ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第五章 王都でもこいつらは・・・

第106話 追手が現れたよ

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 コクコクとアルトからもらった『妖精の泉』を飲み干したシフォン姉ちゃん。

「そんな訳で、タロウ君これからよろしくね!
 お姉さん、うんとサービスしちゃうから。
 夜ハッスルし過ぎて、朝仕事に行くのをサボっちゃ、ダ・メ・よ・。」

 タロウの腕を胸の谷間に挟んだまま、そんな事を言ってた。
 おいら、さっきからアルトとシフォン姉ちゃんの会話を聞いてて、ふと思ったんだけど…。
 当のタロウが蚊帳の外だよ。
 タロウの気持ちも確認しないで、決めちゃって良いのかな。
 そう思って、タロウの顔色を窺うと。

「なんか、いきなりツキがまわって来たぜ。
 彼女いない歴=年齢の俺にこんなキレイな彼女が出来るなんて。
 何のチートも無しに、この世界に紛れ込んで…。
 一生スライム捕りに人生を費やすと聞いた日には絶望したもんだが。
 やっぱ、異世界転移した俺って、勝ち組だぜ!」

 まあ、タロウが喜んでいるなら問題ないね。
 でも、彼女が出来たくらいで、『勝ち組』なんだ…。なんだかなぁ。

    ********

 おいらが、タロウいう勝ち組のハードルの低さに呆れていると。

「おい、あのアマ、一体何処に逃げやがった!
 何としてでも、探しだせ!
 もうすぐ、あいつの初見世を競り落とした客が来ちまうぜ。
 もう、前金で半金貰っちまってるんだ。
 今更、ぎょくがいませんじゃ済まねえぜ。
 前金倍返しのうえ、信用丸潰れだ!」

「まったくだ、期待の新人泡姫ってことで、大枚叩いて姿絵まで作っちまったんだ。
 常連客に大々的に触れ込んで、初見世の競りまでやっちまったからな。
 逃げられたら、大損だぜ!」

「畜生、この人数で追い込みをかければ容易く風呂に沈められると思ったのに。
 まさか、準備して来るなんて言って、裏口から逃げ出すとは思わなかったぜ。」

 そんな叫び声を上げながら、広場の中を走り回る数人の男が目についたんだ。
 みんな、いかにも冒険者って風体のガラの悪いオッチャンとニイチャン。

「あいつらだよ。
 今朝いきなりやって来て、風呂屋で客を取れって脅してきた連中。
 冒険者ギルド『アッチ会』の奴らだって名乗ってた。」

 タロウにしがみ付いたまま、怯えた表情で言うシフォン姉ちゃん。

「あんた、姿絵なんて描かせたの?
 あいつら、初めから、あんたを風呂屋で働かせるつもりだったんじゃないの。」

 アルトが呆れたという顔で問い掛けると。

「だって、相棒がアタシのことを気に入った人がいるって言って。
 その人がアタシの姿絵が欲しがってるって言ってたんだもん。
 モデルになればお小遣いをくれるって言うから…。
 それに裸の絵とかじゃないよ、ちゃんと白いドレスを着て描いてもらったもん。
 立派な額縁に入れて何処かに飾るって言ってたの。」

 大枚叩いて姿絵を作ったって叫んでたけど、そんなたいそうなモノを作ったんだ…。

「白いドレスね…。無垢な初物ですってか。
 いかにも冒険者らしい、下衆な奴らの考えそうなことね。
 それはさぞかし、お金を掛けている事でしょうよ。
 風呂屋のフロントを飾るのですものね。
 あんた、本当に迂闊な娘ね。
 タロウとどっこいどっこいだわ。」

 良く分かんないけど、アルトの言ではシフォン姉ちゃんの行動は迂闊だったみたい。
 迂闊さではタロウと似たようなもんだって。
 おいら知ってるよ、そういうの『割れ鍋に綴じ蓋』って言うんだよね。
 これから一緒に住むんだったら、『似たもの夫婦』かな。

 そうこうするうちに…。

「おい、あそこにいるのがそうじゃねえっすか!」

 ニイチャンの一人がこっちを指差して、仲間に呼びかけたんだ。

「おおそうだ、あのアマ、こんな所に逃げ込んでたのか。」

 どうやら、見つかっちゃったみたいで、ガラの悪い連中がぞろぞろと集まって来たよ。

    ********

「おい、そんなところに隠れてねえで、観念してこっちへ来るんだ。」

 集まって来たゴロツキは十人。
 その中で一番偉そうなオッチャンが、恫喝するように言ったんだ。
 十人もかけて探してたなんて、是が非でもシフォン姉ちゃんを捕まえたかったんだね。

