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第十二章 北へ行こう! 北へ!
第268話 そう来るとは思わなかったよ…
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「しかし、飽きもせんと毎日暇人が寄ってくるものじゃの。
耳長族が幾ら希少種とは言え。
少し耳が長いと言うだけで、私達と何も変わらんと言うのに。」
部屋の窓越しに屋敷の外を眺めて、オランが呆れていたよ。
まあ、フェンスの外から屋敷の中を覗いているのは、いつも同じ人とは限らないからね。
他所から訪れた人が、物珍しさで覗いて行くのだろうし。
「そうだね、私生活を覗かれるのは気持ち良い事じゃないね。
こっちの迷惑も少しは考えて欲しいよ。」
四六時中、見知らぬ人が屋敷の中を覗き込んでいるんだもの。
自分が覗かれる立場なら、誰だって迷惑に思うと分るようなものだけど…。
「そうよね。
騎士団の方が『耳長族に手出し無用』の勅令を門の外に掲げてくれたから。
手出しする人はいないと思うけど。
やっぱり、人が集まっていると不安だわ。」
おいらとオランの会話に、妹のミンメイを抱いたミンミン姉ちゃんが加わって来たよ。
ミンミン姉ちゃんの言葉通り、騎士団のお姉ちゃん達が門の前にお触れ書きを掲示してくれたんだんだ。
耳長族に危害を加えたら死罪という勅令の内容をね。
騎士団のお姉ちゃん達は、勅令の存在を知らない余所者が悪さをしたら拙いと考えたようで。
おいらとタロウの家の周りに野次馬が集まり始めると、早々に周知徹底を図ってくれたの。
おかげで、今のところ、フェンスを乗り越えて侵入したり、出掛けるところを襲撃する輩は現れていないよ。
「ねえ、マロンちゃん、ちょっとお願いしても良いかしら。
ミンメイを散歩させるついでに、街に買い物に行きたいのだけど。
アルト様から、モリィーシーが一緒じゃないと外出しちゃダメって言われてるでしょう。
今日は、モリィーシーお出掛けだから、マロンちゃんが付いて来てくれないかな。
我が家で一番強いのはマロンちゃんだから。」
一歳を過ぎてよちよち歩きできるようなったミンメイは、お外を自分の足で歩きたいらしいの。
ミンミン姉ちゃんのお願いに応えて、おいらとオランも買い物に付き合うことにしたんだ。
ミンメイを連れて散歩したことはないけど、ラビの背に乗せて町に連れて行ったことはあるからね。
別に、ダメと断るほどのことでもないよ。
おいらとオランで、ミンメイを真ん中にして両手を繋いで玄関を出ると。
「ねえちゃ、にいちゃとおさんぽ!」
ミンメイがご機嫌な声を上げたの、最近少しづつ言葉がしっかりしてきたんだ。
おいら達三人の後ろに続く形で、ミンミン姉ちゃんが歩いて街に向かって出発したの。
四人で門の外へ出ると、お触れ書きを掲示した効果があって、見物人の列が左右に割れたよ。
おいら達の行く手を塞がないようにね。
「本当に、騎士団のおかげで助かるわ。
勅令を掲示してくれたので、私達に詰め寄ってくる人がいないものね。」
やじ馬の列を抜けたミンミン姉ちゃんがホッとした様子で呟いてたよ。
おいら達の家から繁華街までは目と鼻の先で、よちよち歩きのミンメイの散歩にはもってこいだと思う。
実際、おいらとオランに手を繋がれたミンメイは、歩くことを苦にした様子もなく終始ご機嫌な様子だったの。
繁華街までもう少しの場所まで歩いて来た時のことなんだ。
木炭の買付けにでも来たのか、道の脇に寄せた形で幌付きの荷馬車が一台停まっていたの。
その荷馬車の横をすり抜けようとしたら、後ろから来た別の馬車がおいら達の横を通り過ぎようとしたんだ。
走ってる馬車に近く付くと危ないんで、馬車が通り過ぎるのを待とうと立ち止まっていると。
大店の商人が移動に使うような少し高級そうなその馬車は、不意においら達の横に停車したんだ。
オヤッと思っていると、馬車の扉が開き商人風のおじさんが二人降りて来たの。
その二人に気を取られたのが、失敗だったよ。
馬車の扉が開いて二人のおじさんが見えたとほぼ同時に、十人近い男が幌馬車から飛び出してきて…。
いきなり、目の前が真っ暗になった…。
**********
どうやら、おいら達は誘拐されたらしいよ。
おいらは大きな麻袋を頭からすっぽり被せられたみたい。
スキル『回避』にも盲点があったみたいだよ、相手においらを傷つける意思がないと働かないみたい。
で、なんで、誘拐されたのがおいら達かと言うと…。
「フギャー!フギャー!」
ミンメイの鳴き声が聞こえているからね、少なくても二人誘拐されたのは確かみたい。
狭い袋に詰められて、手足も自由に動かせず、視界も全くない中でおいらが途方に暮れていると。
「隊長、首尾よく耳長族の娘を一人手に入れられたのは良いでげすが。
子供を三人も拉致ってしまってどうするんでげすか?
