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第十三章 女の子には何かと準備も必要だよ
第316話 こいつ、ホントに信用できるのだろか…
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スフレ姉ちゃんをアルトの『特別席』に監禁し、次においらが向かったのは。
「なに、マロン嬢ちゃんが女王になっただと。
また、そんな七面倒臭い仕事を引き受けるなんて物好きな。
あんなもん、しきたりやなんやと堅苦しいだけだぞ。」
『山の民』の名工ノーム爺は、おいらが王様になったと言ったら全否定だったよ。
「うるさいわね。
マロンが自分で選んだ道なんだから、少しは祝福をしてあげなさいよ。
それで、出来るの? 出来ないの?」
「王冠と王笏だっけか。
それなら、五十年程前に一度だけ作ったことがあるぞ。
納品した時に王が大絶賛だったから、それなりの物が作れたのだと自負しておるぞ。
王冠とはあれだろう、式典などで兜の代わりに頭につける防具。
頭突きをすれば武器にもなる重量のあるものが良いのだろう。
王笏とは武器を持てない公の場などで持つ、杖の形をした棍棒のことであろう。」
おいらが即位式で被る王冠と手にする王笏を作ってもらおうと思って訪ねて来たんだ。
元々、歴代の王が被った王冠はあるのだけど…。
大きいし、重いしで、子供のおいらが被るのは無理だったんだ。
重すぎて首が折れるかと思ったよ。
なのに、ノーム爺から、返って来た言葉はこれ…。
「いったい何処の蛮族の王様よ、そんな注文出したの!
王冠や王笏に武器の役割は期待してないわ。
マロンのサイズに合わせた小さくて軽い王冠が欲しいの。
瀟洒な中にも王の風格が感じられるデザインに出来ないかしら。」
おいらの心の叫びをアルトが代弁してくれたよ。
王冠を被るような儀礼式典の場で、襲撃される心配をする必要があるって、どんな修羅の国なの。
「いや、争いの絶えない国でな。
短命の王が続いておったのだ…、みんな暗殺でな。
それはともかく、儂は実用品を得意としていての。
装飾品は苦手なのじゃ。」
ノーム爺は、『山の民』の里でも名工と呼ばれるらしいけど。
もっぱら、剣とか、包丁とか、実用品の刃物が得意なんだって。
手掛けた装飾品なんて、剣の鞘くらいだと言ってたよ。
「師匠の作は、一言で表せば質実剛健アルヨ。
師匠の作品は、皆美しいアルガ。
それは実用性を極めた美しさアル。
そこに軽薄な装飾など不要アルネ。」
弟子のチンが、胡散臭い言葉でノーム爺の弁護をしてたよ。
確かに、ノーム爺の作った包丁は何の飾り気も無いけど、引き込まれるほど綺麗だったよ。
銀貨百枚もする包丁なのに、衝動買いしちゃったし。
「そう言えば、チン、おめえ、小器用になんでもこなせるよな。
おめえももう一人立ちしても十分な腕前だ。
この仕事、箔付けにおめえがやってみたらどうだい。」
ノーム爺が弟子のチンに、おいらの依頼を振ったんだ。
『山の民』の長老をしているノーム爺が認めているのだから、腕は確かなんだろうけど…。
このチンと言う弟子、話し方が何か胡散臭いんだよね。
詐欺師みたいな話し方と言うか…。
きっと、おいら、顔に出ていたんだろうね、「こいつ、信用できるのか。」って。
「マロン嬢ちゃん、チンを疑っているのか。
こいつは、少し癖の強い訛りがあって胡散臭く感じるかも知れんが。
腕は確かだぞ。
一芸を極めるタイプじゃねえが、儂なんかより幅広く仕事を熟せるんだ。
儂が責任を持つから、こいつに仕事を任せたらどうだい。」
今度はノーム爺が、チンの弁護をして来たよ。
「ノーム爺が責任持つと言うなら任せても良いじゃないの。
マロン、アレを出したら?」
どうやら、アルトはノーム爺をかなり信頼しているみたい。
今まで色々と仕事を出してたけど、ノーム爺はどれも要望に応えているからね。
「うん、わかった。
じゃあ、これ、王冠と王笏に使ってちょうだい。
どれも、一つずつしかないから失くさないでよ。」
おいらは、自分の『積載庫』からアルトに指示されたモノを出してテーブルに居並べたの。
「おっ、おい、…。
これは、まさか、ダイヤモンドか。
この世に生を受けて七十年になるが。
こんなデカいダイヤモンドを見たのは初めてだぞ。
