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第十三章 女の子には何かと準備も必要だよ
第318話 剣豪(笑)伝説誕生!
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オランとの結婚について王様は許可したものの、正式に婚姻を認めるためには手続きが要るとのことで。
オランも荷物をまとめないといけないこともあって、少しの間シタニアール国に滞在することになったの。
「私もラビと一緒に寝る!」
ネーブル姉ちゃんがそう言って譲らなかったんで、オランの部屋のベッドに三人と一匹が一緒に寝ることになったよ。
天蓋付きの馬鹿でかいベットだったけど、ラビが大きいせいでベッドからはみ出しそうになるくらい窮屈だった。
そんな中、ネーブル姉ちゃんは、ラビにヒシっと抱きついてスヤスヤと寝息を立ててたの。
「姉上は、本当に子供のようなのじゃ。
昼間、ラビに乗ってはしゃぎ過ぎたのじゃろう。
余程疲れていたのか、もうぐっすりなのじゃ。
ラビの毛皮に埋もれて幸せそうな寝顔なのじゃ。」
オランの言葉通り、ネーブル姉ちゃんの寝顔はとっても幸せそうだった。
オランと顔を見合わせて、二人で笑っちゃったよ。
ネーブル姉ちゃんが結婚に反対だと言い出した時は、どうなることかと思ったけど。
上手く説得してくれたオランには感謝だね。
「オラン、改めて有り難う。
オランが旦那さんになってくれて心強いよ。
今日も、ネーブル姉ちゃんを説得してくれたし。」
オランの婿入りについて王様の許しが出たので、改めて感謝の気持ちを告げると。
「お礼を言われることではないのじゃ。
マロンとずっと一緒に居られたら楽しかろうと。
私自身が心から望んでいたことなのじゃから。
こちらこそ、末永くよろしくなのじゃ。」
オランが、そんな嬉しい返事をしてくれたんだ。
半年ほど一緒に暮らしていて、ずっとこんな暮らしが続いたらと思っていたって。
その言葉を聞いたら心がほわっと温かくなって、その晩は幸せな気持ちで眠りについたの。
**********
そして、翌朝。
オランと一緒に朝食をとる部屋に行くと…。
「アルト様、酷いですよ。
昨日は一日中、『妖精の不思議空間』から出してくれなかったし。
ごはんも食べさせてくれないなんて。」
テーブルの片隅で、スフレ姉ちゃんが半べそをかきながら、朝ごはんを頬張っていたよ。
「ごめなさいね。
昨日は朝、ここに着いて一日中マロンの婚姻の打ち合わせをしてたから。
あんたのことを忘れていたわ。
もう赦してよ。
こうして王族と同じ食事をとらせてもらえるように頼んであげたんだから。」
どうやら、昨日はバタバタしていて、スフレ姉ちゃんに食事を差し入れるのを忘れていたみたい。
もっとも、スフレ姉ちゃんの今の仕事は、ひたすら『スキルの実』を食べることだから。
身の回りに『スキルの実』が溢れてるだろし、飢えることは無いと思うけど。
まっ、『スキルの実』ばかりだと飽きるだろうから、他のモノも食べたいだろうね。
「ところで、アルト様。
アルト様の依頼なので同席を許したものの…。
そこの娘、騎士のような身なりをしてますが。
その幼い娘がマロンちゃんの護衛なのですか?」
ちょうど、大きなテーブルの上座に腰を下ろしたばかりの王様が尋ねていたよ。
スフレ姉ちゃん、もう十五歳になっているんだけど、見た目はネーブル姉ちゃんくらいだからね。
騎士だと言ってもにわかには信じられないよね。
王様に問い掛けられて、アルトはニヤッと笑ったんだ。
また何か、イタズラを思い付いたみたい…。
「そうよ、ハテノ男爵領の騎士なんだけど。
マロンの護衛として、臨時で借りてきたの。
この子、凄いのよ。
こう見えて、騎士団の中でも腕利きなのだから。
そうだ、昨日は訓練をしなかったし、体が鈍るといけないわ。
悪いけど、この国の騎士団と一緒に訓練させてもらえないかしら。」
唐突に王様に頼んだよ。
スフレ姉ちゃん、『完全回避』と『クリティカル発生率百%』を持っているものね。
この国の騎士に手合わせでもさせて驚かせるつもりなんだね。
「ふぇ…?