将軍様は今が旬の娘がご所望ですんで、子供なんて足手まといなだけでげしょ。」
そんな、男の声が聞こえて来たよ。
どうやら、誘拐の目的はミンミン姉ちゃんだったみたい。
子供三人と言うからにはオランも一緒みたいだけど、おいら達はオマケのようだね。
しかし、隊長とか、将軍様とか、…。
このおじさん達、商人のような姿をしてるけど、騎士か兵隊さんなんだろうか。
「仕方ねえだろう、子供といっても二人はもう分別が付く年頃だ。
俺達を目撃してて、騎士団にでも垂れ込まれたら厄介じゃねえか。
それによ、一人は貴重な耳長族の子供だぜ、十年も育てりゃ幾らでも使い道はあらぁな。
他の二人も目鼻立ちの整ったガキだし、こういうガキにそそられる好事家にでも売り飛ばせば良いさ。」
多分、隊長と呼ばれていたおじさんなんだろうけど、おいら達を売り飛ばすつもりみたいだ。
なら一安心だ、取り敢えず危害が加えられる心配は無いね。
「しかし、隊長、想定外の事ばかりで、どうなる事かと思ったでげすが…。
首尾よくベッピンの娘が手に入って良かったげすね。
耳長族に危害を加えたら死罪だなんて、お触れ書きがあってびびったでげす。」
「ああ、しかも、あんな見物人が多くちゃ、フェンスを越えて押し入る事も出来やしねえ。
それに、二軒とも持ち主は腕利きの冒険者と言うじゃねえか。
何でも、毎日欠かさずトレントを狩って稼いでたって噂だからな。
そんな、厄介な奴らが絡んでいるんじゃ、迂闊に手も出せねえしな。」
どうやら、この連中、しばらく前にこの町に来て耳長族のことを探っていたみたい。
この国では耳長族に危害を加えたら死罪になるとかを知らないで来たみたいだし。
騎士団や冒険者ギルドが、耳長族が安心できるように警備していることとかを知って困ってたみたい。
しかも、ほとんどの耳長族のお姉ちゃんは、アルトが『積載庫』に乗せて移動しているから、町を歩いていることは無いからね。
それで、唯一、耳長族のお姉ちゃんが暮らしているおいらとタロウの家の前で様子を窺っていたみたい。
この数日、あの場所で馬車を停めて、耳長族のお姉ちゃんが出てこないか見張っていたんだって。
なんて、気の長い…。
「ホントでげす。
商人のふりして、ここまで二ヶ月も掛けてやってきたでげす。
これで、手ぶらで帰った日には面目が立たねえでげす。」
「バカ野郎、面目が立たねえで済むか。
耳長族を手に入れるのに失敗したと言った日には。
将軍様の怒りに触れて、その日のうちに消されちまうよ。
おりゃ、これだって無事で済むかどうか不安なんだせ。
将軍様の命は、耳長族の生娘を二、三人手に入れろだからな。
手に入れたのはたった一人だし、おまけに子持ちだし。
それでなくても、将軍様はこのところご機嫌斜めなんだからよ。
この国の王に耳長族を献上しろと言えば断られるし。
シタニアール国へ送った連中は一人も帰ってこねえからよ。」
おや、どこかで、聞いたことがある話が出て来たよ。
こいつら、商人の格好をしているけど、本当はウエニアール国の騎士なんだね。
それで、こいつらに耳長族を攫って来いって命令したのは、あの愚王っと。
あの北の将軍様はまだ諦めてなかったんだね…。
ホント、愚か、虎の尾を踏むなんて。
耳長族が幾ら希少種とは言え。
少し耳が長いと言うだけで、私達と何も変わらんと言うのに。」
部屋の窓越しに屋敷の外を眺めて、オランが呆れていたよ。
まあ、フェンスの外から屋敷の中を覗いているのは、いつも同じ人とは限らないからね。
他所から訪れた人が、物珍しさで覗いて行くのだろうし。
「そうだね、私生活を覗かれるのは気持ち良い事じゃないね。
こっちの迷惑も少しは考えて欲しいよ。」
四六時中、見知らぬ人が屋敷の中を覗き込んでいるんだもの。
自分が覗かれる立場なら、誰だって迷惑に思うと分るようなものだけど…。
「そうよね。
