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第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記
第48話 ハニートレントはとってもお得!
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*本日、お昼に1話投稿しています。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
********
ハニートレントが倒れた後には、沢山のスキルの実が落ちていた。どれも美味しそう…。
でも、スキルの実の回収は後回しだよ。
あと二人の処分が先だから。
二人の下っ端冒険者を見ると…。
「すっげぇ…、何だあのガキ、ハニートレントを一撃で倒しちまったぜ。
俺っち達、とんでもないバケモノを敵に回しちまったんじゃ…。」
「そんな事より、見ろ、アニキがあんなになっちまってるぜ。」
下っ端その一はおいらの力に呆然とし、その二は変わり果てたアニキの姿に怯えていたよ。
さっき、ハニートレントの犠牲者第一号となったアニキと呼ばれるおっちゃんはと言うと。
「うへ、うへへ、へへへへ…。」
虚ろな目をして、不気味な笑い声を上げていた。
タロウがパンチパーマと呼んでいた癖の強い茶髪は、真っ白になっていたよ。
まるで、燃え尽きた灰の様な白さにね。
ぱっと見で、左右両手足に十本以上の枝で串刺しにされてたおっちゃんだけど。
不思議なほど血は出てないんだ。
これも、父ちゃんから聞いたことがあるんだ。
トレントは、殺さずに生きた状態で養分を吸うんだけど、血は一番養分があるらしいの。
だから、なるべく血を外に零さないように、枝は太い血管がないところを攻撃するんだって。
効果的に獲物の自由を奪い、抵抗させないために、腱の部分を狙って攻撃して来るらしいの。
だから、根っこに絡みつかれるまで、獲物が生きているのは当然のことだけど。
、根っこに絡みつかれてからもしばらくは、獲物は生きているらしいの。
今回はそのトレント種の特性を利用させてもらったんだ。
殺してしまうのはイヤだけど、仕返しされるのもイヤだからね。
タロウが言っていた通り、恐怖を植え付けることにしたんだ。
二度とおいら達に手を出そうと思わないようにね。
自分達が、若い冒険者を餌に使っているトレント狩り。
その餌になる恐怖を味あわせることでね。
最初から、根っこに養分を吸い取られる前に、トレントを倒すことにしてたんだ。
それに、与えるのは恐怖だけじゃないよ。
トレントが、手足の腱を何ヶ所もズタズタにしてくれるから、傷が治っても仕返しなんかできないね。
歩くのも不自由になるし、もちろん、剣なんて重い物は振り回せないよ。
これからは、大人しく生きていくしかないね。とてもヤンチャは出来ないと思う。
このおっちゃん、恐怖で頭の方も壊れちゃったみたいだから、仕返しされる心配はまずないね。
ってか、このおっちゃん、生ける屍になってるけど大丈夫かな…。
********
「ひぃ、やめてくれ!
俺っちが何悪いことをしたって言うんだ。
オメー、ガキの癖して、鬼だな!
この人でなし!
こんなことしているとロクな大人になんねえぞ!」
次の処分しようと思い、下っ端一に近づくとおいらはそんな風に罵られちゃった。
なんか、その言葉、そのまんま、返してあげたいよ。
おいらだって、こんなことは気がのらないけどね。
おっちゃん達みたいな悪党を野放しにしておくとロクな事無いから。
おいらは、下っ端たちの罵詈雑言を無視して、淡々と処理を進めたんだ。
ハニートレントの前に突き飛ばして、養分を吸われる前にトレントを倒す作業を二回。
下っ端二人もアニキ同様、髪の毛が真っ白になって、変な笑いを漏らしてるよ。
そして、目の間には倒れた三本のハニートレント、足元には凄い数の『スキルの実』が落ちている。
それと、枝についた沢山のハニートレントの実、通称『ハチミツ壺』も貴重な収穫なんだ。
壺のような形をした『実』で、中にたっぷりのハチミツが入っているの。
ハニートレントのハチミツは凄い高級品で、『実』が一つ銀貨一枚もするんだよ。
それが、数え切れないほど生っているの。
通常のトレントは、もっぱら『スキルの実』を採るために狩るんだけど。
ハニートレントは、『ハチミツ壺』の方がお金になるんだ。
でも、レベル三のトレントとレベル四のハニートレントじゃ、強さが段違いなの。
なんてったって、ハニートレントの常食はクマだもんね。
だから、よっぽどベテランの冒険者じゃないと、ハニートレントは狩れないんだ。
「おい、マロン、おまえ、本当に凄い身体能力だな…。
なんで、そんな錆びた包丁一つで、こんなぶっとい木を倒せるんだ?
