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第十二章 北へ行こう! 北へ!
第307話 広場で女王即位の挨拶をしたよ
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『カピパラ』の魔王を生み出して王都まで帰って来たおいら達。
さっそく、王宮のお役人に、オランと一緒に考えたプランを相談することにしたの。
父ちゃんを責任者とする冒険者の管理、育成機関を創ること、それと『正史』の編纂部署を創ることの二つだね。
王宮へ戻ると、グラッセ爺ちゃんに相談できる人を呼んで欲しいとお願いしたんだ。
「陛下、ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。
子爵のクロケットと申します。
逆賊ヒーナルの下で宰相と言う名の奴隷をさせられていました。」
そんな、自虐的な自己紹介をしたクロケット子爵は、アッシュグレイの髪で優し気な目をした初老の紳士だったよ。
これまで見て来たこの国の貴族と違いキチンと節制しているようで、肥満体で無いところ好感が持てたよ。
何でも、おいらの爺ちゃんが国王だった時は、宰相グラッセ侯爵の補佐をしていたそうなの。
ヒーナルが簒奪を行った時、王族と共にグラッセ侯爵も殺されちゃったんで。
クロケット子爵にお鉢が回って来たらしいの。
グラッセ爺ちゃんと同様、政治的な実権は何一つ無く、事務方の取りまとめ役として働かされていたみたい。
脳筋で政に関し素人同然のヒーナルは無茶な要求をする事が多く、馬車馬のように働かされていたようだよ。
これもグラッセ爺ちゃんと同じように、家族を人質に取られて無理やり従わされていたみたい。
「おいらとオランで考えたのだけど。
国の民が安心して暮らせるように、不良冒険者を撲滅したいと思うんだ。
冒険者ギルドの管理監督と健全な冒険者の育成を担う部局を王宮に創りたいの。
そこの責任者に、おいらの育ての親を当てたいのだけどダメかな?」
おいらは、ハテノ男爵領では実際に不良冒険者がいなくなったことやトアール国でのジロチョー親分の取り組みなんかを紹介したの。
ハテノ男爵領は、不良冒険がいなくなったら凄く住み易くなったこともね。
それと、おいらの父ちゃんが、そのプロジェクトの責任者に相応しいことも説明したよ。
父ちゃんは、ハテノ男爵領の冒険者の変化をつぶさに見ているし、ジロチョー親分の薫陶を受けている。
何より、父ちゃんは冒険者としての実力もあるし、人柄がとても信頼できると力説したんだ。
「ふむ、冒険者の矯正ですか。
真面目な冒険者など、冒険者と言う言葉と矛盾する気がせんでもありませんが。
陛下がおっしゃる通りになれば、大きな社会問題の一つが解決できますな。
冒険者の存在は、何処にあっても頭の痛い問題ですからな。」
クロケット子爵の中では『冒険者=醜悪な存在』で真面目という表現とは相容れないんだね。
まあ、それはともかく、クロケット子爵はおいら達の計画に否定的ではなさそうだよ。
「実は、陛下の育ての父君には何らかの褒賞が必要かと検討しておりました。
これまで無事に保護してくださったこともさることながら。
陛下を品行方正な人格に導いてくださった功績は大きいですからな。
陛下のお義父君を貴族に叙し、ご提案のポストを用意するのは良い案かと存じます。」
父ちゃんの功績に何か褒賞をと考えていたので、ちょうど良かったとクロケット子爵は言ってくれたよ。
そんな訳で、父ちゃんに冒険者ギルドの監督と冒険者の育成をしてもらうことを正式に決定したんだ。
父ちゃんの爵位云々は後回しにして、次は『正史』の編纂の件を相談することにしたの。
『正史』の編纂を考えたオランの方から説明してもらうと。
「ほお、それは素晴らしいですな。
『魔王』を倒した事と言い、疫病に対する対処と言い。
キーン一族の行った愚行は枚挙にいとまがないです。
二度とそのような過ちを行わないよう。
後世に失政の内容を正確に伝えるのは大事だと思います。
また、今後永続的に社会情勢と為政者の施政を記録する事も意義深いと思います。
