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第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常

第26話 お風呂にだってルールはあるよ!

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 浴場に足を踏み入れたおいらに向かって女湯に行けと言ったタロウ。
 だから、共同浴場の説明をしようと思ったのに。
 人の話も聞かんと、勝手に先に行っちゃうんだから…。

「男女分れているのは脱衣場だけ。
 お風呂に浸かる時は、みんな一緒だよ。」

 私がタロウに答えると…。

「うおおおお!それは混浴ってことか!
 おい、おい、マロン。
 若いお姉ちゃんも風呂に入りに来るのか?」

 また、大声を出して…。
 今は誰もいないけど、あんまり人前で大声を出さない方が良いよ。
 変な人だと思われるから。
 でも、やっぱり、そこに食いついたね。

「もちろんだよ。
 だって、お風呂はここと、もう一ヶ所しかないし。
 夕方になると、日が暮れる前に女の人もたくさん来るよ。
 それでね、この共同浴場にはみんで作ったルールがあるの。
 ルールを守らないと、周りの人から摘まみ出されるよ。」

 タロウってば、スケベそうだから注意しておかない絶対トラブるよ。

「何だよ、そのルールってのは?
 法律も無いような世界で、風呂にルールがあるってか。」

 決まってるでしょう、みんなで使うんだもの。
 誰もが、気分良く使うためにルールを決めておかないと。
 不心得者がいたら、みんなが迷惑しちゃうじゃない。

「まず第一に、その粗末なモノを隠して。
 前を隠すのは子供に真っ先に教えるルールだよ。」

 因みにおいらは、洗い布とは別に少し大きめの薄い布を持ってきてる。
 お風呂に入る時は、それを腰に巻き付けているの。
 父ちゃんから、それがマナーだと教わったよ。

「なんだよ!粗末なモノなんて侮辱しやがって!
 おまえみたいなガキが、何を分かったような口きいてやがる!」

 おいらの注意も聞かず、タロウを『粗末』と言われたことに腹を立てやんの。
 何でそんな些細なことに怒るんだ、こいつ。
 それより、前を隠す方が大事なのに。

「他の人の事は分かんないけど、父ちゃんの半分もないじゃない。
 粗末と言われても仕方ないでしょう。
 いいから、早く前を隠して!
 他の人、特に女の人に見られたら、このお風呂から叩き出されるよ。」

「グッ!」

 あっ、タロウが左胸に手を当てて蹲った…。
 何か、酷く落ち込んだような暗い顔しているけど。
 急にどうしたんだろう?

「ちくしょう、異世界に来てまで馬鹿にされるなんて…。
 しかも、こんなガキんちょに…。
 家で、姉貴が小っちゃい、小っちゃいって、俺のナニをバカにしたけど。
 姉貴の言う事は、事実だったんか…。」

 何か小さな声でそんな独り言を漏らしてた。
 なんか、ゴメン。トラウマを刺激しちゃたみたい…。

    ********

 しばらく落ち込んでたタロウだけど。
 何とか立ち直って腰に布を巻いて言ったんだ。

「分かったよ、これで良いんだろう。
 で、そのルールってのは他に何があるんだ。」

「ええっとね、ルールの二つ目、女の人をジロジロ見たらダメだって。
 三つ目は、女の人の前で前をモッコリさせたらダメだって。」

 おいらが三つ目まで言ったところで、タロウが口を挟んだの。
 ほらまた、人の説明を最後まで聞かない…。

「おい、二つ目は俺でも分かる、確かに女性に対するマナーだな。
 でも、三つ目は何なんだ。
 枯れた爺じゃない限り、裸の女が目の前を歩いてればモッコリするだろうが。
 それをダメだと言ったら、人間が滅びるぞ。」

 人間が滅びる? 何で、そんな大げさな話になるの?

「誤解があるようだから言っとくよ。
 年頃の女の人はお風呂でも裸で歩いたりはしてないよ。
 みんな、浴衣よくいって薄い布の服を着てお風呂に入るの。
 それに父ちゃんが言ってたよ。
 何か難しい言葉、『きょーめーしすい』?
 常にそれを心掛けていれば、裸の女の人くらいでは動じないって。」

 父ちゃんに言われたよ、胸が膨らんで来たら浴衣を買ってやるって。
 ツルペタのうちは腰布だけで良いって。

「チッ、ヌーディストビーチのようにはいかないのかよ。
 なんだ、期待して損したぜ。
 まあ、それなら、摘まみ出される心配はないか。
 『きょーめーしすい』、なんだそりゃ?」

「うんとね、邪な気持ちを持たない、落ち着いてて澄み切った心ってことみたい。
 常にそういう心構えでいれば、女の人の裸くらいでは動じないって。
 反対に『いばしんえん』な人は、すぐにそこがモッコリするんだって。
 父ちゃんの言葉は時々難しくて分かんないんだけど。
 すぐモッコリする抑えの利かない人は、馬やサルと変わらないってことみたい。
 父ちゃん、こんな事も言ってたよ。
 男の人のソコをキチンと切り替えができて、一人前の男なんだって。
 常には『きょーめーしすい』の心境にあって、褥にあっては猛虎のように猛々しくって。
 おいら、意味わかんないって言ったら、あと十年したら教えてくれるって言ってた。」

 タロウは『裸の女が目の前を歩いてればモッコリするだろうが。』って、当然のように言ってた。
 それって、タロウが馬やサルと変わんないと言う事だよね。
 いったい、何処まで残念な人なんだろう。

「ちくしょう、八歳のガキんちょに男の心構えを諭されちまったぜ…。」

 あっ、また落ち込んじゃった。
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