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アイイロモンペ

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第十一章 小さな王子の冒険記

第235話 ノーム爺への依頼

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 オランに家族を紹介し、泡々の実を拾い集めて、最期にシューティング・ビーンズを狩っていると。

「マロン、シューティング・ビーンズを狩り終わったなら、私も一緒に町まで行くわ。」

 町に用事があるようで、アルトが森から出て来てきたの。

「今日は町に何しに行くの?」

「ああ、あのスケベ爺にお願いしてあったモノがあってね。
 そろそろ出来ている頃合いだから見に行くの。
 ついでに追加で一つ注文したい物もあるから。」

 そう言えば、ちょっと前に何か注文していたね。
 面白そうなので、おいら達もノーム爺の工房まで一緒に行くことにしたの。

 アルトが『積載庫』で運んでくれると言ってたけど、天気が良かったんで町まで歩く事にしたの。
 オランに町の周囲を案内できるしね。

「この辺は見渡す限りの草原なのじゃなぁ。
 行く手に見える町以外には何も見えないのじゃ。」

「おいら達が住んでいるあの町がトアール国で南西の果てにある町なんだ。
 南側は高い山が連なっているし、西側には広大な魔物の領域があるからね。
 南にも、西にも家一軒も無いの。
 南の山を越えた向こうは、オランの国のイナッカ辺境伯領。
 西の魔物の領域を超えた向こうは、『サニアール国』だよ。」

「本当に国の端っこにある町なのじゃなぁ。
 この草原を歩いていて魔物に襲われることは無いのか?」

「この辺にいる魔物は、『ウサギ』くらいだよ。
 『ウサギ』は獰猛なんだけど、基本巣穴の近くを離れないの。
 道の側に巣穴を作ることは無いから、遭遇することは滅多にないね。」

 巣穴に粗相でもして、追いかけられない限りはね。

「『ウサギ』が獰猛なのか?
 ウサギというのは、このくらいの小動物であろう。
 もふもふのふさふさで、姉上がペットとして飼っておったぞ。」

 オランは、両手を胸の前に出してウサギの大きさを示したの。
 
「オランが言うのは動物のウサギだね。
 そっちは見たこと無いけど、父ちゃんから聞いたことがあるよ。
 大人しくて、気が弱い小動物なんでしょう。
 おいらが言ってるのは、『うさぎ』の姿をした魔物。
 熊くらいの大きさがあって、鋭い前歯で攻撃してくるの。
 レベルゼロの冒険者だと、二、三人がかりでやっと倒せる魔物なんだよ。」

 そう考えると不思議だね、魔物っていったい何なんだろう。
 父ちゃんの話では、動物のウサギと魔物のウサギって見た目はそっくりなんだって。
 でも、大きさと性質が全然違うの、片や小動物、片や熊のような大きさだものね。
 父ちゃんも、動物と魔物で同じ姿のモノがある訳は分からないって言ってたよ。

「ほお、熊のような大きさなのウサギであるか…。
 残念なのじゃ。
 獰猛でなければ、もふもふして遊ぶのに。」

「アハハ!この子は面白いことを言うのね。
 確かに、ウサギの魔物って愛嬌のある姿をしているわね。
 飼い慣らせれば、良い愛玩動物になるでしょうけど…。
 魔物はダメね、人に懐いたという話は聞かないわ。」

 オランの言葉を聞いてアルトは楽しそうに笑ってたよ。

 そうして。

「もしかしたら、ウサギの『魔王』を生み出せば言うことを聞かせることが出来るかも知れないわね。」

 なんてことを呟いていた。

        **********

 町外れにあるノーム爺の工房へ着くと…。

「大きな工房なのじゃ…。
 ナニナニ、『各種、道具や武具の注文承ります』。
 ここは鍛冶屋なのか?」

 オランは、ノーム爺の工房の入り口横に掛けられてる看板を見て鍛冶屋と当たり付けたみたい。
 普通の鍛冶屋さんだと思っているとしたら、ビックリするだろうね。

 工房の中に入ると。

「スケベ爺、居る?」

 アルトは工房の奥に向かって、大きな声で呼びかけたの。

「スケベ爺とは、また妙な名前じゃの。」

「違う、違う、名前はノーム爺ちゃん。
 大の女好きで、いつもおいらの教育に悪いことばっかり言ってるから。
 アルトが機嫌を損ねて、スケベ爺って呼んでるの。」

「大の女好きとは、シトラス兄上のようなモノかのう。」

 ギルドの風呂屋の常連という意味では似ているかも…。
 そんな会話を交わしていると。

「スケベ爺とは失礼な。
 儂は本能に忠実なだけではないか。
 男がスケベでなければ種族が滅びてしまうぞ。」

 そんな不満を言いながら、ノーム爺が仕事場から出て来たんだ。

「な、なんと、この町には幻の『山の民』までおったのか。
 ビックリなのじゃ。」

 やっぱり、驚いたね。

「何じゃ、みん顔だな。
 『山の民』がここにおったら悪いのか?」

「失礼したのじゃ。
 別に、悪いと言ったのではなく。
 『山の民』は鉄が採れる山に集落を構えると聞いておったのじゃ。
 だから、人の町に工房を構えていたことに驚いたのじゃ。」