アルト様、また、何を勝手な事を言ってるんですか…。
私なんか、ダメダメですよ。」
スフレ姉ちゃんは、アルトが言い出したことを何とか逃れようとしてるけど…。
「ほお、アルト様がそれほど評価するとは。
余程、腕の立つ騎士のでしょうな。
私も一度腕前を見せて欲しいものだ。
是非とも、近衛の者に稽古をつけてやってください。」
スフレ姉ちゃん、剣を初めて握ってからまだ半年やそこらなのに。
王様ったら、すっかり乗せられちゃったよ。
「えっ? えっ? えっ?」
自分の意思を無視して話が進んでいくことに、スフレ姉ちゃん、凄く戸惑っていたよ。
**********
朝ごはんを食べ終えてから、王様の案内で王宮の裏にある近衛騎士の訓練場へ足を運んだの。
「陛下、このような場所にお運びいただき光栄でございます。
今日は、いかがあそばされましたか。」
訓練場で王様を迎えたのは、見覚えのある騎士だった。
最初に王宮を襲撃した時、玉座の後ろに控えていた近衛の騎士団長だね。
「マロンちゃんの護衛としてついて来た騎士が稽古をしたいと申してな。
少し、相手をしてはくれぬか。
中々の腕利きのようだから、私も見物させてもらおうかと思っている。」
「はあ、マロン嬢の護衛ですか?
赤子の手を捻るように、私を倒したマロン嬢の?
護衛なんて必要なのですか?」
初見で騎士団長を軽くいなしたおいらと、見るからに気の弱そうなスフレ姉ちゃんを見比べて。
そんな疑問を口にする騎士団長。
一応、おいら、女王だから、護衛無しでほっつき歩いている方が異常なんだけど。
形だけでも護衛がいるのは、おかしくないんだよ。
騎士団長はおいらが女王になったことをまだ知らないだろうから、そう思うのも無理ないけど。
「まあ、腕が立つことはアルト様のお墨付きだ。
少し、手合わせをしてみぬか。」
お仕えする王様にそう言われてしまっては、騎士団長としても嫌とは言えず…。
「誰か、こちらの騎士殿と手合わせをしてみろ。」
その場で訓練をしていた騎士達に命じたんだ。
一方のアルトは。
「良い事、これは稽古だからね。
絶対に相手の体に剣をあてたらダメよ。
あんたがあてたら殺しちゃうからね。
狙うのは、相手の剣よ。
剣を弾き返せば良いから。」
流石に友好国の騎士を殺っちゃう訳にはいかないからね。
絶対に体には当てるなと釘を刺していたよ。
それと、目を瞑るのも禁止だって。どこにあたるか分からないから。
王様やこの駅騎士達が見守る中で、スフレ姉ちゃんの前に出て来たのはまだ若い騎士だった。
どっかの国のならず者みたいな騎士と違って、とても優しそうな表情の騎士だったの。
どうやら、騎士団長はスフレ姉ちゃんを気遣って、紳士的な騎士を相手に選んでくれたみたい。
「よろしくお願いします。きつくなったら止めにしますから。
無理せず、参ったと言ってくださいね。」
そんな、優しい言葉を掛けて剣を構える近衛騎士。
「よっ、よろしくお願いします。」
スフレ姉ちゃんがペコリと頭を下げて剣を構えると、騎士団長が始めの合図を出したんだ。
「行きます!」
そんな声を掛けて、いかにも手加減した様子で剣を振り下ろす近衛騎士。
「きゃっ!」
そんな情けない悲鳴を上げつつも、スキル『完全回避』が働いて一歩横へ移動したスフレ姉ちゃん。
目の前を過ぎ行く剣に対して、下から掬い上げるように剣を当てたんだ。
その瞬間。
キーン!
という澄んだ高い音が響き。
「えっ?」
驚愕の声を上げた近衛騎士。
近衛騎士の剣は、先っぽから三分の一くらいが断ち切られて宙を舞ったの。
「「「「「おぉーー!」」」」」
それを目にした周囲の騎士から驚嘆の声が上がったよ。
まるで包丁でキュウリでも切るように、あっさりと剣を断ち切られ呆然としている騎士。
その騎士を退かして、別の騎士が進み出ると。
「君、今度は是非、私と手合わせてくれ。」
スフレ姉ちゃんに手合わせを願い出たの。
「いざ、参る! えい!」
「きゃっ!」
キーン!
