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第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記
第30話 大きな赤ちゃんが転がり込んで来たよ…
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*本日、お昼に1話投稿しています。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
********
おいらの狭い家の中。
土間に置いたテーブルを囲んでいるのは、おいらと女騎士様の二人だけ。
タロウは奇声を上げた後にすぐ庭から叩き出したよ。
だって、甲冑を外そうとしたら、その中は下着同然の格好だったんだもの。
タロウが見たら、興奮してまた何か奇声を上げかねないからね。
甲冑の中を見られる前に、庭から叩き出したの。
「わたくしの名は、エクレア・シュアラ・ド・クレーム。
王都で騎士の名門の誉れ高いクレーム子爵家の長女です。
しばらく世話になるので、エクレアと呼んでくださって結構ですわ。
それで、あなたは何とお呼びすれば良いのかしら。」
テーブルの対面に腰掛けた女騎士様が、自己紹介をしておいらの名前を尋ねて来た。
エクレア様はわざわざ王都からこの辺境の地まで旅して来たみたい。
どうやら、エクレア様は本気でおいらの家に居座るつもりらしいの。
おいらとしては他人に知られたくない秘密が沢山あるのに…、困ったことになったよ。
「おいらの名前はマロンです。
エクレア様は、こんな汚い家に滞在して良いのですか。
宿屋や貴族のお屋敷はありませんが、大きな商人や農場主の家ならありますよ。
大きなお屋敷の方が良いのではないですか」
おいら、もう話し方を崩させた貰ったよ。
『私』なんて言っていたら、背中がムズムズするからね。
「かまいません。
そんなところに逗留するよりマロンの家の方が安心できますわ。
わたくし、殿方が苦手ですの。
殿方が傍にいると気が休まらないですわ。」
まあ、大きな商人や農場主の家だと、男の使用人はうじゃうじゃいるだろうね。
でも、エクレア様はここまでどうやって旅してきたんだろう。
男の人がいない宿屋なんて考えられないし、貴族の館に泊めてもらうにしても当主は男性だよね。
そのことを尋ねてみたら、ここまで貴族の館を転々として来たらしいの。
部屋にお付きの女性使用人を数人付けて、男性の立ち入りを厳禁にしてくれるので安心だって。
どうやら、おいらが女の一人暮らしなので、エクレア様的にポイントが高いらしい。
********
「これは、宿をお借りする謝礼ですわ。
取っておいてください。」
そんな言葉と共に、『ドン!』とテーブルに置かれた大きな布袋。
口が締め切れないほど中身が詰まっていたのか、テーブルに置かれた衝撃で口が開いたよ。
袋の中から零れ出たのは、白銀に光るおびただしい銀貨。
こんな大量の銀貨を見るのは初めて、いったいどんだけあるんだろう。
と言うより…、この騎士さん、いったい何時まで居座るつもり?
おいらが、零れ落ちる銀貨に啞然としていると…。
「取り敢えず、二月分として銀貨二千枚を渡しておきます。
不足なら、申し出てください。
逗留を伸ばす時は、追加を渡します。」
おいらの心の中を読んだようにエクレアさんは言ったよ。
「エクレア様、この町ではおいらの家と同じ家が銀貨千枚で買えます。
二ヶ月も過ごすのなら、こんな狭い家に二人で住むより家を買われたらいかがですか?」
そんなにお金を持っているなら、こんな狭い家に二人で住む必要ないよね。
平民のおいらが四六時中側にいるより、一人の方が絶対気が休まるはずだよ。
出て行って欲しいとの願いを込めて言ったんだけど、帰ってきた言葉は…。
「一人で住んだら、身の回りの世話をしてくれる人がいないじゃありませんか。
わたくし、自慢じゃありませんが、一人では何もできませんのよ。
食事の世話は言わずもがな、着替えの手伝い、髪や体のお手入れ、シモの世話と。
マロンがしてくれないと困ります。」
いや、本当に自慢になってないよ。
このヤロ、いえ、この騎士さん、最初からおいらを召使いのように使おうと思ってやんの。
子供じゃないんだから、そのくらい自分でやろうよ。何、最後のシモの世話って…。
おいら、気になるから聞いちゃったよ。
そしたら、エクレア様の家はもの凄く大きくて、トイレに行くのが大変なんだって。
だから、部屋に置いたオマルで用を足すそうなんだ。
その処理を召使いの女性がするって言うの。…エクレアさんをキレイするのを含めて。
おいら、謹んでそれは遠慮させて頂いたよ。
結局、エクレアさんを追い出すのには失敗、だってテコでも動かないって感じなんだもん。
エクレアさんは、身の回りのお世話込みでこの家に滞在することになっちゃった。
食事の提供に着替えの手伝い、それに、お風呂でエクレアさんの髪と体を洗って上げるの。
二ヶ月で銀貨二千枚ってのは、主にエクレアさんのお世話をする対価みたいだよ。
ここまで旅して来る途中、逗留した貴族の館でも全てやってもらったらしいの。
と言うより、貴族の世界ではそれが当たり前みたい。
おいら、それを聞いてビックリした。貴族ってまるで大きな赤ちゃんみたいだ。
