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第十一章 小さな王子の冒険記
第247話 アルトが持参したモノは
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気の弱そうな三人の文官は、廃人と化した六人の不良騎士を連れてすごすごと立ち去って行ったよ。
六人共自分で歩ける状態じゃなかったんで、王宮の官吏が移動を手伝ってた。
ウエニアール国の使者達が立ち去った部屋では…。
「アルトローゼン様、助かりました。
あの連中ときたら、質の悪い冒険者のようで難儀していたのです。
幾ら、耳長族狩りは認めぬと言っても聞き分けてくれませんし。
迂闊な対応をしようものなら、後から難癖付けてくるでしょうからね。」
そんな言葉を口にした王様は、心底ホッとした様子だったよ。
妖精のアルトがした事なら、王様がイチャモン付けられることは無いだろし。
十人もの妖精に喧嘩を売る愚か者もいないだろうからって。
「初めまして、王様。
私は、新しい『妖精の森』の長を命じられたブランシュ。
アルト様から仰せつかった一番の役割はここへ嫁ぐ耳長族の娘の護衛。
そして、夫となる第三王子が不貞を働かないように監視する事だけど。
あなたがアルト様と交わされた誓約を違えない限り。
私とここにいる妖精達は、この王家を守護して差し上げますわ。」
ブランシュ達は王宮裏に広がる森の一部を『妖精の森』として住まうそうだけど。
ここへ嫁ぐシーリン姉ちゃんの側に常時一人付く他、数人は絶えず王宮にいるようにするって。
何故か妖精の森には『妖精の泉』が湧くそうで、病人が出たら泉の水を分けてあげると言ってたよ。
他にも、外敵が襲来したら追い払ってあげるとかね。
「こちらこそ、初めまして。
この国の王をしているザボンです。
妖精さんの加護が頂けるなんて光栄です。
幾久しく、懇意にして頂けると幸いです。」
王様はブランシュ達をとても歓迎している様子だったよ。
まあ、アルトの力は嫌というほど見せつけられているからね。
アルトと似たような能力を持つ妖精が十人も味方してくれると言うのだから、歓迎もするか。
**********
アルトの要望で、王様は会議室から王家のプライベートな空間に場所を移したんだ。
そこで、おいら達は『積載庫』の中から出されたの。
アルトは、王妃様や王族の人々を集めさせると。
「今日は、シトラス王子に嫁ぐ娘の支度が整ったから連れてきたのよ。
こちらで迎え入れる準備は整っているかしら。」
シーリン姉ちゃんを『積載庫』から出して王様に尋ねたんだ。
「はい、受け入れの準備は万端整っております。
王宮内にある離宮を二人に与えることにしてあります。」
王様の返事に頷いたアルトは荷物を積み上げて言ったの。
「それなら良かったわ。
これ、この子の持参品ね。
持参金は無いけど、要らないでしょう。
私達妖精は人のお金なんか使わないし。
耳長族は自給自足の生活でやっぱりお金に縁は無いからね。
どうせ、有り余っているのでしょう。」
その荷物は、アルトが用意したシーリン姉ちゃんの持参品だったみたい。
そこには勿論、ノーム爺が鍛えた一振りの剣も置かれていたよ。
宝石が散りばめられた鞘に収められていて、いかにも儀礼用の剣という感じでね。
王様は、ノーム爺が鍛えた剣を鞘から抜いて。
「ほう…。これは見事な剣だ。
儀礼用の剣かと思えば、とても実戦的な業物ですな。
これは、『山の民』の作ですな。
『山の民』の中でも長老クラスの者の作でしょう。」
ため息をつきながら剣の素性を言い当てたよ。
「ええ、知り合いの『山の民』の長老に作らせたの。
花婿の佩剣にしてもらおうかと思ってね。
あなたが盗ったらダメよ。」
「それは残念だ。
シトラスもこれほどの剣を頂くとなると。
剣に負けないように、シトラスを鍛えんといかんですな。」
王様は言ってたよ、剣の稽古などしないで遊び歩いていたシトラス兄ちゃんには勿体ないって。
「これは、いったい何でしょうか?
