ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十二章 北へ行こう! 北へ!

第276話 騎士団の駐屯所にかち込むよ!

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 広場でお昼ごはんを食べるついでに、この町の様子を教えたもらったおいら達だけど。
 人目に付かない場所でアルトの『積載庫』に乗せてもらうと、騎士団の駐屯所に向かったんだ。

 昼の日中だと言うこともあり、駐屯所の建物はほとんどの部屋で窓が開け放たれていたよ。
 アルトなら侵入し放題だね。

 窓の外、アルトが入り込む部屋を物色していると…。

「おい、辺境の村に『黒死病』の取り締まりに遣わした小隊からの定時連絡は今日も無いのか?
 あちこちの村に派遣している小隊の全てから定時連絡が途絶えるとは、一体何が起こっているのだ。」

 偉そうにふんぞり返ったヒゲ面のオッチャンが、声を荒げて目の前の男を問い詰めてたよ。

「申し訳ございません、団長。
 辺境の各村に派遣した騎士との連絡に人を送ったのですが…。」

「何だ、その返答は! 
 ハッキリと言わんか!」

 どうやら、偉そうにふんぞり返っているのは、この辺境に派遣された騎士団の団長みたいだね。
 下問に対して歯切れの悪い言葉で返答した部下に、苛立ちを感じたみたい。

「申し訳ございません、帰って来た者の報告が俄かには信じられない内容だったものでして。
 実は、辺境の村々に派遣した騎士達が一人も見当たらなかったとの報告だったのです。」

「何だ、それは? 騎士達が集団で職務放棄をしたとでも申すのか?」

「いえそれが…、騎士によって閉鎖されているはずの村の門が開放されており。
 農民共が勝手気ままに村から出歩いていたそうなのです。
 農民を一人捕まえて尋問したところ、…。
 騎士達は、何者かに打ちのめされ、尻尾を巻いて逃げ出したと返答されたようでして。」

「派遣した騎士が尻尾を巻いて逃げ出しただと?
 騎士は全てレベル二十以上だぞ、小隊長達は最低でもレベル三十だ。
 そんな騎士共が簡単に負ける訳が無いだろうが!
 いったいどんな連中に打ちのめされたと言うのだ。」

 要領を得ない部下の返答に、騎士団長は更にご機嫌を斜めにして尋ねたんだ。

「それが、その、…。
 どの村でも農民共が口を揃えたかのように同じことを申すのです。
 騎士達は、大きなウサギに乗った幼女二人にコテンパンにやられたと。」

「バカも休み休み言え! 何だ、ウサギに乗った幼女というのは!
 お前は、そんなバカな報告を真に受けているのか!
 そんな、馬鹿な報告を上げて来た者など懲罰房にでも放り込んでおけ。
 この駐屯所の者は、農民共の戯言に騙されるような無能な者ばかりなのか。」

「団長、どうかお怒りを鎮めてください。
 言いましたでしょう、その報告を上げてきたのは一人、二人では無いのです。
 遣いに出したのは五人、回った村は七ヵ村、全ての者が全ての村で同じ答えを聞いているのです。」

 部下の返答を耳にした騎士団長は、ポカンとした顔となり。

「それじゃ、なにか。
 精鋭を誇る我が騎士団員が、たった二人の幼女に負けて尻尾を撒いて逃げたと申すのか?
 ウサギに乗ったという奇妙奇天烈な幼女に?
 なんだ、そのバケモノみたいな幼女は…。
 そんなモンいる訳ないだろうが。」

「はあ、主に騎士に狼藉を働いたと思われる幼女は…。
 マロンと名乗っており、栗毛色の髪をした九歳の娘だそうです。」

 部下がその言葉を口にした時、団長は手にしていたペンをポトリと机に落としたよ。

      **********

「おい、何故、そんな大事な事を先に言わんのだ!
 農民共は確かにマロンと言っていたのか?
 栗毛色の髪の毛をした九歳児だと?」

「はあ、間違いなくそう申していたそうですが。」

 驚愕の表情を見せた騎士団長の問い掛けに、部下は困惑した顔で返答してたよ。
 部下の方はおいらのことを知らされていないみたいで、騎士団長がなぜそんなに驚いているのか理解できないようだね。

「バカ野郎! 栗毛色の髪をしたマロンと言えば、前王家唯一の生き残りの特徴そのものじゃねえか。
 おめえは、お尋ね者のお触れ書きを見たことがねえのか。」

 御触れ書きにはマロンと言う名前や素性は記されて無いのだけど…。
 流石、騎士団長を任されるだけあって、素性と名前を知らされていたみたいだよ。

「はあ、王家の生き残りですか?
 ということは、お姫様ですよね。
 お姫様が、ウサギに乗って現れて屈強な騎士をなぎ倒すんで?
 それこそ、絵空事のような気がしますが。」

