ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
上 下
39 / 848
第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記

第38話 ばっちぃから抱き付かないで…

しおりを挟む
*本日、お昼に1話投稿しています。
 まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
 よろしくお願いいたします。

     ********

 おいらは、スッポンを倒してしばらくはその場に留まってたんだ。
 クッころさんが戻って来るかも知れないから。

 いくら待っても、クッころさんは引き返してこなかったよ。
 うさぎに追いかけられていた時は、おいらのことを心配して戻って来てくれたんだけど。
 今回は逃げるのに必死で、おいらのことなど気に留めていられないのかも知れないね。
 まあ、戻て来なければ、スッポンはどうしたと訊かれた時に誤魔化すのが楽で良いけど。
 「諦めてどっかに行っちゃった」と言えば済むからね。

 おいらは、改めて町に向かって歩き出したんだ。
 しばらく歩くと、見知った白馬が止まっているのが見えた。
 馬上にクッころさんの姿は見当たらず、どうしたのかと思って近づくと。
 馬の足元に蹲って泣いているクッころさんの姿が。
 力なくしゃがみ込んだ周りには盛大に水溜りが出来ていたよ…。

 よく見れば、馬に付けた鞍からも何やら液体が滴り落ちている。
 よっぽど、怖かったんだね。

「クッころさん、大丈夫ですか?」

「マ、マロン…。
 うぇ…。」

 近づいておいらが声をかけると…。

「うぇ?」

「うぇーん、怖かったですわー!」

 クッころさんは泣きながらしがみ付いて来たよ。
 やめて、そんな風にしがみ付かれると、おいらまで汚れちゃう。
 ばっちぃ、ばっちぃよ…。

 クッころさん…、まさか、スッポンにも粗相して追いかけられたんじゃ…。

     ********

 お漏らしをしたクッころさんと一緒に家に帰ると、すぐにお風呂に連れて行ったよ。
 着替えをさせてあげるにも、一旦体をキレイに洗わないとね。

 お風呂に行くと、脱衣所にいつもの噂好きのオバチャンがいて…。

「おや、どうしたんだい。
 お貴族様、酷い格好をしてるね。」

 クッころさんの悲惨な姿に目敏く目を留めて、オバチャンが聞いたきたんだ。
 しょうがないから、こうなった経緯をかいつまんで話すと。

「あっ、はっ、はっ!
 今度は、スッポンに追いかけられたって。
 そりゃあ災難だったね。さぞかし、怖かっただろよ。
 漏らしちまうのも仕方がないさ。
 しっかし、何でまた、スッポンなんかに追いかけられるハメになったんだい。
 今度はスッポンにションベンでもかけたんかい?」

 話しを聞いたオバチャンは大笑いだった。
 やっぱり、おいらと同じこと考えてら…。

「失礼ですわ。
 わたくしだって、ところかまわずお花を摘む訳ないじゃないですか。
 草原を見回りしていたら、小山が道を塞いでたのですわ。」

 クッころさんは、今日も今日とて、ワイバーン警戒の見回りと称する、単なる馬上散歩に出かけてたんだ。
 草原のかなり奥まで進んで引き返して来たら、小山が道を塞いでたんだって。
 言うまでもなくさっきのスッポンなんだけど、…。
 スッポンを見た事ないクッころさんには、それがわからなかったみたい。
 来た時は無かったのに、何時の間にこんな山が出来たんだろう不思議に思いつつも。
 そんなに傾斜がきつい訳でもなかったんで、馬に乗ったまま小山を登ったんだって。
 そのまま小山を降りてきたところで、気付かずに馬の後ろ足でスッポンの頭を蹴とばしたらしい。

 頭を蹴とばされて怒ったスッポンが、クッころさんを追いかけてたってことだね。

「驚きましたわ、単なる山かと思っていたモノが魔物だったのですから。
 凄く怒っていて、猛然と追いかけて来るのですもの…。
 今度こそ、本当に死ぬかと思いましたわ。」

 そう愚痴るクッころさんにオバチャンは。

「お貴族様、そんな草原の奥深くまで行ったんかい。
 そいつは、魔物の池に棲むスッポンだね。
 おおかた、今日は陽気が良いんで甲羅干しでもしてたんだろうよ。
 いい気分で寝ていたところを、馬の蹄で頭を蹴とばされたらさぞかし怒ったろうね。」

 そう言えば、クッころさんには注意してなかった。
 タロウにスライムの狩場の説明をした時に言った魔物の水場になっている池のこと。
 スライムがうじゃうじゃいるんだけど。
 強い魔物が水を求めて沢山集まって来るから、『魔物の池』と呼んで普通の人は近付かないの。
 オバチャンの言う通り、クッころさんは魔物の池の近くの道を通ってたんだね。
 まさか、あんな草原の奥深くまで行ってたなんて思わなかったよ。

 道から外れて池の方に行ってしまたら、もっと大変なことになってたね。
 危ないからそっちへ行っちゃダメって、帰ったらよく注意しておかなくちゃ。

 クッころさんの話を聞いてひとしきり大笑いしていたオバチャン。
 さっそく、知り合いに言い触らすべく浴室に入って行ったよ。
 今頃、お風呂に浸かってオバチャン仲間とクッころさんの話に花を咲かせてるに違いない。

 これできっと、明日にはご近所中に知れ渡るんだろうね。

 スッポンに追いかけられた恐怖でチビったお貴族様って。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

処理中です...