我が国ではこれまで、継続的、客観的に記された史書は存在してませんので。
取り組む価値はあると思います。」
クロケット子爵は大絶賛だったよ。
オランはまだ幼いのに色々な事に気付いて凄いと感心してた。
オランがおいらの旦那さんになってくれるのは心強いって。
父ちゃんの奥さんに『正史』の編纂を任せることにも賛成してもらえたよ。
**********
その日の午後、おいら達は王都の中心街にある広場にいたんだ。
多くの人で賑わう広場の一画、人が疎らな場所を探し出すと、アルトは舞台を出したんだ。
『STD四十八』の興行とかに使う大きな舞台を。
強大な舞台がいきなり出現したものだから、広場にいた人々の間に喧騒が起こり、やじ馬が集まって来たよ。
そこで。
「はーい! みなさん、今日は王宮から大切なお知らせが有りまーす!」
良く通る声で広場にいる人達に呼びかけたのはシフォン姉ちゃん。
もちろん、身に着けている服装は『きゃんぎゃる』の服だよ。
飛び切りの美人のシフォン姉ちゃんが、おへそとパンツ丸出しのアブナイ服装をしているもんだから。
否が応でも人目を引くよ、広場にいる人達の視線を釘づけにしてた。
すると、アルトはトシゾー団長と配下の騎士達を舞台下、舞台を警備するように配置したの。
その数五十人、これまた、王宮の騎士がいきなり現れたもんだから、やじ馬たちからどよめきが起こったよ。
そして、最期においらとオラン、それにクロケット子爵が舞台の上に降ろされたの。
「皆の者、私はこの国の宰相クロケットである。
今日は、喜ばしい知らせがあるので良く聞いてくれ。
数日前、前王陛下の第三王子のご息女、マロン殿下がお帰りあそばされた。
逆賊キーン一族を御自ら成敗なさり、マロン殿下は王位に就くことを宣言された。
これから、マロン陛下のお言葉を賜るので静聴するように。」
クロケット子爵が民衆に向かって、キーン一族の治世が終ったことを告げると。
広場のあちこちから「わーっ!」っと歓声が上がってたよ。
ヒーナルが王位に就いてから税は重くなるし、騎士が街で横暴をするようになったからね。
民衆の間にかなり不満が溜まっていたみたい。
それだけに、おいらに対する期待が強いかと思うとプレッシャーを感じるよ。
クロケット子爵に促されておいらは舞台の中央に進むと。
「王都のみんな、初めまして。
おいらがマロンだよ。今度、この国の女王になったからよろしくね。」
おいらが名乗った瞬間、またまた広場がどよめいたよ。
どうやら、王都の人達の意表を突いたみたいだね。
新女王が九歳児だと言うことも、平民のような口調で話すことも予想してなかったみたいだよ。
「この話し方で分かる通り、おいら、キーン一族による政変があった後、平民として育ったんだ。
だから、おいらは民の暮らしが分かっているつもりだし、民が国の礎であることもわかってる。
おいらは、貴族や騎士が民を蔑ろにしたり、民に理不尽な圧力を掛けることは絶対に赦さない。
民が暮らし易い国を造っていきたいと思うから、みんなも協力してね。
おいらは、この場で約束するよ。
ヒーナルが王になってから新たに課した税は全部廃止する。
それ以前からあった税も、ヒーナルが王になる前の水準に戻すよ。」
おいらが、そこまで言ったところで再び広場が歓声に包まれたよ。
税負担が軽くなることが無茶苦茶歓迎されたみたいなの。
もちろん、税を軽くすることはクロケット子爵と相談済みで、承諾を得ているよ。
ヒーナルは色々と新しい税を課したらしいけど、大部分はキーン一族と取り巻きの貴族が浪費してたらしいの。
宮廷の出費を、おいらの御祖父ちゃんが王だった頃の水準に戻せば、減税しても全く問題ないって。
むしろ、近衛騎士団や取り巻きの貴族達をお家取り潰しにして、私財を没収すれば減税してもお釣りがくるって。
「おいらの方針の証として、この場で民に対して重大な罪を犯した者を裁くよ。
ヒーナルの下で近衛騎士だった者は、民を大量虐殺した罪で全員死罪にする。」
おいらの言葉に合わせるようにアルトが、縛り上げた近衛騎士を舞台の下に放り出したの。
おいらは、今まで民に隠されていた近衛騎士の犯した罪を話したよ。
