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第五章 王都でもこいつらは・・・
第93話 家計の強い味方参上!
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食料品店のオバチャンの話を聞いたあと、おいら達は王都の広場にやって来たよ。
目の前に広がる広場は自由市場、近くの農村に住む人たちが農産物を持ち寄って自由に販売できる場所なんだって。
自由市場の名の通り、広場の場所代さえ払えば誰が何を売ってもかまわないんだって。
今も、農家のオバチャンらしき人が何人も、地面に敷物を広げて採れたての野菜を売ってるよ。
広場に着くと、アルトは隅っこに建っている掘っ立て小屋みたいな所へおいら達を連れて行ったんだ。
アルトが建物の中に声をかけると、建物の奥からお兄ちゃんが出て来て。
「はいよ、広場に露店を出すことをご希望ですか?
って、妖精?」
ここは、広場の場所代を支払う場所で、このお兄ちゃんは下っ端とはいえお役人さんらしいよ。
広場の使用は王宮が管理しているので良心的な場所代で使わせてもらえるみたい。
冒険者ギルドみたいな札付きが管理したら、法外な使用料を取られそうだもんね。
「なによ! 妖精じゃダメだっての?
自由市場は、場所代さえ払えば、誰が店を出しても良いんでしょう?」
アルトは、文句を付けるような言葉を口にしたんだけど。
その実、特に気分を害した様子でもなく、お兄ちゃんをからかっている感じだったの。
「いえいえ、滅相もございませんよ。
こちらは、場所代さえ払って頂ければ、来る者拒まずですから。
ただ、妖精族の方がお店を出したいと来られたのは初めてなので…。
少々、驚いただけです。
それで、いかがなさいますか。
一番狭いスペースが一日銅貨十枚、倍のスペースが一日銅貨二十枚になっています。
お得な、十日割引、一月割引、半年割引もございますよ。」
お兄ちゃんもアルトが笑っていたので本気で怒っているんじゃないと分かってるみたい。
アルトの苦情に特に動揺した様子も無く返答し、使い古した敷物を出してきたの。
どうやら、その敷物が露店のスペースになるみたい。
「取り敢えず、一番狭いスペースを今日一日で良いわ。
はい、これ、銅貨十枚ね。」
場所代を支払うと、その敷物と今日の日付が入った木札を渡されたよ。
露店を出す決まりとして、必ずその敷物を敷いて、木札を見える場所に掲げておくんだって。
商品は、その敷物の上に収まるように置かないといけないって注意されたよ。
「一応断っておきますが。
市場のトラブルにはこちらは関与いたしませんので。
何か問題が起きたら、当事者の間で解決してくださいね。」
最後にお兄ちゃんは、そんな注意を口にしたの。
お兄ちゃんとしては、誰にでも言っている決まり文句なのだろうけど…。
「ええ、助かるわ。
何かあったら、自分達で解決するから。
一切手出ししないでね。」
アルトは悪い笑みを顔を浮かべて、お兄ちゃんに返事をしたの。
予想外な返しだったからだと思うけど、お兄ちゃん、怪訝な顔をしていたよ。
********
掘っ立て小屋から出て、広場を見渡したアルトは。
「マロン、あの辺りにお店を広げましょう。
人通りがけっこう多いし、他の露店とちょっと離れた場所になってるからね。」
農家のオバチャン達が露店を出している場所から少し離れたところを指差したんだ。
そこまで移動したおいら達は、タロウに持たせた敷物を広げて店を開く準備を始めたの。
『シュガーポット』と『ハチミツ壺』を山ほど積み上げると。
ここに来る途中、予め繁華街のお店で買ってきた看板をその横に立てたんだ。
そこには、『どれでも一個銀貨一枚』と大書してもらってあるの。
すると、まだ準備が整う前に、目敏く看板に惹かれてやった来たオバチャンがいたよ。
「ねえ、そこのお嬢ちゃん、ここに積み上げてある『砂糖壺』と『ハチミツ壺』。
どれでも、銀貨一枚ってのは本当かい?