騎士団の方が『耳長族に手出し無用』の勅令を門の外に掲げてくれたから。
手出しする人はいないと思うけど。
やっぱり、人が集まっていると不安だわ。」
おいらとオランの会話に、妹のミンメイを抱いたミンミン姉ちゃんが加わって来たよ。
ミンミン姉ちゃんの言葉通り、騎士団のお姉ちゃん達が門の前にお触れ書きを掲示してくれたんだんだ。
耳長族に危害を加えたら死罪という勅令の内容をね。
騎士団のお姉ちゃん達は、勅令の存在を知らない余所者が悪さをしたら拙いと考えたようで。
おいらとタロウの家の周りに野次馬が集まり始めると、早々に周知徹底を図ってくれたの。
おかげで、今のところ、フェンスを乗り越えて侵入したり、出掛けるところを襲撃する輩は現れていないよ。
「ねえ、マロンちゃん、ちょっとお願いしても良いかしら。
ミンメイを散歩させるついでに、街に買い物に行きたいのだけど。
アルト様から、モリィーシーが一緒じゃないと外出しちゃダメって言われてるでしょう。
今日は、モリィーシーお出掛けだから、マロンちゃんが付いて来てくれないかな。
我が家で一番強いのはマロンちゃんだから。」
一歳を過ぎてよちよち歩きできるようなったミンメイは、お外を自分の足で歩きたいらしいの。
ミンミン姉ちゃんのお願いに応えて、おいらとオランも買い物に付き合うことにしたんだ。
ミンメイを連れて散歩したことはないけど、ラビの背に乗せて町に連れて行ったことはあるからね。
別に、ダメと断るほどのことでもないよ。
おいらとオランで、ミンメイを真ん中にして両手を繋いで玄関を出ると。
「ねえちゃ、にいちゃとおさんぽ!」
ミンメイがご機嫌な声を上げたの、最近少しづつ言葉がしっかりしてきたんだ。
おいら達三人の後ろに続く形で、ミンミン姉ちゃんが歩いて街に向かって出発したの。
四人で門の外へ出ると、お触れ書きを掲示した効果があって、見物人の列が左右に割れたよ。
おいら達の行く手を塞がないようにね。
「本当に、騎士団のおかげで助かるわ。
勅令を掲示してくれたので、私達に詰め寄ってくる人がいないものね。」
やじ馬の列を抜けたミンミン姉ちゃんがホッとした様子で呟いてたよ。
おいら達の家から繁華街までは目と鼻の先で、よちよち歩きのミンメイの散歩にはもってこいだと思う。
実際、おいらとオランに手を繋がれたミンメイは、歩くことを苦にした様子もなく終始ご機嫌な様子だったの。
繁華街までもう少しの場所まで歩いて来た時のことなんだ。
木炭の買付けにでも来たのか、道の脇に寄せた形で幌付きの荷馬車が一台停まっていたの。
その荷馬車の横をすり抜けようとしたら、後ろから来た別の馬車がおいら達の横を通り過ぎようとしたんだ。
走ってる馬車に近く付くと危ないんで、馬車が通り過ぎるのを待とうと立ち止まっていると。
大店の商人が移動に使うような少し高級そうなその馬車は、不意においら達の横に停車したんだ。
オヤッと思っていると、馬車の扉が開き商人風のおじさんが二人降りて来たの。
その二人に気を取られたのが、失敗だったよ。
馬車の扉が開いて二人のおじさんが見えたとほぼ同時に、十人近い男が幌馬車から飛び出してきて…。
いきなり、目の前が真っ暗になった…。
**********
どうやら、おいら達は誘拐されたらしいよ。
おいらは大きな麻袋を頭からすっぽり被せられたみたい。
スキル『回避』にも盲点があったみたいだよ、相手においらを傷つける意思がないと働かないみたい。
で、なんで、誘拐されたのがおいら達かと言うと…。
「フギャー!フギャー!」
ミンメイの鳴き声が聞こえているからね、少なくても二人誘拐されたのは確かみたい。
狭い袋に詰められて、手足も自由に動かせず、視界も全くない中でおいらが途方に暮れていると。
「隊長、首尾よく耳長族の娘を一人手に入れられたのは良いでげすが。
子供を三人も拉致ってしまってどうするんでげすか?
