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第四章 魔物暴走(スタンピード)顛末記
第61話 あまり、お近づきになりたくないよ…
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*本日、お昼に1話投稿しています。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
********
スタンピード、魔物の集団暴走、膨大な数の魔物が集団で町や村などを襲う大災害。
スタンピードに飲み込まれた町は壊滅的な打撃を受け、全滅なんてことも起きている。
稀にしか起こらないけど、起こった時は大被害という厄介なシロモノなんだ。
原因ははっきりしていないけど、…。
一つだけハッキリしているのは、『魔王』が倒されるとまず間違いなく発生するということ。
それまで、『魔王』によって抑制されていた闘争本能が突如として枷を外されたために起こるのではないかと言われてるんだ。
溜まっていた鬱憤が一気に噴き出す感じ?
アルトは、『ハエの王』が倒されて発生するスタンピードがおいらの住む町を襲うかも知れないと言ったんだ。
でも…。
「ねえ、アルト、おいらの町の近くに『ハエの王』がいたなんて聞いてないよ。
スタンピードって確かに怖い災害だけど、そんな広範囲に被害は及ばないでしょう。
おいらの町が襲われることなんかあるの?」
『魔王』が住むのは殆どが魔物の領域と呼ばれる人が住まない地域なんだ。
他種族との争いを好まない『魔王』が人間の町の近くに住んでいることは殆どないの。
それでも、スタンピードが起こると稀に人間の住む領域にまで入って来て町や村を襲うのだけど。
おいらの住む町と魔物の領域の間には、広大なこの森がある。
この森、アルトの支配する妖精の森なんだけど、とんでもなく広いだけじゃないんだ。
アルトの不思議な力で、妖精族以外はアルトの許可がないと入れなくなっているの。
現状、入れるのはおいらとタロウだけなの。
当然、魔物は入れないから、スタンピードを起こしても大きく森を迂回することになる。
とても、おいらの住む町を襲うとは思えない。途中で襲える他の町や村があるしね。
「そうね、普通ならそうでしょう。
でも、『ハエの王』の配下の魔物って、…。
『ハエ』、『蚊』、『ダニ』、『ノミ』、『ゴキブリ』の魔物なのよ。
『ダニ』と『ノミ』は確かにこの森に阻まれて迂回するでしょうけど…。
ほら、あれ!」
アルトは、話の途中で言葉をとめて空を指差したんだ。
そこには大きな茶色の物体が小刻みに翅を動かして飛んでたの。
アルトは空に向かって…。
「その汚らわしい体でこの森の空を穢さないで!」
そう叫ぶとビリビリを放ったの。
空を飛ぶ茶色い物体はビリビリがあたるとあっという間に燃え尽きた。
人の大人の体よりはるかに大きな魔物を一瞬で消し炭にしたアルトのビリビリ。
本気を出すとあんなに凄いんだ。
いつもはあれでも大分手加減してるんだね。
「本当は、殺生はご法度なんだけど、今回はそんなこと言ってられないわ。
あいつら、空からでも病原菌をまき散らすから。
私の森にまき散らされて、同族に被害が出たら困るもの。
完全に焼き尽くさないと、死体からも病原菌をまき散らすから堪ったもんじゃないわ。
見ての通りよ、あいつらときたら、私の結界の上を飛ぶのよ。
それで、昨日、『魔王』が倒されると一斉に四方に向かった飛び立ったらしいの。
きっと、今のがこの方向に飛んで来た第一陣ね。
これから、しばらく、どんどん飛んで来ると思うわ。」
どうやら、『ハエ』、『蚊』、『ゴキブリ』の魔物は妖精の森の上空を飛んで行くみたい。
妖精の森を突っ切ると、『ハエの王』のテリトリーからおいらの町まで意外と近いらしいね。
********
『ハエ』、『蚊』、『ゴキブリ』の魔物って、おいらは初めて知った魔物ばかりだ。
魔物じゃない、『ハエ』、『蚊』、『ゴキブリ』って言う虫は知ってるけど…。
正直、お近づきになりたいものじゃないよね。悪い予感しかしないよ。
「ねえ、アルト、町を襲ってくる魔物ってどんな攻撃をしてくるの?」
おいらが問い掛けると。
「直接的な攻撃が怖いのは、『蚊』くらいかしら。
『蚊』は針ような口先で動物を突き刺して血を吸うの。
人くらいの大きさがあるから、あっという間に人の血を吸い尽くすわ。
他は、直接の攻撃力は大したことないのだけど…。
『蚊』も含めて、怖いのは直接攻撃じゃなくて、強力な病原菌をまき散らすことなの。」
そう言ってアルトは、各々の攻撃の特徴を説明してくれたんだ。
まず、『ハエ』の魔物、動物に集って病原菌を擦り付けるらしい。