幾つ買っても、大丈夫なのかい?」
そんな風に尋ねてくるオバチャンに対しておいらは。
「そうだよ、どれでも銀貨一枚、一人一つなんてケチなことは言わないよ。
まだまだ、沢山あるから、欲しいだけ買っていってちょうだい。
ほら、こんな極上の『シュガーポット』だよ。」
手に取ったシュガーポットの頭の部分を錆びた包丁で切り落として見せたんだ。
すると、中には本当にぎっしりと詰まっていたようで、砂糖がサラサラと零れ落ちたの。
シュガーポットの中の砂糖をオバチャンの手のひらに少し振りかけてあげると。
オバチャンは、手のひらの上の砂糖をペロリと一舐めして。
「うん、間違いなく『砂糖壺』だね。
今、王都じゃ、これが値上がりしててね。
ホント、困ってたんだよ。
『砂糖壺』と『ハチミツ壺』、二つずつもらって行こうかね。」
そう言って、オバチャンは銀貨四枚を差し出してきたの。
おいらが、銀貨四枚を受け取ると。
オバチャンは、『砂糖』と『ハチミツ』を二つずつぶら下げていた買い物袋に詰めて言ったんだ。
「こうしちゃいられないよ。
売り切れる前に、近所の奥さん方に知らせて来なくちゃ。」
そして、あっという間に走り去っていったの。
「あのオバチャンのオバチャンパワーすげえな!
きっと、一時間後には王都中に知れ渡っているぜ。」
走り去るオバチャンを見ながらタロウが感心してたよ。
きっとタロウの予想通りだね、宣伝する手間が省けて良かったよ。
********
オバチャンの口コミを待つまでもなく、オバチャンと私のやり取りを見ていた人が集まってきたの。
さっきのオバチャン、やたらと声が大きかったので道往く人の耳に止まったみたい。
「ねえ、ねえ、今の話し本当かしら?」
と尋ねてきたオバチャンや、
「どれでも一つ銀貨一枚なんて助かるわ、以前と同じ値段だもの。」
と言うオバチャンが集まって来て、あっという間にお客さんに囲まれちゃった。
結局、そのままなし崩し的に開店となって、…。
最初に積みあげた百個ずつの『砂糖』と『ハチミツ』はあっという間に売り切れちゃった。
「ええええぇっ! もう売り切れなの?
近所の奥さんに知らせてもらって、すぐに出てきたって言うのに!」
さっきのオバチャン一号の話を聞いてやって来たと思しき奥さんが一人。
空になった敷物をみて悔しそうな顔をしてたよ。
「安心しなさい。
『シュガーポット』も『ハチミツ壺』も幾らでもあるわ。
今出してあげるから、ちょっと待ってなさい。」
アルトはそう言うと、おいらに追加を出すように目で指示を出したんだ。
おいらは、そ知らぬふりをして、敷物の上にまた『砂糖』と『ハチミツ』を積み上げたよ。
今度は、敷物の上に乗せられるだけ目いっぱい。
「あら、不思議…。
あんた達、これ何処から出したの?」
突然現れた『砂糖』と『ハチミツ』に、この奥さん、目を丸くしていたよ。
「これは、アルトの『妖精の不思議空間』に仕舞ってあったんだ。
今、アルトに追加で出してもらったの。
まだ、何千個もしまってあるから、慌てなくても平気だよ。
近所の奥さんにもそう言っておいて。」
「へえ、そうなんだ、妖精さんって、便利なものを持っているのね。
でも、助かったわ。
せっかく出て来たのに売り切れじゃ、ガッカリしちゃうもの。」
ホッとした表情を見せた奥さんは、やっぱり二つずつ買って上機嫌で帰って行ったよ。
そのくらいの時点で、オバチャンの口コミネットワークに乗って露店の噂は行き渡ったようで。
露店の前は身動きが出来ないほどお客さんが詰めかけていたんだ。
そんな時、…。
「おい、おい、いったい誰の許しを得てこんなところで甘味料を売っていやがるんでい!」
お客さんをかき分けるようにして、ガラの悪い連中が三人ほど姿を現したよ。
うん、ホント、おバカさん、簡単に釣れちゃうんだもん。
目の前に広がる広場は自由市場、近くの農村に住む人たちが農産物を持ち寄って自由に販売できる場所なんだって。
自由市場の名の通り、広場の場所代さえ払えば誰が何を売ってもかまわないんだって。
今も、農家のオバチャンらしき人が何人も、地面に敷物を広げて採れたての野菜を売ってるよ。
広場に着くと、アルトは隅っこに建っている掘っ立て小屋みたいな所へおいら達を連れて行ったんだ。
アルトが建物の中に声をかけると、建物の奥からお兄ちゃんが出て来て。
「はいよ、広場に露店を出すことをご希望ですか?