「イヤだよ!アタシは絶対に風呂屋なんかで働くもんか!」

 タロウにしがみ付いたまま、怯えながらも拒絶するシフォン姉ちゃん。

「てめえ、上納金のノルマも果たせねえで、なに生意気な口利いてるんでい。
 風呂屋でたんまり稼がせてやるって言ってるんじゃねえか。
 若いし、面も良いから、十年はたんまり稼げるぜ。
 つべこべ抜かしてると、ギルドの監禁部屋に押し込んでやるぞ!
 俺達冒険者に死ぬまでタダで使われるのと、金持ちのスケベじじいから金を巻き上げるの。
 どっちにするか、今ここで、選んでもらおうか。」  

 王都の冒険者ギルドにも監禁部屋があるんだね。
 時々、世間知らずの若い女の人が冒険者を志望してギルドへやってくることがあるらしいんだ。
 そんな女の人を、ギルドの連中、力尽くで監禁部屋に押し込めるんだって。
 冒険者の連中が寄って集ってオモチャにするらしいよ、何するのかは知らないけど。
 女性の冒険者がいないのは、どうやらそのせいらしい。

「そんなのどっちも嫌に決まってるでしょう!
 あたしはもうフラフラするのは止めたの。
 これからは、この人と二人で真面目に生きていくんだから。
 だいたい、あたし、あんたらの仲間になった覚えないんだけど。
 なんで、ノルマなんて言われなきゃならないのよ!」

「何勝手な事を抜かしてる。
 てめえ、俺達『アッチ会』の美人局グループに入ってただろう。
 俺達の看板をしょってたから、楽なシノギが出来たんだろうが。
 甘い汁だけ吸えるとでも思ってんのか。
 ちゃんと、看板の使用料は払ってもらわねえとな。」

 恫喝を拒絶するシフォン姉ちゃんをオッチャンは尚も脅すけど。
 シフォン姉ちゃん、ギルドの看板をしょっていたとは思っていないし。
 第一、オッチャンの言ってることがなんだか変だよ。

「ねえ、ねえ、オッチャン。
 オッチャンは、冒険者ギルド『アッチ会』の人なの?
 オッチャン、『アッチ会』の偉い人なのかかな?」

 おいらが、尋ねてみると。

「なんだ、このガキは、大人の話しに口を挟むんじゃねえよ。
 そうだよ、俺達は泣く子も黙る広域指定冒険者ギルド『アッチ会』のモンだ。
 俺は、舎弟頭のウツケーって言って、こいつらの兄貴分だ。
 俺が命令すれば、おめえら一人や二人闇に葬るのは簡単なんだぜ。
 だから、ケガをしたくなければ、ガキは口を挟まず黙ってろや。」 

 うん、言質とったよ。

「ねえ、シフォン姉ちゃんと組んでいたニイチャン、『スイーツ団』の人だと名乗ってたよ。
 『スイーツ団』って、ギルドと無関係なんじゃないの。
 何で、その『スイーツ団』の人と組んで美人局とかいう悪さをしてたのがギルドに関係あるの?」

 『スイーツ団』の理事長を名乗るゴーヨクは、『スイーツ団』とギルドは無関係みたいに言ってたモノね。
 『スイーツ団』の使用人は、余剰人員になってギルドを辞めてきた人達だって。
 だったら、ギルドに上納金を納めないといけない理由はないよ。

「ガキが知ったような口を利くんじゃねえ、生意気な。
 大人の世界には、『建て前』ってもんがあるんだよ。
 『スイーツ団』ってのはな、王都の三大ギルドが結託したもんだ。
 結託して『砂糖』の値を吊り上げているのがバレねえようにな。
 あいつらはな、今ででもそれぞれ所属するギルドの構成員だよ。」

 おいらがガキんちょだと思ってべらべらと自白したよ、ウツケーのおっちゃん。
 最初から予想していたことだけど、当の本人たちはシラをきってたんだよね。

「マロン、よく聞き出したわ。
 これで、心置きなく、ギルドの方へ乗り込める。
 こいつら、壊さないで生け捕りにしてギルドに引っ張ってくわよ。」

 おいらの背に隠れるようにして、目立たないようにしていたアルトが前へ出て来たよ。
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