他のも、どれも極上品じゃねえか。」
そう、おいらが並べたのは、ダイヤモンド鉱山を解放した時に、最初に試掘したダイヤモンド。
ワームを討伐した報酬として、ライム姉ちゃんから貰っておいたの。
ノーム爺の目を引いた一番大きいダイヤモンドは、おいらのこぶし大もあるんだ。
品質はイマイチだけど、そんな大きな物は殆ど無く、希少価値がとんでもなく高いって。
この一番大きなダイヤモンドは王笏の頭の部分に使ってもらうの。
他に並べたのは豆粒ほどの大きさの物が十粒、『積載庫』の注釈ではどれも最高級品質らしいよ。
こっちは、王冠の装飾に使ってもらうんだ。
「そうよ、どれも、極上品だからね。
ネコババしようものなら絶対に赦さないわよ。
持ち逃げしたら、草の根分けてでも探し出して。
その命で償ってもらうから、覚悟しなさい。」
アルトがマジで凄んで見せたの、ネコババしたら命が無いものと思えって。
「心配する必要ないアル。
『山の民』、信用第一アルヨ。
こんな、凄いダイヤモンドを使う仕事なんて腕が鳴るアルヨ。
任せておくアル、満足のいくものを作って見せるアルヨ。
期待して待ってるヨロシ。」
アルトに気圧されて、チンが冷や汗を流しながら答えていたよ。
しかし、聞けば聞くほど胡散臭く感じるんだ、チンの口調って。
そんな訳で、二ヶ月後のおいらの即位式に間に合うように仕立ててもらうことになったの。
「そうだ、マロン嬢ちゃん。
チンの野郎をそろそろ独立させようと思ってんだが。
今度の依頼が嬢ちゃんのお眼鏡に適ったらで良いが。
嬢ちゃんのお膝元で、店を構えさせてやれないかい。
王様だったら、そのくらいの融通は利くだろう。」
打ち合わせが終ると、ノーム爺がそんなことを言ってきたんだ。
別に店を出すのは自由なんだけど、どうやら、おいらの御用達にしないかと言うことらしい。
ウエニアール国の王都に『山の民』のお店か…、ちょっと良いかもしれない。
『山の民』の作品の専門店は現状、この町にしかないらしいもんね。
ノーム爺の見込んだ通りの腕前なら、お店を出してもらえたら評判になるかも。
「そうだね、王冠と王笏の出来栄えが良かったら、そうするよ。」
まあ、完成品を見て、アルトとオランの意見を聞いてからだね。
**********
にっぽん爺とシフォン姉ちゃんにドレスを頼んで、ノーム爺とチンに王冠と王笏も頼んだから。
この町でしておくことは終えたので、いよいよシタニアール国へ行くことにしたよ。
オランを旦那様にもらってこないとね。
辺境を町を出て五日後、おいら達はシタニアール国の王都トマリに到着したの。
王宮に着いたアルトは、例によって窓から直接王様の執務室に入り込んだんだ。
「久しぶりね、みんな元気にしているかしら。」
いきなり入り込んでおいて、何事もなかったように王様に声を掛けるアルト。
「おや、アルト様、お久しぶりです。
おかげさまで、皆息災にしております。
あれから、ウエニアール国の王が三度目の使者を送って来ましたが。
ブランシュ殿が、無礼者共を追い返してくれました。
可愛い嫁さんが来てからというもの、シトラスも女遊びを止めて助かりました。
そうそう、つい数日前、その嫁のシーリンの懐妊が明らかになりましたよ。
アルト様には感謝ですな。」
アルトの突飛な行動にも、すっかり慣れっこになったのか。
窓から入り込まれても、動じることなく王様は受け答えしてたよ。
「それはそうと。
今日はどのようなご用件でございましょう。
もしや、オランジュをお送り届けて戴けたのでしょうか。
あやつも市井の見聞に出て間もなく一年。
そろそろ王宮に戻って来てもらい。
王族の役目の見習いでもさせようかと思っていたところです。」
どうやら、王様はオランが帰ってくるのを待っていたみたい。
オランを婿にもらうなんて言ったら、どんな顔をするんだろう。
「うーんと、そのことなんだけどね…。
どう説明したら良いのか。
まあ、いいや、本人たちに説明させるわ。」
オランが戻るのを心待ちにしている王様を見て、歯切れの悪い話し方になったアルト。
どう説明したものかと考え倦ねた様子で、終にはおいら達に説明を丸投げにしたよ。
アルトの言葉に続いて、王様の目の前に出されたおいらとオラン。
オランは間髪入れずに言ったんだ。
「父上、帰って早々で申し訳ないのじゃが。