絹にしてもこのような強い光沢を持つ布を見たことがありません。
色合いも、透き通るような白と表現したら良いのか。」
荷物の一画に積まれた反物を手に取って、王妃様がうっとりとした表情で呟いたの。
「ああ、それ?
それは『妖精絹』ね。
私が今纏っているドレスは、それと同じ生地で出来ているのよ。
妖精の森にしかいない蚕がつくる繭玉から採れた絹糸でできているの。」
アルトがいつも身に着けているヒラヒラで、キラキラしたドレスと同じ生地だって。
とても貴重な布で、人形のようなサイズの妖精だからこそ揃えられる布地だったそうなの。
今回、シーリン姉ちゃんが王家に嫁ぐことになったんで、『妖精の森』中を探して繭玉をかき集めたんだって。
この半年かけて、何とか人間の大人数着分の生地が揃ったらしいよ。
「シーリンのドレスは作って来たから、その反物はあなた達のドレスに使えば良いわ。
人の世界には無い生地だから、自慢できると思うわよ。」
「きゃっ、素敵ですわ。
こんな美しい生地でドレスが作れるなんて夢みたい。
アルト様、有り難うございます。」
アルトの言葉に、ネーブル姫が凄く喜んでいたよ。
他にも、『シュガーポット』、『ハチミツ壺』、『メイプルポット』が山のように積まれ。
『トレントの木炭』が詰められた大きな布袋が幾つも置かれていた。
それと、ゴムの実の皮を使った男女の下着多数も一緒に置かれてたよ。
実用品だけど、他では手に入らない便利な品だから喜ばれるだろうって。
ハテノ男爵領の特産品が勢揃いだね。
でも、持参品の目玉はまだ出ていなかったんだ。
「それと、シトラス。
もう一度確認するけど、あんた、その身に代えてもシーリンを護ると誓えるかしら。」
アルトは問い詰めるような口調でシトラス兄ちゃんに尋ねたの。
偽りを言おうものなら、この場で焼き尽くすと言わんばかりの厳しい表情でね。
「いやだな、前回ちゃんと誓ったではないですか。
我が身に代えても、俺はシーリンを護るって。
妖精に対する誓約を違えるほど命知らずではありませんよ。
俺は命に代えてもシーリンを護って見せるし、浮気もしないと誓いますよ。」
アルトの厳しい言葉も全く気にせず、シトラス兄ちゃんはいつものように軽い口調で返したの。
「あんた、ずっとそのキャラで通すつもりなの。
呆れを通り越して、いっそ、感心しちゃうわ。
まあ良いわ、その言葉忘れるんじゃないわよ。
それじゃ、これも嫁入りの持参品ね、取っておきなさい。」
飄々とした雰囲気のシトラス兄ちゃんの前に、アルトはドーンんと積み上げたんだ。
その瞬間、へらへらと笑っていたシトラス兄ちゃんの一転マジな顔になったよ。
まだ二回目しか会ったことないけど、シトラス兄ちゃんのこんなマジな顔は初めて見たよ。
「アルト様…。俺、こんな数の『生命の欠片』なんて初めて見たんですが。
これ、嫁入りの持参金代わりに持ってくる数ではありませんよ。
これ売りに出したらマジで国が買えてしまいます。」
そう、アルトが積み上げたのは『生命の欠片』。
多分、クッころさんが倒した『バォロン』の片割れの分だね。
あの時二匹倒したのに、クッころさんには一匹分しかあげなかったから。
別の事に使いたいからと言ってたけど、シトラス兄ちゃんにあげるつもりだったんだ。
おそらく、レベル五十分くらいあるはず。
クッころさんがレベル五十になったと言ってたし。
「あなた、シーリンを護るんでしょう。
これから、欲深い愚か者がシーリンを狙ってくるかも知れないのよ。
そのくらいのレベルは必要でしょう。」
アルトがこともなげに言うとシトラス兄ちゃんは目を丸くしてたよ。
アルトがホイホイと『生命の欠片』を出すのには、オランも驚いていたものね。
