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アイイロモンペ

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第十三章 女の子には何かと準備も必要だよ

第325話 崖っぷちに立たされちゃったね

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 ネーブル姉ちゃんがいきなりトアール国のカズヤ王子と結婚したいなんて言い出したよ。
 おいら、ネーブル姉ちゃんはオランにべったりなんだと思っていたのに意外だよ。

「あら、ネーブルちゃん、あなたが殿方に関心があったなんて意外だわ。
 いつまで経ってもオランべったりなものですから。
 私はてっきり、ブラコンを拗らせているものかと思っていました。」

 お義母さん(シタニアール国の后)も、おいらと同じことを思っていたよ…。

「お母様。母娘おやことはいえ、それは失礼ですわよ。
 もちろん、オランは大好きですけど、…。
 それはラビちゃんが大好きという感情と変わりませんわ。
 私も、もうすぐ十六、そろそろ良い殿方を見つけませんと。」

「姉上、私をラビと同列に並べるなんて酷いのじゃ…。」

 ネーブル姉ちゃんの言葉を耳にして、オランが不満を漏らしていた。
 オランはペット扱いだったんだね、ウサギのラビと同列に扱われるなんて…。

「でも良いの、ネーブル姫?
 うちのカズヤは二十二歳、ネーブル姫より六歳も年上ですのよ。」

 嬉しそうな表情のミントさんは大歓迎な様子だけど、念のためって感じで尋ねたの。

「そのくらい全然気にしませんわ。
 王侯貴族の婚姻では、歳の差六歳くらい良くあることなのでしょう。
 カズヤ様はとてもイケメンで、一目で気に入ってしまいましたの。
 あの艶やかな黒髪もエキゾチックな雰囲気で素敵ですわ。」

 ネーブル姉ちゃんは言うの。
 王国貴族の婚姻なんて所詮政略結婚なんだから、有力貴族から求婚があればどんなブサメンでも断れないだろうって。
 ブサメンの所に嫁ぐくらいなら、多少歳の差があっても自分好みのイケメンの所に嫁ぎたいって
  
「あら、嬉しいことを言ってくれるわね。
 私も、ネーブル姫のような可愛い子がカズヤのお嫁さんになってくれると嬉しいわ。
 それじゃ、ウエニアール国へ着いたら男連中に相談してみましょうね。」

 ネーブル姉ちゃんの返事を聞いて、ますます嬉しそうな顔をしたミントさん。
 ただ、その後で、ネーブル姉ちゃんに注文を付けてたよ。
 『黒髪が素敵』は、王様には地雷だから絶対に言わないでって。 
 分かるよ、自分の子ではない証拠みたいなものだからね。

         **********

 そして、トアール国の王都を立ってから三日後、おいら達はウエニアール国の王都へ着いたんだ。
 宰相を始めとする幹部に迎えられて、王宮に入ったおいら達。

 トアール国組やシタニアール国組と挨拶を交わした後、先ずは宿泊先を割り当てたんだ。
 トアール国の一行は人数が多いので、王宮内で別棟になっている迎賓宮を使ってもらうことにしたよ。
 シタニアール国の三人とライム姉ちゃん夫婦は、王族の居住区画を使ってもらうの。
 気楽に過ごせるように、おいらの部屋の近くを使ってもらうことにしたんだ。

 そして、滞在してもらう部屋の割り当てが済むと、トアール国とシタニアール国の王族に集まってもらったの。
 トアール国の方は、護衛のモカさんと宰相が同行してきたよ。もちろん、ミントさんの仕込みだけどね。

 冒頭、お義母さんがみんなに向けて言ったの。
 ネーブル姉ちゃんが、トアール国のカズヤ殿下と婚姻を望んでいると。

「おい、何でそのような大切なことを事前に相談せずにこの場で言うのだ。
 そのような、大事なことは先方さんに伝える前に、根回しするものであろう。」

 お義父さん(シタニアール国の国王)が面喰って、お義母さんに苦情をもらしてたよ。
 お義母さん、本当に伝えてなかったんだ。

「まあ、良いじゃないの、細かいこと言わなくても。
 せっかく、当事者が顔をあわせているのですから。
 細かい根回しも要らないでしょう。
 ちなみに私は賛成ですわよ。
 隣国と誼を結ぶことは国益に適うことですし。
 何よりも、可愛い娘が自分から嫁ぎたいと望むのですから。」

 根回しが必要なのはわかるけど、おいらとオランも何の根回しもしないで押し掛けたからね。
 他人のことは言えないよ。

「いや、まあ、確かに、隣国トアール国と友好関係を考えれば。
 ネーブルがトアール国へ嫁ぐことに反対する者はおらんとは思うが…。
 それで、トアール国の皆さんはどのようにお考えですか。」