その病原菌に感染すると、眠ったまま目を覚まさなくなって死に至るんだって。
『眠り病』って呼ばれているらしいよ。
次に『蚊』、吸血も厄介なんだけど、吸血する際に病原菌をうつすらしいの。
感染すると猛烈な発熱症状を起こし、鼻とか、口とかから出血して短時間で死に至るらしいの。
そして、『ゴキブリ』、やっぱり、動物に集って病原菌を擦り付けるらしい。
その病原菌に感染すると、激しい下痢や下血、それに脱水症状を起こして死に至るんだって。
『ハエ』、『ゴキブリ』が厄介なのは、食べ物に病原菌を擦り付けることで、その食べ物を食べた人にも感染されることらしいの。
また、器用にも上空から病原菌をまき散らす事も出来るし、死んでからも死体から病原菌をまき散らすんだって。
「こいつらときたら、大して強い魔物じゃないのだけど。
飛ぶのがすばしっこくてね、倒すのはとても難しいわ。
それと、持っている病原菌が本当に厄介。
感染力は高いし、致死率はほぼ百%だし、手に負えないわ。
全く、えらい迷惑だわ。
『ハエの王』を倒したやつを見つけ出して、説教してやりたい気分よ。」
いずれも、人間と同じ、レベルゼロが基本の魔物らしいけど。
『ハエの王』が生まれたように、意外とレベルの高い個体もいるらしいの。
なんでも、レベルの高い魔物の背中に集って病原菌を使って倒すんだって。
四足歩行の魔物なんて、背中に集られたらどんなに強くても手も足も出ないらしいの。
アルトは、ことによるとこいつらの種族が最強じゃないかと言ってたよ。
「それで、マロン、悪いことは言わないからしばらくここにいなさい。
ここは、町よりはずっと安全だと思うわ。
万が一、上空から病原菌を撒かれてたとしても。
妖精の泉の水をこまめに飲んでいれば何の問題もないからね。
あの水は、本当に万病に効くから。」
おいらにそう勧めてくれたアルトは、タロウに向かって言ったんだ。
「ついでだから、スタンピードが収まるまで。
あんたもここに留まることを許可するわ。
夜寝る場所も、『二等席』を貸してあげるわ。」
あっ、タロウは『二等席』なんだ…、木製ベンチだっけ?。
それはともかくとして。
アルトはおいらの身を案じて、提案してくれてるんだけど…。
あの街には、クッころさんやにっぽん爺がいる、他にもお世話になった人がたくさん。
やっぱり、放っておけないや。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
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スタンピード、魔物の集団暴走、膨大な数の魔物が集団で町や村などを襲う大災害。
スタンピードに飲み込まれた町は壊滅的な打撃を受け、全滅なんてことも起きている。
稀にしか起こらないけど、起こった時は大被害という厄介なシロモノなんだ。
原因ははっきりしていないけど、…。
一つだけハッキリしているのは、『魔王』が倒されるとまず間違いなく発生するということ。
それまで、『魔王』によって抑制されていた闘争本能が突如として枷を外されたために起こるのではないかと言われてるんだ。
溜まっていた鬱憤が一気に噴き出す感じ?
アルトは、『ハエの王』が倒されて発生するスタンピードがおいらの住む町を襲うかも知れないと言ったんだ。
でも…。
「ねえ、アルト、おいらの町の近くに『ハエの王』がいたなんて聞いてないよ。
スタンピードって確かに怖い災害だけど、そんな広範囲に被害は及ばないでしょう。
おいらの町が襲われることなんかあるの?」
『魔王』が住むのは殆どが魔物の領域と呼ばれる人が住まない地域なんだ。
他種族との争いを好まない『魔王』が人間の町の近くに住んでいることは殆どないの。
それでも、スタンピードが起こると稀に人間の住む領域にまで入って来て町や村を襲うのだけど。
おいらの住む町と魔物の領域の間には、広大なこの森がある。
この森、アルトの支配する妖精の森なんだけど、とんでもなく広いだけじゃないんだ。
アルトの不思議な力で、妖精族以外はアルトの許可がないと入れなくなっているの。
現状、入れるのはおいらとタロウだけなの。
当然、魔物は入れないから、スタンピードを起こしても大きく森を迂回することになる。
とても、おいらの住む町を襲うとは思えない。途中で襲える他の町や村があるしね。
「そうね、普通ならそうでしょう。
でも、『ハエの王』の配下の魔物って、…。
『ハエ』、『蚊』、『ダニ』、『ノミ』、『ゴキブリ』の魔物なのよ。
『ダニ』と『ノミ』は確かにこの森に阻まれて迂回するでしょうけど…。
ほら、あれ!」
アルトは、話の途中で言葉をとめて空を指差したんだ。