六人共自分で歩ける状態じゃなかったんで、王宮の官吏が移動を手伝ってた。
ウエニアール国の使者達が立ち去った部屋では…。
「アルトローゼン様、助かりました。
あの連中ときたら、質の悪い冒険者のようで難儀していたのです。
幾ら、耳長族狩りは認めぬと言っても聞き分けてくれませんし。
迂闊な対応をしようものなら、後から難癖付けてくるでしょうからね。」
そんな言葉を口にした王様は、心底ホッとした様子だったよ。
妖精のアルトがした事なら、王様がイチャモン付けられることは無いだろし。
十人もの妖精に喧嘩を売る愚か者もいないだろうからって。
「初めまして、王様。
私は、新しい『妖精の森』の長を命じられたブランシュ。
アルト様から仰せつかった一番の役割はここへ嫁ぐ耳長族の娘の護衛。
そして、夫となる第三王子が不貞を働かないように監視する事だけど。
あなたがアルト様と交わされた誓約を違えない限り。
私とここにいる妖精達は、この王家を守護して差し上げますわ。」
ブランシュ達は王宮裏に広がる森の一部を『妖精の森』として住まうそうだけど。
ここへ嫁ぐシーリン姉ちゃんの側に常時一人付く他、数人は絶えず王宮にいるようにするって。
何故か妖精の森には『妖精の泉』が湧くそうで、病人が出たら泉の水を分けてあげると言ってたよ。
他にも、外敵が襲来したら追い払ってあげるとかね。
「こちらこそ、初めまして。
この国の王をしているザボンです。
妖精さんの加護が頂けるなんて光栄です。
幾久しく、懇意にして頂けると幸いです。」
王様はブランシュ達をとても歓迎している様子だったよ。
まあ、アルトの力は嫌というほど見せつけられているからね。
アルトと似たような能力を持つ妖精が十人も味方してくれると言うのだから、歓迎もするか。
**********
アルトの要望で、王様は会議室から王家のプライベートな空間に場所を移したんだ。
そこで、おいら達は『積載庫』の中から出されたの。
アルトは、王妃様や王族の人々を集めさせると。
「今日は、シトラス王子に嫁ぐ娘の支度が整ったから連れてきたのよ。
こちらで迎え入れる準備は整っているかしら。」
シーリン姉ちゃんを『積載庫』から出して王様に尋ねたんだ。
「はい、受け入れの準備は万端整っております。
王宮内にある離宮を二人に与えることにしてあります。」
王様の返事に頷いたアルトは荷物を積み上げて言ったの。
「それなら良かったわ。
これ、この子の持参品ね。
持参金は無いけど、要らないでしょう。
私達妖精は人のお金なんか使わないし。
耳長族は自給自足の生活でやっぱりお金に縁は無いからね。
どうせ、有り余っているのでしょう。」
その荷物は、アルトが用意したシーリン姉ちゃんの持参品だったみたい。
そこには勿論、ノーム爺が鍛えた一振りの剣も置かれていたよ。
宝石が散りばめられた鞘に収められていて、いかにも儀礼用の剣という感じでね。
王様は、ノーム爺が鍛えた剣を鞘から抜いて。
「ほう…。これは見事な剣だ。
儀礼用の剣かと思えば、とても実戦的な業物ですな。
これは、『山の民』の作ですな。
『山の民』の中でも長老クラスの者の作でしょう。」
ため息をつきながら剣の素性を言い当てたよ。
「ええ、知り合いの『山の民』の長老に作らせたの。
花婿の佩剣にしてもらおうかと思ってね。
あなたが盗ったらダメよ。」
「それは残念だ。
シトラスもこれほどの剣を頂くとなると。
剣に負けないように、シトラスを鍛えんといかんですな。」
王様は言ってたよ、剣の稽古などしないで遊び歩いていたシトラス兄ちゃんには勿体ないって。
「これは、いったい何でしょうか?