将軍様は今が旬の娘がご所望ですんで、子供なんて足手まといなだけでげしょ。」
そんな、男の声が聞こえて来たよ。
どうやら、誘拐の目的はミンミン姉ちゃんだったみたい。
子供三人と言うからにはオランも一緒みたいだけど、おいら達はオマケのようだね。
しかし、隊長とか、将軍様とか、…。
このおじさん達、商人のような姿をしてるけど、騎士か兵隊さんなんだろうか。
「仕方ねえだろう、子供といっても二人はもう分別が付く年頃だ。
俺達を目撃してて、騎士団にでも垂れ込まれたら厄介じゃねえか。
それによ、一人は貴重な耳長族の子供だぜ、十年も育てりゃ幾らでも使い道はあらぁな。
他の二人も目鼻立ちの整ったガキだし、こういうガキにそそられる好事家にでも売り飛ばせば良いさ。」
多分、隊長と呼ばれていたおじさんなんだろうけど、おいら達を売り飛ばすつもりみたいだ。
なら一安心だ、取り敢えず危害が加えられる心配は無いね。
「しかし、隊長、想定外の事ばかりで、どうなる事かと思ったでげすが…。
首尾よくベッピンの娘が手に入って良かったげすね。
耳長族に危害を加えたら死罪だなんて、お触れ書きがあってびびったでげす。」
「ああ、しかも、あんな見物人が多くちゃ、フェンスを越えて押し入る事も出来やしねえ。
それに、二軒とも持ち主は腕利きの冒険者と言うじゃねえか。
何でも、毎日欠かさずトレントを狩って稼いでたって噂だからな。
そんな、厄介な奴らが絡んでいるんじゃ、迂闊に手も出せねえしな。」
どうやら、この連中、しばらく前にこの町に来て耳長族のことを探っていたみたい。
この国では耳長族に危害を加えたら死罪になるとかを知らないで来たみたいだし。
騎士団や冒険者ギルドが、耳長族が安心できるように警備していることとかを知って困ってたみたい。
しかも、ほとんどの耳長族のお姉ちゃんは、アルトが『積載庫』に乗せて移動しているから、町を歩いていることは無いからね。
それで、唯一、耳長族のお姉ちゃんが暮らしているおいらとタロウの家の前で様子を窺っていたみたい。
この数日、あの場所で馬車を停めて、耳長族のお姉ちゃんが出てこないか見張っていたんだって。
なんて、気の長い…。
「ホントでげす。
商人のふりして、ここまで二ヶ月も掛けてやってきたでげす。
これで、手ぶらで帰った日には面目が立たねえでげす。」
「バカ野郎、面目が立たねえで済むか。
耳長族を手に入れるのに失敗したと言った日には。
将軍様の怒りに触れて、その日のうちに消されちまうよ。
おりゃ、これだって無事で済むかどうか不安なんだせ。
将軍様の命は、耳長族の生娘を二、三人手に入れろだからな。
手に入れたのはたった一人だし、おまけに子持ちだし。
それでなくても、将軍様はこのところご機嫌斜めなんだからよ。
この国の王に耳長族を献上しろと言えば断られるし。
シタニアール国へ送った連中は一人も帰ってこねえからよ。」
おや、どこかで、聞いたことがある話が出て来たよ。
こいつら、商人の格好をしているけど、本当はウエニアール国の騎士なんだね。
それで、こいつらに耳長族を攫って来いって命令したのは、あの愚王っと。
あの北の将軍様はまだ諦めてなかったんだね…。
ホント、愚か、虎の尾を踏むなんて。
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