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第八章 ハテノ男爵領再興記

第168話 死罪にするのは気が乗らないみたい

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 おいら達が、冒険者ギルドに監禁されていた女の人達を連れてライム姉ちゃんの館に帰って来ると…。

「あら、みんな、いないと思ったらそんなに人を引き連れて戻って来て…。
 いったい、どこ行っていたの?
 って、その娘達、酷い格好しているわね。
 それに全員、質の悪に病気を持っていて…。
 どうしたのって、聞くまでも無いかしら。
 この町のギルドも、またしょうもない連中が多いようね。
 そのお縄を打った奴らが、その娘達をオモチャにしていたのかしら?」

 ライム姉ちゃんの屋敷の庭で、アルトが待っていて声を掛けてきたんだ。
 あの不良騎士達を魔物の領域に捨てて帰って来たみたいだね。

「うん、最初はこの町の冒険者ギルドに釘を刺しに行ったんだ。
 耳長族に手を出すバカな冒険者が出ないようにってね。
 そしたら、態度の悪い受付がギルドの中に『監禁部屋』があるような事を言ったから。
 成り行きで、ガサ入れをすることになっちゃった。
 それで、監禁されていたお姉ちゃん達と酷いことをした犯人を連れてきたんだ。」

 おいらは、アルトに冒険者ギルドであったことを話したんだ。

「そうだったの。
 ライムのその行動は間違っていないと思うわ。
 今までとはやり方が違うという事を、知らしめておくのは良いことだと思う。
 取り敢えず、厄介な病気を持っている娘達を治しちゃいましょう。」

 アルトは、カップに入った水を監禁されていたお姉ちゃん達に飲ませてくれたの。
 もちろん、それは『積載庫』にたんまりと汲み置きしてある『妖精の泉』の水なんだ。
 万病に効くという『妖精の泉』の水の効果は抜群で、すぐにお姉ちゃん達のやつれが取れて顔色も良くなったよ。

 すると、そのお姉ちゃんの一人が、縄を打たれた裸の冒険者に近付き。

「この小汚いモノが私にたちの悪い病気をうつしたんだね。
 もう赦せない、毎日毎日相手させやがって!」

 凄い剣幕で、その冒険者の股間を蹴りあげたんだ。 
 裸の冒険者は、監禁部屋の中にいて現行犯で捕まった連中だね。
 ライム姉ちゃんが凄く怒っていて、…。
 『見せしめだって』って服を着せずに街中を引っ張ってきたんだ。

 その一蹴りが切っ掛けとなって、他の四人のお姉ちゃんも自分に酷いことをした冒険者に報復していたよ。
 一人で、五人くらいの冒険者を殴る蹴るしているお姉ちゃんもいたんだ。

「ねえ、ライム、あんなことさせといて良いの?
 誰も止めないけど、あの冒険者ども殺されちゃうんじゃない。」

 アルトが言うように、解放された五人のお姉ちゃんが冒険者に報復するのを誰も止めようとしないんだ。

「良いのですわ。
 どの道、連行してきた冒険者は、拉致監禁、強姦の現行犯で死罪です。
 気の済むまでやらせてあげれば良いです。
 可哀そうに、冒険者になろうとこの町までやって来てみれば。
 窓のない部屋に監禁されて、ずいぶん沢山の男の相手をさせられたようですので。
 その上、悪い病気までうつされていたとなれば、腹の虫も収まらないでしょう。」

 ライム姉ちゃんの言葉に、後ろに控えていた騎士団のメンバーもウンウンと頷いていたよ。

 結局、お姉ちゃん達の気の済むまで、好きにさせたんだけど。
 アルトが心配したような死人は出なかったよ。
 やっぱり、簡単に人殺しをするクズの冒険者と違って、堅気の人は一線は越えないよね。
 お縄になった冒険者ども、全員ボロボロだったけど誰一人として致命傷は追ってなかったもん。

      **********

「それで、このゴミはどうするのかしら?」

 アルトが、報復を受けてボロボロになった冒険者を指差して尋ねたの。

「私は、このハテノ領を女性が安心して独り歩きできる領地にしたいのです。
 従来から、この領地を含めて、この国では女性の立場が弱すぎです。
 娘を監禁してオモチャにしておきながら罪に問われないのは間違っています。
 なので、私は女性を護る法を定めることにしました。
 詳細はこれから詰めますが、女性に対する拉致監禁と強姦行為は死罪とします。
 この連中は、その適用第一号として見せしめに使う予定です。
 私も人を死罪にするのは余り気乗りしないのですが…。
 頭の悪い冒険者どもは見せしめを作らないと理解できないようですので。」

 ライム姉ちゃんは本当に気乗りしない顔でそう言ったの。
 冒険者ギルドでも、こいつらを死罪にすると毅然と言っていたんで相当怒っていると感じたけど。
 元々、気性の穏やかなお姉ちゃんだもんね、本当は死罪は気乗りしないんだ。

「私も常日頃、マロンに言ってるんだけど。
 基本、人殺しはしちゃダメ。
 でも、大切なモノを護る時には、毅然とした対応をしないといけない時もあるって。
 そういう時は、殺しを躊躇したらダメだってね。
 でも、気乗りしないのに無理に死罪にする必要はないわ。
 ねえ、マロン、おバカな冒険者に理解させる方法があるわよね。
 別に死罪にしなくても。」

 アルトはニヤリと笑いながら、おいらに答えを促してきたんだ。

「うん、今、お姉ちゃん達がした事と同じだよね。
 冒険者って、町の人の恨みをかっている連中が多いから。
 抵抗できないようにして、町の人に報復させれば良いんでしょう。
 堅気の人は殺しを躊躇するから、殺しはしないものね。
 それでいて、もう悪さできない程度にはボロボロにしてくれるから。
 バカな冒険者に対する見せしめとしてはちょうど良いと思う。」

 さっき、おいらに剣を向けてきた冒険者にしようとしたことと同じだね。
 冒険者ギルドに指詰め要員として、上げちゃったけど。

 本当は広場に晒しものにして、自分がどれだけ町の人に恨まれているかを教えてあげようと思ったんだ。

「良い答えだわ。
 ライム、今、マロンが言ったように町の人に恨みをぶつけてもらえば良いわ。
 手足を砕くなり、縛るなりして逃げ出せないようにして広場に晒すの。
 罪状をつまびらかにした札を掲げて、仲間が助け出しに来ないように見張りの騎士を置いておくの。
 あとは、好きに殴る蹴るして構わないと書いておけば良いわ。
 そうすれば、町の人が勝手に裁いてくれるわよ。」

 アルトがそう助言すると。
 ライム姉ちゃんも同意していたよ。

「そうですね、では、一生悪さが出来ないように。
 両手のこぶしを砕いた上で、数日広場で晒し者の刑としましょう。
 その横に、罪状を詳しく書いた高札を掲げ、好きに報復して良いことにします。
 マロンちゃんの助言通り、仲間が連れ戻さないように見張りも付けます。」

 ライム姉ちゃんの言葉を聞いて、お縄を打たれた冒険者たちは顔を青くしていたよ。
 今まで、散々悪いことをして来たみたいだものね、こいつら。
 これからどんな報復を受けるかと思うと生きた心地がしないみたいだよ。
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