明らかに物理法則を無視してんだろうが。
っても、俺にゃ、物理なんて分らんけどな。
これも、ファンタジー補正ってやつか。」
おいらが、ハニートレントの収穫を眺めているとタロウがそんなことを言ってるよ。
「いいえ、マロンのその力は普通じゃありませんわ。
マロン、あなた、もしや、高レベ…。
いえ、これを聞くのはご法度でしたね。」
クッころさんが、おいらのレベルのことに疑念を持ち始めたんだ。
だから、おいら、レベルと言う大きな秘密を隠すために、小さな方の秘密を明かすことにしたんだ。
もちろん、それだけが理由じゃないけどね。
********
「今まで内緒にしてたんだけど…。
おいらが持っているスキル、ゴミと言われてるんだけどレベル十まで上げると結構役に立つんだ。
『クリティカル発生率アップ』ってレベル十になると『クリティカル発生率百%』になるんだ。
『クリティカルダメージアップ』も、『クリティカルダメージ三千%アップ』になるし。
だから、レベルゼロのままでも、凄い力が出るの。」
嘘じゃないよ、おいら、レベルゼロの時にレベル四十のワイバーンを倒しちゃったから。
それと、『スキルの実』の美味しい食べ方は教えないよ。これは、絶対の秘密。
「まあ、そんなことがあったのですか…。
それは、凄い新事実ですわ。
まさか、その二つの『ゴミ』と言われるスキルにそんな秘密が隠されていたなんて。」
クッころさんは、目を見張ってたよ。なんか、自分でも試してみようって感じ…。
そう言えば、クッころさんって、どんなスキル持ってるんだろう?
「なにぃ!そんな隠しボーナスがあったのか!
なんだ、そんな、良いことあるんなら、早く教えてくれれば良いのに!」
やっぱり、タロウはそう言うと思った。
スキル枠を一つ『クリティカル発生率アップ』で埋めちゃったからね。
でも、おいらはこの件に関しては無情だよ、『スキルの実』の美味しい食べ方は絶対に漏らさないから。
「でも、タロウ。
『クリティカル発生率アップ』の『実』、あれを二万個食べ続ける自信ある?
おいら、五歳で身寄りが無くなって、飢え死にしそうになったから。
それで、お金が稼げるようになるまでは、毎日タダで拾える『ゴミスキルの実』だけ食べて生きてきたんだよ。
あの苦い実を我慢できるんだったら、止めないけど。」
「しまった、効果が『ゴミ』なだけじゃなく、味も『ゴミ』だったな、あのスモモもどき。
あれを二万個も食わないといけないのか、一日一個鼻を摘まんで食うとして。
一年で三百六十五個、あれここも一年が三百六十五日で良いのか?
取り敢えずそれで計算して、十年で三千六百五十個…。
げっ、レベル十になるのに五十年以上かかるじゃねえか。
ヤメだ、ヤメ!
