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第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記

第39話 まさか、スッポンから出てくるなんて…

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 スッポンに追いかけられて相当疲れたみたいで、クッころさんは早々に寝ちゃったよ。
 クッころさんが良く寝入っていること確認したおいらは、久々に妖精の光珠を取り出して部屋を灯したの。
 妖精の光珠は妖精族の秘宝だもんね、クッころさんには迂闊に見せられないよ。
 クッころさんが来てからは、仕方がないからローソクを使ってたんだ。

 火打石で火を点けるのが大変だったんで、にっぽん爺のところへもらい火に行ったよ。

 妖精の光珠で明るくなった土間、ロウソクと違って土間全体が明るくなるんでホッとする。
 おいらは今日狩ったスッポンのチェックをすることにしたんだ。
 クッころさんがいるところでは落ち着いてチェックできないもんね。

 ワイバーンやうさぎの時と同じで、『積載庫』に仕舞ったスッポンもやっぱり解体されてたよ。
 『甲羅』、『身』、『生血』なんてのが並んでるの。

 試しに、『甲羅』を見てみると、

『スッポンの甲羅:乾燥して粉末にすると薬になる(効能 夜元気になる、男性限定)、高価。』

 そんな説明が書かれてたよ。何その、夜限定とか、男性限定とかえらいピンポイントな薬。
 これは、おいらには関係ないね。

 そう思って、次のモノをチェックしようとした時のこと。
 突然、『甲羅』がチカチカと点滅を始めたんだ。
 オヤッと思って、『甲羅』に注目していると、『薬にしますか?』と尋ねて来たの。
 聞きなれない、女の人の声で…。
 おいら、ビックリして思わず、「ハイ」と返事をしちゃったよ。
 すると、『甲羅』に被さる形で『乾燥中』の文字が浮かんで点滅を始めたよ。
 何事かと思って注目してると、『乾燥中』の文字はやがて『粉砕中』に変わり。
 やがて、『完成』という文字が浮かぶと、『甲羅』が消失したんだ。
 その代わり、そこにはツボがあって、『スッポンの甲羅の精力剤』って書いてあった

『スッポンの甲羅の精力剤:効能 夜元気になる、男性限定、極めて高価』だって。

 なんじゃこりゃ、『積載庫』って加工までしてもらえるの?
 不思議な事もあるもんだと思いながら、試しにワイバーンの血を確認すると…。
 出来ました…、『ワイバーンの秘毒』。

『ワイバーンの秘毒:無味無臭・遅効性のマヒ毒、致死量ごく微量、足が付きにくい、暗殺に便利』

 だってさ…。暗殺に便利って、こんなの要らないよ。

 この時、おいら、思ったんだ。
 うさぎ肉のローストが『積載庫』で作れたら便利って…。

 …駄目だった。
 どうやら、他に材料を加えないといけない物は出来ないみたい…。

 次に『身』を見てみると、

『スッポンの身:美味、高級食材、スープを取ると絶品、プルプルの身はお肌に良い、女性に大人気。』

 なんてことが書いてある。
 これは、おいらにも良いかも知れない。でも、何処に持ってけば調理してもらえるかな?

 そして、『生血』。

『スッポンの生血:生臭い、酒で割って薬酒にする(効能 夜元気になる、男性限定)、高価。』

 だから、なんなのよ、夜限定とか、男性限定とかえらいピンポイントな効能は…。
 因みに、『生血』をいくら見てても点滅はしなかった、お酒が必要だから『薬酒』は出来ないみたい。

 その後も『積載庫』の中にあるスッポンが解体されたモノを一つ一つ確認していくと…。

 見つけた…。

     ********

 おいら、それを見つけた時、目を疑ったね。
 あるはずがない物があるんだもの。

 スッポンが解体されたモノの一番最後にあったもの。
 今朝までは確かに無かったから、スッポンから出てきたんだと思う。

 それは、確かに『生命の欠片』と書いてあった、その数百個。
 ご丁寧に、文字が明るく光ってたよ。

 これ、何が何だかわかんない…。

 おいら、にっぽん爺からレベルを上げるためにはレベル五以上の魔物を倒さないといけないと教わった。
 クッころさんの話しからも、どうやら、それは正しいみたい。
 
 クッころさんは、倒した魔物がドロップする『生命の欠片』を体に取り込まないとレベルは上がらないと言った。
 でも、厄災と呼ばれるワイバーンを倒しても『生命の欠片』なんて、何処にも無かったよ。

 それなのに、何で、レベル一のスッポンが『生命の欠片』を持ってんの?

 おいら、首を捻りながら、『生命の欠片』を一粒手のひらの上に出してみたの。

 砂粒のようだった…。
 これ、必要なの、レベルアップに?
 普通だったら魔物を倒しても気付かないよ。
 こんな砂粒みたいなモノが地面に落ちてても。

 『生命の欠片』がどんなモノかは分かったけど、これどうやって体に取り込むんだろう?

 今まで、能力値に関係することを、全部頭で思い浮かべるだけで出来たよね。
 もしかしたら、『生命の欠片』を体に取り込みたいと念じるだけで良いのかな?

 おいらはそう考えて、手のひらの上の『生命の欠片』を取り込みたいと念じたの。
 でも、何にも起こらなかったんだ。

 その代わり、…。
 頭の中で、さっきの女の人の声が声がしたんだ。

「『生命の欠片』は結晶化しないと、体内に取り込めません。
 結晶化をしてから、再度お試しください。」

 結晶化、なんだそりゃ?
 不親切な事に、さっきの女の人の声って、唐突に出て来て一方的に話すだけ。
 おいらの疑問には、一切応えてくれないの。

 そこで行き詰ったおいらは、諦めて眠ることにしたの。
 子供は、早寝早起きが基本だからね。

 おいらは、『生命の欠片』を『積載庫』の中に戻して、ベッドに潜り込んだよ。
 明日、アルトに相談しに行こうと心に決めて。
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