ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第五章 王都でもこいつらは・・・

第112話 おいらは見ちゃダメって…

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「さあ、『スイーツ団』に乗り込むわよ!」

 冒険者ギルド『アッチ会』の幹部たちを『積載庫』に詰め込んで気勢を上げるアルト。
 ここでもう一つやらないといけないことがあるのをすっかり忘れてるよ。

「アルト、スイーツ団に乗り込む前に監禁されているお姉ちゃん達を助け出すんじゃないの?」

 おいらが問い掛けるとハッとした顔をしたアルト、やっぱり忘れてたんだね。

「そうだったわね、忘れてたわ。
 ちょっと、あんた、このギルドに若い女を拉致監禁してるでしょう。
 これ以上、痛い目を見たくなければ、監禁部屋に案内しなさい。」

 アルトは、ゴロツキの一人にそう命じたの
 部屋の扉を粉砕した時に巻き添えを食って拭き吹き飛ばされて転がっていたゴロツキの一人だね。
 五人ほど転がっていて、明らかにこと切れているモノもいるけど。
 そのニイチャンは比較的軽症みたいだった。

「ひぃぃぃ、案内しやす、案内しやすから勘弁してくだせえっす。」

 ダラダラと冷や汗を流しながらそう答えたニイチャンに案内されたのは…。

「呆れた…。
 監禁部屋なんて言うから、どんな場所に隠してるモノかと思えば。
 堂々とギルドの一階にあるなんて、よくこれで世間様にバレなかったわね。」

 アルトが呆れている通り、監禁部屋は一階にあったんだ。
 正面ロビーの奥にあるカウンター、その横にある通路を更に奥に進んだどん詰まりに。
 監禁部屋なんて言うから、地下にでも隠すように造ってあるのかと思ったよ。

 案内のニイチャンは悪びれずにこんなこと言ったよ、全然反省の色が見えないの。

「一階と言っても、外壁は分厚い石の壁、窓がねえすっから。
 女どもが、泣こうが、叫ぼうが、外に音は漏れやせんので。
 それに、ギルドの入ってくるカタギなんて、依頼にくるモンだけっす。
 依頼カウンター以外の所をフラフラするカタギはまずいないっす。
 なんで、女を拉致って慰み者にしててもバレやしませんぜ。
 一階にあった方が、俺っち達がヤリたいときに、すぐヤレて便利っすからね。」

 まあ、ギルドの中ってホントにガラの悪い人がたむろってるから。
 依頼人だって、依頼を済ませたらとっとと立ち去りたいよね。
 こんな奥まで、ふらふら入ってくる怖いもの知らずの人はいないか。

     ********

 やって来た監禁部屋の前で。

「この時間だともうサカっているクズ共がいるわね。
 マロンの情操教育に悪いから、マロンは廊下で待っていてね。
 サカっているクズ共の始末はタロウに任せるわ。
 サッサとと始末するのよ。
 サカっているとこを見て興奮している暇はないわよ。
 鼻血でも出してボッとしてたらお仕置きだかね。」

 アルトは、おいらには廊下で待つように言ったんだ。
 この中では、ガキんちょのおいらに見せてはいけないことが繰り広げられているらしい…。
 シフォン姉ちゃんには、解放した女の人の世話を指示していたよ。

 そして、アルトたちは部屋に踏み込んだんだけど…。

「何よ、このすえた臭いが充満している部屋は!
 気分が悪くなるわ!」

 そんな、アルトの不機嫌な声が聞こえたかと思ったら。

 ダーン! ガシャ、ガシャ!

「アルト姉さん、そんな無造作に外壁に風穴開けたらヤバいって。
 石積みの建物なんだから、下手したら倒壊しちまうぞ。」

「そう、それじゃあ、建物が倒れて来る前にやることやっちゃいましょう。
 ほら、タロウ、もたもたしてないでクズ共を排除する!」

 部屋の中の余りにも不快な悪臭にキレたアルトが、外壁を粉砕して換気をしたみたいだね。
 よっぽどこもっていたようで、扉を開けた途端にモワって嫌な臭いが廊下まで漂って来たよ。
 この臭い何処かで嗅いだような…。
 そうだ、春、森の中に山菜を摘みに行った時に咲いていた栗の花の臭いに似てるんだ。 
 
「てめえら! 今、良いところなのにじゃまするんじゃねえ!」

 冒険者らしい、威圧的な声で怒鳴り散らす声が聞こえた来たよ。

「いい歳したおっさんが、真っ昼間から何やってんだよ!
 俺だって、そんな汚ねえおっさんのケツなんて見たかねえよ!」

「ウギャアアアアアア!」

「タロウ、股間蹴り上げはナイスよ。
 そうやって、その汚らわしいモノを二度と使い物にならないようにしちゃいなさい。」

 どうやら、怒声を上げたおっさんを、早速タロウが血祭りに上げたみたい。
 それを皮切りに、耳障りなおっさんの悲鳴が立て続けに聞こえて来て…。
 それが、十を超えた辺りで、ぱったりと止んだんだ。

    ********

「さすが、王都ね、冒険者を志願して田舎から出てくる女の子がこんなにいたのね。
 まさか、十人以上監禁されているとは思わなかったわ。」

 そんなアルトの声が聞こえてきたかと思うと。

「アタシの田舎でも、元気の良い女の子が冒険者になるって言って王都に出て行きましたよ。
 シュガートレントでも狩れるようになれば、『シュガーポット』と『スキルの実』で大儲け出来るって言って。
 田舎だとロクな働き場所が無いんで、冒険者の方が稼げると思っちゃうんですよ。
 アタシは荒事は苦手なんで、イケメンのおじさまに寄生して暮らしてたんだけどね。」

 シフォン姉ちゃんがそんな風に答えてた。
 シフォン姉ちゃんの知り合いだけでも、両手で余るくらいの女の人が冒険者になると言って田舎を出ていったらしよ。
 シフォン姉ちゃん、王都に出て来て女性冒険者を一人も見かけないので変だと思っていたんだって。
 シフォン姉ちゃんの知り合いも、きっと冒険者ギルドの餌になっちゃったんだろうって悲しむ声が聞こえたよ。
 
「げっ、冒険者になろうって女の子はそんなにいるんだ。
 でも、実際の女冒険者が一人もいないって…。
 それが全部、冒険者ギルドの監禁部屋に吸い込まれちまったってか。
 冒険者ギルドって、どんだけの女を毒牙に掛けてるんだ。
 ホント、とんでもねえ奴らだな。」

 そんなタロウの驚く声も聞こえてきた。

「あなた達、助けに来たわ。もう安心よ。
 このギルドの親玉連中は全て始末したわ。
 これで解放よ、さあ、こんなところサッサと出て行きましょう。
 早く服を着なさい。」

 アルトがそんな指示を飛ばしている声が聞こえたんだけど…。

「アタイら、着る服が無いんだ、全部ギルドの連中に取り上げられちまってよ。
 ギルドの連中、『どうせ、服なんか着ている暇ねえから要らねえよ』なんて言って。
 ここ窓がねえから、閉じ込められてどのくらい経つか分かんねえけど。
 実際、奴らが言う通り、服なんか着ている暇は無かったよ。
 朝から晩まで、それこそ寝る間が無いくらい。
 ガラの悪い連中がとっかえひっかえやって来るもんだから。」

 アルトの指示に対して、監禁されていたお姉ちゃんらしき人の服が無いって言葉が聞こえてきたよ。

「シフォン、廊下にいるマロンを連れてカウンターに行きなさい。
 この娘達の服を返してもらうの。
 つべこべ言うようなら、マロンをけしかけて。
 二、三人痛い目を見れば素直に従うだろうから。
 それと、この娘達、ベタベタに汚れてて、酷い臭いがする。
 私が持っている『水』で丸洗いしとくから。
 キレイな布を大量に巻き上げて来てちょうだい。」

 ああ、『妖精の泉』の水で洗うんだ。
 アルトの『積載庫』の中には、『妖精の泉』の水を無尽蔵に詰め込んであるからね。
 『虫』のスタンピードの時に病原菌に汚染された場所に散布するために大量に詰め込んだから。

 おいらはアルトの指示通り、シフォン姉ちゃんと一緒にカウンターに行ったんだ。

「ねえ、奥の『監禁部屋』に監禁しているお姉ちゃん達の服を返して。
 それから、体を拭けるようなキレイで柔らかい布がたくさん欲しいんだけど。」

 おいらはそうお願いして、念のため木製カウンターの天板をチョコンと殴っておいた。

 グシャ!

 ものの見事に破砕した分厚いカウンターの天板、相変わらず『クリティカル』が良い仕事するよ。

「ひぃぃぃ、はい、すぐにお持ちします。
 すぐにお持ちしますから、乱暴はしないでください。」

 ごちゃごちゃ文句言われてから見せしめに一人、二人やっつけるより、こっちの方が手っ取り早いよね。
 街中でブイブイ言わせているようなガラの悪いオッチャンが、情けない言葉を口にしながらすぐに対応してくれたよ。

   *******

 そして、無事に監禁されていたお姉ちゃん達を助け出したんだけど。
 
 ギルドの正面玄関前でアルトに言われたの。

「マロン、ちょっと、エクレアの屋敷に戻って騎士団長のモカを連れて来て。
 この娘達を保護してもらうのと、この娘達の不埒なマネをしたクズ共を摘発してもらうわ。
 私は、この扉の前で、人っ子一人逃がさないように見張っているから。」

 おいら、クッころさんの屋敷に帰って、王宮から帰って来たばかりのモカさんに事情を説明したんだ。
 そもそも、モカさんって、近衛騎士団の団長で街中まちなかの出来事は担当外のはずなんだけど。
 アルトの機嫌を損ねたら拙いと思ったようで、すぐに動いてくれたよ。

 仕事から帰ったばかりなのに、王宮に戻って騎士を連れて来てくれた、…百人も。

 そして、広域指定冒険者ギルド『アッチ会』の摘発が行われたんだ。
 なんか、いっぱい、悪事が明るみに出たみたい…。

 モカさんは、アルトに諸悪の根源の総長たちを捕縛させて欲しいと言ってたけど。

「こいらは、一日、二日、借りとくわ。
 ちょっと見せしめに使いたいんでね。
 使い終わったら、返しに行くから貸しておいてね。」

 って言って断っていた。

 いよいよ、『スイーツ団』に乗り込む気だね。   
 
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