あんなクソ不味いモノを五十年以上食い続けるってどんな拷問だそれ。
マロン、おまえ、マジ凄いわ。
幾ら飢えてたからって、あんな不味いモンを一日何十個って食ったんだものな。
俺には真似できそうもねえわ。」
おいらの誘導にまんまと引っ掛かったタロウ、単純で良かったよ。
タロウはあっさりと『クリティカル発生率アップ』を育てるのを諦めたよ。
「そうでしたの…。
わたくしにも凄いスキルが手に入るかと思って期待しましたのに。
ガッカリですわ。」
やっぱり、クッころさんも試そうとしてたし…。
でも、クッころさん、その歳になってもスキル枠に空きがあるんだ…。
お貴族様って、小さいうちから高価な『スキルの実』を沢山与えられて育つんだと思ってたよ。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
********
ハニートレントが倒れた後には、沢山のスキルの実が落ちていた。どれも美味しそう…。
でも、スキルの実の回収は後回しだよ。
あと二人の処分が先だから。
二人の下っ端冒険者を見ると…。
「すっげぇ…、何だあのガキ、ハニートレントを一撃で倒しちまったぜ。
俺っち達、とんでもないバケモノを敵に回しちまったんじゃ…。」
「そんな事より、見ろ、アニキがあんなになっちまってるぜ。」
下っ端その一はおいらの力に呆然とし、その二は変わり果てたアニキの姿に怯えていたよ。
さっき、ハニートレントの犠牲者第一号となったアニキと呼ばれるおっちゃんはと言うと。
「うへ、うへへ、へへへへ…。」
虚ろな目をして、不気味な笑い声を上げていた。
タロウがパンチパーマと呼んでいた癖の強い茶髪は、真っ白になっていたよ。
まるで、燃え尽きた灰の様な白さにね。
ぱっと見で、左右両手足に十本以上の枝で串刺しにされてたおっちゃんだけど。
不思議なほど血は出てないんだ。
これも、父ちゃんから聞いたことがあるんだ。
トレントは、殺さずに生きた状態で養分を吸うんだけど、血は一番養分があるらしいの。
だから、なるべく血を外に零さないように、枝は太い血管がないところを攻撃するんだって。
効果的に獲物の自由を奪い、抵抗させないために、腱の部分を狙って攻撃して来るらしいの。
だから、根っこに絡みつかれるまで、獲物が生きているのは当然のことだけど。
、根っこに絡みつかれてからもしばらくは、獲物は生きているらしいの。
今回はそのトレント種の特性を利用させてもらったんだ。
殺してしまうのはイヤだけど、仕返しされるのもイヤだからね。
タロウが言っていた通り、恐怖を植え付けることにしたんだ。
二度とおいら達に手を出そうと思わないようにね。
自分達が、若い冒険者を餌に使っているトレント狩り。
その餌になる恐怖を味あわせることでね。
最初から、根っこに養分を吸い取られる前に、トレントを倒すことにしてたんだ。
それに、与えるのは恐怖だけじゃないよ。
トレントが、手足の腱を何ヶ所もズタズタにしてくれるから、傷が治っても仕返しなんかできないね。
歩くのも不自由になるし、もちろん、剣なんて重い物は振り回せないよ。
これからは、大人しく生きていくしかないね。とてもヤンチャは出来ないと思う。
このおっちゃん、恐怖で頭の方も壊れちゃったみたいだから、仕返しされる心配はまずないね。
ってか、このおっちゃん、生ける屍になってるけど大丈夫かな…。
********
「ひぃ、やめてくれ!
俺っちが何悪いことをしたって言うんだ。
オメー、ガキの癖して、鬼だな!
この人でなし!
こんなことしているとロクな大人になんねえぞ!」
次の処分しようと思い、下っ端一に近づくとおいらはそんな風に罵られちゃった。
なんか、その言葉、そのまんま、返してあげたいよ。
おいらだって、こんなことは気がのらないけどね。
おっちゃん達みたいな悪党を野放しにしておくとロクな事無いから。
おいらは、下っ端たちの罵詈雑言を無視して、淡々と処理を進めたんだ。
ハニートレントの前に突き飛ばして、養分を吸われる前にトレントを倒す作業を二回。
下っ端二人もアニキ同様、髪の毛が真っ白になって、変な笑いを漏らしてるよ。
そして、目の間には倒れた三本のハニートレント、足元には凄い数の『スキルの実』が落ちている。
それと、枝についた沢山のハニートレントの実、通称『ハチミツ壺』も貴重な収穫なんだ。
壺のような形をした『実』で、中にたっぷりのハチミツが入っているの。
ハニートレントのハチミツは凄い高級品で、『実』が一つ銀貨一枚もするんだよ。
それが、数え切れないほど生っているの。
通常のトレントは、もっぱら『スキルの実』を採るために狩るんだけど。
ハニートレントは、『ハチミツ壺』の方がお金になるんだ。
でも、レベル三のトレントとレベル四のハニートレントじゃ、強さが段違いなの。
なんてったって、ハニートレントの常食はクマだもんね。
だから、よっぽどベテランの冒険者じゃないと、ハニートレントは狩れないんだ。
「おい、マロン、おまえ、本当に凄い身体能力だな…。
なんで、そんな錆びた包丁一つで、こんなぶっとい木を倒せるんだ?