近衛騎士がヒーナルと共に『魔王』を討伐したこと、それによって意図的にスタンピードを引き起こしたこと。
辺境の村を魔物に襲わせ、村人を襲っている最中の無防備な魔物を村人ごと屠ってレベルを上げたこと。
それによって、辺境では幾つもの村が滅び、何千と言う民が殺されたことを広場に集まった人達に暴露したんだ。
「酷でえ…、近衛騎士の連中、そんな惨い事してたのか…。」
「こいつら、王都でも威張り散らして、悪さばっかりしてたけど。
本当に人間のクズだったんだな。」
おいらが暴露すると、民の間からそんな声が聞こえたよ。
だから、おいら、追加で伝えたの。
「こいつら、既に騎士の位も、貴族の位も剥奪したから、今はただの死刑囚だよ。
こいつらは、今これより、この広場に晒し者にするから。
みんな、自由に制裁を加えて良いよ。
今後は、民に理不尽な暴力を加えた貴族や騎士には同じ罰を課すからね。」
おいらが、そう宣言すると。
それまで、意気消沈して俯いていた元近衛騎士達が。
「おい、やめろ、俺達が何でこんな目に遭わないといけねえんだ。
俺達は、貴族なんだぞ、近衛騎士なんだぞ。
愚民共の十人や二十人殺したくらいで、何で罪に問われなきゃならないんだ。
こんなのおかしいだろう。」
この期に及んでそんな悪態を吐いたんだ。
これが、民衆の怒りをかってね。
「てめら、俺達、平民の命を何だと思ってるんだ。
貴族だと思って大人しく従っていたが。
もう唯の罪人だというのなら、遠慮しねえぞ。」
そんな声を上げた人が、近くに転がっていた元近衛騎士の顔を思いっ切り蹴とばしたんだ。
それを切っ掛けに、雪崩をうったように民衆が元近衛騎士に襲い掛かったんだ。
それからは、およそ百人の元近衛騎士達はなすすべもなく、袋叩きにあっていたよ。
広場に集まった人達が立ち去った後には、元近衛騎士だった物体がボロボロとなって転がってたよ。
幸いなことに、まだ全員息はしてたんだ。
本当は三日間放置する予定だったけど、死んじゃったら拙いんで一日だけにしといた。
『生命の欠片』を回収しないといけないから、アルトにトドメを刺してもらうことになってるの。
次は、他の騎士団員と『将軍様を讃える会』の貴族の処分を決めないとね。
さっそく、王宮のお役人に、オランと一緒に考えたプランを相談することにしたの。
父ちゃんを責任者とする冒険者の管理、育成機関を創ること、それと『正史』の編纂部署を創ることの二つだね。
王宮へ戻ると、グラッセ爺ちゃんに相談できる人を呼んで欲しいとお願いしたんだ。
「陛下、ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。
子爵のクロケットと申します。
逆賊ヒーナルの下で宰相と言う名の奴隷をさせられていました。」
そんな、自虐的な自己紹介をしたクロケット子爵は、アッシュグレイの髪で優し気な目をした初老の紳士だったよ。
これまで見て来たこの国の貴族と違いキチンと節制しているようで、肥満体で無いところ好感が持てたよ。
何でも、おいらの爺ちゃんが国王だった時は、宰相グラッセ侯爵の補佐をしていたそうなの。
ヒーナルが簒奪を行った時、王族と共にグラッセ侯爵も殺されちゃったんで。
クロケット子爵にお鉢が回って来たらしいの。
グラッセ爺ちゃんと同様、政治的な実権は何一つ無く、事務方の取りまとめ役として働かされていたみたい。
脳筋で政に関し素人同然のヒーナルは無茶な要求をする事が多く、馬車馬のように働かされていたようだよ。
これもグラッセ爺ちゃんと同じように、家族を人質に取られて無理やり従わされていたみたい。
「おいらとオランで考えたのだけど。
国の民が安心して暮らせるように、不良冒険者を撲滅したいと思うんだ。
冒険者ギルドの管理監督と健全な冒険者の育成を担う部局を王宮に創りたいの。
そこの責任者に、おいらの育ての親を当てたいのだけどダメかな?」
おいらは、ハテノ男爵領では実際に不良冒険者がいなくなったことやトアール国でのジロチョー親分の取り組みなんかを紹介したの。
ハテノ男爵領は、不良冒険がいなくなったら凄く住み易くなったこともね。
それと、おいらの父ちゃんが、そのプロジェクトの責任者に相応しいことも説明したよ。
