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第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常
第21話 言い付けに背いてました、ゴメンなさい
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*本日、お昼に1話投稿しています。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
********
そう、あれはおいらが五歳の時、初めて一人で町の外に出た時のこと。
空腹に負けて、『ゴミスキルの実』を夢中で食べた日のことだよ。
一通り、『ゴミスキルの実』を拾い集めた後、布袋に入り切らなかった『実』を食べていたんだ。
だって、残したら勿体ないじゃない。美味しいんだもの。
「おや、こんな小さな人の子が一人でこんな所にいるとは珍しい。
しかも、人がその『実』を好んで食すなど初めて見たわ。」
耳元でそんな声が聞こえたの。
それは、鈴の音のような、耳に心地よい声だった。
声に引かれて横を向くと、おいらの肩の上に小さなお姉さんが座ってた。
それが、ビリビリだったの。
「だれ?」
おいらが、初めて目にした妖精族のお姉さんに尋ねると。
「私は、そこにある森を統べる妖精族の長、アルトローゼンよ。
お嬢ちゃん、あなたの名は何と言うの?」
ビリビリは、シューティング・ビーンズの狩り場のすぐ横にある森を指差して言ったの。
「おいら、おいらはマロン。
妖精族って、怒らすと祟りがあるって父ちゃんが言ってた。
おいら、何か、怒らすような事したかな?」
おいらは、ビリビリの機嫌を損ねてないか聞いたよ。
だって、妖精の方から声を掛けて来るなんて思いもしなかったから。
知らないうちに、何か怒らせたんじゃないかと心配したの。
父ちゃんから、妖精族の話は聞いたことがあったんだ。
妖精族は小さな体だけど、人とは違う凄い力を持ってて、絶対怒らしちゃダメだと。
ただ、妖精族は人と関わろうとしないから、怒らせなければ害はないって。
だから、人は妖精族に関わらないようにし、妖精族のテリトリーには近寄らないんだって。
でも、シューティング・ビーンズの狩り場の横に妖精のテリトリーがあるとは知らなかったよ。
多分、父ちゃんも知らなかったんだね。入っちゃダメって言われなかったから。
「マロンという名前なのね、よろしくね。
別に怒ってなんかいないわよ。
ただ、マロンのような幼子が一人でこんな所にいるのが珍しかったから。
気まぐれに声を掛けただけよ。
でも、マロンは何でこんな所に一人できたの?
町の外は少ないとはいえ、魔物が出るわよ。
子供の一人歩きは危ないわ。」
ビリビリに尋ねられて。
おいらは父ちゃんがいなくなったことやお腹を空かせて食べ物を探しに来たことを話したの。
「そうなの、マロンのような幼い子が一人で生きていくのは大変でしょう。
いいわ、私が力になってあげるわ。
ついてらっしゃい、妖精の森に招いてあげる。」
そう言って、ビリビリはこの場所に案内してくれたの。
そして、おいらに『スキルの実』以外の美味しい果実をご馳走してくれたんだ。
えっ、『ゴミスキルの実』をたらふく食べたろうって?
