31 / 848
第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記
第30話 大きな赤ちゃんが転がり込んで来たよ…
しおりを挟む
*本日、お昼に1話投稿しています。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
********
おいらの狭い家の中。
土間に置いたテーブルを囲んでいるのは、おいらと女騎士様の二人だけ。
タロウは奇声を上げた後にすぐ庭から叩き出したよ。
だって、甲冑を外そうとしたら、その中は下着同然の格好だったんだもの。
タロウが見たら、興奮してまた何か奇声を上げかねないからね。
甲冑の中を見られる前に、庭から叩き出したの。
「わたくしの名は、エクレア・シュアラ・ド・クレーム。
王都で騎士の名門の誉れ高いクレーム子爵家の長女です。
しばらく世話になるので、エクレアと呼んでくださって結構ですわ。
それで、あなたは何とお呼びすれば良いのかしら。」
テーブルの対面に腰掛けた女騎士様が、自己紹介をしておいらの名前を尋ねて来た。
エクレア様はわざわざ王都からこの辺境の地まで旅して来たみたい。
どうやら、エクレア様は本気でおいらの家に居座るつもりらしいの。
おいらとしては他人に知られたくない秘密が沢山あるのに…、困ったことになったよ。
「おいらの名前はマロンです。
エクレア様は、こんな汚い家に滞在して良いのですか。
宿屋や貴族のお屋敷はありませんが、大きな商人や農場主の家ならありますよ。
大きなお屋敷の方が良いのではないですか」
おいら、もう話し方を崩させた貰ったよ。
『私』なんて言っていたら、背中がムズムズするからね。
「かまいません。
そんなところに逗留するよりマロンの家の方が安心できますわ。
わたくし、殿方が苦手ですの。
殿方が傍にいると気が休まらないですわ。」
まあ、大きな商人や農場主の家だと、男の使用人はうじゃうじゃいるだろうね。
でも、エクレア様はここまでどうやって旅してきたんだろう。
男の人がいない宿屋なんて考えられないし、貴族の館に泊めてもらうにしても当主は男性だよね。
そのことを尋ねてみたら、ここまで貴族の館を転々として来たらしいの。
部屋にお付きの女性使用人を数人付けて、男性の立ち入りを厳禁にしてくれるので安心だって。
どうやら、おいらが女の一人暮らしなので、エクレア様的にポイントが高いらしい。
********
「これは、宿をお借りする謝礼ですわ。
取っておいてください。」
そんな言葉と共に、『ドン!』とテーブルに置かれた大きな布袋。
口が締め切れないほど中身が詰まっていたのか、テーブルに置かれた衝撃で口が開いたよ。
袋の中から零れ出たのは、白銀に光るおびただしい銀貨。
こんな大量の銀貨を見るのは初めて、いったいどんだけあるんだろう。
と言うより…、この騎士さん、いったい何時まで居座るつもり?
おいらが、零れ落ちる銀貨に啞然としていると…。
「取り敢えず、二月分として銀貨二千枚を渡しておきます。
不足なら、申し出てください。
逗留を伸ばす時は、追加を渡します。」
おいらの心の中を読んだようにエクレアさんは言ったよ。
「エクレア様、この町ではおいらの家と同じ家が銀貨千枚で買えます。
二ヶ月も過ごすのなら、こんな狭い家に二人で住むより家を買われたらいかがですか?」
そんなにお金を持っているなら、こんな狭い家に二人で住む必要ないよね。
平民のおいらが四六時中側にいるより、一人の方が絶対気が休まるはずだよ。
出て行って欲しいとの願いを込めて言ったんだけど、帰ってきた言葉は…。
「一人で住んだら、身の回りの世話をしてくれる人がいないじゃありませんか。
わたくし、自慢じゃありませんが、一人では何もできませんのよ。
食事の世話は言わずもがな、着替えの手伝い、髪や体のお手入れ、シモの世話と。
マロンがしてくれないと困ります。」
いや、本当に自慢になってないよ。
このヤロ、いえ、この騎士さん、最初からおいらを召使いのように使おうと思ってやんの。
子供じゃないんだから、そのくらい自分でやろうよ。何、最後のシモの世話って…。
おいら、気になるから聞いちゃったよ。
そしたら、エクレア様の家はもの凄く大きくて、トイレに行くのが大変なんだって。
だから、部屋に置いたオマルで用を足すそうなんだ。
その処理を召使いの女性がするって言うの。…エクレアさんをキレイするのを含めて。
おいら、謹んでそれは遠慮させて頂いたよ。
結局、エクレアさんを追い出すのには失敗、だってテコでも動かないって感じなんだもん。
エクレアさんは、身の回りのお世話込みでこの家に滞在することになっちゃった。
食事の提供に着替えの手伝い、それに、お風呂でエクレアさんの髪と体を洗って上げるの。
二ヶ月で銀貨二千枚ってのは、主にエクレアさんのお世話をする対価みたいだよ。
ここまで旅して来る途中、逗留した貴族の館でも全てやってもらったらしいの。
と言うより、貴族の世界ではそれが当たり前みたい。
おいら、それを聞いてビックリした。貴族ってまるで大きな赤ちゃんみたいだ。
