ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第六章 帰って来た辺境の町、唐突に姿を現したのは・・・

第128話 思いのほか評判が良いみたい

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 アルトの森、『妖精の泉』がある広場、その片方の端に『STD四十八』の連中を留まらせると。
 アルトは、広場の反対側の端に耳長族のお姉さんたちを『積載庫』から出したの。

 いきなり男連中が傍にいると警戒するかも知れないからね。
 なんて言っても連中、全員剣を持っているから。

 アルトは、『積載庫』から出したお姉さん達を三つのグループに分けて立たせたんだ。
 最初のグループは、父ちゃんが赤ちゃんを仕込んだお姉さん達。
 耳長族の里で若い娘から順番に二十人選んだという事なんで。
 見た目は十二、三歳から十五、六歳くらいまでだね。

「おっさん、あの少女を全員孕ましたんか。
 とんでもないおっさんだな、日本だったら淫行罪でブタ箱行きだぜ。」

 タロウがそんな呟きを漏らしながら、父ちゃんを白い目で見てたよ。
 うん、たしかに、一番若い子はまだ子供って感じで、おいらもヤバいって感じたよ。
 あれで、三十歳を過ぎていると言われても…。

 次のグループが本命のお姉さん方、十代後半から二十代前半の外見をしている三十人ほどの集まり。
 見た目に、『STD四十八』の連中にちょうど良い感じのお姉さん方だよ。

「すげえ、美人ばっかり、連中には勿体ないぜ。
 俺も、もうちょっとイケメンだったら、あと一人くらいは…。」

「なぁに、タロウ君は私一人じゃ不満なのかな。
 そんなに体力を持て余しているなら、お姉さん、もうちょっと頑張らせちゃうわよ。」

 タロウがポロッと本音を零したら、しっかりシフォン姉ちゃんの耳に届いちゃった。
 タロウ、シフォン姉ちゃんに耳を引っ張られてたよ。

 でも、タロウは最初から資格なしだと思うよ、『タネ無し』なんだもの。
 里の存続のための、子孫を残すという企画なんだから。

 そして、最期は、見た目が二十代後半から三十歳手前くらいのグループが三人。
 お姉さんと言うより、お母さんか若奥さんと言った感じ、おばちゃんにはまだ早いかな。
 落ち着いた雰囲気で、良家の若奥様といった感じの三人だった。
 この三人でだいたい九十歳前後だと言うんだからビックリだよ。

「俺は、おばさんはパスだな…。
 さすがに、見た目にダブルスコアはなぁ。
 それで、実年齢百歳とか言われたら萎えるぜ。」

 タロウったら、すっごく失礼なことを言ってた。

「タロウ君、そんな失礼なことを言っちゃダメよ。
 お姉ちゃんだって後十年したらあんな感じになるのよ。
 その時になって浮気したら、ちょん切るからね。」

 また、シフォン姉ちゃんに怒られてやんの。
 でも、ちょん切るってナニを?

      **********

 アルトは、広場の離れた場所にいる『STD四十八』の連中にそれぞれのグループの説明をしてたよ。
 それが済むと、耳長族のお姉さんのもとにやって来て。

「耳長族は元々体力がある種族じゃないから、女性ばかりになっちゃったら大変だったでしょう。
 最近はトレントも狩れていないんじゃない。
 これ、あの男達からのプレゼントよ、お近づきの印にって。
 連中が自分達で狩った、『シュガーポット』、『メープルポット』、『ハチミツ壺』よ。
 各自、全種類一つずつ持って帰って。」

