ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
上 下
62 / 848
第四章 魔物暴走(スタンピード)顛末記

第62話 助っ人登場!

しおりを挟む
 スタンピードが収まるまで妖精の森に留まるように勧めてくれたアルト、でも…。

「アルト、あの街にはクッころさんやにっぽん爺がいる。
 他にもお世話になっている人がたくさん住んでるよ。
 みんなを見捨てることなんてできないよ。
 何とかならないかな?」

 おいらが、アルトに相談を持ち掛けると。

「悪いけど、今回はマロンを手助けする事は出来ないわ。
 私は、妖精の森の長として、この森の同族たちを守らないといけないから。
 だから、マロンにはこの森に留まって欲しいのよ。
 気分の悪い言い方かもしれないけど、私にとってはマロン以外の人間はどうなってもかまわないのよ。」

 アルトはこの森の上空に侵入する魔物を撃ち落とすので精一杯、おいらの手伝いは出来ないと言う。

「アルトに手伝って貰わずに、おいら一人で撃退することってできないかな?
 おいらのスキルがあれば、魔物を倒せると思うんだけど。」

「それは無理ね。
 相手がマロンを襲ってきてくれれば、太刀打ちできるでしょうけど。
 マロンでは、空を飛ぶ魔物にはどうする事も出来ないでしょう。
 まあ、この森の上空で大部分は撃ち落とせると思うから。
 町を襲撃する魔物はそう多くないはず。
 他の魔物ならそんな大きな被害は出ることないのだけど…。
 あいつらときたら、数匹で町一個壊滅させるくらいの病原菌をまき散らすからね。
 やっぱり、町に帰るのはお勧めしないわ。」

 そう言って、重ねて森に留まることを勧めるアルト。
 確かに、ちんちくりんのおいらじゃ、森の木々のはるか上を飛ぶ魔物には手が届かないや。

 すると…、。

「空を飛ぶ魔物か…。
 ゲームみたいに何とかヘイトを集めることが出来なねえのか?」

 なんてことを言い出したタロウ。

「『ヘイト』? 何それ?」

「ヘイトを集めるってのはな、相手に敵だと認識させて、攻撃を自分に集中させることだ。
 魔物が集団暴走してるのなら、マロンを敵だと認識したら闇雲に襲ってくるんじゃないか?」

 魔物の方に、おいらを敵だと思わせて襲ってくるようにさせるってこと?
 そんなに、都合良くいくものかな?
 タロウの言葉に首を傾げていると…。

「あっ、このバカ!」

 アルトが焦った顔をして言ったの。
 どうやら、できるらしいね…。

「アルト、タロウの言ったことってできるの?」

 おいらが問い掛けると、アルトは渋々話し始めたの。

「まあ、出来ると言えば、出来るわね。
 集団で暴走してる魔物の先頭に攻撃を仕掛けると、攻撃を仕掛けた者の方に向かってくるのよ。
 そうすると、後続の魔物もそれにくっついて進行方向を返るの。
 暴走している魔物の群れを別方向に誘導するために良く使う手だわ。
 マロンにそんな危険なことはさせられないから黙ってたのだけどね。
 あのバカが…。」

 言い終えたアルトは、タロウのことを忌々し気に睨んでたよ。

「でも、最初に攻撃をあてないよとダメだよね。
 おいらじゃ、手が届かない…。
 あっ、アルト、誰か妖精を一人、手助けに借りられないかな。
 アルトみたいに一撃で仕留める必要ないもんね、魔物の攻撃を集めるためなら。
 アルトみたいな強力なビリビリを使えなくても良いから。 
 空飛ぶ魔物に攻撃が届く妖精に協力してもらえないかな?」

「ほら、こんな危ないことを言い出す…。」

 おいらの言葉を聞いて、ため息をもらすアルトだけど…。
 おいらの決意が固いとみると。

「仕方ないわね。
 マロンの護衛を兼ねて、魔物のおびき寄せ役を一人付けてあげるわ。
 ノイエ、出てらっしゃい。」

 アルトは、渋々だけど手助けしてくれることになったんだ。
 それで、一人の妖精を呼んだの。

「はーい! お姉さまのノイエです!
 お姉さまから、お声が掛かるなんて嬉しいわ!
 どんな御用でしょう!」
 
 なんか、とってもテンションの高い妖精が出て来たよ…。

      ********

 アルトの呼びかけに応えて現れたノイエと呼ばれる妖精。
 アルトと同じサイズで、金髪とひらひらのドレスも共通だね。
 ただ、アルトと違って、髪はおいらと同じく肩下まで、ドレスの裾はかなり短くて太ももの下半分が露出しているよ。
 目はやや、釣り目勝ちで少し勝気な雰囲気なんだ。
 落ち着いた雰囲気のアルトに比べ、全体的に快活に見えるよ。

「ノイエ、申し訳ないけど、マロンに手を貸してくれないかしら。
 町を襲撃してくる魔物を撃退する手助けをして欲しいのよ。」

 アルトはノイエにして欲しいことを説明したのだけど…。

「ええええっ、この人間の手助けですかぁ…。」

 ノイエはあからさまに不機嫌な表情で、おいらを手助けすることに難色を示したんだ。

「あら、ノイエは私の頼みを聞いてくれないの?」

「だって、お姉さま、最近、その人間の娘にご執着で…。
 全然、ノイエのこと可愛がってくれないのですもの。
 ノイエだって、お姉さまから猫のように可愛がって欲しいのに。」

 どうやら、ノイエはおいらがアルトに可愛がられていることが気に入らないみたいだね。
 ノイエはアルトの事を凄く慕っているみたいで、ヤキモチ焼かれている様子だよ。

「仕方のないね…。
 それじゃあ、首尾よくマロンを助けてくれたら。
 ご褒美に、うんと可愛がってあげるわ。
 スタンピードが収まったら、一緒に寝ましょうね。」

「本当ですか? ノイエ、嬉しい!
 はい、じゃあ、ノイエ、頑張っちゃいます。
 約束ですよ! 絶対忘れたらイヤですからね!」

 ご褒美を口にしたアルトに、抱き付いて喜びの表情を表すノイエ。
 本当に、アルトを慕っているんだね。
 おいらが、仲良さげな二人と眺めて、そう思っていると…。

「キマシタワー!」

 私の耳元でいきなり、タロウが意味不明の叫び声を上げやがった。
 どうやら、また、チューニ病の発作を起こしたみたい。

 心臓に悪いから、耳元で叫ぶのは止めて欲しいよ。 
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...