そして、さっきと全く同じ光景が再現され…。
「「「「おっ、凄いな、今度は私と手合わせを頼む。」」」」
面白がった騎士達が一斉にスフレ姉ちゃんに手合わせを申し込んだの。
気の弱いスフレ姉ちゃんがそれを断れるはずも無く…。
何度も繰り返される剣をクズ鉄に変える光景。
寸断された剣が十振りを超えた頃…。
「いや、天晴、素晴らしい腕前であった。
人は見かけによらぬと申せばよいのか。
能ある鷹は爪隠すと申せばよいのか。
これほど続けざまに、剣を剣で断ち切るれる達人が居るとは…。
どれ、良いものを見せてもらった礼にこれを進ぜよう。」
王様は手合わせを止めさせ、スフレ姉ちゃんを称賛すると。
腰に下げた装飾用の短剣を、スフレ姉ちゃんに下賜したんだ。
おいらが母ちゃんの形見として受け取った宝剣みたいな装飾過多の剣だったよ。
「えっ、いえ、そんな勿体ない。」
スフレ姉ちゃんは、全部スキルの力で実力じゃないことを弁えているからね。
べた褒めされた上で、宝剣を下賜されて困っちゃったんだ。
剣の受け取りを躊躇していると。
「そなた、遠慮してないで、それを受け取るのじゃ。
王が一度下賜すると言って差し出したものを引っ込めることは出来ぬのじゃ。
受け取らないと、王に恥をかかせるのじゃ。」
オランが、スフレ姉ちゃんにアドバイスを飛ばしたの。
スフレ姉ちゃんは、オラン言葉に素直に従うことにしたようで。
「お褒めに与かり、光栄でございます。
謹んで、頂戴いたします。」
そう答えると、恭しく両手で剣を受け取っていたよ。
「「「「「おおーー!」」」」
その瞬間、周囲の近衛騎士から歓声が上がってたよ。
この時、シタニアール国に『幼い姿をした異国の剣豪』って伝説が出来たらしいよ。
いや、『完全回避』と『クリティカル発生率百%』が仕事しただけなんだけどね…。
アルトはイタズラが上手くいった子供のような笑みを浮かべていたよ。
オランも荷物をまとめないといけないこともあって、少しの間シタニアール国に滞在することになったの。
「私もラビと一緒に寝る!」
ネーブル姉ちゃんがそう言って譲らなかったんで、オランの部屋のベッドに三人と一匹が一緒に寝ることになったよ。
天蓋付きの馬鹿でかいベットだったけど、ラビが大きいせいでベッドからはみ出しそうになるくらい窮屈だった。
そんな中、ネーブル姉ちゃんは、ラビにヒシっと抱きついてスヤスヤと寝息を立ててたの。
「姉上は、本当に子供のようなのじゃ。
昼間、ラビに乗ってはしゃぎ過ぎたのじゃろう。
余程疲れていたのか、もうぐっすりなのじゃ。
ラビの毛皮に埋もれて幸せそうな寝顔なのじゃ。」
オランの言葉通り、ネーブル姉ちゃんの寝顔はとっても幸せそうだった。
オランと顔を見合わせて、二人で笑っちゃったよ。
ネーブル姉ちゃんが結婚に反対だと言い出した時は、どうなることかと思ったけど。
上手く説得してくれたオランには感謝だね。
「オラン、改めて有り難う。
オランが旦那さんになってくれて心強いよ。
今日も、ネーブル姉ちゃんを説得してくれたし。」
オランの婿入りについて王様の許しが出たので、改めて感謝の気持ちを告げると。
「お礼を言われることではないのじゃ。
マロンとずっと一緒に居られたら楽しかろうと。
私自身が心から望んでいたことなのじゃから。
こちらこそ、末永くよろしくなのじゃ。」
オランが、そんな嬉しい返事をしてくれたんだ。
半年ほど一緒に暮らしていて、ずっとこんな暮らしが続いたらと思っていたって。