マロンと婚姻を結びたいので許可して欲しいのじゃ。」
オラン、挨拶も抜きでそれじゃ、唐突過ぎだから…。
「はあ?」
ほら、王様、ポカンとしちゃったじゃない。
「なに、マロン嬢ちゃんが女王になっただと。
また、そんな七面倒臭い仕事を引き受けるなんて物好きな。
あんなもん、しきたりやなんやと堅苦しいだけだぞ。」
『山の民』の名工ノーム爺は、おいらが王様になったと言ったら全否定だったよ。
「うるさいわね。
マロンが自分で選んだ道なんだから、少しは祝福をしてあげなさいよ。
それで、出来るの? 出来ないの?」
「王冠と王笏だっけか。
それなら、五十年程前に一度だけ作ったことがあるぞ。
納品した時に王が大絶賛だったから、それなりの物が作れたのだと自負しておるぞ。
王冠とはあれだろう、式典などで兜の代わりに頭につける防具。
頭突きをすれば武器にもなる重量のあるものが良いのだろう。
王笏とは武器を持てない公の場などで持つ、杖の形をした棍棒のことであろう。」
おいらが即位式で被る王冠と手にする王笏を作ってもらおうと思って訪ねて来たんだ。
元々、歴代の王が被った王冠はあるのだけど…。
大きいし、重いしで、子供のおいらが被るのは無理だったんだ。
重すぎて首が折れるかと思ったよ。
なのに、ノーム爺から、返って来た言葉はこれ…。
「いったい何処の蛮族の王様よ、そんな注文出したの!
王冠や王笏に武器の役割は期待してないわ。
マロンのサイズに合わせた小さくて軽い王冠が欲しいの。
瀟洒な中にも王の風格が感じられるデザインに出来ないかしら。」
おいらの心の叫びをアルトが代弁してくれたよ。
王冠を被るような儀礼式典の場で、襲撃される心配をする必要があるって、どんな修羅の国なの。
「いや、争いの絶えない国でな。
短命の王が続いておったのだ…、みんな暗殺でな。
それはともかく、儂は実用品を得意としていての。
装飾品は苦手なのじゃ。」
ノーム爺は、『山の民』の里でも名工と呼ばれるらしいけど。
もっぱら、剣とか、包丁とか、実用品の刃物が得意なんだって。
手掛けた装飾品なんて、剣の鞘くらいだと言ってたよ。
「師匠の作は、一言で表せば質実剛健アルヨ。
師匠の作品は、皆美しいアルガ。
それは実用性を極めた美しさアル。
そこに軽薄な装飾など不要アルネ。」
弟子のチンが、胡散臭い言葉でノーム爺の弁護をしてたよ。
確かに、ノーム爺の作った包丁は何の飾り気も無いけど、引き込まれるほど綺麗だったよ。
銀貨百枚もする包丁なのに、衝動買いしちゃったし。
「そう言えば、チン、おめえ、小器用になんでもこなせるよな。
おめえももう一人立ちしても十分な腕前だ。
この仕事、箔付けにおめえがやってみたらどうだい。」
ノーム爺が弟子のチンに、おいらの依頼を振ったんだ。
『山の民』の長老をしているノーム爺が認めているのだから、腕は確かなんだろうけど…。
このチンと言う弟子、話し方が何か胡散臭いんだよね。
詐欺師みたいな話し方と言うか…。
きっと、おいら、顔に出ていたんだろうね、「こいつ、信用できるのか。」って。
「マロン嬢ちゃん、チンを疑っているのか。
こいつは、少し癖の強い訛りがあって胡散臭く感じるかも知れんが。
腕は確かだぞ。
一芸を極めるタイプじゃねえが、儂なんかより幅広く仕事を熟せるんだ。
儂が責任を持つから、こいつに仕事を任せたらどうだい。」
今度はノーム爺が、チンの弁護をして来たよ。
「ノーム爺が責任持つと言うなら任せても良いじゃないの。
マロン、アレを出したら?」
どうやら、アルトはノーム爺をかなり信頼しているみたい。
今まで色々と仕事を出してたけど、ノーム爺はどれも要望に応えているからね。
「うん、わかった。
じゃあ、これ、王冠と王笏に使ってちょうだい。
どれも、一つずつしかないから失くさないでよ。」
おいらは、自分の『積載庫』からアルトに指示されたモノを出してテーブルに居並べたの。
「おっ、おい、…。
これは、まさか、ダイヤモンドか。
この世に生を受けて七十年になるが。
こんなデカいダイヤモンドを見たのは初めてだぞ。
他のも、どれも極上品じゃねえか。」
そう、おいらが並べたのは、ダイヤモンド鉱山を解放した時に、最初に試掘したダイヤモンド。
ワームを討伐した報酬として、ライム姉ちゃんから貰っておいたの。
ノーム爺の目を引いた一番大きいダイヤモンドは、おいらのこぶし大もあるんだ。