父ちゃんは、ハテノ男爵領の冒険者の変化をつぶさに見ているし、ジロチョー親分の薫陶を受けている。
何より、父ちゃんは冒険者としての実力もあるし、人柄がとても信頼できると力説したんだ。
「ふむ、冒険者の矯正ですか。
真面目な冒険者など、冒険者と言う言葉と矛盾する気がせんでもありませんが。
陛下がおっしゃる通りになれば、大きな社会問題の一つが解決できますな。
冒険者の存在は、何処にあっても頭の痛い問題ですからな。」
クロケット子爵の中では『冒険者=醜悪な存在』で真面目という表現とは相容れないんだね。
まあ、それはともかく、クロケット子爵はおいら達の計画に否定的ではなさそうだよ。
「実は、陛下の育ての父君には何らかの褒賞が必要かと検討しておりました。
これまで無事に保護してくださったこともさることながら。
陛下を品行方正な人格に導いてくださった功績は大きいですからな。
陛下のお義父君を貴族に叙し、ご提案のポストを用意するのは良い案かと存じます。」
父ちゃんの功績に何か褒賞をと考えていたので、ちょうど良かったとクロケット子爵は言ってくれたよ。
そんな訳で、父ちゃんに冒険者ギルドの監督と冒険者の育成をしてもらうことを正式に決定したんだ。
父ちゃんの爵位云々は後回しにして、次は『正史』の編纂の件を相談することにしたの。
『正史』の編纂を考えたオランの方から説明してもらうと。
「ほお、それは素晴らしいですな。
『魔王』を倒した事と言い、疫病に対する対処と言い。
キーン一族の行った愚行は枚挙にいとまがないです。
二度とそのような過ちを行わないよう。
後世に失政の内容を正確に伝えるのは大事だと思います。
また、今後永続的に社会情勢と為政者の施政を記録する事も意義深いと思います。
我が国ではこれまで、継続的、客観的に記された史書は存在してませんので。
取り組む価値はあると思います。」
クロケット子爵は大絶賛だったよ。
オランはまだ幼いのに色々な事に気付いて凄いと感心してた。
オランがおいらの旦那さんになってくれるのは心強いって。
父ちゃんの奥さんに『正史』の編纂を任せることにも賛成してもらえたよ。
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その日の午後、おいら達は王都の中心街にある広場にいたんだ。
多くの人で賑わう広場の一画、人が疎らな場所を探し出すと、アルトは舞台を出したんだ。
『STD四十八』の興行とかに使う大きな舞台を。
強大な舞台がいきなり出現したものだから、広場にいた人々の間に喧騒が起こり、やじ馬が集まって来たよ。
そこで。
「はーい! みなさん、今日は王宮から大切なお知らせが有りまーす!」
良く通る声で広場にいる人達に呼びかけたのはシフォン姉ちゃん。
もちろん、身に着けている服装は『きゃんぎゃる』の服だよ。
飛び切りの美人のシフォン姉ちゃんが、おへそとパンツ丸出しのアブナイ服装をしているもんだから。
否が応でも人目を引くよ、広場にいる人達の視線を釘づけにしてた。
すると、アルトはトシゾー団長と配下の騎士達を舞台下、舞台を警備するように配置したの。
その数五十人、これまた、王宮の騎士がいきなり現れたもんだから、やじ馬たちからどよめきが起こったよ。
そして、最期においらとオラン、それにクロケット子爵が舞台の上に降ろされたの。
「皆の者、私はこの国の宰相クロケットである。
今日は、喜ばしい知らせがあるので良く聞いてくれ。
数日前、前王陛下の第三王子のご息女、マロン殿下がお帰りあそばされた。
逆賊キーン一族を御自ら成敗なさり、マロン殿下は王位に就くことを宣言された。
これから、マロン陛下のお言葉を賜るので静聴するように。」
クロケット子爵が民衆に向かって、キーン一族の治世が終ったことを告げると。
広場のあちこちから「わーっ!」っと歓声が上がってたよ。
ヒーナルが王位に就いてから税は重くなるし、騎士が街で横暴をするようになったからね。
民衆の間にかなり不満が溜まっていたみたい。
それだけに、おいらに対する期待が強いかと思うとプレッシャーを感じるよ。
クロケット子爵に促されておいらは舞台の中央に進むと。