 アルトは連中の点数稼ぎに、三種類の甘味料をプレゼントしたんだ。

「うわぁ、メイプルシロップなんて、三十年振り。
 最近は、森で採ったフルーツを干して甘み付けに使ってたから助かるわ。」

 若奥様っぽい雰囲気のお姉さんがそう言うと、

「私は、メイプルシロップなんて、生まれてから口にしたことが無いです。
 私が生まれた時には、トレントを狩れる人がもういませんでしたから。」

 一番、若いお姉さんがそんなこと言ってた。
 年長のお姉さんの言う『最近』って、ここ三十年のこと? なんか、スケールが違うよ…。

 アルトの予想通り、耳長族の里では甘味料に不自由していたようでみんなご機嫌だったよ。

 そして、

「さあ、お前たち、嫁さんが欲しければ、この娘達に良いところを見せなさい!」

 アルトの掛け声と共に一斉に剣を抜いた『STD四十八』の連中。
 人間の男が牙を剥いたかと、お姉さん方は一瞬驚きの表情を見せたんだけど…。

「キレイ…。」

 程なくして、感嘆の声を漏らしていたよ。
 
 そう、アルトのツボにはまった『STD四十八』自慢の剣舞を披露したんだ。
 この国で剣と言うと武骨な幅広で両刃の剣なんだけど。
 アルトが華やかさが無いと言って、剣舞用には細身で反りのある片刃の剣を持たしているの。
 アルトが何処かから調達してきたんだ。

 四十八人も密集していて良く相打ちとか、自傷とかしないなと感心しちゃうくらい息があっているの。
 軽やかなステップを踏みながら、立ち位置を入れ替えて踊るように剣を振る四十八人。
 細身の剣が勢い良く振り下ろされるときに、陽の光を反射してキラッと光るのもキレイだった。
 華麗に舞う連中の姿に、お姉さん方は見惚れていたよ。

 そして、剣舞が終るとお姉さん方から、連中に惜しみない拍手が送られてた。

      **********

 んで、お見合い、この後、どんな段取りなんだろうと思ったんだ。
 双方、本当に見合ったままなんだもの。
 
 ここでアルトが仕切らないと、せっかく盛り上がったのにシラケちゃうよ。
 双方遠慮して、積極的に話に行こうとしない様子を眺めてそう思っていたら。

 お姉さん方の中で一番年上の人が、センター(暫定)の『花菱攻めのサブ』に駆け寄ったの。

「とても、素敵な剣舞だったわ、お疲れさま。
 酷い汗ね、疲れたでしょう。」

 そして、労いの言葉をかけると、懐から出した拭き布で、額の汗を拭ってあげたんだ。

「き、恐縮です。
 あなたのような素敵なお姉さんに、汗を拭いていただけるとは夢のようです。」

「まあ、お上手。
 私、この中で一番の年上で、もうおばさんなんですよ。
 あなたより、ずっと年上。」

 ええ、そうでしょうとも、九十歳ですからね。その男は確かまだ十八歳のはず…。
 見た目にしても、三十歳くらいだから、大分年上に見えるよ。

 でも、…。

「いえ、お世辞なんかじゃないです。
 自分、年上の女性に憧れていて、嫁さんを貰うならあなたくらいの女性が良いなと思ってたんです。」

 そう返した『花菱攻めのサブ』。
 すると、『STD四十八』の連中からこんなひそひそ声が聞こえてきたよ。

「あいつ、王都にいる時、人妻ばっかりコマスもんだから、…。
 てっきり、寝取り属性があるのかと思ってたんだが。
 年増好みだったのか、知らなかったぜ。」

 どうやら、年上好みなのは本当のことみたい。
 片や、耳長族のお姉さんの方からはこんな囁きが聞こえたよ。

「ずるい、一人だけ抜け駆けしちゃって。
 あの人、自分が一番年上だから、積極的にいかないと売れ残っちゃうとか言ってたけど。
 まさか、真っ先に、しかも、一番いい男を狙いに行くとは…。
 さすが、オバチャンに片足ツッコんだ歳の人は違うわね。」

 そう言ってたお姉さんは、やっぱり年齢が上の三人の一人だったんだけど。
 慌てて、駆け出して行ったよ。

 これがきっかけになって、双方の接触が始まったの。
 やっと、お見合いらしくなったよ。

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