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第七章 興行を始めるよ!・・・招かれざる客も来たけれど
第141話 何か、貴族らしくない二人だったよ
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領主の部屋に入ってきた農家のおじいちゃんみたいな人、びっくりなことに前の領主さんだった。
前領主のおじいちゃんは、アルトに気付かないでおいらに領主の不始末を謝り始めたの。
アルトったら、無視されてまた機嫌を損ねたんだけど。
「おやま、妖精さんがお客さんとは珍しい。
この目で見るのは、いったい何前年振りだろうか。
今日は良い事がありそうだ。
良く来てくださった。
儂は、この屋敷の隠居でゼンベーと申します。
小汚い屋敷ですが、どうぞゆっくりしていってください。」
アルトの声でやっとその存在に気付いた様子で、呑気に歓迎の言葉を掛けたんだ。
目の前で息子が苦しんでいるのに、良い事がありそうだって…。
「なんか、調子の狂うおじいちゃんね。
私は怒っているのよ、まったく…。」
呑気なゼンベーおじいちゃんの言葉にアルトも毒気を抜かれたようで、怒りを鎮めたみたい。
「それで、妖精さんがどのようなご用件ですかね。
いかな、うちの倅が幼女にしか興味が無いど変態だと言っても…。
妖精さんでは、いささか小さすぎると思いますが。」
今の領主、常日頃、そっち方面の問題をちょくちょく起こしているみたい。
ゼンベーおじいちゃん、領主に対する苦情ってそっち方面しか思い浮かばないみたいだよ。
「違うわよ、こいつ、私の保護下にある者達に手出ししようとしたのよ。
私、今、耳長族の里を一つ、保護下に置いているのだけど。
こいつ、耳長族の娘を捕らえようとして、そこに転がっている騎士を送って来たのよ。
私の身内に手を出されて黙っている訳には行かないからね。
落とし前をつけてもらいに来たの。」
アルトが簡単に事情を説明すると、ゼンベーおじいちゃんはポンと手を打って。
「最近評判の耳長族の剣舞とは、妖精さんが一枚噛んでらしたのですか。
私も一度見に行きたいとは思っていたのですが。
何せ、野良仕事が忙しくて時間が取れませんし、路銀も掛かるものですからな。
中々、見物に行く機会もなったのですわ。」
いや、いや、耳長族のお姉ちゃんがしているのは伴奏だから、剣舞は『STD四十八』の仕事だから。
ゼンベーおじいちゃんの耳に届くまでに、噂がごっちゃになっちゃってる。
でも、ゼンベーおじいちゃんのセリフって、何か貴族らしくないね。
『野良仕事が忙しい』とか、『路銀も掛かる』とか。
「耳長族なんて、人に狙われ易い者達が大ぴらに興行が続けられることが不思議だったのですよ。
言っちゃあ何ですが、あの辺境の町は、統治を放棄してしまった無法地帯。
はぐれ冒険者の吹き溜まりなんで、あっという間に拉致されるんじゃないかと思いました。
妖精さんの加護の下にあるのなら納得ですなあ。
しかし、この騎士共も大バカですな。
精霊さんを目にしたなら、とっとと尻尾を巻いて逃げて来れば良いものを。
まあ、こいつらも、冒険者と似たり寄ったりの輩ですから、いい薬になった事でしょうよ。」
折り重なって倒れている騎士達を見ながら、ゼンベーおじいちゃんは心底呆れたという感じで言ったんだ。
自分の屋敷に仕えている騎士に向かって、『冒険者と似たり寄ったりの輩』って、酷い言いようだよ。
**********
「それじゃ、あんたの息子とこの騎士共はもらっていくわね。
こいつらを王様の前に突き出して。