その言葉を聞いたら心がほわっと温かくなって、その晩は幸せな気持ちで眠りについたの。
**********
そして、翌朝。
オランと一緒に朝食をとる部屋に行くと…。
「アルト様、酷いですよ。
昨日は一日中、『妖精の不思議空間』から出してくれなかったし。
ごはんも食べさせてくれないなんて。」
テーブルの片隅で、スフレ姉ちゃんが半べそをかきながら、朝ごはんを頬張っていたよ。
「ごめなさいね。
昨日は朝、ここに着いて一日中マロンの婚姻の打ち合わせをしてたから。
あんたのことを忘れていたわ。
もう赦してよ。
こうして王族と同じ食事をとらせてもらえるように頼んであげたんだから。」
どうやら、昨日はバタバタしていて、スフレ姉ちゃんに食事を差し入れるのを忘れていたみたい。
もっとも、スフレ姉ちゃんの今の仕事は、ひたすら『スキルの実』を食べることだから。
身の回りに『スキルの実』が溢れてるだろし、飢えることは無いと思うけど。
まっ、『スキルの実』ばかりだと飽きるだろうから、他のモノも食べたいだろうね。
「ところで、アルト様。
アルト様の依頼なので同席を許したものの…。
そこの娘、騎士のような身なりをしてますが。
その幼い娘がマロンちゃんの護衛なのですか?」
ちょうど、大きなテーブルの上座に腰を下ろしたばかりの王様が尋ねていたよ。
スフレ姉ちゃん、もう十五歳になっているんだけど、見た目はネーブル姉ちゃんくらいだからね。
騎士だと言ってもにわかには信じられないよね。
王様に問い掛けられて、アルトはニヤッと笑ったんだ。
また何か、イタズラを思い付いたみたい…。
「そうよ、ハテノ男爵領の騎士なんだけど。
マロンの護衛として、臨時で借りてきたの。
この子、凄いのよ。
こう見えて、騎士団の中でも腕利きなのだから。
そうだ、昨日は訓練をしなかったし、体が鈍るといけないわ。
悪いけど、この国の騎士団と一緒に訓練させてもらえないかしら。」
唐突に王様に頼んだよ。
スフレ姉ちゃん、『完全回避』と『クリティカル発生率百%』を持っているものね。
この国の騎士に手合わせでもさせて驚かせるつもりなんだね。
「ふぇ…?
アルト様、また、何を勝手な事を言ってるんですか…。
私なんか、ダメダメですよ。」
スフレ姉ちゃんは、アルトが言い出したことを何とか逃れようとしてるけど…。
「ほお、アルト様がそれほど評価するとは。
余程、腕の立つ騎士のでしょうな。
私も一度腕前を見せて欲しいものだ。
是非とも、近衛の者に稽古をつけてやってください。」
スフレ姉ちゃん、剣を初めて握ってからまだ半年やそこらなのに。
王様ったら、すっかり乗せられちゃったよ。
「えっ? えっ? えっ?」
自分の意思を無視して話が進んでいくことに、スフレ姉ちゃん、凄く戸惑っていたよ。
**********
朝ごはんを食べ終えてから、王様の案内で王宮の裏にある近衛騎士の訓練場へ足を運んだの。
「陛下、このような場所にお運びいただき光栄でございます。
今日は、いかがあそばされましたか。」
訓練場で王様を迎えたのは、見覚えのある騎士だった。
最初に王宮を襲撃した時、玉座の後ろに控えていた近衛の騎士団長だね。
「マロンちゃんの護衛としてついて来た騎士が稽古をしたいと申してな。
少し、相手をしてはくれぬか。
中々の腕利きのようだから、私も見物させてもらおうかと思っている。」
「はあ、マロン嬢の護衛ですか?
赤子の手を捻るように、私を倒したマロン嬢の?
