ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
上 下
156 / 848
第七章 興行を始めるよ!・・・招かれざる客も来たけれど

第154話 それでおいらを消すとか言われても…

しおりを挟む
 自称『ウエニアール国』の騎士団員五人を捕まえてきたおいら達は、父ちゃん達のもとに戻って来たんだけど…。

「マロンが、ウエニアール国の元王女だということはなるべく他の人には知られない方が良いぞ。
 何処から情報が漏れるか分らんからな。
 尋問するなら、何処か別の場所の方が良くないか?」

 モカさんの家だと、自称騎士団員を連れ込んだことがバレるかも知れないと父ちゃんは言ったの。
 この部屋、クッころさんがしょっちゅう出入りするし、掃除に来るメイドさんもいるしね。

 父ちゃんのアドバイスに耳を傾けたアルトは、それなら良いところがあるって言ったんだ。
 それで、やって来たのがここ。

 五人をアルトの『積載庫』から放り出すと。
 連中、辺りを見回して、「俺達をこんな所に連れて来て何のつもりだ。」と言ったんだ。
 その口振りはとても高飛車で、自分達が捕食される立場だと理解していないみたいだった。

「正直に答えなさい。
 今、王都にマロンを探しに来た仲間は、これで全部かしら?
 他にはいないの?」

 アルトは、騎士団員の態度など気にも留めずにそう尋ねたの、上から目線で。

「ああ? 何だ、この羽虫は?
 人間様に向かってでけえ口を利きやがって…。
 そんなことを教える訳がねえだろうが。
 そんな事より、早く俺達を元いた場所に返しやがれ。」

 連中の一人が、アルトの質問に答えもせずに、王都へ戻せと要求してきたんだ。
 自分が今、虎の尾を踏んだのを気付きもせずに。アルトに羽虫は禁句なのにね。

 アルトは、それを言った男に向かって、

「あっそ、五人もいるのだから、あんたは要らないわ。」

 そう告げると、ポイっとその男を少し離れたところに生えている木の根元に放ったの。
 いつもながら、あの小さな体の何処にあんな力があるのかと感心するよ。

 すると、その木の枝がスッと伸びて来て…。

「ウギャアアアァーーーー!」

 左右の手足に、それぞれ二本ずつ計八本の枝が突き刺さったんだ。
 槍のように尖った枝が、狙いを違えず手と足の腱に。

「げっ!あれはトレントか!
 じゃあ、なんだ、俺達が今いるのはトレントの森だってか!」

 残りの男達の中からそんな声が上がり、やっとここが何処だか理解したみたい。 

      **********

「マロン、せっかく餌になってくれたのだから、そのトレント狩っていきましょう。」

 アルトに言葉に頷いたおいらは、トレントの傍に寄って愛用の『錆びた包丁』で幹をチョコンと叩いたの。

 すると、トレントはミシミシと音を立てて倒れていき…。

「おい、あのガキ、トレントを一撃で倒しちまったぜ…。
 王女があんなバケモノだなんて聞いてねえぜ。」

 おいらがトレントを一撃で倒したことに、連中、驚愕していたよ。
 いつもながら、『クリティカル発生率百%』と『クリティカルダメージ三千%アップ』のコンボにはビックリだね。
 柔らかい果物でも切るように、トレントの大木を倒せちゃうんだから。

 トレントの動く枝って八本しかないんだよね、何かを捕食している間って本当に簡単に倒せちゃう。
 冒険者ギルドのならず者たちが、新米冒険者を餌にしてトレントを狩るというのも頷けるよ。

 おいらが、倒したトレントを一式『積載庫』に放り込むとそこに残ったのは…。

「おい、あいつを見ろ、腕や足が変な方向にひん曲がっちまってるぞ。」

「ああ、あいつはもうダメだな。あれじゃ、もう剣は握れないだろうぜ。
 いや、それ以前に、変な笑い声みたいなモノを上げているし…。
 ありゃ、人としても終わっちまってるぜ。」

 トレントに手足を串刺しにされていた男を目にして、そんな声が聞こえてきたよ。
 そんな残り四人の目の前に、アルトは廃人になった男を放り投げたんだ。

「さっ、あんたらに選ばしてあげる。
 私の質問に答えるのを拒んでこうなるか、素直に答えて楽になるかをね。」

 逆らった者の末路を見せつけて、選択を迫るアルト。
 それを目にした四人は震え上がっちゃったよ。

「悪かった、何でも話す
 もう逆らわないから、トレントの餌だけは勘弁してくれ。」

 連中の中からそんな声が上がったので、アルトは試すように尋ねたんだ。

「じゃあ、最初の質問、あなた達のリーダーは誰?」

 すると、四人は相互に目配せし、視線で会話するそぶりを見せると…。
 一斉に指差したんだ、三人は一人の男を、指差された一人は今さっきトレントの餌になった生きる屍を。
 指差された男は、他の三人を「この裏切り者!」って目で見ていたよ。

 どうやら、こいつがリーダーみたい。
 廃人になった男をリーダーということにして、色々とシラをきるつもりだったんだろうけど。
 視線での会話は食い違いを生じていたみたい。

「まだ、素直には従うつもりがないみたいね。
 次に、トレントの餌になりたいのはアンタかしら。」

 アルトが酷薄な笑みを浮かべて、リーダーらしき男に迫ると。

「ひっ! 悪かった、勘弁してくれ!
 俺がこの小隊の隊長で間違いねえ。
 知っている事は何でも答えるから、赦してくれ!」

 小隊長は、やっと観念したみたい、後ずさりしながらアルトに命乞いしたよ。

      **********

「それじゃ、一番最初に戻って。
 今、この国の王都にいるあんた達の仲間はこの五人だけかしら?
 他にいるなら、正直に言いなさい。何人、何処にいるのかを。」

 アルトはさっきの質問を繰り返したんだ。

「いや、いねえ。
 間違いなく、ここにいる五人だけだ。
 我が国の騎士団の小隊は五人編成で、一小隊送られてきたんだから。
 そもそも、ここに王女がいるという確証も無かったからな。」

 やっぱり、おいらがここにいるという情報を掴んで来た訳じゃないみたい。
 『ドッチ会』を疑わしいと思って、念のために来たって言う感じのようだったの。
 他にはいないと聞き、一安心したおいら達は詳しい事情を聞くことに移ったよ。

「で、何で、あんたらは今頃になってマロンを探しているのかな?
 マロンは、つい昨日まで、自分が元王女だなんて知らなかったんだけど。
 冒険者の父親と親子として、暮らしていたのよ。」

 アルトは、一番聞きたいことを真っ先に尋ねたんだ。

 すると、小隊長は、

「ここ最近、貴族連中や国民の中で我が王に対する不満が高まっていてな。
 あちこちで、小規模な反乱が起こっているんだ。
 我が王に反抗する連中の間で、旧王家による統治の復活を望む声が高まっている。 
 今、生き残っている旧王族はその娘だけだ。
 その娘のもとに我が王に反抗する勢力が集結すると厄介だから消しちまおうって。」

 って言ったんだ。

 どうして、新王に対する不満が高まっているかと言うと一つは税の問題。
 元々、ウエニアール国は、税が他国に比して低く抑えらえていたんだって。
 それは、王家が代々、民が豊かになってこそ国の繁栄があるという考え方を持っていたから。
 そのため、ウエニアール国の王侯貴族は他国に比して質素な生活をしていたらしいの。
 質素と言っても、平民よりもはるかに贅沢な暮らしをしているし。
 二百年前の愚王の失策で国が傾いたこの国の王族よりは華美な生活をしていたみたいだけど。

 でも、一部の貴族は、この国を除く他国の王侯貴族の暮らしぶりを目にして、旧王家に不満を持っていたみたい。
 もっと、王侯貴族は煌びやかで、贅沢な生活をするべきだって。
 その代表格が簒奪により新王となった騎士団長だった訳で、即位すると真っ先に増税をしたそうなんだ。

 その時は、一部の貴族の強い支持が有り、民の不満は抑え込まれたらしいんだ。
 質素倹約を旨とする王族がいなくなって、気兼ねなく贅沢な暮らしができると思ったから。

 最近、旗色が変わってきたのは、領主の領地から得られる税収が減って来たから。
 ウエニアール国では領主が領民に税を課し、その一定割合を国に納める形になっているそうなんだ。
 その税収の大部分は農村の収穫から得られるモノらしいんだけど…。

 このところ、農村の収穫が、魔物の襲撃によって目に見えて落ちているんだって。
 主に、ネズミの魔物による農作物の食害のために。

 そう、新王が、『シマリス』の魔王を倒しちゃったから。
 支配下にあった『げっ歯類』系の魔物の活動が活発化したみたい。
 畑の農作物が食い荒らされただけじゃなくて、食糧庫なんかも襲撃されて被害が甚大になって来たらしいの。

 そして、二つ目がその魔物の被害に対する新王の対応。
 農村部に領地をもつ貴族から、新王は度々魔物の討伐を要請されたそうなんだけど…。

 帰って来た答えがこんなのだって。

「魔物の討伐は、騎士団の仕事ではない。
 騎士団の仕事は他国との戦争と、国内の不満分子を抑え込むことだ。
 魔物の討伐など、冒険者にやらせるか、領民を徴兵してさせれば良いだろう。」

 元々、騎士団は贅沢がしたくて謀反を企てた訳だから、真面目に働くことは期待できないよね。

 で、もっと酷いのが、『ネズミ』の魔物って、『ハエ』の魔物と同じように伝染病をばら撒くんだって。
 極めつけにたちの悪い奴、体中に黒斑が出て死に至るから『黒死病』って言われているらしいの。
 度々、その伝染病が発生するようになったんだけど…。

 新王は、それが発生したと聞くと発生した村を閉鎖して、村人ごと焼き払ったんだって。
 それだけじゃなくて、その村の近隣の村も閉鎖して、村人が外に出るのを禁止したそうなの。
 村の外に、騎士団を駐屯させて。
 
 村から出ようとすると、槍で威嚇して村から出さないようにするらしいよ。
 騎士団員は、『黒死病』の感染を恐れて近付かないで済む槍で威嚇するんだって。
 そして、監視下にある村で『黒死病』が発生すると、すぐさま焼き払っちゃうそうなの。
 もちろん、村人ごと。

 それによって、国内に『黒死病』が蔓延することは押さえられているけど。
 領民と領内の村を焼き払われた領主は堪ったもんじゃないってことで、不満が募っているようなんだ。

 それじゃ、反乱が起こるのも当然だよ。
 この国の王様より酷いし、そこいらの冒険者並みの最低な人間だね。

 おいらを消すことを考えるより、行いを改めた方が有益だと思うよ。
 騎士団においらを探させている暇があるなら、魔物を討伐させた方が絶対に良いって…。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

処理中です...