ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十四章 まずはコレをどうにかしないと

第334話 ギルドの摘発は好評だったよ

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 会長のキンベー以下、『タクトー会』の幹部に縄を打って一階に降りて来ると。

 階段を降ったホールでは、ごく普通の男の人達が心配そうにこちらを見ていたよ。

「あのお役人様、…。その方達をどうなさるおつもりですか。」

 気の弱そうなおじさんが、恐る恐るお縄にした幹部連中の処遇を尋ねてきたんだ。

「うん? あなたは、ここに居る連中の関係者かな?
 こんなならず者と縁があるようには見えないが?」

「いえ、私達は、このギルドに事務員や下働きとして雇われている者です。
 その人達が投獄されようと、死罪になろうと、それ自体は一向にかまわないのですが…。
 お役人様が捕らえられたのは、このギルドの幹部全員です。
 そうなると、このギルドの経営が成り立たなくなってしまい。
 私達も職を失ってします。
 私は女房と子供を養わないといけなので、それは困るのですが…。」

 ここに集まっている堅気の人達は、何の権限もない事務仕事をするために雇われているそうで。
 ギルドの運営をしている幹部を全員しょっ引かられたら、仕事が成り立たないらしいの。

「ああ、経営らしいことが出来るようには見えないが。
 少なくても金庫を握っているのは、こいつ等だろうからな。
 こいつらが居なくなったら、事務員に給金を払うことも出来ないし。
 何より、冒険者が持ち込んだ素材を買い取ることも出来ないな。」

 このギルド、幹部全員が女の人を拉致して暴行していたから、お目溢しは出来ないのだけど。
 そうなると、今この時点から仕事が回らなくなってしまうみたい。
 ただ…、このギルドにも真面目に素材を持ち込む冒険者っているのかな?

 かと言って、何の権限もない事務方に、ギルドの運営資金を預ける訳にもいかないしね。
 持ち逃げする人が出て来るかも知れないから。

 因みに、この建物の中にあった金品は、おいらの『積載庫』に押収してあるよ。
 おそらく、このギルドにはほとんどお金は残っていないと思う。

「ほら見たことかアルネ。
 冒険者ギルド、無くなると困ることいっぱいアルネ。
 だから、ワタシ達、解放するヨロシ。
 ワタシ達、いないと、ギルド、成り立たないアルヨ。」

 ここぞとばかりに、罪を逃れようとする会長のキンベー。
 いや、こいつ等の犯した罪を不問に付すことは出来ないから。
 別にこいつ等じゃなくても、他に適当なギルド経営者を据えれば良いだけだしね。

「分かったよ。
 不便だと思うけど、数日我慢してくれるかな。
 このギルドは、当面、『冒険者管理局』の直轄にするね。
 数日の内に、適任者を数名、ギルドの会長と幹部として送り込むよ。
 もちろん、ここに居る事務方全員の雇用は維持するし。
 当面の活動資金も用立てるから安心して。」

 丁度良いから、国の管理下で真っ当な冒険者ギルドを一つ創っちゃおう。
 ならず者を完全排除したギルドを作れば、街の人も依頼を出しやすいだろうし。
 真っ当な、冒険者も集まって来るだろうからね。

 ついでに、『タクトー会』と言う名称も変えちゃおうっと。
 この名称、何でもギルドの創業者の名前からとったみたいだけど。
 巷では稀代の大悪党と言われているらしいんだ。
 そんな忌まわしい名前を名乗り続ける訳にはいかないからね。

 おいらの言葉を聞いた事務方の人は、みんなホッとした顔をしていたよ。

「お役人様が、このギルドを運営して頂けるのなら助かります。
 幾ら、生活のためとは言え…。
 こいつ等の下で働いていると、何だか悪党の片棒を担いでいるようで。
 他人様から後ろ指差されている気がしてたのです。」

 そんな声も聞こえて来たよ。
 この人達は帳簿付けとか、買取りや依頼の記帳管理をしていただけで。
 仕事自体に後ろ暗いことは無いようだけど、組織が外道なので仕事に後ろめたさを感じていたみたい。

     **********

 そんな訳で、おいら達は『タクトー会』の会長以下幹部たちの首に縄を打って、王宮まで歩いて連行したんだ。
 『タクトー会』の本部を出ると、そこには黒山の人だかりが出来ていたよ。
 さっき、トシゾー団長が率いる騎士のみんなに沢山の冒険者を連行してもらったから。
 何事かと思ったやじ馬が集まって来たんだろうね。

「おい、こいつは凄げえや。大悪党のキンベーが捕まっているぜ。
 それに、幹部連中も全員捕まったんじゃねえか。」

「おう、一網打尽みてえだな。
 これで王都も少しは安心して暮らせるようなるかな。」

 捕縛された面々を見て、やじ馬の中からそんな声が聞こえて来たよ。
 会長のキンベーと若頭補佐のリューカクは、服を着ているだけましだったけど。
 他の幹部たちは、肥え太った醜い裸体を晒しながら歩かせたものだから、衆目を集めていたよ。

