ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第八章 ハテノ男爵領再興記

第163話 冒険者ギルドに赴くと…

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 結局、その日、アルトは元騎士達を魔物の領域に捨てに行ったまま帰っては来なかったの。
 魔物の領域って、けっこう遠いから日帰りで往復するのは難しかったみたい。

 置き去りにされちゃったおいらは、ライム姉ちゃんの屋敷に泊めてもらうことになったの。
 でも、ライム姉ちゃんの屋敷ってだだっ広い割には使える部屋が少なくて。

 ライム姉ちゃんとゼンベーおじいちゃん、それに家宰のセバスさんと騎士達の部屋を除くと客間が一つしかなかったんだ。
 おいらは、屋敷の修繕が済むまでその客間で過ごすことになっていたパターツさんと一緒に客間で寝ることになったの。

 その晩。

「主君であられるご領主様に夕食の支度をさせてしまい申し訳ございません。」

 騎士達が調子に乗って狩りまくったウサギのお肉を贅沢に使った料理を食べながらクッころさんが恐縮していると。

「気にしなくてかまいませんよ。
 母を亡くして以来、この家の食事の支度はずっと私がしてきましたので。
 食材は全て騎士の皆さんが調達してくださったのです。
 料理くらいしませんとバチが当たってしまいます。
 これからも、私が食事当番をしますので、嫌いなモノがあれば言ってくださいね。」

 領主になったからと言って威張ることなく、ライム姉ちゃんは気さくに言ったんだ。
 ずっと食事の支度をしてきたと言うだけのことはあったよ。
 ライム姉ちゃんは料理が上手でどれもとっても美味しかった。

「でも、捌いた状態のお肉で助かりました。
 騎士団の訓練がてらウサギを狩りに行くと聞かされた時、心配したのですよ。
 あんな大きな魔物を丸々持って帰って来ても捌くことは出来ないって。
 お肉屋さんで捌いてもらうなんて、気が利いていますね。」

 ライム姉ちゃんはとても嬉しそうに言うけど、実際は『積載庫』の能力で解体したんだよね。
 積載庫の中で勝手に、ウサギはお肉と毛皮、食べられる内臓に分けられるんだ。それと廃棄物だね。
 お肉は更に部位ごと分けられるんだけど、細かいことは抜きにして。

 廃棄物は草原に捨てて来たんだけど、六匹分のウサギは食べきれないと言うことで…。
 帰り掛けに町のお肉屋に半分ほど売って来たの。
 女性ばかりの集団で押し掛けて、大量のお肉や臓物を差し出したものだから、お肉屋さんがビックリしていたよ。
 でも、差し出されたお肉や臓物を見たお肉屋さんは、ウサギの捌き方が完璧だって喜んで引き取ってくれたんだ。

「でも、本当によろしいのですか?
 騎士団の皆さんが狩ったウサギの代金を私が頂いてしまって。」

「良いのです、私達は毎月決まった給金を頂くのですから。
 訓練の中で取得した副産物は領主様のものですから。
 遠慮なくお納めください。」
 
 お肉屋さんから受取ったウサギの代金は領地の運営費にと、クッころさんはライム姉ちゃんに差し出したの。
 騎士団の懐に入れちゃうことも出来たんだけど、屋敷の惨状を見て気の毒に感じたみたいだよ。

 因みに、なめした状態になっているウサギの毛皮は、六匹分すべてライム姉ちゃんに差し出したよ。
 屋敷で役立てて欲しいと言ってね。

      **********

 そして、翌日。

「失礼、このギルドの組長さんはいるかしら。」

 ライム姉ちゃんを先頭に、この町にある冒険者ギルドに乗り込んだの。
 ここのギルドの看板には、『広域指定冒険者ギルドソッチ会ハテノ組』って書かれていた。
 おいらの町と同じ『ソッチカイ』系の末端組織なんだね。

 ギルドの受付に座っていたガラの悪いオッチャン。
 なにやら裸の女の人の絵が描いてある本を見て、ニヤニヤしていたんだけど。
 ライム姉ちゃんが声を掛けると、本から顔を上げて。

「うん? 誰かと思ったら領主のところのイモ娘じゃないか。
 何だい、今日はめかしこんじまって。
 とうとう金策が尽きて客でも取ろうってのか。
 うちの風呂屋で働きたいのなら、直接風呂屋の支配人に言ってくれや。」