明らかに物理法則を無視してんだろうが。
っても、俺にゃ、物理なんて分らんけどな。
これも、ファンタジー補正ってやつか。」
おいらが、ハニートレントの収穫を眺めているとタロウがそんなことを言ってるよ。
「いいえ、マロンのその力は普通じゃありませんわ。
マロン、あなた、もしや、高レベ…。
いえ、これを聞くのはご法度でしたね。」
クッころさんが、おいらのレベルのことに疑念を持ち始めたんだ。
だから、おいら、レベルと言う大きな秘密を隠すために、小さな方の秘密を明かすことにしたんだ。
もちろん、それだけが理由じゃないけどね。
********
「今まで内緒にしてたんだけど…。
おいらが持っているスキル、ゴミと言われてるんだけどレベル十まで上げると結構役に立つんだ。
『クリティカル発生率アップ』ってレベル十になると『クリティカル発生率百%』になるんだ。
『クリティカルダメージアップ』も、『クリティカルダメージ三千%アップ』になるし。
だから、レベルゼロのままでも、凄い力が出るの。」
嘘じゃないよ、おいら、レベルゼロの時にレベル四十のワイバーンを倒しちゃったから。
それと、『スキルの実』の美味しい食べ方は教えないよ。これは、絶対の秘密。
「まあ、そんなことがあったのですか…。
それは、凄い新事実ですわ。
まさか、その二つの『ゴミ』と言われるスキルにそんな秘密が隠されていたなんて。」
クッころさんは、目を見張ってたよ。なんか、自分でも試してみようって感じ…。
そう言えば、クッころさんって、どんなスキル持ってるんだろう?
「なにぃ!そんな隠しボーナスがあったのか!
なんだ、そんな、良いことあるんなら、早く教えてくれれば良いのに!」
やっぱり、タロウはそう言うと思った。
スキル枠を一つ『クリティカル発生率アップ』で埋めちゃったからね。
でも、おいらはこの件に関しては無情だよ、『スキルの実』の美味しい食べ方は絶対に漏らさないから。
「でも、タロウ。
『クリティカル発生率アップ』の『実』、あれを二万個食べ続ける自信ある?
おいら、五歳で身寄りが無くなって、飢え死にしそうになったから。
それで、お金が稼げるようになるまでは、毎日タダで拾える『ゴミスキルの実』だけ食べて生きてきたんだよ。
あの苦い実を我慢できるんだったら、止めないけど。」
「しまった、効果が『ゴミ』なだけじゃなく、味も『ゴミ』だったな、あのスモモもどき。
あれを二万個も食わないといけないのか、一日一個鼻を摘まんで食うとして。
一年で三百六十五個、あれここも一年が三百六十五日で良いのか?
取り敢えずそれで計算して、十年で三千六百五十個…。
げっ、レベル十になるのに五十年以上かかるじゃねえか。
ヤメだ、ヤメ!
あんなクソ不味いモノを五十年以上食い続けるってどんな拷問だそれ。
マロン、おまえ、マジ凄いわ。
幾ら飢えてたからって、あんな不味いモンを一日何十個って食ったんだものな。
俺には真似できそうもねえわ。」
おいらの誘導にまんまと引っ掛かったタロウ、単純で良かったよ。
タロウはあっさりと『クリティカル発生率アップ』を育てるのを諦めたよ。
「そうでしたの…。
わたくしにも凄いスキルが手に入るかと思って期待しましたのに。
ガッカリですわ。」
やっぱり、クッころさんも試そうとしてたし…。
でも、クッころさん、その歳になってもスキル枠に空きがあるんだ…。
お貴族様って、小さいうちから高価な『スキルの実』を沢山与えられて育つんだと思ってたよ。
応援ありがとうございます!
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