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第四章 魔物暴走(スタンピード)顛末記

第62話 助っ人登場!

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 スタンピードが収まるまで妖精の森に留まるように勧めてくれたアルト、でも…。

「アルト、あの街にはクッころさんやにっぽん爺がいる。
 他にもお世話になっている人がたくさん住んでるよ。
 みんなを見捨てることなんてできないよ。
 何とかならないかな?」

 おいらが、アルトに相談を持ち掛けると。

「悪いけど、今回はマロンを手助けする事は出来ないわ。
 私は、妖精の森の長として、この森の同族たちを守らないといけないから。
 だから、マロンにはこの森に留まって欲しいのよ。
 気分の悪い言い方かもしれないけど、私にとってはマロン以外の人間はどうなってもかまわないのよ。」

 アルトはこの森の上空に侵入する魔物を撃ち落とすので精一杯、おいらの手伝いは出来ないと言う。

「アルトに手伝って貰わずに、おいら一人で撃退することってできないかな?
 おいらのスキルがあれば、魔物を倒せると思うんだけど。」

「それは無理ね。
 相手がマロンを襲ってきてくれれば、太刀打ちできるでしょうけど。
 マロンでは、空を飛ぶ魔物にはどうする事も出来ないでしょう。
 まあ、この森の上空で大部分は撃ち落とせると思うから。
 町を襲撃する魔物はそう多くないはず。
 他の魔物ならそんな大きな被害は出ることないのだけど…。
 あいつらときたら、数匹で町一個壊滅させるくらいの病原菌をまき散らすからね。
 やっぱり、町に帰るのはお勧めしないわ。」

 そう言って、重ねて森に留まることを勧めるアルト。
 確かに、ちんちくりんのおいらじゃ、森の木々のはるか上を飛ぶ魔物には手が届かないや。

 すると…、。

「空を飛ぶ魔物か…。
 ゲームみたいに何とかヘイトを集めることが出来なねえのか?」

 なんてことを言い出したタロウ。

「『ヘイト』? 何それ?」

「ヘイトを集めるってのはな、相手に敵だと認識させて、攻撃を自分に集中させることだ。
 魔物が集団暴走してるのなら、マロンを敵だと認識したら闇雲に襲ってくるんじゃないか?」

 魔物の方に、おいらを敵だと思わせて襲ってくるようにさせるってこと?
 そんなに、都合良くいくものかな?
 タロウの言葉に首を傾げていると…。

「あっ、このバカ!」

 アルトが焦った顔をして言ったの。
 どうやら、できるらしいね…。

「アルト、タロウの言ったことってできるの?」

 おいらが問い掛けると、アルトは渋々話し始めたの。

「まあ、出来ると言えば、出来るわね。
 集団で暴走してる魔物の先頭に攻撃を仕掛けると、攻撃を仕掛けた者の方に向かってくるのよ。
 そうすると、後続の魔物もそれにくっついて進行方向を返るの。
 暴走している魔物の群れを別方向に誘導するために良く使う手だわ。
 マロンにそんな危険なことはさせられないから黙ってたのだけどね。
 あのバカが…。」

 言い終えたアルトは、タロウのことを忌々し気に睨んでたよ。

「でも、最初に攻撃をあてないよとダメだよね。
 おいらじゃ、手が届かない…。
 あっ、アルト、誰か妖精を一人、手助けに借りられないかな。
 アルトみたいに一撃で仕留める必要ないもんね、魔物の攻撃を集めるためなら。
 アルトみたいな強力なビリビリを使えなくても良いから。 
 空飛ぶ魔物に攻撃が届く妖精に協力してもらえないかな?」

「ほら、こんな危ないことを言い出す…。」

 おいらの言葉を聞いて、ため息をもらすアルトだけど…。
 おいらの決意が固いとみると。

「仕方ないわね。
 マロンの護衛を兼ねて、魔物のおびき寄せ役を一人付けてあげるわ。
 ノイエ、出てらっしゃい。」

 アルトは、渋々だけど手助けしてくれることになったんだ。
 それで、一人の妖精を呼んだの。

「はーい! お姉さまのノイエです!
 お姉さまから、お声が掛かるなんて嬉しいわ!
 どんな御用でしょう!」
 
 なんか、とってもテンションの高い妖精が出て来たよ…。

      ********

 アルトの呼びかけに応えて現れたノイエと呼ばれる妖精。
 アルトと同じサイズで、金髪とひらひらのドレスも共通だね。
 ただ、アルトと違って、髪はおいらと同じく肩下まで、ドレスの裾はかなり短くて太ももの下半分が露出しているよ。
 目はやや、釣り目勝ちで少し勝気な雰囲気なんだ。
 落ち着いた雰囲気のアルトに比べ、全体的に快活に見えるよ。

「ノイエ、申し訳ないけど、マロンに手を貸してくれないかしら。
 町を襲撃してくる魔物を撃退する手助けをして欲しいのよ。」

 アルトはノイエにして欲しいことを説明したのだけど…。

「ええええっ、この人間の手助けですかぁ…。」

 ノイエはあからさまに不機嫌な表情で、おいらを手助けすることに難色を示したんだ。

「あら、ノイエは私の頼みを聞いてくれないの?」

「だって、お姉さま、最近、その人間の娘にご執着で…。
 全然、ノイエのこと可愛がってくれないのですもの。
 ノイエだって、お姉さまから猫のように可愛がって欲しいのに。」

 どうやら、ノイエはおいらがアルトに可愛がられていることが気に入らないみたいだね。
 ノイエはアルトの事を凄く慕っているみたいで、ヤキモチ焼かれている様子だよ。

「仕方のないね…。
 それじゃあ、首尾よくマロンを助けてくれたら。
 ご褒美に、うんと可愛がってあげるわ。
 スタンピードが収まったら、一緒に寝ましょうね。」

「本当ですか? ノイエ、嬉しい!
 はい、じゃあ、ノイエ、頑張っちゃいます。
 約束ですよ! 絶対忘れたらイヤですからね!」

 ご褒美を口にしたアルトに、抱き付いて喜びの表情を表すノイエ。
 本当に、アルトを慕っているんだね。
 おいらが、仲良さげな二人と眺めて、そう思っていると…。

「キマシタワー!」

 私の耳元でいきなり、タロウが意味不明の叫び声を上げやがった。
 どうやら、また、チューニ病の発作を起こしたみたい。

 心臓に悪いから、耳元で叫ぶのは止めて欲しいよ。 
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