ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
上 下
57 / 848
第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記

第56話 崖っぷちの冒険者ギルド

しおりを挟む
*本日、お昼に1話投稿しています。
 まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
 よろしくお願いいたします。

     ********

 カタギに手を出すなということに等しいアルトの命令。
 それでは、ギルド本部に納める上納金が払えないと、抵抗を見せるギルドの幹部連中だったけど。

 生ける屍状態になっている組長達の十八人の指を差し出して、十五年間上納金を免除してもらえって。
 そんな容赦のない言葉を、アルトはギルドの幹部連中に投げつけたの。

 ギルドの幹部連中は、ドン引きして言葉を失ってるよ。

「十五年あれば、真っ当な実力を持つ冒険者の十人や二十人育てられるんでしょう。
 毎日のように近くの村から、はぐれ者が冒険者になりに来ているようだし。
 トレントの餌なんて無駄なことに使わないで、地道に育てなさいよ。
 冒険者になりに来た女の子なんか、あんたらが監禁してオモチャにしてるそうじゃない。
 腕の立つ冒険者がいないって言うけど、当たり前じゃないの。
 育てもしないで、自分達の道具として使い捨てにしてるんだから。」

 アルトは、ギルドの幹部連中に真面目に冒険者の育成をしろと言うけど。
 ちゃっかり、それに混ぜて、またまた、ギルドの悪事を声高々に周囲に言い触らしたよ。
 女の子を監禁してオモチャにしていると聞いて、周囲のやじ馬の中にどよめきが起こってる。

「ひっ! 何で、それを!」

「組長の命令で、マロンの客人を拉致しにきた三人組が言ってたわよ。
 最近、村から出てくる女の子が減って、『監禁部屋』が空いてるんだってね。
 三人組、マロンの客人を捕まえようとした時に喜んでたわ。
 組長が飽きたら、久々に『監禁部屋』に回って来そうだって。
 みんなで、寄って集ってオモチャにするからすぐに壊れちゃうそうじゃない。
 壊れたら、トレントの餌にしちゃうって言ってたわよ。」

 おいらから聞いたことを、さも自分が聞き出したように言うアルト。
 何で、そんなに詳しく聞くのかと思ったら、こうして暴露するつもりだったんだ。

「やめてくれ!町のモンがみんな聞いてるじゃねえか!
 あんた、鬼か!
 こんな恥をかかされた上に、知られたくないことを暴露しやがって。
 今日からどうやって、俺たちにシノギをしろって言うんだ。」

 幹部の一人が逆切れして、怒鳴って来たよ。
 暴露されて怒るんだったら、そんな後ろ暗いことしなきゃいいのに。

 悪事を暴露されて周囲の白い目に晒されるギルドの幹部たち。
 ただでさえ鼻つまみ者の集まりなのに、村から出て来た世間知らずの若者を殺してたんだものね。
 今日からは、さぞかし肩身が狭いよね。
 
 しかも、今までブイブイ言わせてたのに、今は全員土下座だもの。
 冒険者ギルドみたいな商売は、カタギからナメられちゃダメなんだってにっぽん爺が言ってたけど。
 これじゃあ、形無しだね。

 たしかに、今日からは商売がし難くなりそうだね。

「つべこべ言ってるんじゃないわよ。
 今後、マロンとマロンの知り合いに一切迷惑を掛けないというのは守ってくれるわね。
 いやなら、今ここでこの建物を潰すわよ。
 それとも、あんたらも、ここで転がっている連中のようになりたいの?
 なんなら、ギルドの連中全員を魔物の領域に捨ててあげようか?」

 不平を言うギルドの幹部に向かって、アルトは再度凄んで見せたの。
 これ、最後通告だよね。

「ひえっ! どうか、それだけはご勘弁を。
 もう、そちらのお嬢様の関係者、いえ、この町のカタギには手を出しません。
 みかじめ料を取るのもやめます、ですから、命だけは勘弁を。」

 そう答えた時の、ギルドの幹部連中、もう半泣きだったよ。
 アルトは、そんなギルドの幹部連中にトドメを刺すように言ったの。

「そう、それじゃあ、それを証文に残しておいてもらおうかしら。
 もちろん、全員の血判を入れてね。
 イヤとは、言わせないわよ。」

 アルト、それじゃ、本当に鬼だよ。

      ********

 結局、アルトは、おいらとおいらの知り合いに一切迷惑をかけないという証文を書かせたよ。
 アルトったら、わざわざ建物の中から机を持って来させて、公衆の面前で記入させたの。
 
 ギルドの連中、衆目に晒されるのを凄く渋ってたけど、アルトに脅されて渋々従ってたよ。
 証文の中で、おいらが迷惑だと感じることは全て禁止と書かれたんだ。
 これも無茶苦茶、些細な事でもおいらが迷惑だと言ったら、アルトが出てくることになってるんだもん。
 正直、おいらが言い掛かりを付ければ、冒険者ギルドを潰せる状態だよ。

 他にも、連中の方から言い出したことだからと、おいらとは関係なく『みかじめ料』を取ることも禁止されたの。
 ギルドに取られるみかじめ料はとても迷惑だったようで、決まった時歓声が沸いてたよ。
 
 証文の文言が書き終わると、アルトはそれを集まった町の人達の前で読み上げさせたの。
 副組長という、ギルド幹部の生き残りで一番偉い人に大声で宣誓するように読ませたんだ。
 副組長という人、凄く悔しそうな顔をして証文を読み上げていたよ。

 そして、最期に生き残り幹部全員に、名前を書かせて、血判を押させたの。
 全員の血判が押し終わった時、周りにいた町の人から拍手があがったよ。
 冒険者ギルド、やっぱり、町のみんなから嫌われていたんだね。

 全部終わったら、アルトは証文をクルクルと丸めて、自分の『積載庫』に仕舞っちゃった。
 そして、土下座するギルドの幹部連中に向かって言ったの。

「良いこと。
 この証文に書いたことは絶対に忘れるんじゃないわよ。
 そこに転がっている愚か者は、二十年前、こともあろうに妖精の森に手を出そうとしたの。
 その時は、キツイお灸を据えたつもりだったのに、性懲りもなく私の機嫌を損ねたわ。
 全く、高々二十年で誓いを忘れちゃうなんてなんて無能なのかしら。
 あんた達もこうなりたくなかったら、絶対に忘れない事ね。」

 二十年前の誓いって、アルトに迷惑かけないってやつだよね。
 まさか、クッころさんがアルトに繋がっているなんて誰も想像できないと思うよ。

 おいらがアルトにそうツッコミを入れたら…。

「そうよ、マロン。
 人の関係なんて、どこで繋がっているか分からないの。
 何処でしっぺ返しを食らうか分からないから、迂闊に他人に恨まれるようなことをしてはダメよ。
 人間、カタギに生きていれば、滅多なことは無いからね。
 私、二十年前もあの組長に同じことを言ったのにね。
 カタギに生きてないと、何処で、誓いを破ること、私に迷惑をかけることになるか分からないって。」

 おいらにそう返してきたアルト。
 その言葉はとても通る声で目の前でまだ土下座している連中にも聞かせているみたいだった。

しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

処理中です...