監督不行き届きの罰として、王様を厳しくお仕置きするつもりなの。
あの王様、厳しく躾けないと、ちゃんと仕事しないものだからね。」
アルトがゼンベーおじいちゃんにそう告げると。
「まあ、仕方がありませんな。
倅がそこに転がっているのを見ると…。
倅も不始末を詫びることなく、妖精さんに無礼を働いたのでしょう。
自分の仕出かした愚かなことの報いを受けるのですから、自業自得ですな。
まあ、倅が死罪になって、お家取り潰しになれば、儂も肩の荷が下りるというもんです。
儂は、娘と二人で畑でも耕してのんびり余生を送りますわ。」
ゼンベーおじいちゃんは領主を諦めの目で見つめてから、ホッとした表情を見せて言ったの。
その言葉通り、ホントに肩の荷が下りたって感じだった。
普通、貴族ってお家の存続に凄くこだわるもんだと思っていたから意外な反応だったよ。
いったい、何が起こってるんだろう。
「おい、親父、何を勝手な事を言ってんだ。
耳長族の娘を捕らえて、オークションに掛ければ、どえらい金が入ってくるんだぞ。
男爵家の復興だって夢じゃないんだ。
それにな、親父が結婚しろ、結婚しろと、年増女ばかり勧めてきてウンザリだったんだ。
俺の好みの女を連れてくると、まだ世継ぎが産める年じゃないからダメだと言うし。
いつまでも若い耳長族だったら、俺好みの良い女だっているかも知れねえだろうが。
まとまった数の耳長族を手に入れれば、万事上手くいくんだぞ。
それなのに、なに、そんな羽虫の言いなりになっているだよ。
死罪とか、お家取り潰しとか、縁起でもないことを言いやがって。
そんな事より、その羽虫を捕まえて、耳長族の里の在り処を吐かせるんだ。」
その時、おいらに肘を粉砕された痛みで、今まで蹲っていた領主が耐えかねたように大声を上げたんだ。
「なんだ、おまえ、妖精さんを羽虫呼ばわりしたのか。
そんな無礼なことをして殺されずに済んだのなら運がよかったな。
もっとも、王都で処刑されるのとどちらが楽かは知らんがな。」
「だから、なんで、俺の死罪が確定なんだよ!
たかが羽虫を、羽虫と呼んだだけじゃねえか。
なんで、おめえら、そんな羽虫に媚び諂っているんだ。
頭、おかしいんじゃないか!」
「ふぇ? おまえ、王都の貴族学校で習わんかったのか?
おまえ、浅慮で、考えなしだが、杓子定規に物を覚えるのだけは得意だったよのう。
貴族学校を全優で卒業して来た時には目を疑ったもんだが…。
あの貴族学校、いったい何を考えておるんだ、こんな大事なことを教えんなんて。
二百年前に出された王の勅令で、妖精さんの機嫌を損ねる行為は一切禁じられているぞ。
勅令に反した者は、その事情を問わず死罪だと定められておる。
当たり前よの、そうせんと、王自身の命が危ういのだから。」
うん、そのこと、当の王様自身が知らなかったよ。
貴族学校がどんなところか知らないけど、きっと今の王様の代になってから教えなくなったんだと思うよ。
王様、二百年前にアルトの勘気に触れて国が滅びかけたという話をデマだと思ってたから。
きっと、『そんな子供騙しの作り話は教えるな』とか言ったに違いないよ。
「そんな、バカな…。」
ゼンベーおじいちゃんから、勅令の話を知らされて領主は真っ青になっていたよ。
二百年前の話が、事実であろうが、なかろうが、現に勅令があるのなら従わないといけないものね。
この国では、法の一番上に勅令がくるってモカさんが言ってたから。
**********
「それじゃ、こいつらはもらっていくわね。」
アルトが、領主と騎士達を『積載庫』に放り込み、立ち去ろうとすると。
「妖精さん、もうお帰りですか?
