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アイイロモンペ

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第八章 ハテノ男爵領再興記

第174話 ペンネ姉ちゃん達の特技?

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 呑気な事を言っていたら、強制的にメンバーに引きずり込まれたタロウ。

「でも、俺、前にアルト姐さんにディスられたように。
 歌はあんまり上手くねえぜ。
 それに、あんまりアイドルの歌って知らねえんだ。
 もっぱら二次元が好物だったんで、アニソンくらいしか知らねえし。」

 タロウが自信なさげに言うと。

「あんたが音痴なのは承知の上よ。
 私が知りたいのは、歌詞と曲の雰囲気。
 メロディーラインは、耳長族の娘がちゃんと整えてくれるわ。」

 アルトは、無理やりタロウに歌わせようとしたんだ。

「はいはい、分かりましたよ。
 聞いておいて、音痴だと言う文句はなしですよ。
 じゃあ、日本国国歌三連発いきますね。」

 国歌? 何それ?
 おいらが、アルトに尋ねると。
 アルトも知らないみたいで、国を象徴するような歌なんじゃないかと言ってた。
 タロウの住んでいた場所は、きっと国と言うものの意識が強いんだろうって。
 この国じゃあ、自分が住んでいる領地が社会の単位で、住民が国を意識することが無いし。
 国としての一体感を持ち合わせていないから、国歌なんてできようがないって。

 それはともかく、相変わらずタロウは音痴で、外しっぱなしだったよ。
 でも、アルトはキチンと聞いていて。

「ふん、一曲目と三曲目は、ノリが良いと言うよりも聞かせる歌ね。
 歌が本当に上手い娘じゃないと厳しそうね。
 でも、歌詞はとても良いわ、誰かに歌わせてみましょうか。
 二曲目は、私が考えているイメージ通り、そんな感じの歌はもっとないかしら。」

 アルトの言う一曲目と言うのは、空に憧れる少年の歌なのかな?まだ見たことが無い遠くへ憧れる歌かも?
 とっても、しっとりと歌い上げる感じで、タロウが歌うと台無しだけど。
 アルトが言うように、歌のうまいお姉ちゃんに歌わせると良いと思う。
 でも、入道雲はわかるけど、『飛行機雲』って何? それに『線路』って言うのも。
 タロウの話す言葉に中には時々意味不明なモノがあるけど、これもその類なのかな。

 三曲目は、やっぱり、成長する少年を描いた歌みたいで。
 背中に未来を目指す羽を持っていることに気付くとか歌ってた。
 こっちは、少し情熱的に歌い上げる感じで、やっぱり歌の上手な人向けだね。
 相変わらず、『テーゼ』とか、『バイブル』とか意味不明の言葉があるけど…。

 そして、アルトが良いと言ってた二曲目、これはとってもノリの良い曲で。
 他の二曲とは全く違う雰囲気の歌だったよ。
 なんか、心がぴょんぴょんするって歌い出しの曲で、すごく明るいの。
 でも、逆に能天気に明るすぎて、国を象徴する歌には聞こえないんだけど…。
 
「ああ、一曲目と三曲目は俺が生まれる前に流行ったアニメの歌だな。
 二つは別のアニメだけど、親父の若い頃にハマってたアニメの主題歌だってよ。
 すげえよな、俺の世代にも国歌だなんて言われて歌い継がれているんだから。
 二曲目は可愛いウエートレスがいる喫茶店が舞台の日常系のアニメの主題歌だったぜ。」

 またもや、『喫茶店』なんていう意味不明の言葉が出てきたけど、ウサギ肉の屋台みたいなモノかな。
 ウサギを注文できるみたいだし。

「はい、はい!
 私、二曲目の歌気に入りました、歌ってみたいです!
 それと、エクレアお姉さま、歌がとってもお上手ですの。
 一曲目も、三曲目も、歌いこなせると思いますわ。」

 ペンネ姉ちゃんが手を上げて歌いたいと言ってたよ、それこそぴょんぴょんと跳ねながら。

「そう、じゃあ、耳長族の娘にキチンと曲を整えてもらおうかしら。
 あなた達の小隊に歌ってもらうわ。
 タロウ、耳長族の娘に曲を拾ってもらいなさい。
 それと一曲じゃあ、全然足りないわ。もう、二、三十曲出してもらわないと。」

 アルトは、六小隊全部に数曲づつ違った歌を歌わせたいんだって。
 だから、そのくらいは欲しいって。

「二、三十曲って無茶言うなよ。
 俺、アニメはよく見てたけど、アニソンはそんなに覚えてないんだ。
 アルト姐さんが言うように音痴だから、歌う機会も無かったしな。
 この三曲は、ちょうどここに飛ばされて来る前に読んだアニメ雑誌の特集であったんだよ。
 その記事で気になって、何度も聞いてみたから、たまたま覚えていただけだからな。」

