ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
上 下
71 / 848
第四章 魔物暴走(スタンピード)顛末記

第71話 それも大事かも知れないけど…

しおりを挟む
*本日、お昼に1話投稿しています。
 まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
 よろしくお願いいたします。

     ********

 にっぽん爺とタロウが帰って、残ったのはおいらとクッころさん、そしてノイエ。

「正直、見直したわ。
 アタシ、あんたは口先だけで、脳ミソお花畑のおバカさんかと思ってたわ。
 レベルを与えたところで、大して役に立たないと思ってたのよ。
 魔物に対峙した途端、恐れをなして逃げ出すんじゃないかと思ってた。
 でも、あんたは見事に戦って見せた。
 少なくとも、勢いだけで空回りしていたさっきの男よりもずっと役に立った。
 あんたを笑い者にして悪かったと思ってね。謝りに来たのよ。」

 クッころさんにそう告げて、軽く頭を下げたノイエ。
 クッころさんに用件というのは、馬鹿にしたことを謝りたかったみたい。

「良いのですわ。
 ノイエさんの言う通り、わたくしはレベルを与えてもらわなければ何もできない存在でしたから。
 馬鹿にされても仕方ありませんわ。
 レベルを与えてくださったノイエさんには感謝することこそあれ、謝って頂くほどのことはございませんわ。
 改めて、レベルを与えてくださったノイエさんには深く感謝いたします。」

 そう言って改めて感謝の言葉を口にしたクッころさん。
 おいらは、そんな二人の会話を聞いてて、戦いの最中に感じた疑問を思い出したの。
 ついでだから、ここで尋ねることにしたんだ。

「ねえ、クッころさん、初めて魔物を相手にしてよくあれだけの動きが出来たね。
 複数の『蚊』を相手にしても、凄く冷静な身のこなしで全く引けを取ってなかったもん。
 全然訓練もしてないし、全く鍛えていない体で、良くあれだけの動きが出来ると感心したよ。」

 そう、『蚊』と対峙した時のクッころさん戦い方が妙に堂に入っていたこと。
 それがとても不思議だったんだよ。
 だって、初陣だよ、しかも、日頃鍛錬を怠っているのに…、あんなに巧く動けるモノなの?

「訓練をしていない? 失礼な。
 わたくしは、一日たりとも訓練を欠かしたことはございませんよ。」

「「はぁ?」」

 全く、予想だにしなかった返答に、ノイエと疑問の声が重なっちゃったよ。

「嘘おっしゃい、そのぷにぷにの二の腕で訓練なんてどの口が言いますか。
 全然鍛えた様子が無いじゃないですか。」

 ノイエがもっともなツッコミをすると。
 クッころさんは、ノイエのツッコミを全く理解できないって表情で言ったの。

「はあ? 訓練と体を鍛えることにどんな関係があるのかしら?
 騎士の訓練と言ったら…。」

「「騎士の訓練といったら?」」

 先を促す言葉がノイエと重り、固唾を飲んで次の言葉を待っていると…。

「イメージトレーニングに決まっているじゃないですか。」

 クッころさんが口にしたのは、これまた予想外の言葉だったよ。

「「イメージトレーニング?」」

「そうですわ。
 敵と対峙した時に、自分がどう動きたいか、いえどう動けばよいのか。
 その理想的な動きを常にイメージするのですわ。
 まさに常在戦場の心構えで、もし、今敵が襲ってきたらどう動けば良いかをイメージするのです。
 そして、そのイメージ通りに体が動けるようになるまで、…。」

「「動けるようになるまで?」」

「『生命の欠片』を取り込み、レベルアップを図るのです。
 騎士の強さとは、自分の理想とする動きに対するイメージ力とそれを実現するための財力ですわ。
 『生命の欠片』をそれ以上手に入れる手立てが無くなった時が、その騎士の限界なのです。」

 全くのレベル頼りだったとは…。
 クッころさんの理想とする身のこなしが、レベル十になった事で体現できるようになったみたい。
 やっと身体能力が、剣を振る時のイメージに追い付いたと言ってたよ。

 いや、確かに、イメージトレーニングも大事だとは聞くけど…。
 それだけってのはどうなの…。

 クッころさんが言うには、確かにレベル一とかレベル二だと、鍛錬したレベルゼロの方が強いけど。
 レベル五を超える頃から、どんなに鍛錬してもレベルゼロでは太刀打ちできなくなるらしいの。
 そんな状況なんで、貴族たちは財力にあかせて『生命の欠片』を集めてレベルアップを図るんだって。
 その方が、鍛錬するより手っ取り早いし、何より、筋肉ムキムキの暑苦しい体つきにならずに済むから。