って、妖精?」
ここは、広場の場所代を支払う場所で、このお兄ちゃんは下っ端とはいえお役人さんらしいよ。
広場の使用は王宮が管理しているので良心的な場所代で使わせてもらえるみたい。
冒険者ギルドみたいな札付きが管理したら、法外な使用料を取られそうだもんね。
「なによ! 妖精じゃダメだっての?
自由市場は、場所代さえ払えば、誰が店を出しても良いんでしょう?」
アルトは、文句を付けるような言葉を口にしたんだけど。
その実、特に気分を害した様子でもなく、お兄ちゃんをからかっている感じだったの。
「いえいえ、滅相もございませんよ。
こちらは、場所代さえ払って頂ければ、来る者拒まずですから。
ただ、妖精族の方がお店を出したいと来られたのは初めてなので…。
少々、驚いただけです。
それで、いかがなさいますか。
一番狭いスペースが一日銅貨十枚、倍のスペースが一日銅貨二十枚になっています。
お得な、十日割引、一月割引、半年割引もございますよ。」
お兄ちゃんもアルトが笑っていたので本気で怒っているんじゃないと分かってるみたい。
アルトの苦情に特に動揺した様子も無く返答し、使い古した敷物を出してきたの。
どうやら、その敷物が露店のスペースになるみたい。
「取り敢えず、一番狭いスペースを今日一日で良いわ。
はい、これ、銅貨十枚ね。」
場所代を支払うと、その敷物と今日の日付が入った木札を渡されたよ。
露店を出す決まりとして、必ずその敷物を敷いて、木札を見える場所に掲げておくんだって。
商品は、その敷物の上に収まるように置かないといけないって注意されたよ。
「一応断っておきますが。
市場のトラブルにはこちらは関与いたしませんので。
何か問題が起きたら、当事者の間で解決してくださいね。」
最後にお兄ちゃんは、そんな注意を口にしたの。
お兄ちゃんとしては、誰にでも言っている決まり文句なのだろうけど…。
「ええ、助かるわ。
何かあったら、自分達で解決するから。
一切手出ししないでね。」
アルトは悪い笑みを顔を浮かべて、お兄ちゃんに返事をしたの。
予想外な返しだったからだと思うけど、お兄ちゃん、怪訝な顔をしていたよ。
********
掘っ立て小屋から出て、広場を見渡したアルトは。
「マロン、あの辺りにお店を広げましょう。
人通りがけっこう多いし、他の露店とちょっと離れた場所になってるからね。」
農家のオバチャン達が露店を出している場所から少し離れたところを指差したんだ。
そこまで移動したおいら達は、タロウに持たせた敷物を広げて店を開く準備を始めたの。
『シュガーポット』と『ハチミツ壺』を山ほど積み上げると。
ここに来る途中、予め繁華街のお店で買ってきた看板をその横に立てたんだ。
そこには、『どれでも一個銀貨一枚』と大書してもらってあるの。
すると、まだ準備が整う前に、目敏く看板に惹かれてやった来たオバチャンがいたよ。
「ねえ、そこのお嬢ちゃん、ここに積み上げてある『砂糖壺』と『ハチミツ壺』。
どれでも、銀貨一枚ってのは本当かい?