「そうか? ならば良い。
 儂はノームと言う。わらしよ、よろしく頼むぞ。
 まあ、童の言う通り、儂らの一族は山から出て来んでな。
 幻などと言われるのも無理ないわい。」

「私はオランジュと言うのじゃ。オランと呼んで欲しいのじゃ。
 匠の種族と呼ばれる『山の民』にお目にかかれて光栄なのじゃ。
 ノームお爺さんは、ずっとここで工房を構えておられるのか?」

「いいや、儂はここに工房を持ったのはつい最近のことだわい。
 この町なら『トレントの木炭』が幾らでも手に入るからのう。
 良い打ち物を作るためには、『トレントの木炭』は必需品だからな。
 それに、何と言っても、この町の『風呂屋』は最高なのだ。
 仕事にも、遊びにも都合が良いものだからここに移って来たのだ。」

 ノーム爺はこの町の移って来た経緯なんかをオランに話して聞かせたの。

「もう良いかしら?
 私がこの間、依頼した道具は完成しているかしら。」

 ノーム爺とオランの会話が一息ついたところで、アルトが尋ねたの。

「おお、出来ておるぞ…。
 しかし、あんな物騒なモノを何に使おうと言うのだ?」

 ノーム爺は、そんな疑問を口にしながら鍛冶場の方においら達を案内してくれたの。

 そこに置かれていたのは…。

「これ、弓? それにしてはえらく大きいんだけど。」

 横に寝かされた巨大な弓だったんだ。
 タロウに依頼されたスリングライフルにヒントを得て、ノーム爺が作った新型の弓。
 それをはるかに巨大にしたような弓が車輪付きの台座に据え付けられていたの。

 おいらが、弓かと確認したのはとても人の力で引けるような大きさじゃないから。

「ああ、これがアルト殿に依頼された弓なのだが…。
 お嬢ちゃんが疑問に思うのも無理は無いのう。
 とても人の力で引けるようなシロモノではないからのう。
 一応、巻き取り機の原理を使って弓を引くような仕組みにしてみたが。
 それにしても骨が折れるわ。
 これ、本当に使えるのか?」

 自分で作っておいて使えるのかはないと思うけど、そのくらい規格外の大きさなの。
 ちなみに矢の方は、槍のように太い鉄の棒で先端が鋭く尖っていて。
 後ろの方には矢羽根のような突起が付けられてた。

「使うのは全員レベル三十以上だからね。
 基礎体力が大分かさ上げされているから、その辺は心配ないわ。
 それで、肝心の威力の方はどうなの?」

「その辺に関しては、ぬかりはないわ。
 アルト殿に要望された射程距離で、分厚い木の板や岩石を破壊することが出来たわい。
 弓を引くことさえできれば、要望に応えられていると自負するわ。」

 使えるのかと言いつつ、実際に試射はして使えることは確認してあるみたい。
 ノーム爺の『使えるのか?』は、実用的じゃないという意味なんだね。

 一方のアルトは、ノーム爺の返答を聞いて、とても満足そうな顔で微笑んでいたよ。

「そう、じゃあ、さっそく試射してみるわね。
 それと、別件で一つお願いしたの。
 スケベ爺、渾身の剣を一振り作って欲しいの。
 期限は一月、お金に糸目はつけないわ。
 王族に嫁入りする時の持参品だから、飛び切りの業物を頼むわね。」

 シトラス王子に嫁入りする耳長族のお姉ちゃんの持参品を頼みに来たんだね。
 嫁入りの準備をするのに時間が必要って、そういう意味だったんだ。

「ほう、王族に嫁入りする娘の持参品とな。
 それは、銀貨十万枚でもかまわんのだな?」

「ええ、勿論よ。
 スケベ爺が最高の出来だと誇れるものなら、もっと高くても良いわ。」

「よし、引き受けた。久しぶりの大仕事で腕が鳴るわい。」

 アルトの注文を受けて、ノーム爺は気合いを入れてたよ。
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