これから王都まで行くようなことを言ってましたが。
もう日が暮れますよ。
お連れのお嬢さんにも、夜の移動は負担でしょう。
良かったら、今日はここに泊まっていきませんか。
儂が丹精込めて作った野菜でお持て成しさせて頂きましょう。」
ゼンベーおじいちゃんがおいら達に泊まっていかないかと誘って来たんだ。
「お父様、お泊り頂くのはいっこうにかまいませんが…。
おもてなしするにも、我が家には本当に自家菜園の野菜しかございませんよ。
かえって失礼になってしまうのでは?」
娘のライムお姉さんが、ゼンベーおじいちゃんに恥ずかしそうに言ってたの。
実際のところ、おいらはアルトの積載庫の『特等席』で寝るから夜の移動も苦じゃないし。
今日は、途中で泊る事を考えて『積載庫』の中にいるみんなには、夕食と明日の朝食を渡してあるんだ。
パンの実と腸詰を一人に二食分ずつ、それに『妖精の泉』の水をたっぷりね。
アルトはこのまま王都へ向かうつもりだったんで、難色を示したんだけど。
おいらは、ゼンベーおじいちゃんとライムお姉さんの暮らしぶりが気になったの。
ゼンベーおじいちゃんのセリフもツッコミどころ満載だったもんね。
「ねえ、アルト、ゼンベーおじいちゃんがせっかく招いてくれてるんだから。
今日はお世話になったらどうかな?」
そう告げると、おいらに甘いアルトの事、「マロンがそう言うのなら」って言ってくれたんだ。
こうして、ゼンベーおじいちゃんのお言葉に甘えて泊っていくことになったけど。
「どうしましょう、最近お客様が見えられたことなんてなかったから。
台所に本当に何もないわ…。」
ライムお姉さんが、マジに困っちゃったみたいだったの。
「ねえ、アルト、アルトの不思議空間からアレ出して。」
おいらがアルトに言うと、阿吽の呼吸って言うのかな。
アルトは、「ああ、アレね、分かったわ、はいどうぞ」と言ってくれたの。
その声にあわせるように、おいらは自分の『積載庫』からライムお姉さんの前に出したよ。
『うさぎ』のお肉の塊と『砂糖』、『ハチミツ』、『メイプルシロップ』を。
『うさぎ』と『すっぽん』なら、まだまだ、沢山あるからね。
「これ、今晩お世話になる感謝の印です。
ほんのささやかなものですけど、お納めください。」
おいらがそう言って差し出すと、ライムお姉さん、凄く情けなさそうな表情になったよ。
きっと、子供のおいらに気遣いさせて、肩身が狭かったんだと思う。
「申し訳ございません、お客様にお気遣いさせてしまって…。
でも、助かりました。
さっそく、このお肉を使って夕食の準備をしますね。
お父様と私が育てた野菜、とっても美味しいので楽しみにしていてくださいね。
砂糖も、ハチミツも切らしていたので、助かります。
有り難うございました。」
そんな言葉を口にして、ライムお姉さんは頭を下げたんだ
貴族だよね…、この家。どうしてそんなに慎ましやかなの?
前領主のおじいちゃんは、アルトに気付かないでおいらに領主の不始末を謝り始めたの。
アルトったら、無視されてまた機嫌を損ねたんだけど。
「おやま、妖精さんがお客さんとは珍しい。
この目で見るのは、いったい何前年振りだろうか。
今日は良い事がありそうだ。
良く来てくださった。
儂は、この屋敷の隠居でゼンベーと申します。
小汚い屋敷ですが、どうぞゆっくりしていってください。」
アルトの声でやっとその存在に気付いた様子で、呑気に歓迎の言葉を掛けたんだ。
目の前で息子が苦しんでいるのに、良い事がありそうだって…。
「なんか、調子の狂うおじいちゃんね。
私は怒っているのよ、まったく…。」
呑気なゼンベーおじいちゃんの言葉にアルトも毒気を抜かれたようで、怒りを鎮めたみたい。
「それで、妖精さんがどのようなご用件ですかね。
いかな、うちの倅が幼女にしか興味が無いど変態だと言っても…。
妖精さんでは、いささか小さすぎると思いますが。」
今の領主、常日頃、そっち方面の問題をちょくちょく起こしているみたい。
ゼンベーおじいちゃん、領主に対する苦情ってそっち方面しか思い浮かばないみたいだよ。
「違うわよ、こいつ、私の保護下にある者達に手出ししようとしたのよ。
