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アイイロモンペ

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第八章 ハテノ男爵領再興記

第161話 まだ、こんなのが残ってたよ…

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 王都から帰って来たその日、まず最初にライム姉ちゃんとゼンベーおじいちゃんを屋敷まで送ったの。
 当然、新生騎士団の三十一人も一緒な訳だけど…。
 荒れるがままになっているハテノ男爵邸、ぶっちゃけ、住む部屋が無いんだ。
 アルトがライム姉ちゃんの領主就任祝いに修繕費を出したけど、修繕はこれからだものね。

 先ずは騎士団のお姉ちゃん達の住む部屋を確保しないといけないね。
 と言う訳で、ライム姉ちゃんを先頭にやって来たのは遊戯室。

「バカ野郎、てめえ、それ、イカサマだろう。
 俺なんか、ブタだぜ。」

 ガラの悪い騎士がカードを放り出して言ったかと思うと。

 小さなテーブルを挟んで向かいに座る騎士が、

「何言ってやがる、ツキだよ、ツキ。
 日頃の行いが良いから、勝負事の女神さんが微笑んでくれたんだぜ。」

 と言って、テーブルにカードを広げたんだ。

 遊戯室の中では、騎士が二十人、真昼間から酒をかっ食らってカード博打を打ってたよ。
 仕事をサボって博打を打っていて、『日頃の行いが良い』は無いと思う…。

「あなた達、昼間から仕事もせずにお酒を飲んでいるとは何事ですか。
 あなた方を職務怠慢で、今この時を持って解雇いたします。
 即刻、荷物をまとめて出て行ってください。」

 ライム姉ちゃんが、遊戯室にいる騎士達に向かって解雇を告げたの。
 すると、

「誰かと思ったら、領主様の出来の悪い妹かい。
 貴族の癖して、土いじりに精を出してるから嫁の貰い手も無いって言う。
 何で、てめえなんかに、そんな事を言われないといけねえんだよ。」

 前の領主、常日頃、自分の妹のことをそんな風に言っていたのか。
 そう言い聞かされているもんだから、騎士達もライム姉ちゃんのことを敬おうともしない。
 ライム姉ちゃんも雇い主である男爵家の一員なのだから、敬って当然なのにね。

「兄は勅命に背いた罪で極刑に処せられました。
 先日から、私がこのハテノ男爵領の領主です。
 もう一度言います。
 あなた方は解雇です、即刻この館から立ち去りなさい。」

「何を寝ぼけたことを言っているんだ。
 領主様がそんなヘマをする訳ねえだろう。
 領主様はいつも言っているんだ。
 『法ってのは必ず抜け道がある』ってな。
 領主様はいつだって法を良く学ばれていて。
 何処までなら悪どいことしても法に触れないかを研究しておられる。
 そんな領主様が、勅令に反することなどする訳がねえだろうが。」

 あの領主、部屋にこもってそんな事ばっかり考えていたのか…。
 ホント、しょうもなっ…。
 でも、大切な勅令が王によって隠されちゃっているとは思いもしなかっただろうね。

 それにしてもこいつら、本当に他人の言うことに耳を貸さない連中だな。
 ライム姉ちゃんの言うことを、誰も信用しないでやんの。
 それどころか、さっきから口答えしている騎士の他はライム姉ちゃんを無視しているの。
 お酒を飲んだり、カード博打をしたり、好き勝手なことしてる。

「ライム姉ちゃん、こいつら幾ら言っても無駄だよ。
 力尽くで追い出しちゃえば良いんじゃないの。
 領主であるライム姉ちゃんに無礼なことを言ったんだから。
 おいらが少しお仕置きして追い出してあげようか?」

 騎士たちの態度が余りに酷いから、おいらがそう提案すると。

「何だ、このガキは?
 ここは、ガキの来るところじゃないぞ。
 生意気言ってないで、さっさと失せやがれ。」

 おいらの方をチラッと見てそう言った騎士は、次の瞬間にはまた博打に意識を集中させているの。
 おいら、ムッときて、騎士が持つカードを手で払ってやったよ。

「このガキ、何しやがるんでぃ!」

 そしたら、手にしたカードを散らばされ、怒った騎士がおいらに殴り掛かってきたんだ。
 全然鍛えていない騎士のこぶしだもの、ヘロヘロで『回避』が働くまで待つ必要も無かったよ。

 おいら、振り下ろされるこぶしをデコピンの要領で弾いてやったよ。

「うぎゃーーー!」

 こぶしを粉砕されて悲鳴を上げる騎士。

「てめー、このガキ、何しやがるでい!」

 今まで知らんぷりをしていた他の騎士達も、やっとこっちに意識を向けてくれたよ。

「こうなりたくなかったら、大人しく出て行った方が良いよ。
 今すぐ荷物をまとめて出て行けば、これからも五体満足で暮らせるから。」

 なので、おいらが忠告してあげたんだ。
 少なくとも、アルトの堪忍袋の緒が切れる前に出て行った方が良いからね。
 でも…。

「ふざけるな!
 騎士様に向かってそんなことをして赦されると思っているのか。
 ガキだからといって容赦しないぞ。」

 やっぱり言うことを聞かないし、こいつら、頭悪いんじゃない。
 と言うより、今さっき解雇されたから、おっちゃん達はもう騎士じゃないよ。

     **********

「本当にバカな奴ら、マロンの忠告に従っておけば痛い目を見ずに済んだのに。
 じゃあ、町の外にでも捨てて来ちゃいましょうか。」

 おいらの目の前に蹲る二十人の元騎士を眺めて、アルトは呆れていたよ。
 いつも思うんだけど、…。
 何で、最初の二、三人がやられた時点で自分達に勝ち目が無いとわからないの。
 子供に負ける訳が無いと決めつけてるから、自分達の間違いに気付かないのかな。

 二十人全員を『積載庫』に放り込んだアルト。
 それから、騎士に与えられていた個室を回って部屋の中の物を全て『積載庫』に詰め込んだよ。
 ベッドとかは、元々部屋に備え付けてあったモノらしいけど。
 新しく騎士になったお姉ちゃん達、みんな自分のお気に入りのベッドを持って来たから。
 ベッドだけでなく、ドレッサーとか色々なインテリアを持ち込んだの。

 だから、今部屋にあるモノは全て処分してしまうことにしたんだ。
 むさい騎士達の使った家具なんか、貴族のお姉ちゃん達は使いたくないだろうしね。

 それでも、空っぽになった部屋に入ったお姉ちゃん達は、

「なんか変な臭いがしますわ、イカ臭いような…。」

 って言いながら、窓を開け放って換気していたよ。

 それから、

「ねえ、アルト、そいつらどうするの?」

 おいらが、『積載庫』に放り込んだ二十人をどう処分するのか尋ねると。

「こいつら? 
 街の近くに放置すると悪さをしそうだからね。
 人里離れた場所に捨てて来ようかと思ってるわ。」

 いつもの悪さをした連中と違って、人里離れたところに捨てても大丈夫なんじゃないかって。
 こいつらは部屋にあったベッドや着替え、それに剣も一緒に捨ててくるから生活できるはずだって。
 部屋によってはお酒や肴の干し肉なんかもあったみたいで、当面の食べ物にも困らないだろうって言ってたよ。

 でも、二十人ともおいらが砕いちゃったんだよね、利き腕のこぶしを。
 剣があっても、握れないんじゃないかと思うんだけど…。

「じゃあ、捨ててくるね、魔物の領域に。」

 えっ!

 止める間もなくアルトは飛んで行っちゃったよ。

 合掌…。 
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