何とか説得に成功して、シモの世話だけは免除してもらったよ、…トホホ。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
********
おいらの狭い家の中。
土間に置いたテーブルを囲んでいるのは、おいらと女騎士様の二人だけ。
タロウは奇声を上げた後にすぐ庭から叩き出したよ。
だって、甲冑を外そうとしたら、その中は下着同然の格好だったんだもの。
タロウが見たら、興奮してまた何か奇声を上げかねないからね。
甲冑の中を見られる前に、庭から叩き出したの。
「わたくしの名は、エクレア・シュアラ・ド・クレーム。
王都で騎士の名門の誉れ高いクレーム子爵家の長女です。
しばらく世話になるので、エクレアと呼んでくださって結構ですわ。
それで、あなたは何とお呼びすれば良いのかしら。」
テーブルの対面に腰掛けた女騎士様が、自己紹介をしておいらの名前を尋ねて来た。
エクレア様はわざわざ王都からこの辺境の地まで旅して来たみたい。
どうやら、エクレア様は本気でおいらの家に居座るつもりらしいの。
おいらとしては他人に知られたくない秘密が沢山あるのに…、困ったことになったよ。
「おいらの名前はマロンです。
エクレア様は、こんな汚い家に滞在して良いのですか。
宿屋や貴族のお屋敷はありませんが、大きな商人や農場主の家ならありますよ。
大きなお屋敷の方が良いのではないですか」
おいら、もう話し方を崩させた貰ったよ。
『私』なんて言っていたら、背中がムズムズするからね。
「かまいません。
そんなところに逗留するよりマロンの家の方が安心できますわ。
わたくし、殿方が苦手ですの。
殿方が傍にいると気が休まらないですわ。」
まあ、大きな商人や農場主の家だと、男の使用人はうじゃうじゃいるだろうね。
でも、エクレア様はここまでどうやって旅してきたんだろう。
男の人がいない宿屋なんて考えられないし、貴族の館に泊めてもらうにしても当主は男性だよね。
そのことを尋ねてみたら、ここまで貴族の館を転々として来たらしいの。
部屋にお付きの女性使用人を数人付けて、男性の立ち入りを厳禁にしてくれるので安心だって。
どうやら、おいらが女の一人暮らしなので、エクレア様的にポイントが高いらしい。
********
「これは、宿をお借りする謝礼ですわ。
取っておいてください。」
そんな言葉と共に、『ドン!』とテーブルに置かれた大きな布袋。
口が締め切れないほど中身が詰まっていたのか、テーブルに置かれた衝撃で口が開いたよ。
袋の中から零れ出たのは、白銀に光るおびただしい銀貨。
こんな大量の銀貨を見るのは初めて、いったいどんだけあるんだろう。
と言うより…、この騎士さん、いったい何時まで居座るつもり?
おいらが、零れ落ちる銀貨に啞然としていると…。
「取り敢えず、二月分として銀貨二千枚を渡しておきます。
不足なら、申し出てください。
逗留を伸ばす時は、追加を渡します。」
おいらの心の中を読んだようにエクレアさんは言ったよ。
「エクレア様、この町ではおいらの家と同じ家が銀貨千枚で買えます。
二ヶ月も過ごすのなら、こんな狭い家に二人で住むより家を買われたらいかがですか?」
そんなにお金を持っているなら、こんな狭い家に二人で住む必要ないよね。
平民のおいらが四六時中側にいるより、一人の方が絶対気が休まるはずだよ。
出て行って欲しいとの願いを込めて言ったんだけど、帰ってきた言葉は…。
「一人で住んだら、身の回りの世話をしてくれる人がいないじゃありませんか。
わたくし、自慢じゃありませんが、一人では何もできませんのよ。
食事の世話は言わずもがな、着替えの手伝い、髪や体のお手入れ、シモの世話と。
マロンがしてくれないと困ります。」
いや、本当に自慢になってないよ。
このヤロ、いえ、この騎士さん、最初からおいらを召使いのように使おうと思ってやんの。
子供じゃないんだから、そのくらい自分でやろうよ。何、最後のシモの世話って…。
おいら、気になるから聞いちゃったよ。
そしたら、エクレア様の家はもの凄く大きくて、トイレに行くのが大変なんだって。
だから、部屋に置いたオマルで用を足すそうなんだ。
その処理を召使いの女性がするって言うの。…エクレアさんをキレイするのを含めて。
おいら、謹んでそれは遠慮させて頂いたよ。
結局、エクレアさんを追い出すのには失敗、だってテコでも動かないって感じなんだもん。
エクレアさんは、身の回りのお世話込みでこの家に滞在することになっちゃった。
食事の提供に着替えの手伝い、それに、お風呂でエクレアさんの髪と体を洗って上げるの。
二ヶ月で銀貨二千枚ってのは、主にエクレアさんのお世話をする対価みたいだよ。
ここまで旅して来る途中、逗留した貴族の館でも全てやってもらったらしいの。
と言うより、貴族の世界ではそれが当たり前みたい。
おいら、それを聞いてビックリした。貴族ってまるで大きな赤ちゃんみたいだ。
何とか説得に成功して、シモの世話だけは免除してもらったよ、…トホホ。
2
お気に入りに追加
298
あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる