうつもりなんだ。
「ええっと…。それって、大分荒事になるんじゃないですか?
冒険者になろうって輩は、社会のはみ出し者ですよね。
そう言う輩が、私達の言うことを素直に聞いてくれるでしょうか?
いわんや、お縄になった輩を更生させるなんて、不可能なんじゃ…。」
おいらの説明を聞いて不安そうに尋ねてきたお姉ちゃんがいたよ。
「最初に冒険者ギルドの幹部をお願いした人にも言ったけど。
その辺の心配はしないで良いよ。
仕事を引き受けてくれたら。
見掛け倒しの冒険者なんか簡単にあしらえるようにしてあげるから。」
さっきと同じ、おいらに秘策がある事を伝えると。
みんな、それ以上女王を疑うような事は言えないと思ったのか、仕事を引き受けてくれたよ。
取り敢えずは、その日は王宮でゆっくり休んでもらうことにしたよ。
仕事を引き受けてもらうに当たり、数日事前研修をする事にしたの。
どうやって、冒険者を従えるようにするかは、翌日に説明することにしたよ。
その内容を知ったら、みんなビックリするだろうね。
ちょうど、人手が足りなかったから渡りに船だったよ。
「まずは、おいらの指示する通り二手に分かれて。
読み書きが得意で、体を動かすことが苦手な人は右側に。
読み書きがあまり得意じゃなくて、体を動かすことが苦にならない人は左側に。」
おいらが娘さん達に指示すると、右手に行ったのは十人、左手に分かれたのは二十六人だった。
農村部から出て来た娘さんが多いせいか、読み書きより体を動かしている方が良いという人が多かったよ。
おいらは、最初に右手側にいた十人に対して言ったの。
「お姉ちゃん達、良かったら冒険者ギルドの管理職をしてもらえるかな。
お姉ちゃん達が監禁されていた『タクトー会』、あれ潰しちゃったんだ。
それで、あのギルドを役所の管理下に置いて、真っ当な冒険者ギルドを創りたいの。
因みに、おいらの隣にいるタロウが新しいギルド長ね。」
おいらがそう伝えると、十人はみんな良い顔をしなかったよ。
自分達が酷い目に遭っていた場所に勤めるのが嫌なのかな。
「あのう…、仕事を紹介して頂けるのは有り難いのですが…。
正直、あの場所は二度と足を踏み入れたくないです。
それに、私のような小娘が荒くれ者を御せるとは思えません。」
十人を代表するように一人の娘さんがおいらに答えると、他の人も頷いてたよ。
やっぱり、あの場所で仕事をするのはトラウマみたい。
「それは、分るけど。
お姉ちゃん達、自分達に酷いことをした冒険者共に仕返ししたいと思わない?
この話を引き受ければ、お姉ちゃん達はあのギルドの幹部になるんだよ。
ゴミ屑のような冒険者をアゴで使ってみたいと思わない?
もちろん、給金は十分なモノを保証するよ。」
更に、おいらはタロウが冒険者達に目を光らせていてくれることや。
実際にお姉さん達にしてもらうことは、タロウを補佐しての事務仕事が中心だと言うことも説明したよ。
それと、もし、冒険者に絡まれることがあっても撃退できるようにしてあげるとも伝えたんだ。
「確かに、仕事を世話してもらえるのは有り難いし。
あのゴミ溜めみたいなギルドを、真っ当にするってのも面白そうだとは思うよ。
でもね、冒険者って人間のクズの典型のようなもんだろう。
私らみたいな小娘の言うことを聞くとは思えないよ。
そっちのタロウさんだって、四六時中目を光らせてる訳にはいかないだろう。
冒険者が絡んで来たら、どうやって撃退しろって言うんだい。」
すると、さっきとは別のお姉さんは、冒険者を上手く御す自信が無いと言っていたの。
「ああ、それは秘策があるんだ。
極秘中の極秘なんで、仕事を引き受けてくれる人にしか教えられないの。
おいらを信用してもらえないかな、決して損はさせないし。
冒険者なんか、ちっとも怖くないようにしてあげるよ。」
おいらが、自信満々に言うと。
「私は謹んでギルドの仕事を頂戴したいと思います。
もとより陛下にお救い頂かなければ。
早晩病気で命を落とすか、連中の暴行に耐えかねて気が触れていたと思います。
助けて頂いた上に仕事もお世話して頂けると言うのです。
これで、不満を言ったらバチが当たります。」
また別のお姉さんがギルドの仕事をしても良いと答えてくれたんだ。
このお姉さんの言葉で、他の娘さんも思い浮かべたみたいだったよ。
もし、おいらが助けに来なければ、自分はどうなっていたのだろうかと。
それを考えると、不満を言える立場じゃないと思ったらしいの。
このお姉さんに同調して、他の娘さん達も仕事を引き受けてくれることになったよ。
**********
取り敢えず、ギルドの幹部になってもらう十人への詳しい話は後にして。
今度は、左側に寄った二十六人に話をするよ。