 アルトのタロウを見る目が冷たくなったよ、『この役立たず』って目が言っている。
 すると、タロウはハタと気付いたように言ったの。

「そう言えば、にっぽん爺がアニソンを良く知ってたな。
 古いのから、新しいのまで。
 酒を飲んで、興が乗るとよく歌ってたぜ。
 それも、俺と違って無茶苦茶歌がうめえの。
 本格的に日本の歌を取り込みたいんだったら。
 俺よりもにっぽん爺を巻き込んだ方が良いんじゃないか。」

 タロウったら、にっぽん爺にアルトの相手を押し付けようとしてんの。
 タロウが勧めるので、一回にっぽん爺の話を聞いてみることになったよ。

     **********

「じゃあ、後はペンネにだけ、特別な任務を与えるわ。」

「任務ですか?」

 タロウに歌詞を書き出してもらって、耳長族のお姉ちゃんにメロディーを整えてもらわないと練習にならないと言うことで。
 今日は、歌の話はお終いにしたんだ。
 それから、アルトはペンネ姉ちゃんに何かさせるみたいな事を言ったの。

「そう、ペンネを騎士団に採用する時に言ったでしょう。
 騎士団員全員の姿絵を描いて欲しいの。
 領都の広場に掲示して、騎士団のメンバーの宣伝をするのよ。」

 アルトは、領都の住民に騎士団に対する親しみを持ってもらうのが目的だと言ってたけど。
 こっそりと、それで贔屓が付けばめっけものとも言ってたから、騎士団を使って人寄せをする計画の一環みたい。

「騎士団員一人に一枚ですか?」

「別に一枚でなくても良いけど。
 まずは全員分を作って欲しいの、並べて貼れるように同じ構図のモノをね。
 そこに、簡単な紹介を入れても良いわよ。」

「でしたら、第一弾は立ち絵にして、第二弾でバストショットを打ちましょう。
 それで、紹介文も私に任せて下さるという事で良いですね。
 あと、私が一枚で良いのですかと伺ったのは、そう言う意味では無くて。
 一人一人に同じ絵が複数枚なくてよろしいのですかと言う意味なのですが。
 何枚も同じ絵を作って、領内の全ての町や村に掲示したらどうかと思いまして。」

 今後騎士団が領内の町や村を隈なく巡回することになるのだから。
 その時に掲示すれば騎士団員のお披露目になるのではと、ペンネ姉ちゃんは言うの

「それが出来るのなら、それに越したことはないけど。
 同じものをたくさん描くのも大変でしょう?」

 アルトが、ペンネ姉ちゃんに尋ねると。

「その点は、私達、パスタ家三姉妹にお任せを。
 ツィーテ、フレグラ、いらっしゃい。」

「はい、お姉さま。『彫りのツィーテ』参りましたわ。」

「アルト様、『刷りのフレグラ』です。お見知りおきを。」

 ペンネ姉ちゃんに呼びかけられて、休憩していた二人の騎士が寄って来て名乗りを上げたの。

「私の頼りになる妹二人です。
 先日お見せした『或る女性騎士の秘め事シリーズ』はこの小隊のメンバーで作っておりますの。
 あれは、木版画で同志の間の頒布会用に一回百部以上制作していますのよ。
 木版の彫りをツィーテが、精巧な色付けと刷りをフレグラが担当していますの。
 私が絵師で、後の二人は物語の制作担当ですわ。」

 『或る女性騎士の秘め事シリーズ』は、今、その五まできていて、累計五百部以上刷ったんだって。
 頒布会の前は、五人でパスタ家に集まって三日くらい徹夜をして作るらしいよ。

 それを聞いたアルトは呆れていたよ。

「あんな、公序良俗に反するような本を大量に作って、貴族のお嬢様が読み耽っているとは…。」

 って、言ってた。
 何か、肌色が多い絵本でおいらは見ちゃダメって言われた本だよね。

「既に、騎士団員全員の立ち姿の原画はありますから。
 すぐに制作に入れますわ。
 何枚でも作って見せましょう。」

 この間も言ってたけど、メンバー全員の絵は何パターンも書いてあるんだって。
 『或る女性騎士の秘め事シリーズ』の制作に使うために。
 あれって騎士団のメンバーがモデルらしいよ。
 立ち絵のバックはやっぱり白百合かしらとか、カップリングの絵は要らないのかと言ってたよ。

 そんな訳で、ペンネ姉ちゃん達には訓練の合い間を見て騎士団員の姿絵を作ってもらう事になったの。
 その話を聞いていたタロウが言っていたよ。
 タロウの国にもそんなのがあって、ポスターって言うんだって。
 アイドルの宣材としては必須のアイテムだって言ってた。
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