 ライム姉ちゃんがキチンとした服装をしているので、一瞬誰だか分からなかったみたい。
 いつもは野良着のような服装で町を出歩いているみたいだからね。
 ライム姉ちゃんだと分かると、そんな風に軽くあしらってまた本に目を落としたの。

 ライム姉ちゃん、組長に会いたいと言ったのに取り次ごうともしないでやんの。
 態度悪いね、領主になったことを知らないとしてもライム姉ちゃんは領主一族なのに。

「ねえ、あなた、ご領主様に向かってその口の利き方は失礼でしょう。
 わたくし達は強制的にこのギルドの中を検めさせてもらっても良いのですよ。
 それが嫌なら、早く組長に取り次ぎをしなさい。」

 受付の男の態度の悪さにムッとしたクッころさんがそう命じたの。
 クッころさんの声にまた本から顔を上げた受付のオッチャンが。

「何だ、この生意気な口を利くアマは。
 舐めた口利いてやがると、監禁部屋に押し込んじまうぞ!」

 と言いながら周りを見回して…。

「へっ?」

 マヌケな声を上げたんだ。
 エッチな本に夢中で周りをよく見ていなかったようで、ずらりと並ぶ三十人の騎士にビックリしたみたい。
 みんな女性とは言え、騎士服を身に付け剣をぶら下げているんだもんね。

「領主様、お聞きになりましたか?
 どうやら、この冒険者ギルドにも監禁部屋があるようです。
 これは、強制捜査の必要があるのではないかと思料しますが。」

 受付のオッチャンの『監禁部屋に押し込んじまう』発言を耳にしたクッころさん。
 ライム姉ちゃんに、ガサ入れを進言したんだ。

「そうですね、問題発言がありましたので検めさせて頂きましょうか。
 皆さん、この建物の内部を隈なく検めてください。
 もし、拉致されている女性がいれば、その保護を最優先に。」

 その指示を受けて、クッころさんをライム姉ちゃんの護衛に残して一斉に騎士の姉ちゃんが散ったの。

「おい、てめえら、何を舐めたことしやがる。
 そんなことをして、タダで済むと思っているのか。
 領主の家族と言えども舐めたことをすると赦さねえぞ。
 キッチリ、落とし前つけさせてやるからな。」

 受付のオッチャンはエッチな本をかなぐり捨てて、ライム姉ちゃん達に凄むけど。

「今日は、組長さんに挨拶に来たつもりなのですが。
 私、先日、このハテノ男爵領の領主を引き継ぎましたので。
 ですが、不穏当な発言がありましたから。
 法で認められた立ち入り調査権を行使させて頂きますね。」

 ライム姉ちゃんは毅然と言い放ったよ。
 相手は強面のオッチャンなのに結構肝が据わっているね。

       *************

 それからしばらくして。

「おい、こら、おまえらいったい何モンだ。
 こちとら、今良いところなんだ、邪魔すんじゃねえ!」

 階段の上でそんな声が聞こえたかと思うと、…。
 見苦しいスッポンポンのオッチャンが階段を転げ落ちてきたよ。

「どうやら、見つけたみたいですね。
 しかし、朝から仕事もせずにサカっているとは呆れた連中です。」

 クッころさんがそう呟く間にも…。
 汚らしいモノを晒したガラの悪い奴らが、二人、三人と階段から転げ落ちてきたよ。

「エクレアお姉さま、監禁部屋らしき部屋を発見しました。
 年若い娘が五人捕らえられており、そこに八人の男が…。」

 監禁部屋発見の報告にやって来たペンネお姉ちゃんが、おいらを見て言葉を濁したよ。
 どうやら、おいらの前で口に出すのが憚られるようなことがされていたみたい。

 ペンネお姉ちゃんが報告している間にも、次々とガラの悪い連中が階段から降って来て。
 階段の下では、騎士のお姉ちゃんが三人掛かりでそいつらを縄で拘束したよ。

 最後に、若いお姉ちゃんが騎士団のみんなに付き添われて階段を降りてきたんだ。
 みんな、顔色が悪いし、酷くやつれちゃってたよ。それに何かすごく臭うし…。

 すると、騒ぎを聞きつけたんだろうね、偉そうなオッチャンが階段から降りてきたんだ。

「いったい、これは何事だ!
 広域指定冒険者ギルド『ソッチカイ』にカチコミ掛けるとは良い度胸してるじゃねぇか。
 何処のどいつか知らねえが、キッチリ落とし前つけてくれるぞ。」

 ホールに集まっているおいら達を見てそんな啖呵を切ったんだけど。
 きっと、このオッチャンがここの組長さんだね。  
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