護衛なんて必要なのですか?」
初見で騎士団長を軽くいなしたおいらと、見るからに気の弱そうなスフレ姉ちゃんを見比べて。
そんな疑問を口にする騎士団長。
一応、おいら、女王だから、護衛無しでほっつき歩いている方が異常なんだけど。
形だけでも護衛がいるのは、おかしくないんだよ。
騎士団長はおいらが女王になったことをまだ知らないだろうから、そう思うのも無理ないけど。
「まあ、腕が立つことはアルト様のお墨付きだ。
少し、手合わせをしてみぬか。」
お仕えする王様にそう言われてしまっては、騎士団長としても嫌とは言えず…。
「誰か、こちらの騎士殿と手合わせをしてみろ。」
その場で訓練をしていた騎士達に命じたんだ。
一方のアルトは。
「良い事、これは稽古だからね。
絶対に相手の体に剣をあてたらダメよ。
あんたがあてたら殺しちゃうからね。
狙うのは、相手の剣よ。
剣を弾き返せば良いから。」
流石に友好国の騎士を殺っちゃう訳にはいかないからね。
絶対に体には当てるなと釘を刺していたよ。
それと、目を瞑るのも禁止だって。どこにあたるか分からないから。
王様やこの駅騎士達が見守る中で、スフレ姉ちゃんの前に出て来たのはまだ若い騎士だった。
どっかの国のならず者みたいな騎士と違って、とても優しそうな表情の騎士だったの。
どうやら、騎士団長はスフレ姉ちゃんを気遣って、紳士的な騎士を相手に選んでくれたみたい。
「よろしくお願いします。きつくなったら止めにしますから。
無理せず、参ったと言ってくださいね。」
そんな、優しい言葉を掛けて剣を構える近衛騎士。
「よっ、よろしくお願いします。」
スフレ姉ちゃんがペコリと頭を下げて剣を構えると、騎士団長が始めの合図を出したんだ。
「行きます!」
そんな声を掛けて、いかにも手加減した様子で剣を振り下ろす近衛騎士。
「きゃっ!」
そんな情けない悲鳴を上げつつも、スキル『完全回避』が働いて一歩横へ移動したスフレ姉ちゃん。
目の前を過ぎ行く剣に対して、下から掬い上げるように剣を当てたんだ。
その瞬間。
キーン!
という澄んだ高い音が響き。
「えっ?」
驚愕の声を上げた近衛騎士。
近衛騎士の剣は、先っぽから三分の一くらいが断ち切られて宙を舞ったの。
「「「「「おぉーー!」」」」」
それを目にした周囲の騎士から驚嘆の声が上がったよ。
まるで包丁でキュウリでも切るように、あっさりと剣を断ち切られ呆然としている騎士。
その騎士を退かして、別の騎士が進み出ると。
「君、今度は是非、私と手合わせてくれ。」
スフレ姉ちゃんに手合わせを願い出たの。
「いざ、参る! えい!」
「きゃっ!」
キーン!
そして、さっきと全く同じ光景が再現され…。
「「「「おっ、凄いな、今度は私と手合わせを頼む。」」」」
面白がった騎士達が一斉にスフレ姉ちゃんに手合わせを申し込んだの。
気の弱いスフレ姉ちゃんがそれを断れるはずも無く…。
何度も繰り返される剣をクズ鉄に変える光景。
寸断された剣が十振りを超えた頃…。
「いや、天晴、素晴らしい腕前であった。
人は見かけによらぬと申せばよいのか。
能ある鷹は爪隠すと申せばよいのか。
これほど続けざまに、剣を剣で断ち切るれる達人が居るとは…。
どれ、良いものを見せてもらった礼にこれを進ぜよう。」
王様は手合わせを止めさせ、スフレ姉ちゃんを称賛すると。
腰に下げた装飾用の短剣を、スフレ姉ちゃんに下賜したんだ。
おいらが母ちゃんの形見として受け取った宝剣みたいな装飾過多の剣だったよ。
「えっ、いえ、そんな勿体ない。」
スフレ姉ちゃんは、全部スキルの力で実力じゃないことを弁えているからね。
べた褒めされた上で、宝剣を下賜されて困っちゃったんだ。
剣の受け取りを躊躇していると。
「そなた、遠慮してないで、それを受け取るのじゃ。
王が一度下賜すると言って差し出したものを引っ込めることは出来ぬのじゃ。
受け取らないと、王に恥をかかせるのじゃ。」
オランが、スフレ姉ちゃんにアドバイスを飛ばしたの。
スフレ姉ちゃんは、オラン言葉に素直に従うことにしたようで。
「お褒めに与かり、光栄でございます。
謹んで、頂戴いたします。」
そう答えると、恭しく両手で剣を受け取っていたよ。
「「「「「おおーー!」」」」
その瞬間、周囲の近衛騎士から歓声が上がってたよ。
この時、シタニアール国に『幼い姿をした異国の剣豪』って伝説が出来たらしいよ。
いや、『完全回避』と『クリティカル発生率百%』が仕事しただけなんだけどね…。
アルトはイタズラが上手くいった子供のような笑みを浮かべていたよ。
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