 すると。

「お役人様、その連中はこれからどうなるのですか。
 せっかく捕まえて頂いても、すぐに娑婆に出てくるようだと困るんですが。
 そいつら、狂犬のような奴らですから。
 捕まった腹いせに、無関係な町のモンに八つ当たりするかも知れません。」

 軽い罰で出て来ると、また悪さをするどころか、街の人に当たり散らすかもしれないと不安を訴える人がいたよ。

「みんな、安心して良いよ。
 知らない人が居るかもだけど。
 おいらはマロン、この前、この国の女王になったんだ。
 広場に掲示したお触れ書きは見てくれたかな。
 おいら、冒険者の無法は厳しく取り締まるからね。
 そのために、『冒険者管理局』って部署を作ったよ。
 この人が、その局長のモリィシーだよ。
 よろしくね。」

 おいらが父ちゃんを紹介すると。

「俺が、今度『冒険者管理局』の局長に就いたモリィシーだ。
 今日は俺の初仕事で、『タクトー会』の摘発を行った。
 その結果、組織ぐるみで数多の悪事をしていたことを掴んだぞ。
 特に、今裸の連中は婦女子に対する拉致監禁、強姦の現行犯で捕えた。
 先ほど、陛下が言われた広場のお触れ書きに記した通り。
 婦女子に対する拉致監禁、強姦は例外なく死罪だ。
 よって、ここに醜い姿を晒しているブタ共は全員死罪。
 もちろん、幾つもの罪過で会長のキンベーも死罪とする。
 幹部不在となった『タクトー会』は本日をもって、『冒険者管理局』の管理下に置くこととする。」

 父ちゃんが『タクトー会』の幹部連中の処理について説明てくれたの。

「おお、それは有り難い。
 このゴミ溜めみたいな冒険者ギルドが無くなれば、王都も住み易くなるぜ。」

「これで、若い娘も安心して出歩けるようになるぞ。
 今まで、年頃の娘がいる親は、いつ拉致られるかと心配でしょうがなかったんだ。」

「今度の王様は、まだ小さいのに頼りになるわ。
 この間は、不良騎士共を処罰してくれたしな。
 女王様、これからも期待しているぜ。」

 おいらと父ちゃんの言葉を耳にして、集まった人達の間から大きな喝采が起こっていたよ。

        **********

 素っ裸のギルド幹部を晒し者にするように歩いて、王宮へ戻って来たおいらは騎士団に連中を預けたよ。

 その際に。

「確認するけど、トシゾー団長はギルドから袖の下を貰ってないでしょうね。」

「私は、誓ってそんな不正はしてませんよ。
 あんな人間のクズみたいな連中に買収されるほど落ちぶれてはいませんぜ。」

 おいらの問い掛けに、胸を張って答えたトシゾー団長。
 余り、他人を疑っても仕方がないので、おいらはトシゾー団長の言葉を信じることにしたよ。

「その言葉、信じるよ。じゃあ、お願い。
 今、おいらが捕えてきた連中、全員死罪にするから絶対に逃がさないで。
 どうやら、貴族の中に賄賂を貰って色々と便宜を図って来た連中がいるらしいの。
 トシゾー団長の信頼する騎士で、夜通し監視して余人を近づけないようにして。
 そして、ギルドの連中から賄賂を貰って不正を働いた貴族の名を聞き出してちょうだい。
 どうせ、死罪にする連中だから、手荒な手段を使っても良いよ。」

 おいらがお願いすると、トシゾー団長はニヤリと笑い。

「陛下は、この八年で溜まった膿を徹底的に出し切るつもりなのですね。
 冒険者ギルドとつるんで悪さをしていた貴族なんて、キーン一族派に決まっているじゃないですか。
 連中を徹底的に追い詰めるおつもりですね。」

「いやだな、おいらは常に公正な立場だよ。
 特定の派閥を目の敵にするつもりは無いもん。
 最初に言ったでしょう。
 おいらは旧王族に肉親の情なんて抱いてないから、仇討ちをするつもりは無いと。
 あくまで、市井の民に迷惑かけている貴族を消し去りたいだけ。
 おいら自身が市井の民だったから、民に迷惑を掛けて甘い汁を吸う貴族は赦せないの。」

 まあ、ヒーナルの簒奪の経緯からして、不正が疑われるのはキーン一族派が多いとは思うけど。

「承知しました。
 では、何としてでも、不正を働いた貴族の名を吐かせて見せましょう。」

 トシゾー団長は嬉々として応諾すると、さっそく尋問しに行ったよ。
 八年間、キーン一族派に冷や飯食わされていたみたいだから、意趣返ししたいんだろうね。 
 
      **********

「ところで、マロン。
 『タクトー会』を『冒険者管理局』の管理下に置くなんて勝手に決めちまったが…。
 人選はどうするつもりなんだ? 
 ただでさえ、『冒険者管理局』の人選で宰相は忙しいんだ。
 この上、冒険者ギルドに人を送るなんて言うと、宰相は頭を抱えるぞ。」

 トシゾー団長が去ると、父ちゃんが尋ねてきたんだ。

「ああ、それね。
 王宮から『タクトー会』に人を送るつもりは無いよ。
 おいらに少し心当たりがあるから、任せておいて。」

 うん、おいらに一つ考えがあるんだ。
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