絹にしてもこのような強い光沢を持つ布を見たことがありません。
色合いも、透き通るような白と表現したら良いのか。」
荷物の一画に積まれた反物を手に取って、王妃様がうっとりとした表情で呟いたの。
「ああ、それ?
それは『妖精絹』ね。
私が今纏っているドレスは、それと同じ生地で出来ているのよ。
妖精の森にしかいない蚕がつくる繭玉から採れた絹糸でできているの。」
アルトがいつも身に着けているヒラヒラで、キラキラしたドレスと同じ生地だって。
とても貴重な布で、人形のようなサイズの妖精だからこそ揃えられる布地だったそうなの。
今回、シーリン姉ちゃんが王家に嫁ぐことになったんで、『妖精の森』中を探して繭玉をかき集めたんだって。
この半年かけて、何とか人間の大人数着分の生地が揃ったらしいよ。
「シーリンのドレスは作って来たから、その反物はあなた達のドレスに使えば良いわ。
人の世界には無い生地だから、自慢できると思うわよ。」
「きゃっ、素敵ですわ。
こんな美しい生地でドレスが作れるなんて夢みたい。
アルト様、有り難うございます。」
アルトの言葉に、ネーブル姫が凄く喜んでいたよ。
他にも、『シュガーポット』、『ハチミツ壺』、『メイプルポット』が山のように積まれ。
『トレントの木炭』が詰められた大きな布袋が幾つも置かれていた。
それと、ゴムの実の皮を使った男女の下着多数も一緒に置かれてたよ。
実用品だけど、他では手に入らない便利な品だから喜ばれるだろうって。
ハテノ男爵領の特産品が勢揃いだね。
でも、持参品の目玉はまだ出ていなかったんだ。
「それと、シトラス。
もう一度確認するけど、あんた、その身に代えてもシーリンを護ると誓えるかしら。」
アルトは問い詰めるような口調でシトラス兄ちゃんに尋ねたの。
偽りを言おうものなら、この場で焼き尽くすと言わんばかりの厳しい表情でね。
「いやだな、前回ちゃんと誓ったではないですか。
我が身に代えても、俺はシーリンを護るって。
妖精に対する誓約を違えるほど命知らずではありませんよ。
俺は命に代えてもシーリンを護って見せるし、浮気もしないと誓いますよ。」
アルトの厳しい言葉も全く気にせず、シトラス兄ちゃんはいつものように軽い口調で返したの。
「あんた、ずっとそのキャラで通すつもりなの。
呆れを通り越して、いっそ、感心しちゃうわ。
まあ良いわ、その言葉忘れるんじゃないわよ。
それじゃ、これも嫁入りの持参品ね、取っておきなさい。」
飄々とした雰囲気のシトラス兄ちゃんの前に、アルトはドーンんと積み上げたんだ。
その瞬間、へらへらと笑っていたシトラス兄ちゃんの一転マジな顔になったよ。
まだ二回目しか会ったことないけど、シトラス兄ちゃんのこんなマジな顔は初めて見たよ。
「アルト様…。俺、こんな数の『生命の欠片』なんて初めて見たんですが。
これ、嫁入りの持参金代わりに持ってくる数ではありませんよ。
これ売りに出したらマジで国が買えてしまいます。」
そう、アルトが積み上げたのは『生命の欠片』。
多分、クッころさんが倒した『バォロン』の片割れの分だね。
あの時二匹倒したのに、クッころさんには一匹分しかあげなかったから。
別の事に使いたいからと言ってたけど、シトラス兄ちゃんにあげるつもりだったんだ。
おそらく、レベル五十分くらいあるはず。
クッころさんがレベル五十になったと言ってたし。
「あなた、シーリンを護るんでしょう。
これから、欲深い愚か者がシーリンを狙ってくるかも知れないのよ。
そのくらいのレベルは必要でしょう。」
アルトがこともなげに言うとシトラス兄ちゃんは目を丸くしてたよ。
アルトがホイホイと『生命の欠片』を出すのには、オランも驚いていたものね。
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