「だいたい、筋肉ムキムキの貴族なんて、優雅ではありませんわ。
 平素は、優雅に政や社交をこなし、いざという時にだけ民のために戦う。
 それが貴族階級である騎士なのですから、筋肉などと言う暑苦しいモノは不要ですわ。」

 なんてことを、当たり前のように言い切ってたよ、クッころさん。
 だから、貴族階級の高位騎士は見た目ひ弱そうだけど、無茶苦茶強いんだって。

 なんだかなあ…。

    ********

「アハハ! 何それ、バッカみたい!
 そんな風潮があるから、出世のためだか、自分の権勢を示すためだか知らないけど。
 レベルを上げるためだけに、『魔王』を倒そうなどと言う浅慮な愚か者が現れるのね。
 レベルだけに頼らないで、鍛錬しなさいよ。
 同じレベルなら、鍛錬した方が断然強くなれるのだから。」

 ノイエは、クッころさんの話を聞いて呆れて笑ってたよ。
 確かに、強くなるのにレベルだけが頼りなら、…。
 人を殺したり、『魔王』を倒したりして、レベルを奪おうとする身勝手な人がいてもおかしくないね。

 ましてや、レベルが騎士の階級に影響してくるのなら。
 クッころさん、レベル十になった時に言ってたもん、『レベル十と言えば将軍クラス』だって。

 すると、笑い止んだノイエがマジな顔をしてクッころさんに尋ねたの。

「それで、あんたはレベル十になって何か考えは変ったかしら。
 その力に溺れて、より強い力を欲するようになったんじゃない?
 今でも、民のためにその力を使うと誓える。
 レベルを上げるために、『魔王』や人を殺すようなことはしないと誓える。」

「いいえ、わたくし、自分の手に余るような力は要りませんわ。
 そもそも、わたくしが欲したのは民を守るための力ですもの。
 力を得るためにスタンピードを引き起こして民を危険に晒すなど本末転倒ですわ。」

 おっ、流石、騎士に夢見る乙女、クッころさん。
 ノイエの問い掛けに毅然として答えたよ。

「そう、その言葉忘れるんじゃないわよ。
 それじゃ、これを上げるわ。
 今回のスタンピードの配当よ、とっときなさい。」

 クッころさんの返答に満足げに笑ったノイエは、目の前に『生命の欠片』を積み上げたの。
 クッころさんは目を見張って尋ねたよ。

「これは?」

「『ハエ』、『蚊』、『ゴキブリ』がドロップした生命の欠片よ。
 全部回収しておいたの。
 あんた達人間に与えてもロクな事がないと思って独り占めしようかと思ったけど。
 あんたは、思ったよりも真っ当な人間みたいだから、分けることにしたの。
 十六万枚あるわ、それを取り込めばレベル十二まで上げられるはずよ。
 人間でレベル十を上回っている者は少ないわ。
 そこまで、上げておけば狙われても何とかなるでしょう。
 でも、油断したらダメよ。
 上には上がいるからね、決して自分のレベルをひけらかすんじゃないわよ。」

 ノイエは、クッころさんが中途半場にレベルが上がっているんで心配したみたい。
 人間の間でもレベル十までは、そこそこいるんで殺し合いの対象になり易いみたいなことを言ってた。

 これが、レベル十を超えると『生命の欠片』の必要枚数がぐっと増えてレベルを上げるのが難しくなるって。
 だから、レベル十一になれる人って凄く少ないんだって。
 レベル十二に至っては本当に稀だって。

「有り難うございます。お心遣いに感謝します。
 この『生命の欠片』の力で、必ずや『民』と『私自身』を守って見せますわ。」

 ノイエに深々と頭を下げて、クッころさんは『生命の欠片』を取り込んでいたよ。

 でも、ノイエ、百万枚くらい手に入れてたよね、随分と上前をハネたんだ…。

  ********

【お願い】
 現在行われています『第14回ファンタジー小説大賞』にエントリーしています。
 本日、投票最終日です。
 もし、まだ、投票がお済みでない方で、本作を気に入ってくださった方がいらっしゃれば投票して頂ければ幸いです。
 PCであれば作品名近くのオレンジ色のアイコン、スマホアプリなら目次ページの中央付近のアイコンで投票できます。  
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

処理中です...