 部下は騎士団長の言葉が信じられないようだったの。

 その時。

「さあ、行ってらっしゃい!」

 アルトの声が、おいら達のいる『特別席』に響いたと思うと。
 おいら達は、騎士団長の部屋の窓辺に降り立ったの。

「絵空事じゃないよ、おいらが悪いことをした騎士を懲らしめたんだ。
 初めましてだね、おいらがマロンだよ。
 ウエニアール国の第三王子の娘なんだって。」

 自分から王族の生き残りだと名乗るのは初めてだけど、アルトがそう名乗れと言うんだもの…。

「貴様! いったい何処から入って来た。
 ここは、建物の二階だぞ!」

 オッチャン、オッチャン、驚くところはそこじゃないでしょうが。

「そんな細かいことは、どうでも良いのではないか?
 旧王家の生き残りが、こうして姿を見せたのじゃ。
 そなたら、ボウッと見ていて良いのであるか。」
 
 オランが騎士団長達に向かって言うと。

「ほう、貴様がお尋ね者の王家の生き残りか。
 自分からのこのこ現れるなんて、思い上がりも甚だしいぜ。
 やっぱりガキだな、まだ知恵が回らないみてえだな。
 丁度良いぜ、貴様の首を偉大なる将軍様に差し出せば、俺ももっと上に行けらぁ。」

 そんな言葉を口にしながら、剣を抜くとゆっくりとおいらに向かって来たんだ。
 騎士団長は、九歳児おいらに負けるとは露ほども思ってないようで。
 余裕を見せ付けるように、悠然と歩いてきたんだ。

 そして。

「往生せいや!」

 と一言発すると、思い切り剣を振り下ろしてきたの。
 余裕を見せているのは満更伊達でもないようで、相当レベルが高いのか鋭い剣筋だった。

 でも、おいらの持っているスキル『回避率百%』はきっちり仕事をしてくれたよ。
 おいらに剣が当たる寸前、騎士団長の動きがカクカクといきなり止まるような速さに見えたかと思うと。
 おいらの体は、スルリと剣を躱して、騎士団長の横に移動したんだ。
 目の前では、剣を持つ騎士団長の腕が振り下ろされて過行くところだったの。

 おいらはすかさず剣を握る腕の肘に拳を入れたよ。
 幼気な少女に剣を向ける男など赦しちゃいけないと思ったら、つい、力が籠ったよ。

「痛てえぇー!」

 おいらの拳が肘を粉砕すると、騎士団長の断末魔の叫びが部屋中に響いたよ。
 床に倒れ込んだまま、うめき声をあげて蹲る騎士団長。

「騎士団長、気を確かにお持ちください。
 出会え! 出会え! 誰かいないか! 曲者が侵入したぞ!」

 騎士団長に報告していた部下が大声で喚くと、騎士団長の悲鳴も聞こえたのだと思うけど…。

「曲者は何処だ! あっ、騎士団長、大丈夫でございますか。
 騎士団長にこのような狼藉を働いたのは貴様か!」

 声を聞き付けてやって来た騎士は、床に蹲る騎士団長を目にして激昂したんだ。
 おいらの返事も確認しないで、いきなり斬り掛かってきたよ。
 人違いだったらどうする気なんだろう。

 当然、おいらはその騎士も難無く退けるのだけど…。
 その後も、悲鳴を聞いた騎士達が次々と押し掛けてきたの。

 でもね、こいつら、ホントにおバカだと思うよ。
 部屋の入り口はたった一ヶ所、剣を手にした騎士なんて一人ずつしか入ってこれないんだ。

「では、マロン、私も少し手伝うのじゃ。」

 ここへ来る時に拾った木の棒を手にオランが、扉を挟んでおいらの向かいに移動したの。
 そして、手にした木の枝でおいらと交互に騎士を打ちのめしていったんだ。

 部屋に入ってきた騎士の肘をおいらが砕くと、次の騎士をオランが木の枝で打ちのめす。
 そんな単純作業をしばらく繰り返すと、目の前には打ちのめされた騎士の山が出来てたよ。

「こ奴ら、少しは知恵が回らないものなのじゃろうか。
 こんな狭い扉から入ってくるなんて、各個撃破してくれと言っているようなものじゃ。
 私達を部屋から誘き出すとか考えられないのじゃろうか。」

 オランが、おバカな騎士達を眺めて呆れていたよ。
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