ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記

第49話 チューニ病、快方に向かってる?

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 さて、目の間に沢山落ちている『スキルの実』だけど…。
 ハニートレントがドロップするのは、さすがレベル四の魔物だけあって良いスキルなの。
 落とす『スキルの実』は、『野外移動速度アップ』と『野外採集能力アップ』の二種類。
 どっちも、多くの人が欲しがるスキルで、両方ともお店で買うと銀貨五枚もするんだ。

 『野外移動速度アップ』は、説明するまでもないよね。
 歩く速度が速くなるの、レベル十になると三百%アップ、つまり四倍の速度で歩けるようになるの。
 行商の人や仕入れに遠出する商人にとっては、とても重宝するスキルなんだ。

 『野外採集能力アップ』は、『食料採集能力アップ』と『鉱物採集能力アップ』の上位版みたいなスキルなの。
 野外で採集できる物なら分野を問わずに、何でも採集する能力がアップするんだ。
 しかも、『食料採集能力アップ』と『鉱物採集能力アップ』と効果が重複するの。

 だから、農家の人なんかは、まずお手頃な値段の『食料採集能力アップ』を買うんだって父ちゃんが言ってた。
 それで、レベルが上がって稼げるようになると、『野外採集能力アップ』を買うようになるらしいの。
 効果が倍になるようなモノだから、凄く稼げるようになるんだって。

 で、ハニートレントは、ドロップするのはこの二種類だけだけど、もの凄い数を落とすんだ。
 しかも、食べ頃の段階で落ちているようで、すごく良い匂いがする。

「おい、マロン、このいっぱい落ちているのが『スキルの実』か?
 俺には、イチゴと、キュウイに見えるんだがよ…。
 これ、いったい、何のスキルだ?」

「うん? 
 赤い美味しそうな匂いするのが『野外移動速度アップ』。
 茶色い美味しそうな匂いするのが『野外採集能力アップ』。
 これは、両方とも人気スキルだよ。
 お店で買えば、一個買うのに銀貨五枚も掛かるんだ。」

「マロンにかかると、美味そうか、そうじゃないかが基準なんだな。
 でも、イチゴみてえなのが、『野外移動速度アップ』か。
 確かに美味そうだ。
 俺のこぶしくらいの大きさがあって、日本だったら贈答品になるやつだな。
 一個で千円以上するバカ高いイチゴ。」

「そうでしょう、美味しそうでしょう。
 それに、スキルとしての効果もお得だよ
 こんなにいっぱい、おいら一人じゃ、食べきれないし。
 タロウも持ってけばいいよ。
 三日くらいで腐って食べられなくなるけど。
 美味しいって聞くし、必死になって食べればレベル六くらいまで上げられるよ。」

 多分、ここに落ちている『スキルの実』は数千個あるよ。
 三日で食べられなくなるので、三人で分けても一人千個以上ありそう。
 この大きさの『実』じゃあ、大人だって三日で千個は食べられないと思う。
 三日間この二種類の『スキルの実』だけを食べたとしても、それぞれ一日百個が限界だと思う。
 三日間で、三百個ずつで六百個、いくら美味しいって言ったって苦痛かも知れないね。
 でも、それで結構役に立つスキルを二種類レベル六まで上げられる。
 頑張って食べる価値があると思うよ。
 お店で買えば一つ銀貨五枚、普通なら懐との相談でレベル六まで上げるのに何年もかかるんだから。

「そうか、爺さんからも、その二つは勧められてるんだよな。
 キノコ採りなんか、毒キノコか食用キノコか区別つくようになるし。
 山道を歩いていて、宝石の原石を見つけた事があるって言ってたぜ。
 俺としては、せっかく異世界に来たんだから、戦闘系のスキルを育ててよ。
 『俺TSUEEEEEE!』してえけど、とても買えそうにないしな…。
 観念して地道に生きていくことにするか。
 せっかく人気のスキルがタダで手に入るんだからな。」

 にっぽん爺もこの二つは持ってるらしい。
 タロウが聞いた話では、にっぽん爺は『鉱物採集能力アップ』を最初に育てたんだって。
 そのスキルを活かして、砂鉄採りで儲けたらしいよ。
 それでお金を貯めて、この二つのスキルを育てたみたい。

 タロウはチューニ病って病気のせいなのか、何故か戦闘系のスキルに憧れてて。
 性懲りもなく、戦闘系のスキルを手に入れようと狙ってたみたいだけど。
 ここで生活する間に、とても戦闘系のスキルには手が出ないっていう現実が見えて来たみたい。
 更に、目の前にドロップした大量の『スキルの実』を見て、やっと戦闘系のスキルを諦めたようだね。

 タロウは持っていた布袋に、せっせと『スキルの実』を詰め始めたよ。

      ********

「ねえ、マロン、わたくしもこの『スキルの実』、頂いてもよろしいでしょうか?」

 タロウがスキルの実を拾っているのを見ていたクッころさんが尋ねてきたの。

「もちろん、持って行って。
 元はと言えば、クッころさんに狼藉を働いた三人を懲らしめるためにしたんだから。
 当然、クッころさんがもらう権利があると思うよ。
 ただし、自分で食べないとダメだよ。」

 このスキルの実をスキル屋に売ろうものなら、そこから足が付いちゃう。
 おいら達があの三人を餌にしてハニートレントを狩ったのが、冒険者ギルドにバレちゃうよ。
 だから、勿体ないけど食べきれない分は腐らしちゃうしかないね。

 そのことをクッころさんに説明すると。

「わたくしも、その二つのスキルを育ててみますわ。
 頑張って腐る前に、出来るだけ食べますわ。
 それと、腐らしてしまうくらいなら。
 わたくしの愛馬に食べさせても良いでしょうか。
 『野外移動速度アップ』のスキルはとても助かりますわ。」

 やっぱり、クッころさんはスキル枠が空いているみたい。
 貴族の子供は親から良いスキルが与えられるって、父ちゃんから聞いてたんだけど。
 何でクッころさんは、貰えなかったんだろう。
 また今度、お酒を飲ませて聞いてみようかな。

 それと、クッころさんの白馬に食べさせるのは名案だと思う。
 折角の高価なスキルの実を腐らせちゃうのは勿体ないもの。
 騎乗する馬に食べさせれば、馬の脚が速くなるからね。
 お金に余裕のある貴族や商人は馬に『野外移動速度アップ』の実を与えるって。
 前に、父ちゃんから聞いたことがあるよ。

 おいらが、クッころさんの提案に賛同すると、クッころさんはさっそく愛馬を連れて来たの。
 『野外移動速度アップ』の実を与えると、その味がお気に召したようで。
 凄い勢いで食べ始めたよ、なんか一気にレベルが上がりそうなくらいに。

 愛馬が『野外移動速度アップ』の実を黙々と食べ続ける横で、クッころさんもスキルの実を拾い始めたよ。

 おいらは、スキルの実を拾い続ける二人の姿を眺めながら、これからどうしたものかと考えてたんだ。
 
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