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第八章 ハテノ男爵領再興記
第171話 トレント狩りに誘われたよ
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そんな訳で、クッころさん率いるハテノ男爵領騎士団も無事に滑り出し。
おいらも、辺境の町の家に帰ってきたんだ。
「何だ、何だ、マロンの家の庭、草だらけじゃねえか。
十日も留守にしていた訳でもねえのに。
えらい、繁殖力の草だな…。」
門の前でアルトの『積載庫』から降ろされてタロウが、おいらの家の庭を見て驚いてた。
タロウとは逆においらはホッとしてたんだけど。
前領主の子飼いの騎士が、耳長族を捕らえようとしてきた日。
おいら、何も考えずにアルトにくっついて行っちゃったけど。
あとで、「しまった!」って思ったんだ。
それは、今庭いっぱいに茂っている『カタバミ』の魔物のこと。
幾ら狩っても、一日で庭いっぱいに繁茂しちゃうもんだからね。
数日留守にすると、庭をはみ出して、最悪町中に茂っちゃうかも知れないと心配してたんだ。
でも、不思議なことに全然庭から出た様子は無かった。
両隣の家、タロウの家の庭にも、にっぽん爺の家の庭にも、カタバミの魔物は全然生えてなかったよ。
「ねえ、アルト、このカタバミ、凄く繁殖力旺盛なのに。
一週間位以上放っといても庭からはみ出だしていないのっておかしくない?」
おいらが尋ねると、アルトはタロウに聞こえないように耳元でこっそりと言ったんだ。
タロウには、この『カタバミ』が魔物だとは教えてないからね。
スキル『金貨採集量アップ』のことを知られないために。
「こんなに小さくて最弱でも、魔物は魔物なのね。
こいつら、生け垣で囲われたマロンの庭の範囲を自分達の縄張りと認識したみたいよ。
だから、テリトリーいっぱいに蔓延ると、それ以上は個体を増やさなかったのよ。」
アルトが教えてくれた事によると、魔物って動物型、植物型を問わず縄張りを持つ種類が多いんだって。
そういえば、トレントにしても、シューティング・ビーンズにしても、狩場から広がっていないね。
あれも、縄張りがあるからなんだ。
それは助かったよ、おいらが持ち込んだ魔物で町中覆い尽くされちゃったらドヒンシュクだからね。
**********
おいらが、庭を見てこれから『カタバミ』狩りをしないといけないと考えてると。
「マロンも、タロウもよく聞いて。
明日から、騎士団の訓練小隊や『STD四十八』と一緒に毎朝トレント狩りをするわよ。
早朝に迎えに来るから、狩りにいける準備をしておくのよ。
特にタロウ、朝までサカっているんじゃないわよ。」
アルトが明日以降の予定を告げてきたの、もう、強引なんだから…。
「アルト姐さん、俺トレント狩りなんて危ねえことしなくても。
スライム捕りで、十分にシフォンを食わせていけるし…。
俺がケガでもするとシフォンが悲しむから、無茶はしたくないんだけど。」
タロウはそんなことを言って、シフォン姉ちゃんのこと惚気てたよ。
ケガでもして夜いたせなくなると、シフォン姉ちゃんが泣くって…。
「そんな心配しなくても良いわ。
あんたが役に立たなくなれれば、シフォンはさっさと別の男に乗り換えるわ。
泣くことなんかないわよ。」
なんか、アルトったら、身も蓋もないこと言ってるよ。
「アルト姐さん、それは酷い…。
それじゃまるで、俺ってナニにしか価値がないみたいじゃないですか。
なあ、シフォンだって一緒に暮らしていて、少しは俺に愛情を感じているだろう。」
アルトに貶されたタロウは、隣にいるシフォン姉ちゃんに同意を求めたけど…。
シフォン姉ちゃん、明後日の方に視線を向けて、口笛を吹いてたの。
タロウってば、シフォン姉ちゃんのリアクションを見てしょげちゃったよ。
「ほら、見なさい。
シフォンをつなぎ止めておきたかったら、甲斐性を見せなさいよ。
スライム捕りだけで満足してないでね。
アンタが狩った分のトレントは、全部アンタの取り分にして良いから。
けっこうな稼ぎになるわよ。」
シュガートレントなら、『スキルの実』と『シュガーポット』だけでも上手くすると銀貨三千枚くらいになるからね。
それに加えて、これからはトレントの『木炭』が良い値で売れるようになるから。
アルトが言うには、トレントの木炭はいくらあっても足りないくらいなんだって。
だから、おいら達にもハテノ男爵領の特産品作りに協力させようってことみたいなんだ。
アルトが無償でトレント本体を『木炭』に加工してくれて。
ライム姉ちゃんの取り分を除いたら、全部タロウに上げるって言ったよ。
もちろん、運ぶのもアルトがタダでしてくれるって。
たまには、シフォン姉ちゃんにきれいな服でも買ってあげて、甲斐性を見たらどうかって。
アルトは耳元で囁いて、タロウをそそのかしていたんだ。
でも、タロウがアルトに返答するよりも早く。
タロウの腕を胸の谷間に埋めるようにして抱き付いて、シフォン姉ちゃんが言ったの。
「キャッ!ステキ!