私、今、耳長族の里を一つ、保護下に置いているのだけど。
こいつ、耳長族の娘を捕らえようとして、そこに転がっている騎士を送って来たのよ。
私の身内に手を出されて黙っている訳には行かないからね。
落とし前をつけてもらいに来たの。」
アルトが簡単に事情を説明すると、ゼンベーおじいちゃんはポンと手を打って。
「最近評判の耳長族の剣舞とは、妖精さんが一枚噛んでらしたのですか。
私も一度見に行きたいとは思っていたのですが。
何せ、野良仕事が忙しくて時間が取れませんし、路銀も掛かるものですからな。
中々、見物に行く機会もなったのですわ。」
いや、いや、耳長族のお姉ちゃんがしているのは伴奏だから、剣舞は『STD四十八』の仕事だから。
ゼンベーおじいちゃんの耳に届くまでに、噂がごっちゃになっちゃってる。
でも、ゼンベーおじいちゃんのセリフって、何か貴族らしくないね。
『野良仕事が忙しい』とか、『路銀も掛かる』とか。
「耳長族なんて、人に狙われ易い者達が大ぴらに興行が続けられることが不思議だったのですよ。
言っちゃあ何ですが、あの辺境の町は、統治を放棄してしまった無法地帯。
はぐれ冒険者の吹き溜まりなんで、あっという間に拉致されるんじゃないかと思いました。
妖精さんの加護の下にあるのなら納得ですなあ。
しかし、この騎士共も大バカですな。
精霊さんを目にしたなら、とっとと尻尾を巻いて逃げて来れば良いものを。
まあ、こいつらも、冒険者と似たり寄ったりの輩ですから、いい薬になった事でしょうよ。」
折り重なって倒れている騎士達を見ながら、ゼンベーおじいちゃんは心底呆れたという感じで言ったんだ。
自分の屋敷に仕えている騎士に向かって、『冒険者と似たり寄ったりの輩』って、酷い言いようだよ。
**********
「それじゃ、あんたの息子とこの騎士共はもらっていくわね。
こいつらを王様の前に突き出して。
監督不行き届きの罰として、王様を厳しくお仕置きするつもりなの。
あの王様、厳しく躾けないと、ちゃんと仕事しないものだからね。」
アルトがゼンベーおじいちゃんにそう告げると。
「まあ、仕方がありませんな。
倅がそこに転がっているのを見ると…。
倅も不始末を詫びることなく、妖精さんに無礼を働いたのでしょう。
自分の仕出かした愚かなことの報いを受けるのですから、自業自得ですな。
まあ、倅が死罪になって、お家取り潰しになれば、儂も肩の荷が下りるというもんです。
儂は、娘と二人で畑でも耕してのんびり余生を送りますわ。」
ゼンベーおじいちゃんは領主を諦めの目で見つめてから、ホッとした表情を見せて言ったの。
その言葉通り、ホントに肩の荷が下りたって感じだった。
普通、貴族ってお家の存続に凄くこだわるもんだと思っていたから意外な反応だったよ。
いったい、何が起こってるんだろう。
「おい、親父、何を勝手な事を言ってんだ。
耳長族の娘を捕らえて、オークションに掛ければ、どえらい金が入ってくるんだぞ。
男爵家の復興だって夢じゃないんだ。
それにな、親父が結婚しろ、結婚しろと、年増女ばかり勧めてきてウンザリだったんだ。
俺の好みの女を連れてくると、まだ世継ぎが産める年じゃないからダメだと言うし。
いつまでも若い耳長族だったら、俺好みの良い女だっているかも知れねえだろうが。
まとまった数の耳長族を手に入れれば、万事上手くいくんだぞ。
それなのに、なに、そんな羽虫の言いなりになっているだよ。
死罪とか、お家取り潰しとか、縁起でもないことを言いやがって。
そんな事より、その羽虫を捕まえて、耳長族の里の在り処を吐かせるんだ。」
その時、おいらに肘を粉砕された痛みで、今まで蹲っていた領主が耐えかねたように大声を上げたんだ。
「なんだ、おまえ、妖精さんを羽虫呼ばわりしたのか。
そんな無礼なことをして殺されずに済んだのなら運がよかったな。
もっとも、王都で処刑されるのとどちらが楽かは知らんがな。」
「だから、なんで、俺の死罪が確定なんだよ!
たかが羽虫を、羽虫と呼んだだけじゃねえか。
なんで、おめえら、そんな羽虫に媚び諂っているんだ。
頭、おかしいんじゃないか!」
「ふぇ? おまえ、王都の貴族学校で習わんかったのか?
