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アイイロモンペ

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第十二章 北へ行こう! 北へ!

第302話 この国の騎士、ホント、トホホだよ

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 近衛騎士団の連中だけど、駐屯所内に自室を持ってるってことだから。
 トシゾー団長達に全ての部屋を家捜ししてもらったの。
 何をって? もちろん、騎士個人の保有する金品だよ。

 その間に、おいらは騎士団の事務室と騎士団長の執務室を漁って騎士団の資金を押さえた。

「また随分と隠し持っていたのじゃの。
 こ奴ら、全員貴族だそうだから、この町に屋敷があるじゃろうに。
 屋敷に持ち帰らずに、ここに溜め込んでたのは何か後ろ暗い金なのじゃろうか。」

 オランがそんな呟きを漏らしながら眺めているのは、トシゾー団長達が押収してきた金品。
 その言葉通り、ホールの床に銀貨が小山を作ってたよ。
 他にも、宝飾品が沢山並べられてた。

「トシゾー団長、ここにある銀貨を二十等分すると何枚ずつになるかな。
 監禁されていたお姉さん達に対する慰謝料にしたいんだけど。」

 おいらが指示すると、すぐにトシゾー団長達は銀貨の山を二十等分し始めたよ。
 そして、待つことしばし、目の前には小さな銀貨の山が二十個並んだの。

「だいたい、二十等分で一人頭銀貨二万枚って所でしょうか。
 監禁されていた代償としては、少し足りない気もしますが…。
 ここにある宝飾品も値の張るモノばかりですので。
 追加で好きな品を持って行かせれば、丁度良いのでは。」

 作業を終えたトシゾー団長が結果を報告してくれたよ。

「それなら監禁されていたお姉さん達に、十分な賠償が出来そうだね。
 騎士団の資金に手を付けなくても済みそうだよ。」

 騎士個人が持っていた金品で十分な賠償が出来れば助かるよ。
 騎士団の資金は国のお金だものね。
 幾ら騎士が仕出かした不始末とは言え、勝手に慰謝料に当てたら拙いよね。
 騎士の尻拭いに使うとなると色々と手続きが要りそうだから。

「お姉さん達、慰謝料としてこの銀貨の山一山ずつ持っていって。
 それと、お姉さん達で話し合って、不公平感が出ないように宝飾品を分けてね。」

 おいらが、部屋の隅に固まっているお姉さん達に慰謝料を渡すと伝えると。

「お嬢ちゃん、どなたか知らないけど。
 助けてもらった上に、慰謝料まで気遣って貰えて有り難う。
 これだけあれば、人生やり直せるよ。
 ここでのことは野良犬にでも噛まれたとでも思って忘れるよ。」

 お姉さん達の中からそんな声が聞こえ、二十人で集まって宝飾品を物色し始めたの。
 しばらく、お姉さん達の様子を窺っていると。
 あれが良い、これが良いと言いながら、楽しそうに宝飾品を分け合ってた。
 どうやら、喧嘩することなく分配できたみたいだったよ。

 何処から持ち出したのか、シフォン姉ちゃんが二十人それぞれに銀貨と宝飾品を詰めるための布袋を渡してた。
 宝飾品を分け合う間に、トシゾー団長も気を利かせて配下の騎士に集合を掛けてくれたよ。
 銀貨二万枚と宝飾品なんて、女性には重いし、なりより物騒だからと、送りの騎士と荷馬車を手配してくれたんだ。

 自分達を酷い目にあわせた騎士へ報復し、慰謝料をもらったことで気が晴れたのか。
 お姉ちゃん達は、サバサバした様子で近衛騎士団の駐屯所から去っていったよ。
 
        **********

「これで、近衛騎士団は何とかなったとして…。
 騎士団っていっぱいあるんでしょう。
 全部これをするんじゃ、幾ら時間があっても足りないよ。」

 近衛騎士団の所へ来てからも結構時間が経っているからね。
 全部の騎士団で同じことをしていたら、何日もかかっちゃうし。
 第一、謁見の間に貴族達を集めてもらうように、グラッセ爺ちゃんにお願いしちゃったもの。
 そろそろ、集まってるかもしれないよ。

「そうね、時間の無駄だし、いっぺんに片付けちゃいましょうか。」

 アルトは、おいらにそんな返答をすると、おいらを含めてその場にいる者を全て『積載庫』に乗せたの。
 そして、建物から外に出ると駐屯所の敷地の入り口付近で、おいら達を降ろしてくれたんだ。
 恭順した『将軍様を讃える会』の貴族達と手足を潰されて動けない近衛騎士達も一緒にね。

「さあ、あんた達、その目に良く焼き付けておくのよ。
 さっき、口にした誓約、破ったらどんな目に遭うか見せてあげるわ。」

 貴族達に向かってアルトはそう告げると、今まで見たことがない特大のビリビリを放ったの。
 標的は、今までいた近衛騎士団の建物。

 ダーン! グワッシャーン! ガラ、ガラ!

