ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
上 下
169 / 848
第八章 ハテノ男爵領再興記

第169話 大分恨みをかってたんだね

しおりを挟む
 数日後、領都の中心にある広場、そこに設けられた告知板に一つの御触れ書きが掲げられたんだ。
 もちろん、それは女性に対する拉致監禁や強姦行為なんかを厳罰に処すという御触れ。
 それ以外にも色々と細かい禁止事項が書かれていたけど。
 簡単に言っちゃうと女の人に悪さをしちゃいけないよと言う内容のモノだった。

 お触れ書きを読んだ女の人達はみんな喜んでいたよ。
 何で今までこういう決まりが無かったんだろうって言ってる人も多かった。
 内容を読むと当たり前のように感じるんだけど、他の領地では今でもそうじゃないんだよね。
 女の人って、ホント、立場が弱かったんだね。

 そして、その御触れ書きが掲げられた横には十五人の冒険者が両手のこぶしを砕かれて転がされてたよ。
 逃げられないように、地面に深く打ち込んだ杭に鎖でつながれ、騎士のお姉ちゃんが二人見張りに付いてるの。

 更にその横には、転がされている十五人の罪状が掛かれた高札が立てられてた。
 その最後に、好きに報復してかまわないとも記されていたの。

 んで、転がされている冒険者だけど、全員が首から板をぶら下げていたの。
 その板には、今まで犯してきた悪さの数々が本人の自供に基づき記されているの。
 しかも、そのうちの五人は捕まった日からずっと裸のままだった。

 ライム姉ちゃんの屋敷に捕らえれれている間、この連中はずっと裏庭に縄で拘束されて転がされていたんだ。
 幸い、この辺りは冬でも暖かくて凍えることはないし、雨も降らなかったんで死ぬことはなかったけど。
 裸で地面に転がされていた奴らは、蚊やら、ムカデやらにやられて酷いことになっていたよ。

 おいらが、転がされている連中を眺めていると。

「騎士様、本当にこいつらを好きにして良いんですかい。
 俺、この男に何度も恐喝されて。
 一時メシもロクに食えないほど、貧乏生活をしたんだ。
 恨みが骨髄に徹してるんだ。」

 どうやら、転がされている冒険者の一人に粘着されて何度もお金を巻き上げられたみたい。
 冒険者って、カモだと分かると何度も狙うから質が悪いよね。
 この人みたいに、食費まで巻き上げられちゃう。

「ええ、かまいませんわよ。
 そこに掲げられているように、元々死罪なのですが。
 一種の恩赦ですわね、町の方々の気が済んだ段階で釈放してあげることになってます。
 ですから、殺されてしまうのなら自業自得ですわ。
 それだけ、町の人に酷い恨みをかっていたということですから。
 ご覧の通り、両手のこぶしを砕いてありますので。
 釈放したからと言って、再度の報復の心配もありません。
 気の済むまでいたぶってください。」

 冒険者からカモにされていた人に、監視の騎士がそう説明すると。

「それは、有り難い。
 てめえのせいで、俺は三日もメシを食う金が無かったんだ。
 食い物の恨みは怖えぞ、思い知りやがれ!」

 カモにされていた男の人は、思いっ切り一人の冒険者の顔を蹴とばしたの。
 その一撃で、蹴られた冒険者の歯が何本か砕けてたよ。

「あっ、こいつ、私を路地裏に連れ込んで酷いことしやがったんだ。
 あんな、小汚ねえモノ咥えさせやがって、絶対に赦さないよ!」

 若いお姉ちゃんが一人そう叫んだかと思うと、裸で転がされている男の股間に思いっ切り蹴りを入れてたよ。
 何を咥えさせられたのか知らないけど、凄い剣幕で何度も何度も股間に蹴りを入れたよ。

 ずっと見てたら、拘束された冒険者全員が、町の人、男女問わずに恨みをかっていたみたい。
 この町にこんなに人が住んでいたんだと感心するくらい、凄い数の人が殴る蹴るをしてたよ。

 男の人はお金を巻き上げられたという人が多かったね。
 他には寝取られたなんて言っている人がいたけど、隣にいたアルトは意味を教えてくれなかった。
 女の人は路地裏に連れ込まれて何かされたって人が多かった。
 中には、町の外で薬草摘みをしてたら、襲われたなんて人も。

 それと、不思議なのは男の人は顔面に蹴りを入れる人が多かったんだけど。
 何故か、女の人は全員が冒険者の股間に蹴りを入れていた、しかもかなり執拗に…。

 しばらくすると、大分人が掃けたんだけど…。

「ねえ、ねえ、騎士様、こいつらに仕返しできるのって今日だけですか?
 私、今日一日くらいじゃ気が済まないですよ。
 こいつら、私の事を路地裏の空き家に引っ張り込んで…。
 寄って、集って…、私まだ、生娘だったのに…。」

 そんな風に涙目で訴えているお姉ちゃんがいたんだ。
 
「いいえ、今日で釈放するとは決めていませんわ。
 私が領主様から申し付かっているのは、町の人の気が済むまで報復させろという事ですわ。
 あなたのような方がいる限り、釈放はしませんからご安心ください。
 また、明日もここに引っ立てて来ることとしましょう。
 あなたの様に訴えてくる人がいなくなれば、釈放することにします。」

 監視をしていた騎士のお姉ちゃんは、涙目で訴える人に気の済むまで何日でも続けると答えていたよ。

 その言葉を聞いた冒険者たちはというと…。

「頼むから、もう勘弁してくれよ。
 もう絶対に堅気の人には迷惑かけないから赦してくれ。」

「これ以上、裸で放置されるのは嫌だ。
 せめて服を着せてくれて。
 裸で地面の上を蹴りまわされたら、傷だらけになっちまう。」

「もう股間は勘弁してくれ。
 これ以上蹴りを入れられたら、使いモノにならなくなっちまう。」

 なんて、泣き言が聞こえてきたよ。

「殺されないだけでも儲けものと考えないといけないのに…。
 あんな粗末なモノが使えなくなることを気にしているなんて、バカじゃないの。
 あれだけ報復を受けておいて、まだ使う気でいたなんて呆れたわ。」

 最後の男の言葉を聞いて、アルトがそんなことを言って呆れてたよ。
 
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

処理中です...