何とか説得に成功して、シモの世話だけは免除してもらったよ、…トホホ。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
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おいらの狭い家の中。
土間に置いたテーブルを囲んでいるのは、おいらと女騎士様の二人だけ。
タロウは奇声を上げた後にすぐ庭から叩き出したよ。
だって、甲冑を外そうとしたら、その中は下着同然の格好だったんだもの。
タロウが見たら、興奮してまた何か奇声を上げかねないからね。
甲冑の中を見られる前に、庭から叩き出したの。
「わたくしの名は、エクレア・シュアラ・ド・クレーム。
王都で騎士の名門の誉れ高いクレーム子爵家の長女です。
しばらく世話になるので、エクレアと呼んでくださって結構ですわ。
それで、あなたは何とお呼びすれば良いのかしら。」
テーブルの対面に腰掛けた女騎士様が、自己紹介をしておいらの名前を尋ねて来た。
エクレア様はわざわざ王都からこの辺境の地まで旅して来たみたい。
どうやら、エクレア様は本気でおいらの家に居座るつもりらしいの。
おいらとしては他人に知られたくない秘密が沢山あるのに…、困ったことになったよ。
「おいらの名前はマロンです。
エクレア様は、こんな汚い家に滞在して良いのですか。
宿屋や貴族のお屋敷はありませんが、大きな商人や農場主の家ならありますよ。
大きなお屋敷の方が良いのではないですか」
おいら、もう話し方を崩させた貰ったよ。
『私』なんて言っていたら、背中がムズムズするからね。
「かまいません。
そんなところに逗留するよりマロンの家の方が安心できますわ。
わたくし、殿方が苦手ですの。
殿方が傍にいると気が休まらないですわ。」
まあ、大きな商人や農場主の家だと、男の使用人はうじゃうじゃいるだろうね。
でも、エクレア様はここまでどうやって旅してきたんだろう。
男の人がいない宿屋なんて考えられないし、貴族の館に泊めてもらうにしても当主は男性だよね。
そのことを尋ねてみたら、ここまで貴族の館を転々として来たらしいの。
部屋にお付きの女性使用人を数人付けて、男性の立ち入りを厳禁にしてくれるので安心だって。
どうやら、おいらが女の一人暮らしなので、エクレア様的にポイントが高いらしい。
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「これは、宿をお借りする謝礼ですわ。
取っておいてください。」
そんな言葉と共に、『ドン!』とテーブルに置かれた大きな布袋。
口が締め切れないほど中身が詰まっていたのか、テーブルに置かれた衝撃で口が開いたよ。
袋の中から零れ出たのは、白銀に光るおびただしい銀貨。
こんな大量の銀貨を見るのは初めて、いったいどんだけあるんだろう。
と言うより…、この騎士さん、いったい何時まで居座るつもり?
おいらが、零れ落ちる銀貨に啞然としていると…。
「取り敢えず、二月分として銀貨二千枚を渡しておきます。
不足なら、申し出てください。
逗留を伸ばす時は、追加を渡します。」
おいらの心の中を読んだようにエクレアさんは言ったよ。
「エクレア様、この町ではおいらの家と同じ家が銀貨千枚で買えます。
二ヶ月も過ごすのなら、こんな狭い家に二人で住むより家を買われたらいかがですか?」
そんなにお金を持っているなら、こんな狭い家に二人で住む必要ないよね。
平民のおいらが四六時中側にいるより、一人の方が絶対気が休まるはずだよ。
出て行って欲しいとの願いを込めて言ったんだけど、帰ってきた言葉は…。
「一人で住んだら、身の回りの世話をしてくれる人がいないじゃありませんか。
わたくし、自慢じゃありませんが、一人では何もできませんのよ。
食事の世話は言わずもがな、着替えの手伝い、髪や体のお手入れ、シモの世話と。
マロンがしてくれないと困ります。」
いや、本当に自慢になってないよ。
このヤロ、いえ、この騎士さん、最初からおいらを召使いのように使おうと思ってやんの。
子供じゃないんだから、そのくらい自分でやろうよ。何、最後のシモの世話って…。
おいら、気になるから聞いちゃったよ。
そしたら、エクレア様の家はもの凄く大きくて、トイレに行くのが大変なんだって。
だから、部屋に置いたオマルで用を足すそうなんだ。
その処理を召使いの女性がするって言うの。…エクレアさんをキレイするのを含めて。
おいら、謹んでそれは遠慮させて頂いたよ。
結局、エクレアさんを追い出すのには失敗、だってテコでも動かないって感じなんだもん。
エクレアさんは、身の回りのお世話込みでこの家に滞在することになっちゃった。
食事の提供に着替えの手伝い、それに、お風呂でエクレアさんの髪と体を洗って上げるの。
二ヶ月で銀貨二千枚ってのは、主にエクレアさんのお世話をする対価みたいだよ。
ここまで旅して来る途中、逗留した貴族の館でも全てやってもらったらしいの。
と言うより、貴族の世界ではそれが当たり前みたい。
おいら、それを聞いてビックリした。貴族ってまるで大きな赤ちゃんみたいだ。
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