「王都のみんな、初めまして。
おいらがマロンだよ。今度、この国の女王になったからよろしくね。」
おいらが名乗った瞬間、またまた広場がどよめいたよ。
どうやら、王都の人達の意表を突いたみたいだね。
新女王が九歳児だと言うことも、平民のような口調で話すことも予想してなかったみたいだよ。
「この話し方で分かる通り、おいら、キーン一族による政変があった後、平民として育ったんだ。
だから、おいらは民の暮らしが分かっているつもりだし、民が国の礎であることもわかってる。
おいらは、貴族や騎士が民を蔑ろにしたり、民に理不尽な圧力を掛けることは絶対に赦さない。
民が暮らし易い国を造っていきたいと思うから、みんなも協力してね。
おいらは、この場で約束するよ。
ヒーナルが王になってから新たに課した税は全部廃止する。
それ以前からあった税も、ヒーナルが王になる前の水準に戻すよ。」
おいらが、そこまで言ったところで再び広場が歓声に包まれたよ。
税負担が軽くなることが無茶苦茶歓迎されたみたいなの。
もちろん、税を軽くすることはクロケット子爵と相談済みで、承諾を得ているよ。
ヒーナルは色々と新しい税を課したらしいけど、大部分はキーン一族と取り巻きの貴族が浪費してたらしいの。
宮廷の出費を、おいらの御祖父ちゃんが王だった頃の水準に戻せば、減税しても全く問題ないって。
むしろ、近衛騎士団や取り巻きの貴族達をお家取り潰しにして、私財を没収すれば減税してもお釣りがくるって。
「おいらの方針の証として、この場で民に対して重大な罪を犯した者を裁くよ。
ヒーナルの下で近衛騎士だった者は、民を大量虐殺した罪で全員死罪にする。」
おいらの言葉に合わせるようにアルトが、縛り上げた近衛騎士を舞台の下に放り出したの。
おいらは、今まで民に隠されていた近衛騎士の犯した罪を話したよ。
近衛騎士がヒーナルと共に『魔王』を討伐したこと、それによって意図的にスタンピードを引き起こしたこと。
辺境の村を魔物に襲わせ、村人を襲っている最中の無防備な魔物を村人ごと屠ってレベルを上げたこと。
それによって、辺境では幾つもの村が滅び、何千と言う民が殺されたことを広場に集まった人達に暴露したんだ。
「酷でえ…、近衛騎士の連中、そんな惨い事してたのか…。」
「こいつら、王都でも威張り散らして、悪さばっかりしてたけど。
本当に人間のクズだったんだな。」
おいらが暴露すると、民の間からそんな声が聞こえたよ。
だから、おいら、追加で伝えたの。
「こいつら、既に騎士の位も、貴族の位も剥奪したから、今はただの死刑囚だよ。
こいつらは、今これより、この広場に晒し者にするから。
みんな、自由に制裁を加えて良いよ。
今後は、民に理不尽な暴力を加えた貴族や騎士には同じ罰を課すからね。」
おいらが、そう宣言すると。
それまで、意気消沈して俯いていた元近衛騎士達が。
「おい、やめろ、俺達が何でこんな目に遭わないといけねえんだ。
俺達は、貴族なんだぞ、近衛騎士なんだぞ。
愚民共の十人や二十人殺したくらいで、何で罪に問われなきゃならないんだ。
こんなのおかしいだろう。」
この期に及んでそんな悪態を吐いたんだ。
これが、民衆の怒りをかってね。
「てめら、俺達、平民の命を何だと思ってるんだ。
貴族だと思って大人しく従っていたが。
もう唯の罪人だというのなら、遠慮しねえぞ。」
そんな声を上げた人が、近くに転がっていた元近衛騎士の顔を思いっ切り蹴とばしたんだ。
それを切っ掛けに、雪崩をうったように民衆が元近衛騎士に襲い掛かったんだ。
それからは、およそ百人の元近衛騎士達はなすすべもなく、袋叩きにあっていたよ。
広場に集まった人達が立ち去った後には、元近衛騎士だった物体がボロボロとなって転がってたよ。
幸いなことに、まだ全員息はしてたんだ。
本当は三日間放置する予定だったけど、死んじゃったら拙いんで一日だけにしといた。
『生命の欠片』を回収しないといけないから、アルトにトドメを刺してもらうことになってるの。
次は、他の騎士団員と『将軍様を讃える会』の貴族の処分を決めないとね。
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