ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第四章 魔物暴走(スタンピード)顛末記

第65話 騎士の意地を見せる時です! …自称ですけど

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 *本日、お昼に1話投稿しています。
 まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
 よろしくお願いいたします。

     ********

 騎士としての意気込みを見せたのは良いけれど…。
 騎士甲冑の重さに耐えきれずその場で情けなく崩れ落ちたクッころさん。
 さすが、なんちゃんて騎士、期待を外さないポンコツさだね。

 おいらが、立ち上がれないクッころさんの甲冑を外していると。

「アハハ!なに、その、おっかしいの!
 自分の鎧を着て立ち上がれない騎士なんて初めて見たわ。
 それで、すばしっこい魔物と戦おうなんて、底抜けのおバカさんね。」

 ノイエが、クッころさんを見て、お腹を抱えて笑い出したよ。
 意気込んで立ち上がろうとして崩れ落ちた光景が、ノイエの笑いのツボにはまったみたい。

「うるさいですわ。
 騎士として気を引き締めるために、騎士甲冑で出馬しようと思っただけですわ。
 そうですわね。
 おっしゃる通り、素早く動く魔物を相手に騎士甲冑は不利ですわね。
 マロン、革鎧に着替えて戦場に出ることにしますわ。」

 ノイエに笑い者にされて負け惜しみのように言ったクッころさん。
 凝りもせずに、魔物と戦うつもりだよ。

      ********

 そんな、クッころさんに近寄ったノイエ。
 何をするのかと見ていると、クッころさんの真っ白な二の腕をぷにぷにと突っついて。

「なに、この筋肉が全く付いていない腕…。
 こんな細腕で、魔物を相手しようと言うの。
 こんなんじゃ、『ハエ』が相手でも一撃でられるわよ。」

 あっ、おいらが遠慮して言わなかったことを、ストレートで言い放ったよ。

「黙らっしゃい!
 腕なんて関係ないです。
 大事なのは、騎士としての心のありようです。
 民が危険に晒されている時に、立ち向かえなくてどうして騎士が名乗れますか。
 民を守って戦うのであれば、たとえ躯を晒そうとも、騎士の本懐と言うものですわ。」

 いや、一撃でられちゃったら、一人も民を守れてないから…。

「アハハ! この娘、本当に底抜けのおバカさんね!
 そんな、根性論で魔物に勝てたら世話が無いわ。」

 ノイエが、クッころさんをお腹を抱えて笑い出したよ。 

「ふん、おバカで悪かったですわね。
 ここで、逃げたら、恥かしくて騎士とは名乗れませんわ。」

 いや、騎士になってないでしょうクッころさん。本来、騎士と名乗ったら身分詐称で怒られますよ。
 おいらが、二人の会話をツッコミどころ満載だと思って聞いてたら。

 ノイエがマジな顔をして尋ねたの。

「でも、そう言うおバカさんは嫌いじゃないわ。
 あなた、今回のスタンピードの原因、マロンから聞いたでしょう。
 どう思う?
 過去にあったスタンピードは少なからず人間の身勝手な振る舞いから起こっているの。
 あなたが誇りにしている騎士と言う奴が、我欲のために引き起こしたこともあるのよ。
 そのために、多くの民が犠牲になった事もあるの。
 あなたは、そんな身勝手な騎士をどう思う。あなたは、そうならないと言い切れる。」

「わたくしは、自分のレベルを上げるために『魔王』を倒すなんて振る舞いは絶対許せませんわ。
 そんな身勝手な理由で、民を危険に晒すなど言語道断です。
 今回、『魔王』を倒したのが、王侯貴族か冒険者かは分かりませんが。
 もし、騎士だとしたら、恥ずべきことだと思います。
 騎士とは、民を守るためにあるモノなのですから。
 わたくしは、そんな我欲に塗れた騎士には、絶対になりませんわ。」

 クッころさんって、ホント、騎士に夢見ると言うか…、そんなところは純粋なんだよね。
 クッころさんの返答を聞いたのノイエは、可笑しそうに笑い続けながら言ったの。

「その言葉、嘘はないわね。
 妖精に嘘をつくと、祟られるわよ。」

「噓なんて言いませんわ。
 わたくしは、わたくしの信じる騎士道を貫くだけですわ。
 たとえ、ここで朽ち果てようと後悔はしませんわ。」

 何かクッころさんの真意を探るかのように言うノイエに、クッころさんは毅然として答えたんだ。

「良く言ったわ、その言葉忘れんじゃないわよ。
 これをあげるわ、持って行きなさい。
 ただし、絶対に敵に背中を見せるんじゃないわよ。
 たとえ死んでも、民を守り通しなさい。
 それでもし、言葉通り死んだら、お腹を抱えて笑ってあげるわ。」

 そう言ってノイエは、クッころさんの前に積み上げたの。ご存じ、アレを…。
 妖精って、当たり前のように『積載庫』を持ってるんだね。

     ********

「こ、これは? 金貨?」

 『生命の欠片』を見たことが無いクッころさん、やっぱりタロウと同じ疑問を口にしたよ。

「あらイヤだ。
 あなた、騎士の娘なのに『生命の欠片』を見たこと無いの?
 それが、あなた達騎士が躍起になって欲しがる『生命の欠片』よ。
 本当は、自分のレベルを上げようと思って取っておいたのだけど。
 アタシのレベルじゃ、そのくらいだと端数みたいなもんだし。
 そのくらいなら、どうせすぐに貯まるからね。
 笑わせてもらった、お代だと思って取っといて。」

 いや、端数みたいなって…。
 それ、さっきアルトがタロウに与えたくらいありますよね…。
 いったい、妖精ってどんだけレベルが高いの。
 しかも、すぐに貯まるとか言ってるし。

「これが、『生命の欠片』…。」

 目の前に積み上がった金貨を、『生命の欠片』と知って呆然とするクッころさん。
 呆けているクッころさんに向かってノイエは言ったの。

「ほら、何を呆けているのよ。
 もう時間が無いわよ。
 戦うならさっさと、それを体に取り込みなさい。
 きっちり、二万枚、レベル十まで上げられるはずよ。」

 レベル十って、…。
 アルトと言い、ノイエと言い、そんなに大盤振る舞いしちゃって良いの?

「レベル十って、将軍クラスではないですか。
 わかりました、これは有り難くちょうだいします。
 この『生命の欠片』に秘められた力をもって、民を守り切って見せましょう。」

 力強く宣言して、クッころさんは『生命の欠片』をその身に取り込んだんだ。

 なんか、思わぬところで戦力が増えたよ。

  ********

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