おまえ、浅慮で、考えなしだが、杓子定規に物を覚えるのだけは得意だったよのう。
貴族学校を全優で卒業して来た時には目を疑ったもんだが…。
あの貴族学校、いったい何を考えておるんだ、こんな大事なことを教えんなんて。
二百年前に出された王の勅令で、妖精さんの機嫌を損ねる行為は一切禁じられているぞ。
勅令に反した者は、その事情を問わず死罪だと定められておる。
当たり前よの、そうせんと、王自身の命が危ういのだから。」
うん、そのこと、当の王様自身が知らなかったよ。
貴族学校がどんなところか知らないけど、きっと今の王様の代になってから教えなくなったんだと思うよ。
王様、二百年前にアルトの勘気に触れて国が滅びかけたという話をデマだと思ってたから。
きっと、『そんな子供騙しの作り話は教えるな』とか言ったに違いないよ。
「そんな、バカな…。」
ゼンベーおじいちゃんから、勅令の話を知らされて領主は真っ青になっていたよ。
二百年前の話が、事実であろうが、なかろうが、現に勅令があるのなら従わないといけないものね。
この国では、法の一番上に勅令がくるってモカさんが言ってたから。
**********
「それじゃ、こいつらはもらっていくわね。」
アルトが、領主と騎士達を『積載庫』に放り込み、立ち去ろうとすると。
「妖精さん、もうお帰りですか?
これから王都まで行くようなことを言ってましたが。
もう日が暮れますよ。
お連れのお嬢さんにも、夜の移動は負担でしょう。
良かったら、今日はここに泊まっていきませんか。
儂が丹精込めて作った野菜でお持て成しさせて頂きましょう。」
ゼンベーおじいちゃんがおいら達に泊まっていかないかと誘って来たんだ。
「お父様、お泊り頂くのはいっこうにかまいませんが…。
おもてなしするにも、我が家には本当に自家菜園の野菜しかございませんよ。
かえって失礼になってしまうのでは?」
娘のライムお姉さんが、ゼンベーおじいちゃんに恥ずかしそうに言ってたの。
実際のところ、おいらはアルトの積載庫の『特等席』で寝るから夜の移動も苦じゃないし。
今日は、途中で泊る事を考えて『積載庫』の中にいるみんなには、夕食と明日の朝食を渡してあるんだ。
パンの実と腸詰を一人に二食分ずつ、それに『妖精の泉』の水をたっぷりね。
アルトはこのまま王都へ向かうつもりだったんで、難色を示したんだけど。
おいらは、ゼンベーおじいちゃんとライムお姉さんの暮らしぶりが気になったの。
ゼンベーおじいちゃんのセリフもツッコミどころ満載だったもんね。
「ねえ、アルト、ゼンベーおじいちゃんがせっかく招いてくれてるんだから。
今日はお世話になったらどうかな?」
そう告げると、おいらに甘いアルトの事、「マロンがそう言うのなら」って言ってくれたんだ。
こうして、ゼンベーおじいちゃんのお言葉に甘えて泊っていくことになったけど。
「どうしましょう、最近お客様が見えられたことなんてなかったから。
台所に本当に何もないわ…。」
ライムお姉さんが、マジに困っちゃったみたいだったの。
「ねえ、アルト、アルトの不思議空間からアレ出して。」
おいらがアルトに言うと、阿吽の呼吸って言うのかな。
アルトは、「ああ、アレね、分かったわ、はいどうぞ」と言ってくれたの。
その声にあわせるように、おいらは自分の『積載庫』からライムお姉さんの前に出したよ。
『うさぎ』のお肉の塊と『砂糖』、『ハチミツ』、『メイプルシロップ』を。
『うさぎ』と『すっぽん』なら、まだまだ、沢山あるからね。
「これ、今晩お世話になる感謝の印です。
ほんのささやかなものですけど、お納めください。」
おいらがそう言って差し出すと、ライムお姉さん、凄く情けなさそうな表情になったよ。
きっと、子供のおいらに気遣いさせて、肩身が狭かったんだと思う。
「申し訳ございません、お客様にお気遣いさせてしまって…。
でも、助かりました。
さっそく、このお肉を使って夕食の準備をしますね。
お父様と私が育てた野菜、とっても美味しいので楽しみにしていてくださいね。
砂糖も、ハチミツも切らしていたので、助かります。
有り難うございました。」
そんな言葉を口にして、ライムお姉さんは頭を下げたんだ
貴族だよね…、この家。どうしてそんなに慎ましやかなの?
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