タロウ君、毎日銀貨千枚以上稼ぐようになるのっ?
凄いわ、大店の主人並みの稼ぎじゃないの。
ねえ、タロウ君、お姉さん、フカフカのベッドが欲しいの。
アルト様の『特別室』にあるみたいなベッド!
買ってくれたら、今までよりもっと凄いことしてあげる。
今のベッドじゃ硬くて出来なかったのよ。
もちろん、トレント狩りに行って怪我をしたらダメよ。
毎晩、頑張ってもらうんだから。」
タロウが狩ったトレントは全て自分の取り分にして良いと聞いて、シフォン姉ちゃんの方が飛び付いたよ。
タロウったら、シフォン姉ちゃんにおねだりされて鼻の下をだらしなく伸ばしてた。
タロウって単純だからそれで決まり。毎日トレント狩りをすることになったよ。
もちろん、おいらもトレント狩りに行くよ。
少しでもライム姉ちゃんの役に立って、領地が豊かになれば良いものね。
おいらも、辺境の町の家に帰ってきたんだ。
「何だ、何だ、マロンの家の庭、草だらけじゃねえか。
十日も留守にしていた訳でもねえのに。
えらい、繁殖力の草だな…。」
門の前でアルトの『積載庫』から降ろされてタロウが、おいらの家の庭を見て驚いてた。
タロウとは逆においらはホッとしてたんだけど。
前領主の子飼いの騎士が、耳長族を捕らえようとしてきた日。
おいら、何も考えずにアルトにくっついて行っちゃったけど。
あとで、「しまった!」って思ったんだ。
それは、今庭いっぱいに茂っている『カタバミ』の魔物のこと。
幾ら狩っても、一日で庭いっぱいに繁茂しちゃうもんだからね。
数日留守にすると、庭をはみ出して、最悪町中に茂っちゃうかも知れないと心配してたんだ。
でも、不思議なことに全然庭から出た様子は無かった。
両隣の家、タロウの家の庭にも、にっぽん爺の家の庭にも、カタバミの魔物は全然生えてなかったよ。
「ねえ、アルト、このカタバミ、凄く繁殖力旺盛なのに。
一週間位以上放っといても庭からはみ出だしていないのっておかしくない?」
おいらが尋ねると、アルトはタロウに聞こえないように耳元でこっそりと言ったんだ。
タロウには、この『カタバミ』が魔物だとは教えてないからね。
スキル『金貨採集量アップ』のことを知られないために。
「こんなに小さくて最弱でも、魔物は魔物なのね。
こいつら、生け垣で囲われたマロンの庭の範囲を自分達の縄張りと認識したみたいよ。
だから、テリトリーいっぱいに蔓延ると、それ以上は個体を増やさなかったのよ。」
アルトが教えてくれた事によると、魔物って動物型、植物型を問わず縄張りを持つ種類が多いんだって。
そういえば、トレントにしても、シューティング・ビーンズにしても、狩場から広がっていないね。
あれも、縄張りがあるからなんだ。
それは助かったよ、おいらが持ち込んだ魔物で町中覆い尽くされちゃったらドヒンシュクだからね。
**********
おいらが、庭を見てこれから『カタバミ』狩りをしないといけないと考えてると。
「マロンも、タロウもよく聞いて。
明日から、騎士団の訓練小隊や『STD四十八』と一緒に毎朝トレント狩りをするわよ。
早朝に迎えに来るから、狩りにいける準備をしておくのよ。
特にタロウ、朝までサカっているんじゃないわよ。」