 そんな耳をつんざくような大音響が響き渡り、ガラガラと崩れ落ちて行く石造りの建物。
 崩れ落ちる衝撃で地面は振動し、立ち昇る土煙が建物を包み込んで何も見えなくなったよ。

「何だ、何だ、一体何事だ。」

「おい、見ろよ、近衛騎士団の本部が無くなっているぞ。」

 王宮の中で、この一画は騎士団の駐屯所になっていて。
 広い敷地を持つ近衛騎士団の駐屯所を取り囲むように騎士団の駐屯所が集まってるの。

 こんなに派手に近衛騎士団の建物を粉砕すれば、当然周りの騎士団にも気付かれる訳で…。
 あっという間に、周囲にいた騎士達が集まって来たんだ。

 そして、今さっきまであった近衛騎士団の建物が無残に崩れ落ちているのを目にして仰天してたよ。

「おっ、おい、そこにいるのは近衛騎士じゃねえか。
 いったい、どうしちまったんだ、そんな酷いケガをして。
 それに、近衛の本部、何で崩れちまったんだ。」

 敷地に入ってすぐのところに転がされた近衛騎士を目にした騎士が声を掛けて来たよ。
 でも、近衛騎士は全員気を失ってるんで答えられる訳もの無く。

 代わって『将軍様を讃える会』の貴族が答えたの。

「逆賊ヒーナル及びキーン一族は、マロン殿下により討ち滅ぼされた。
 ヒーナルに与する近衛騎士も見ての通りだ。
 マロン殿下はお強いぞ、たったお二人で近衛騎士を制圧してしまわれた。
 そして何より、マロン殿下を庇護している妖精の力は厄災のようだ。
 わずか一撃で近衛騎士団の本部があの通りだ。
 そなたらも、命が惜しければ恭順した方が良いぞ。」

 こいつ、アルトの本当の怖さを理解したようで、手のひらを返したよ。
 ヒーナルを逆賊と呼んで、おいらを殿下呼びするようになってるし…。

「おい、おい、気は確かか?
 この国一の精鋭、近衛騎士団がたった二人にやられちまったてか。
 第一、マロン殿下と言うのは何者なんだい。」

「貴様、偉大なる将軍様を逆賊と呼ぶなど不敬に過ぎるぞ。
 粛清されたいのか。」

 倒れ伏す近衛騎士達に気を取られ、おいらやアルトの存在に気付いていない様子で。
 集まって騎士達の中から、そんな声が聞こえた来たんだ。
 ヒーナルを『偉大なる将軍様』と呼びヨイしょする騎士が、やっぱりここにもいたよ。

「オッチャン、オッチャン、おいらがマロンだよ。
 ほら、ヒーナルはこの通り、もう単なる粗大ゴミだよ。
 セーヒとヒーオンも見たい?」

 おいらの言葉にあわせるように、ヒーナルの亡骸を地面に放り出したアルト。
 ギョッとしている騎士達の前に、続けて王太子セーヒと王子セーオンも放り出したの。

「陛下! なんと、おいたわしや。
 それに、王太子殿下やセーオン殿下まで変わり果てたお姿に…。」

 三人の姿を目にして、騎士の一人がそんな呟きを漏らしたのが聞こえたよ。
 一方、地面に転がった衝撃で目を覚ましたセーヒだけど。
 騎士達が集まっている様子を視界に捉えたみたい。

「おい、誰でも良い。
 俺を助けるのだ。
 そこにいるガキ二人を討ち取れば、褒美は望むままだぞ。」

 ここに至ってもセーヒは悪足搔きをするみたい、褒美で騎士達を釣っているよ。

「御意!」

「おい、みんな、王太子殿下をお救いするのだ。
 あのガキを殺っちまうぞ。
 セーヒ陛下が実現した暁には、俺達を近衛にしてもらおうぜ。」

 あっさりと釣られちゃった騎士がいたよ。
 セーヒの指示に応えて、単身おいら達に斬り掛かって来る騎士、周りを扇動して集団で襲ってくる騎士。
 血の気が多い連中ばかりのようで、結構沢山の騎士がおいら達の敵に回ったよ。

「こやつら、バカではないか?
 この国一の精鋭集団が手も足も出なかったと言っておるのじゃ。
 何で、自分達がどうにか出来ると思うのじゃ。
 セーヒの空手形なんぞをアテにしておるのかのう。」

 襲ってくる騎士達に臆することも無く、オランはそんなことを呟いてた。

 で、小一時間が過ぎて、…。

「まだやるの?
 言っておくけど、今、恭順すれば命だけは助けてあげるよ。
 ここに転がっている騎士達は、全員死罪ね。」

 おいらは、新たに地面に転がった騎士を爪先で蹴りながら、この場に集まった騎士達に尋ねたの。
 新たに地面に転がった粗大ゴミは結構な数になって…、二百人位に増えたかもしれない。

「やべえ、何だあのガキ共、強すぎだぜ…。
 ヒーナル陛下も崩御あそばされてるし。
 セーヒ殿下、ヒーオン殿下もあの様子ではキーン一族はもう終わりだな。
 ここは素直に恭順して、助命嘆願した方が良さそうだぜ。」

 そんな言葉を口にして、一人の騎士が剣を放り投げると。
 その場にいた他の騎士達も、それに倣って剣を捨て恭順の意を表したよ。

「おい、おまえら、それで良いのか。
 そのガキは先王の孫で、前の王家の政に倣うと言ってるんだぞ。
 こんなのが王なったら、もう贅沢三昧は出来なくなるぞ。
 真面目に働けなんて命じられても従うと言うのか。」

 誰も自分を救い出せないことに苛立つセーヒ。
 騎士達を煽るのは別にかまわないけど、その言葉はどうかと思うよ。
 王宮に仕える騎士なんだもの、真面目に働くのは当たり前じゃない…。

 と、まあ、そんな訳で。
 近衛騎士団の立派な建物を粉砕しちゃって、少し勿体なかったけど。
 何とか、騎士団は恭順させたよ。
 沙汰は後日下すので、当面は駐屯所の中で待機するように言っておいた。

 トシゾー団長には、配下の騎士を率いて、各騎士団が娘を拉致監禁してないか検めるようにお願いしたよ。
 勿論、拉致被害者を見つけたら、近衛騎士団に倣って慰謝料を払って解放するようにともね。
 
 さて、急いで謁見の間に行かないと。あんまり貴族達を待たせる訳にもいかないからね。
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