おいらは、さっきから気風の良い口調で率先して話をしてくるお姉さんを、指名して前へ出てもらったよ。
その後、全員の容姿を眺めてギルドの三階、四階で保護した娘さんの中からあと九人指名したんだ。
これで、二十六人は十六人と十人に分かれたの。
「ここに居るお姉さん達には、多少荒事をして欲しいんだ。
仕事の内容は二つに分かれるんだけど、両方とも市井の民を護る大事な仕事だよ。
正義の味方みたいな仕事は性に合わないと言う人が居たら申し出て。
民を護ると言う信念が無い人には任せられない仕事だから。」
二十六人を前にして、おいらがそう告げると。
「何だい、民を護るってのは? なんか面白そうだな。
わたしゃ、子供の頃から曲がったことが大嫌いなんだ。
女王様の言うような仕事なら、是非やってみたいものだ。」
例の気風の良いお姉さんがそう言ってくれたの。
「お姉さんなら、そう言ってくれると思ったよ。
名前を聞かせてくれるかな?」
「おっと、助けて頂いたのに名乗ってもいなかったな。
わたしゃ、ルッコラって名前だよ。
よろしくな、女王様。」
うん、それは女王様に対する口の利き方じゃないね。
身分制度に厳しい王様なら、首を刎ねられても文句言えないかも。
「ルッコラだね、よろしく。
他のみんなも、仕事を引き受けてくれると考えて良いかな?」
おいらの問い掛けに全員が頷くのを確認したおいらは、仕事の内容を明かしたんだ。
「最初に指名したルッコラと九人は、おいら直轄の騎士をしてもらうね。
『近衛騎士団』ってやつ。
仕事の内容は、王族の警護と王都の治安維持ね。
王都にいるならず者達を取り締まるのも仕事だよ。
他の十六人は『冒険者管理局』の職員として採用するね。
仕事の内容は、冒険者の育成と更生のための指導ね。」
おいらの話を聞いた二十六人はみんなポカンとした顔をしてたよ。
まさか、田舎から出て来たばかりの平民の娘が役人になれと言われると思ってなかったんだろね。
「女王様、ちょっと待ってくれ。
市中のゴロツキを取り締まるのは良いが…。
わたしが騎士だって? 町の衛兵じゃなくて?
騎士と言ったら貴族がなるもんだろう?
わたしゃ、自慢じゃねえが、筋金入りの庶民だぜ。」
やっぱり、最初に口を開いたのはルッコラだった。
いや、その話し方を聞いていれば、だれも高貴な血筋だとは思わないって。
「そう、騎士だよ。
ただし、貴族じゃないけどね。
おいら、一応王様だから、護衛の騎士を付けないといけないんだ。
でも、今の騎士って男の人ばかりでね。
四六時中、身の回りに男の人が居たら気が休まらないじゃない。
だから、女騎士を募集することにしたの。」
おいら、自分の身は自分で護れるし、護衛の騎士は要らないと言ったんだけど。
それでは周囲に示しがつかないと宰相に言われ、王の威厳を保つためにも護衛の騎士を侍らすよう進言されたの。
それでも、男の騎士、しかも、お堅い貴族がずっとそばにいると気が休まらないと、おいらは抵抗したんだ。
宰相とおいらでお互いに譲らず意見を交わした結果、護衛として女性騎士団を創ることを認めてもらったよ。
千人以上の騎士を死罪にして、それ以上の騎士を放逐した後だから、騎士が減って予算面は問題なかったから。
ルッコラ姉ちゃんは、おいらが女王だと分かっても話し方を変えないところが気に入ったんだ。
この姉ちゃんなら、側にいても気疲れしないで済みそうだって。
とは言え、実際問題としておいらの護衛は必要性を感じないので、『近衛騎士団』に王都の治安維持も任せることにしたの。
ヒーナルの治世は騎士の素行が冒険者並みに悪くて、市井の民の鼻つまみ者になっていたものだから。
若くて美人の女騎士が、ならず者退治等の治安維持をすることで、騎士団のイメージアップを図ろうと思って。
迷子の保護や大荷物を抱えたお年寄りの手助けなんかをしてもらうのも良いね。
そうなると、結構な人数が必要になるんで、百人位の陣容にするつもりなの。
後日、大々的に女騎士の募集をする予定なので、今回は先行採用って感じだね。
ハテノ男爵領みたいに町の人から愛されるアイドル騎士団にするのが目標なんだ。
そのために、二十六人の中から飛び切り美人の十人を選んだんだ、ナイショだけど。
おいらがその辺の説明をすると、ルッコラ姉ちゃんは…。
「女王様直々に護衛の騎士に指名されると言うのは光栄だな。
これから、よろしく頼むぜ。」
その口調、変える気は無いんだね。
まあ、おいらはその方が気が楽だけど、宰相あたりは眉をひそめそうだよ。
**********
近衛騎士に選抜した十人は皆納得して仕事引き受けてくれたので、最後は『冒険者管理局』に配置する人達だね。
「私達は『冒険者管理局』と言われましたが、いったい何をすれば良いのでしょうか?