そこには大きな茶色の物体が小刻みに翅を動かして飛んでたの。
アルトは空に向かって…。
「その汚らわしい体でこの森の空を穢さないで!」
そう叫ぶとビリビリを放ったの。
空を飛ぶ茶色い物体はビリビリがあたるとあっという間に燃え尽きた。
人の大人の体よりはるかに大きな魔物を一瞬で消し炭にしたアルトのビリビリ。
本気を出すとあんなに凄いんだ。
いつもはあれでも大分手加減してるんだね。
「本当は、殺生はご法度なんだけど、今回はそんなこと言ってられないわ。
あいつら、空からでも病原菌をまき散らすから。
私の森にまき散らされて、同族に被害が出たら困るもの。
完全に焼き尽くさないと、死体からも病原菌をまき散らすから堪ったもんじゃないわ。
見ての通りよ、あいつらときたら、私の結界の上を飛ぶのよ。
それで、昨日、『魔王』が倒されると一斉に四方に向かった飛び立ったらしいの。
きっと、今のがこの方向に飛んで来た第一陣ね。
これから、しばらく、どんどん飛んで来ると思うわ。」
どうやら、『ハエ』、『蚊』、『ゴキブリ』の魔物は妖精の森の上空を飛んで行くみたい。
妖精の森を突っ切ると、『ハエの王』のテリトリーからおいらの町まで意外と近いらしいね。
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『ハエ』、『蚊』、『ゴキブリ』の魔物って、おいらは初めて知った魔物ばかりだ。
魔物じゃない、『ハエ』、『蚊』、『ゴキブリ』って言う虫は知ってるけど…。
正直、お近づきになりたいものじゃないよね。悪い予感しかしないよ。
「ねえ、アルト、町を襲ってくる魔物ってどんな攻撃をしてくるの?」
おいらが問い掛けると。
「直接的な攻撃が怖いのは、『蚊』くらいかしら。
『蚊』は針ような口先で動物を突き刺して血を吸うの。
人くらいの大きさがあるから、あっという間に人の血を吸い尽くすわ。
他は、直接の攻撃力は大したことないのだけど…。
『蚊』も含めて、怖いのは直接攻撃じゃなくて、強力な病原菌をまき散らすことなの。」
そう言ってアルトは、各々の攻撃の特徴を説明してくれたんだ。
まず、『ハエ』の魔物、動物に集って病原菌を擦り付けるらしい。
その病原菌に感染すると、眠ったまま目を覚まさなくなって死に至るんだって。
『眠り病』って呼ばれているらしいよ。
次に『蚊』、吸血も厄介なんだけど、吸血する際に病原菌をうつすらしいの。
感染すると猛烈な発熱症状を起こし、鼻とか、口とかから出血して短時間で死に至るらしいの。
そして、『ゴキブリ』、やっぱり、動物に集って病原菌を擦り付けるらしい。
その病原菌に感染すると、激しい下痢や下血、それに脱水症状を起こして死に至るんだって。
『ハエ』、『ゴキブリ』が厄介なのは、食べ物に病原菌を擦り付けることで、その食べ物を食べた人にも感染されることらしいの。
また、器用にも上空から病原菌をまき散らす事も出来るし、死んでからも死体から病原菌をまき散らすんだって。
「こいつらときたら、大して強い魔物じゃないのだけど。
飛ぶのがすばしっこくてね、倒すのはとても難しいわ。
それと、持っている病原菌が本当に厄介。
感染力は高いし、致死率はほぼ百%だし、手に負えないわ。
全く、えらい迷惑だわ。
『ハエの王』を倒したやつを見つけ出して、説教してやりたい気分よ。」
いずれも、人間と同じ、レベルゼロが基本の魔物らしいけど。
『ハエの王』が生まれたように、意外とレベルの高い個体もいるらしいの。
なんでも、レベルの高い魔物の背中に集って病原菌を使って倒すんだって。
四足歩行の魔物なんて、背中に集られたらどんなに強くても手も足も出ないらしいの。
アルトは、ことによるとこいつらの種族が最強じゃないかと言ってたよ。
「それで、マロン、悪いことは言わないからしばらくここにいなさい。
ここは、町よりはずっと安全だと思うわ。
万が一、上空から病原菌を撒かれてたとしても。
妖精の泉の水をこまめに飲んでいれば何の問題もないからね。
あの水は、本当に万病に効くから。」
おいらにそう勧めてくれたアルトは、タロウに向かって言ったんだ。
「ついでだから、スタンピードが収まるまで。
あんたもここに留まることを許可するわ。
夜寝る場所も、『二等席』を貸してあげるわ。」
あっ、タロウは『二等席』なんだ…、木製ベンチだっけ?。
それはともかくとして。
アルトはおいらの身を案じて、提案してくれてるんだけど…。
あの街には、クッころさんやにっぽん爺がいる、他にもお世話になった人がたくさん。
やっぱり、放っておけないや。
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