アルトが明日以降の予定を告げてきたの、もう、強引なんだから…。
「アルト姐さん、俺トレント狩りなんて危ねえことしなくても。
スライム捕りで、十分にシフォンを食わせていけるし…。
俺がケガでもするとシフォンが悲しむから、無茶はしたくないんだけど。」
タロウはそんなことを言って、シフォン姉ちゃんのこと惚気てたよ。
ケガでもして夜いたせなくなると、シフォン姉ちゃんが泣くって…。
「そんな心配しなくても良いわ。
あんたが役に立たなくなれれば、シフォンはさっさと別の男に乗り換えるわ。
泣くことなんかないわよ。」
なんか、アルトったら、身も蓋もないこと言ってるよ。
「アルト姐さん、それは酷い…。
それじゃまるで、俺ってナニにしか価値がないみたいじゃないですか。
なあ、シフォンだって一緒に暮らしていて、少しは俺に愛情を感じているだろう。」
アルトに貶されたタロウは、隣にいるシフォン姉ちゃんに同意を求めたけど…。
シフォン姉ちゃん、明後日の方に視線を向けて、口笛を吹いてたの。
タロウってば、シフォン姉ちゃんのリアクションを見てしょげちゃったよ。
「ほら、見なさい。
シフォンをつなぎ止めておきたかったら、甲斐性を見せなさいよ。
スライム捕りだけで満足してないでね。
アンタが狩った分のトレントは、全部アンタの取り分にして良いから。
けっこうな稼ぎになるわよ。」
シュガートレントなら、『スキルの実』と『シュガーポット』だけでも上手くすると銀貨三千枚くらいになるからね。
それに加えて、これからはトレントの『木炭』が良い値で売れるようになるから。
アルトが言うには、トレントの木炭はいくらあっても足りないくらいなんだって。
だから、おいら達にもハテノ男爵領の特産品作りに協力させようってことみたいなんだ。
アルトが無償でトレント本体を『木炭』に加工してくれて。
ライム姉ちゃんの取り分を除いたら、全部タロウに上げるって言ったよ。
もちろん、運ぶのもアルトがタダでしてくれるって。
たまには、シフォン姉ちゃんにきれいな服でも買ってあげて、甲斐性を見たらどうかって。
アルトは耳元で囁いて、タロウをそそのかしていたんだ。
でも、タロウがアルトに返答するよりも早く。
タロウの腕を胸の谷間に埋めるようにして抱き付いて、シフォン姉ちゃんが言ったの。
「キャッ!ステキ!
タロウ君、毎日銀貨千枚以上稼ぐようになるのっ?
凄いわ、大店の主人並みの稼ぎじゃないの。
ねえ、タロウ君、お姉さん、フカフカのベッドが欲しいの。
アルト様の『特別室』にあるみたいなベッド!
買ってくれたら、今までよりもっと凄いことしてあげる。
今のベッドじゃ硬くて出来なかったのよ。
もちろん、トレント狩りに行って怪我をしたらダメよ。
毎晩、頑張ってもらうんだから。」
タロウが狩ったトレントは全て自分の取り分にして良いと聞いて、シフォン姉ちゃんの方が飛び付いたよ。
タロウったら、シフォン姉ちゃんにおねだりされて鼻の下をだらしなく伸ばしてた。
タロウって単純だからそれで決まり。毎日トレント狩りをすることになったよ。
もちろん、おいらもトレント狩りに行くよ。
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