冒険者の育成や更生と言われましても、イメージが湧かないのですが…。」
十六人の娘さん達の中からそんな質問が飛んできたよ。
「細かいことは、後ほど、ここに居る『冒険者管理局』の局長から聞いてちょうだい。
ざっくりとしたことだけ話すと。
今後は一定の研修を受けて試験に合格した人以外は冒険者を名乗れないようにする計画なの。
その研修の指導をみんなにしてもらおうと思ってる。
研修の指導自体はそんなに難しい内容じゃないから安心して。」
現状、冒険者って、定職に就いてない人の代名詞になっていて、自分で名乗れば誰でも冒険者なんだ。
真面目に働くことが出来ないロクで無しが冒険者を名乗るもんだから、ならず者の代名詞にもなってるありさまなんだ。
でも、冒険者って、元々は名前通り『(危)険(を)冒(して稼ぐ)者』で。
危険な魔物を狩ったり、危険な山中で素材を採集したりして、稼ぐ者達のことだったの。
もちろん、父ちゃんみたいに、今でもそんな人は少ないながらいるんだけど。
大部分はならず者で、冒険者は世間の鼻つまみ者になっちゃったんだ。
そんな状況を、父ちゃんは凄く嘆いてたの。
おいら、物心ついた頃から冒険者の父ちゃんの憂いは聞かされたいたし、実際冒険者が世の中を乱しているのも見ているから。
おいらが、女王になったのを機にこの国では『冒険者』を本来の姿に戻そうと考えたんだ。
そうすれば、街の治安もずっと改善して、街も住み易くなるだろうからね。
ハテノ男爵領を参考に幾つか考えている事はあるんだけど。
まず、第一に冒険者を資格制にして、『冒険者管理局』に登録させることにするの。
もちろん、今の自称『冒険者』には一定の猶予期間を設けるよ。
まだ決まってはいないけど半年くらいを目安に、資格を取らないと冒険者を名乗れなくするの。
それと、もし、冒険者が町の人に迷惑行為を働いてお縄になった場合には、『冒険者管理局』で厳しい更生教育を受けてもらうの。
それも、今回、採用した十六人にしてもらうつもりなんだ。
「ええっと…。それって、大分荒事になるんじゃないですか?
冒険者になろうって輩は、社会のはみ出し者ですよね。
そう言う輩が、私達の言うことを素直に聞いてくれるでしょうか?
いわんや、お縄になった輩を更生させるなんて、不可能なんじゃ…。」
おいらの説明を聞いて不安そうに尋ねてきたお姉ちゃんがいたよ。
「最初に冒険者ギルドの幹部をお願いした人にも言ったけど。
その辺の心配はしないで良いよ。
仕事を引き受けてくれたら。
見掛け倒しの冒険者なんか簡単にあしらえるようにしてあげるから。」
さっきと同じ、おいらに秘策がある事を伝えると。
みんな、それ以上女王を疑うような事は言えないと思ったのか、仕事を引き受けてくれたよ。
取り敢えずは、その日は王宮でゆっくり休んでもらうことにしたよ。
仕事を引き受けてもらうに当たり、数日事前研修をする事にしたの。
どうやって、冒険者を従えるようにするかは、翌日に説明することにしたよ。
その内容を知ったら、みんなビックリするだろうね。
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