ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記

第51話 驚きの機能です!

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  おいらのお願い通りに、ゴロツキ冒険者の三人を遠くへ飛ばしてくれたアルト。
 おいらは、そんなアルトに日頃からお世話になっているお礼も兼ねてお裾分けすることにしたんだ。

「アルト、これ、さっきハニートレントから採れたの。
 おいら一人じゃ、とても食べきらないし。
 シュガートレントを倒したことを知られたくないから売る事も出来ないの。
 だから、アルトに貰って欲しいんだ。」

 おいらは、そう言ってアルトの前に、『スキルの実』二種類を百個ずつと『ハチミツ壺』を五百個ほど出したの。

「あら、悪いわね。こんなにもらっちゃって。
 これは、『野外移動速度アップ』と『野外採集能力アップ』の実ね。
 両方とも、甘みが強いけど、適度な酸味もあるから。
 後味がスッキリして、幾らでも食べられちゃうのよね。
 それに、ハニートレントのハチミツもコクのある甘さが良いわよね。
 私、これも大好きなんだ。
 そうだ、こんなにいっぱいあるなら森のみんなにも分けちゃおう。」

 アルトは、お裾分けを気に入ってくれたようで、大喜びだった。

「ねえ、アルト。
 森のみんなに分けるなら、もっと沢山置いてくよ。
 まだ、沢山あるからね。
 腐らしちゃうくらいなら、みんなに食べてもらった方が良いから。」

「うん? くれると言うなら貰っておくけど…。
 マロン、あなた、何を言っているの?
 腐る訳ないじゃない。」

「えっ、でも、このスキルの実、両方とも食べ頃だよ。
 良い匂いがするし、さっき食べたら凄く美味しかった。
 この状態じゃ、あと三日も持たないよ。
 スキルの実は、両方ともまだ千個以上あるよ。
 ハチミツは結構日持ちするって聞いてるけど…。
 さすがにそう何年も持たないでしょう。
 これも、あと五百個くらい残ってるの。」

 そう、どれも沢山あり過ぎてとても食べきれるような数じゃないんだよね。
 アルトには取り敢えず適当な数を渡したんだけど。
 みんなで分けるんだったらもっと渡しちゃえって思ったんだ。

「ねえ、アルト、あなた、このあいだスッポンも狩ってたわよね。
 スッポンのお肉って今どうなっている?」

 スッポンの身、おいしいらしいんだけど、何処に料理をお願いして良いのか分かんないんだよね。
 結局、そのままに『積載庫』の中に入れっぱなしで、忘れてたよ。
 今頃腐って、酷いことになってるね、他にもワイバーンやうさぎのお肉なんかも…。
 一度、『積載庫』の中身を整理しないといけないね。

 そう思いながら、おいらは『積載庫』に入っているスッポンの身を確認したんだ。
 すると、…。

「えっ! ねえアルト、スッポンの身、腐ってないよ!
 もうずいぶん日が経っているのに…。
 それだけじゃない、二ヶ月も前に狩ったワイバーンの肉も腐ってない。
 そんな、バカなことって…。」

 スッポンも、ワイバーンも、うさぎも腐ってなかった。
 まっ、ワイバーンのお肉は猛毒だから、腐ってなくても食べられないけどね。

「やっぱり、マロン、気付いてなかったのね。
 『積載庫』の中に入れたモノは腐らないわよ。
 良く分からないけど、『積載庫』の中は時間が停まっているらしいの。
 だから、ハニートレントが落とした『スキルの実』も『ハチミツ壺』も持っておけば良いわ。
 私は、今もらった分で十分だから。
 幾つ残っているのか知らないけど、スキルの実はゆっくり食べなさい。
 使えるスキルなんだから、マロン自身でレベルをなるべく上げといた方が良いわ。」

 どこまでお便利なスキルなんだよ、『積載庫』。
 どんだけ放置しておいても腐らないなんてビックリだよ。
 これじゃあ、ますます、他人に知られる訳には行かないね。

    ********

「じゃあ、シューティング・ビーンズの落としたスキルの実は入れといても食べ頃にならないんだ。
 でも、食べきれない分を取り敢えず『積載庫』に入れとくのは有りか…。」

 おいらがそんな独り言を呟いたら…。

「マロン、これも気付いてないかも知れないけど…。
 マロンの『積載庫』は、まだレベル一よ。
 普通、人間の寿命だと、レベル二に至るのは無理なんだけど。
 マロンならいけるかも知れない…。」

 アルトに指摘されて、『積載庫』をよく見たらレベル一って書いてある。
 と言うより、『積載増加』と書いてあったスキル枠の所が『積載庫』になってるじゃん。
 よく見てなかったから、気付かなかった。

 アルトの説明では、レベル二にするためには、やっぱりレベル一になった時の三倍必要なんだって。
 『積載庫』をレベル一にするのに、二万個近い『スキルの実』を食べてるから…。
 レベル二にするのには、全部で六万個、あと四万個近く食べないといけないんだ。
 確かに、他の人じゃ、そこまで食べる前に寿命が尽きちゃうね。
 おいらのように、『スキルの実』を主食みたいにしている人はいないだろうし。

「ねえ、アルト、レベル二になったら何か変わるの?
 入れられる量が増えるとか?」

 でもね、今でもどんだけ入るのか分からないくらいのモノが入るし、…。
 これ以上、『積載庫』の容量が大きい必要はないかな。

「うん?
 それもあるけど、重宝するのはそこじゃないわ。
 レベル二になると、『積載庫』の時間を進めることが出来るようになるの。
 それも、中に入ってモノ毎に個別に。
 シューティング・ビーンズのスキルの実だけ時間を進めるとかね。
 早送りも出来るから便利よ。」

 早送り? なんじゃそりゃ?
 もしかして、採ってから七日で食べ頃になるスキルの実を一日で食べ頃に出来るとか?

 おいらがそう尋ねると。

「そうそれよ、ホント、重宝する機能なのよね。
 マロンにも、せっかくチャンスがあるんだから。
 頑張って育てなさいよ。」

 なんてことをアルトは言ってた。
 アルトは既に『積載庫』がレベル二になっているみたい。
 さっそく、お裾分けしたスキルの実と『ハチミツ壺』を積載庫に仕舞ってたよ。

     ********

 ゴロツキ冒険者三人を遠くへ飛ばしてもらったし。
 お裾分けも渡した。
 ついでに、貴重な話も聞けたしで、もうやる事は全部終わったね。

 もうそろそろ、夕暮れ時が迫っているし、おいらは町へ帰ることにしたんだ。

「じゃあ、アルト、今日は有り難う。助かっちゃったよ。」

 おいらが、最後にもう一度お礼を言って立ち去ろうとすると。

「待ちなさい、マロン。
 今日は、久しぶりにマロンの住む町に行くわ。
 一緒に行きましょう。」

 アルトはそんなことを言ったんだ…。
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