品質はイマイチだけど、そんな大きな物は殆ど無く、希少価値がとんでもなく高いって。
この一番大きなダイヤモンドは王笏の頭の部分に使ってもらうの。
他に並べたのは豆粒ほどの大きさの物が十粒、『積載庫』の注釈ではどれも最高級品質らしいよ。
こっちは、王冠の装飾に使ってもらうんだ。
「そうよ、どれも、極上品だからね。
ネコババしようものなら絶対に赦さないわよ。
持ち逃げしたら、草の根分けてでも探し出して。
その命で償ってもらうから、覚悟しなさい。」
アルトがマジで凄んで見せたの、ネコババしたら命が無いものと思えって。
「心配する必要ないアル。
『山の民』、信用第一アルヨ。
こんな、凄いダイヤモンドを使う仕事なんて腕が鳴るアルヨ。
任せておくアル、満足のいくものを作って見せるアルヨ。
期待して待ってるヨロシ。」
アルトに気圧されて、チンが冷や汗を流しながら答えていたよ。
しかし、聞けば聞くほど胡散臭く感じるんだ、チンの口調って。
そんな訳で、二ヶ月後のおいらの即位式に間に合うように仕立ててもらうことになったの。
「そうだ、マロン嬢ちゃん。
チンの野郎をそろそろ独立させようと思ってんだが。
今度の依頼が嬢ちゃんのお眼鏡に適ったらで良いが。
嬢ちゃんのお膝元で、店を構えさせてやれないかい。
王様だったら、そのくらいの融通は利くだろう。」
打ち合わせが終ると、ノーム爺がそんなことを言ってきたんだ。
別に店を出すのは自由なんだけど、どうやら、おいらの御用達にしないかと言うことらしい。
ウエニアール国の王都に『山の民』のお店か…、ちょっと良いかもしれない。
『山の民』の作品の専門店は現状、この町にしかないらしいもんね。
ノーム爺の見込んだ通りの腕前なら、お店を出してもらえたら評判になるかも。
「そうだね、王冠と王笏の出来栄えが良かったら、そうするよ。」
まあ、完成品を見て、アルトとオランの意見を聞いてからだね。
**********
にっぽん爺とシフォン姉ちゃんにドレスを頼んで、ノーム爺とチンに王冠と王笏も頼んだから。
この町でしておくことは終えたので、いよいよシタニアール国へ行くことにしたよ。
オランを旦那様にもらってこないとね。
辺境を町を出て五日後、おいら達はシタニアール国の王都トマリに到着したの。
王宮に着いたアルトは、例によって窓から直接王様の執務室に入り込んだんだ。
「久しぶりね、みんな元気にしているかしら。」
いきなり入り込んでおいて、何事もなかったように王様に声を掛けるアルト。
「おや、アルト様、お久しぶりです。
おかげさまで、皆息災にしております。
あれから、ウエニアール国の王が三度目の使者を送って来ましたが。
ブランシュ殿が、無礼者共を追い返してくれました。
可愛い嫁さんが来てからというもの、シトラスも女遊びを止めて助かりました。
そうそう、つい数日前、その嫁のシーリンの懐妊が明らかになりましたよ。
アルト様には感謝ですな。」
アルトの突飛な行動にも、すっかり慣れっこになったのか。
窓から入り込まれても、動じることなく王様は受け答えしてたよ。
「それはそうと。
今日はどのようなご用件でございましょう。
もしや、オランジュをお送り届けて戴けたのでしょうか。
あやつも市井の見聞に出て間もなく一年。
そろそろ王宮に戻って来てもらい。
王族の役目の見習いでもさせようかと思っていたところです。」
どうやら、王様はオランが帰ってくるのを待っていたみたい。
オランを婿にもらうなんて言ったら、どんな顔をするんだろう。
「うーんと、そのことなんだけどね…。
どう説明したら良いのか。
まあ、いいや、本人たちに説明させるわ。」
オランが戻るのを心待ちにしている王様を見て、歯切れの悪い話し方になったアルト。
どう説明したものかと考え倦ねた様子で、終にはおいら達に説明を丸投げにしたよ。
アルトの言葉に続いて、王様の目の前に出されたおいらとオラン。
オランは間髪入れずに言ったんだ。
「父上、帰って早々で申し訳ないのじゃが。
マロンと婚姻を結びたいので許可して欲しいのじゃ。」
オラン、挨拶も抜きでそれじゃ、唐突過ぎだから…。
「はあ?」
ほら、王様、ポカンとしちゃったじゃない。
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