上 下
42 / 848
第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記

第41話 初めてのレベルアップ!

しおりを挟む
 『生命の欠片』をどうやって手に入れたのかと問い、ジト目でおいらを見詰めるアルト。

「実は、少し前に『積載庫』を手に入れたんだ。
 それで、昨日倒したスッポンをチェックしてて、『生命の欠片』を見つけたの。」

「そう言えば、マロンは『スキルの実』の正しい食べ方をしてたわね。
 『スキルの実』って、完熟してから食べないと効果が大幅に低下するのよね。
 苦い『スキルの実』を幾ら我慢して食べても『積載庫』には至らないのよ。
 本当に無駄なの。
 でも、マロン、凄いわ。
 その幼さで、『積載庫』持ちになるなんて。
 恐らく人間で『積載庫』を持っているのはマロンだけよ。」

 そっか、苦い『スキルの実』は効果が落ちるんだ。
 どうりで、変だと思ったんだ。
 タロウの『クリティカル発生率アップ』の時の話、レベル一で一%アップと言うのもアレッと思ったけど。
 レベル十の予想が三百%アップって言うのも低いと思ったの、おいら、レベル九で二千%アップだったから。

「効果が低いって、同じレベルでも効果が違うということ?
 レベルの上がり方が遅いんじゃなくて?」

「そうよ、レベルは『スキルの実』を食べた数で勝手に上がって行っちゃうのよ。
 多くのスキルはレベル十で天井だから、完熟してないスキルの実を食べるのって本当に無駄なの。
 もっとも、あんまり厳密じゃなくて百個食べるうちの一、二個未熟なモノがあっても平気みたいだけど。」

 苦い『スキルの実』の効果って、十分の一くらいしか無いんだって。
 それなら、納得だよ。
 
「それで、『生命の欠片』を結晶化するにはどうしたら良いの?」

 おいらが本題に話を戻すと、アルトが教えてくれる。

「『積載庫』の中の『生命の欠片』が光っていたら『合成』可能なのよ。
 もし光っていたら、そのままジッと見詰めていなさい。
 そのうち、『結晶に合成しますか?』って聞いて来るから。
 そしたら、ハイと答えれば良いわ、あとは勝手にしてくれるから。」
 
 アルトの説明だと、『生命の欠片』は百個揃うと『結晶』に合成可能らしい。
 合成可能ならば、ピカピカ光ってるって。
 そう言えば、『生命の欠片』は光ってたね。

「じゃあ、おいら、やってみる!」

 おいらが『積載庫』の中を確認すると、『生命の欠片』はちゃんと光ってた。
 それをジッと見つめていると、例の女の人の声でアルトの言う通りに尋ねて来たんだ。

 おいら、思わず声に出して「ハイ!」って言っちゃったよ。

 すると、…。

    ********

「ねえ、アルト、合成したら『生命の欠片』が消えちゃったよ。
 いくら探しても『生命の欠片』もその『結晶』も見当たらないよ。」

 さっき、スッポンの生血を精力剤にした時は、生血が消えて精力剤が現れたのに。
 今回は、『生命の欠片』が消えても『結晶』が出て来ないの。

「おかしいわね、『生命の欠片(結晶)』ってのが残るはずだけど…。」

 おいらの言葉を聞いてアルトは首を傾げてたんだ。

「いくら探しても、『生命の欠片(結晶)』ってのは見当たらないよ。
 ねえ、それってどんなモノなの?」

「そうね、ちょうど良いことに、拾った『生命の欠片』が百個以上溜まってるわ。
 合成して見せてあげる。」

 そう言ったアルトは僅かばかりの合成時間の後、『生命の欠片(結晶)』を見せてくれたんだ。

「はい、これが『生命の欠片』の『結晶』よ。
 私は要らないから、マロンに上げるわ。」

「えっ、これって?」

 それなら、あるよ『積載庫』の中に腐るほど。でも…。

「うん? どうかした?」

「これなら、おいら、沢山持っているよ。
 おいら、こんな数を数えたこと無いから自信が無いけど。
 四百京くらい?
 でも、おいらの『積載庫』の中では、『金貨』って書いてあるの。」

「いったい、なんなの、その天文学的数字…。
 どこで、そんなに手に入れたのよ?」

「うーん、実は、ワイバーンをちょこちょこって。」

「この間のはぐれワイバーン、あれマロンが倒しちゃったの?
 呆れた…。
 まあ、良いわ、その話はあとでゆっくり聞かせてもらうわ。
 それで、マロンの『積載庫』では『金貨』になってるのね。
 何でかしら、バグってことはないと思うけど…。」

 取り敢えず、合成したら消えた理由は分かったよ、『金貨』の方に含まれちゃったんだ。
 数が余りに大きいんで、一桁目の数字なんて覚えてなかったよ。

「まあ、『金貨』となっている原因はあとで調べるとして。
 私があげた一枚、体に取り込みたいと念じてみて。」

 おいらは、アルトに言われた通り、『生命の欠片』の結晶を体に取り込みたいと念じてみたんだ。
 すると、おいらの体に溶け込むように消えていく『生命の欠片』の結晶。

 それと同時に、頭の中で鐘が鳴り響いたよ。
 不意を突かれたんで、ドキッとして、思わず硬直すると。

「その表情、頭の中で鐘の音が響いて驚いたんでしょう。
 レベルアップおめでとう。
 能力値を確認すると、レベルが一になっているはずよ。」

 言われた通り、レベルを確認すると確かに一になってたよ。
 レベルも、スキルと同じでレベル二に上げる時は『生命の欠片(結晶)』が三枚。
 レベル三に上げる時は九枚必要らしいの。

 いったい、四百京って、レベル幾つまで上がるんだろう?
 あのワイバーンってレベル幾つだったんだ、本当に…。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。 召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。 しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる―― ※今月は毎日10時に投稿します。

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

キャラ交換で大商人を目指します

杵築しゅん
ファンタジー
捨て子のアコルは、元Aランク冒険者の両親にスパルタ式で育てられ、少しばかり常識外れに育ってしまった。9歳で父を亡くし商団で働くことになり、早く商売を覚えて一人前になろうと頑張る。母親の言い付けで、自分の本当の力を隠し、別人格のキャラで地味に生きていく。が、しかし、何故かぽろぽろと地が出てしまい苦労する。天才的頭脳と魔法の力で、こっそりのはずが大胆に、アコルは成り上がっていく。そして王立高学院で、運命の出会いをしてしまう。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

処理中です...