 お義父さんは困った様子で、トアール国の人達に意見を聞いたの。

 すると、ミントさんが。

「私は大歓迎ですわ。
 カズヤも二十歳を超えて、早く伴侶を決めないとと思っていたのです。
 旅の間、ネーブル殿下とお話させて頂き、とても仲良くなりましたの。
 私、ネーブル殿下とならうまくやっていけると思いますし。
 カズヤも殿下のような才色兼備なお嬢さんをお嫁さんに出来れば幸せだと思いますわ。」

 もちろん、手放しにウエルカムの言葉を口にしたの。

「いや、ちょっと待ってくれ…。」

 トアール国の王様はとっさに縁談話が進展するのを止めようとしたんだ。
 もともと、王族の一粒種が二十歳を超えて妃を迎えてないことがおかしいのだよね。
 王様はカズヤ王子に王位を渡したくないから、王太子と認めてないし、縁談も進めていないんだ。
 王様は自分の子を王位に就けるべく、第二妃、第三妃も迎えて一生懸命子作りをしているらしいから。

「あら、陛下、何かご不満でもありますの?
 せっかく、カズヤのお嫁さんになってくださるとおっしゃっているのに。 
 ネーブル殿下のような可愛いお嬢さんがですよ。
 それに、隣国との関係を考えると誼を結んでおくのは国のためになると思いませんか。」

 ミントさんがぐいぐいと押していくと、王様は何も言えなくなっちゃったよ。
 対面上、カズヤ殿下は不義の子だからと、この場で公言することはできないもんね。
 トアール国の国内でも、カズヤ殿下は王様の実子だということになっているし。
 
 すると、そこでモカさんが。

「陛下、良いお話ではないですか。
 国防を預かる騎士団長として言わせて頂ければ。
 二百年前の愚行からこっち、我が国は周辺国で最弱となっていますので。
 機会があれば積極的に近隣国と誼を結んでいくのがよろしいかと存じます。」

 モカさんは、王位継承権の絡繰りを理解し、例え不義の子だとしてもカズヤ殿下が継承権第一位だと知っているから。
 王家の血が絶えることが無いように、カズヤ殿下にさっさと結婚して欲しいのだと思うよ。

「そうですな、カズヤ殿下にシタニアール国の王女が嫁いでくだされば我が国は安泰ですな。」
 
 宰相もカズヤ殿下とネーブル姉ちゃんの婚姻を歓迎している様子で、王様に承諾するように促したの。
 王様、困っちゃったよ。
 ここで、二人の婚姻を認めたら、カズヤ殿下が次代の王になることがほぼ確定だもの。
 他国の王族が嫁いで来た第一王子を王太子に据えないなんてこと、常識的には有り得ないものね。

 誰かに助けを求められないかと周囲を見回した王様。
 当事者であるネーブル姉ちゃんに目を止め。

「そなた、周りの者はこう言っておるが。
 国益のためと、言い含められたのではないか。
 カズヤはそなたよりかなり年上であるぞ。
 嫌なら、嫌だと言っても良いのだぞ。」

 どうやら、王様はミントさんの策略だと勘ぐった様子でネーブル姉ちゃんの真意を尋ねたんだ。

「いいえ、陛下。
 この縁談は誰から勧めれたモノでもなく、私が言い出した事なのです。
 王宮でカズヤ様とお目に掛かった時に、一目でこの方だと思いました。
 とても、素敵な方なのですもの。
 是非とも、この婚姻をお認めいただければとお願い致します。」

 カズヤ殿下を思い浮かべてか、ネーブル姉ちゃんは顔をポッと赤らめて答えたの。

「うっ…。」

 ネーブル姉ちゃんの表情を見て王様は声に詰まったよ。
 さすがに芝居だとは思わなかったみたい。

 そして王様は、自分以外には誰も婚姻に反対している者が居ないと悟ったみたいで。

「分かった、そなたとカズヤの婚姻を認めよう。
 ここから帰る際に我が国の王都で、カズヤを交えて詳細を詰めようではないか。
 我が国と貴国の懸け橋になってくれることを期待する。」

 王様は渋々と言う顔をしながら、内諾の形で二人の婚姻を認めたんだ。
 正式な決定は色々な手続きを踏まないといけないそうで。
 帰り道にトアール国の王宮に寄って、輿入れ時期を含めて色々と詰めるみたい。

 二人の婚姻を認めることを告げると王様は肩を落としていたけど。
 ミントさん、モカさん、宰相は、トアール国の懸案事項が一つ片付いたと大喜びだったよ。
 これで、カズヤ殿下を王太子に据えることが既定路線になったようなものだもんね。
 
 もちろん、ネーブル姉ちゃんは大喜びだし。
 お義父さんも、お義母さんも、娘が隣国の王家に嫁ぐことになって、それなりに喜んでいたよ。

 
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