幾つ買っても、大丈夫なのかい?」
そんな風に尋ねてくるオバチャンに対しておいらは。
「そうだよ、どれでも銀貨一枚、一人一つなんてケチなことは言わないよ。
まだまだ、沢山あるから、欲しいだけ買っていってちょうだい。
ほら、こんな極上の『シュガーポット』だよ。」
手に取ったシュガーポットの頭の部分を錆びた包丁で切り落として見せたんだ。
すると、中には本当にぎっしりと詰まっていたようで、砂糖がサラサラと零れ落ちたの。
シュガーポットの中の砂糖をオバチャンの手のひらに少し振りかけてあげると。
オバチャンは、手のひらの上の砂糖をペロリと一舐めして。
「うん、間違いなく『砂糖壺』だね。
今、王都じゃ、これが値上がりしててね。
ホント、困ってたんだよ。
『砂糖壺』と『ハチミツ壺』、二つずつもらって行こうかね。」
そう言って、オバチャンは銀貨四枚を差し出してきたの。
おいらが、銀貨四枚を受け取ると。
オバチャンは、『砂糖』と『ハチミツ』を二つずつぶら下げていた買い物袋に詰めて言ったんだ。
「こうしちゃいられないよ。
売り切れる前に、近所の奥さん方に知らせて来なくちゃ。」
そして、あっという間に走り去っていったの。
「あのオバチャンのオバチャンパワーすげえな!
きっと、一時間後には王都中に知れ渡っているぜ。」
走り去るオバチャンを見ながらタロウが感心してたよ。
きっとタロウの予想通りだね、宣伝する手間が省けて良かったよ。
********
オバチャンの口コミを待つまでもなく、オバチャンと私のやり取りを見ていた人が集まってきたの。
さっきのオバチャン、やたらと声が大きかったので道往く人の耳に止まったみたい。
「ねえ、ねえ、今の話し本当かしら?」
と尋ねてきたオバチャンや、
「どれでも一つ銀貨一枚なんて助かるわ、以前と同じ値段だもの。」
と言うオバチャンが集まって来て、あっという間にお客さんに囲まれちゃった。
結局、そのままなし崩し的に開店となって、…。
最初に積みあげた百個ずつの『砂糖』と『ハチミツ』はあっという間に売り切れちゃった。
「ええええぇっ! もう売り切れなの?
近所の奥さんに知らせてもらって、すぐに出てきたって言うのに!」
さっきのオバチャン一号の話を聞いてやって来たと思しき奥さんが一人。
空になった敷物をみて悔しそうな顔をしてたよ。
「安心しなさい。
『シュガーポット』も『ハチミツ壺』も幾らでもあるわ。
今出してあげるから、ちょっと待ってなさい。」
アルトはそう言うと、おいらに追加を出すように目で指示を出したんだ。
おいらは、そ知らぬふりをして、敷物の上にまた『砂糖』と『ハチミツ』を積み上げたよ。
今度は、敷物の上に乗せられるだけ目いっぱい。
「あら、不思議…。
あんた達、これ何処から出したの?」
突然現れた『砂糖』と『ハチミツ』に、この奥さん、目を丸くしていたよ。
「これは、アルトの『妖精の不思議空間』に仕舞ってあったんだ。
今、アルトに追加で出してもらったの。
まだ、何千個もしまってあるから、慌てなくても平気だよ。
近所の奥さんにもそう言っておいて。」
「へえ、そうなんだ、妖精さんって、便利なものを持っているのね。
でも、助かったわ。
せっかく出て来たのに売り切れじゃ、ガッカリしちゃうもの。」
ホッとした表情を見せた奥さんは、やっぱり二つずつ買って上機嫌で帰って行ったよ。
そのくらいの時点で、オバチャンの口コミネットワークに乗って露店の噂は行き渡ったようで。
露店の前は身動きが出来ないほどお客さんが詰めかけていたんだ。
そんな時、…。
「おい、おい、いったい誰の許しを得てこんなところで甘味料を売っていやがるんでい!」
お客さんをかき分けるようにして、ガラの悪い連中が三人ほど姿を現したよ。
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