そこは別腹だよ、せっかく美味しい物をご馳走してくれるのだもの。
それから、おいらはちょくちょくここを訪ねては、ビリビリにご馳走になったんだ。
その時、こんな事も言われたの。
「ここの泉のお水は、万病に効くの。
ここへ来たら、必ず飲みなさい。
そうすれば、大人になるまで病気知らずで成長できるから。」
言われた通り、おいらはここを訪れる度に泉の水を飲んでるんだ。
おかげで、この三年間、病気したことが無いよ。
「ここは妖精族にとっては大切な場所なの。
だから、この森には結界が張ってあって、人が侵入できないようにしてあるの。
マロン、あなたは特別よ。
あなただけは、私が招いたから何時でもこの森に入れるわ。
そして、あなたが連れて来た人も入れちゃうから、変な人を連れてきたらダメよ。
お腹が空いたらここに来なさい。私が美味しいものを食べさせてあげる。
寂しくなったらここに来なさい。私がお話し相手になってあげる。
何か困ったらここに来なさい。私が力になってあげる。」
優しくおいらを迎え入れてくれたビリビリ。
それ以来、時々、シューティング・ビーンズ狩りの帰りに寄っているんだ。
最近は、お腹を空かせることが無くなったんで、もっぱらビリビリとお話するためだけど。
********
確かに、最初に『変な人を連れてきたらダメ』って言われてたよ。
「ゴメンね、変な人を連れて来ちゃって。
でも、タロウはおいらが凄く世話になっているにっぽん爺の同郷の人なの。
にっぽん爺、何十年も同郷の人に会いたいって願ってたんだ。
やっと、出会った同郷の人がスグに野垂れ死にしたら、にっぽん爺が悲しんじゃう。
タロウはこの通り心を病んでいて、頼りないから。
ここじゃないと満足にスライム捕りも出来ないと思って連れて来たの。
お願い、ビリビリ。タロウにスライム捕りだけでも許してもらえないかな。」
おいらは、ビリビリに頭を下げてお願いしたんだ。
おいらの言葉を聞いたタロウが、「えっ、俺ってそこまでか。」とか言ってたけど無視だよ。
「フッ、仕方ないわね。
マロンが我がまま言うことは今まで無かったからね。
いいわ、その男にスライム捕りだけは許可しましょう。」
「わあ、ありがとう、ビリビリ!」
渋々ながら、タロウがここでスライム捕りをする事を許してくれたビリビリ。
おいらがお礼を言うと、タロウに向かって言ったの。
「私の可愛いマロンがこう願うのだから仕方ないわ。
ここで、スライムを捕獲することを許します。
ただし、ここは妖精族にとって神聖な地。
決して血で汚す事は赦さないわ。
この森の中では、虫一匹、スライム一匹殺してはダメよ。
ここの森に入る時は、マロン以外の者を伴うことも許さないわ。
それが、守れない時は何処か結界の外に放り出します。
町に戻れなくても責任は持たないけど、それで良いかしら。」
ああ、約束を破ったら森から叩き出すけど、何処へ飛ばされるか分からないってのね。
この森、結構広いから、町の反対側に飛ばされたら帰ってこれないかも。
「ああ、わかった。
どうやら、ここでスライムを捕らせてもらわないと生活できそうも無いわ。
言い付けは守るから、ここに立ち入るのを許してもらえないか。」
「わかったわ、タロウにこの森への立ち入りを許可しましょう。」
「それは助かる、恩に着るぜ。」
こうして、タロウはここでスライム捕りをする事が許されたの。
でも、タロウの言葉って、いちいち偉そうだよね。
何で、素直に有難うって言えないんだろう。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
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そう、あれはおいらが五歳の時、初めて一人で町の外に出た時のこと。
空腹に負けて、『ゴミスキルの実』を夢中で食べた日のことだよ。
一通り、『ゴミスキルの実』を拾い集めた後、布袋に入り切らなかった『実』を食べていたんだ。
だって、残したら勿体ないじゃない。美味しいんだもの。
「おや、こんな小さな人の子が一人でこんな所にいるとは珍しい。
しかも、人がその『実』を好んで食すなど初めて見たわ。」
耳元でそんな声が聞こえたの。
それは、鈴の音のような、耳に心地よい声だった。
声に引かれて横を向くと、おいらの肩の上に小さなお姉さんが座ってた。
それが、ビリビリだったの。
「だれ?」
おいらが、初めて目にした妖精族のお姉さんに尋ねると。
「私は、そこにある森を統べる妖精族の長、アルトローゼンよ。
お嬢ちゃん、あなたの名は何と言うの?」
ビリビリは、シューティング・ビーンズの狩り場のすぐ横にある森を指差して言ったの。
「おいら、おいらはマロン。
妖精族って、怒らすと祟りがあるって父ちゃんが言ってた。
おいら、何か、怒らすような事したかな?」
おいらは、ビリビリの機嫌を損ねてないか聞いたよ。
だって、妖精の方から声を掛けて来るなんて思いもしなかったから。
知らないうちに、何か怒らせたんじゃないかと心配したの。
父ちゃんから、妖精族の話は聞いたことがあったんだ。
妖精族は小さな体だけど、人とは違う凄い力を持ってて、絶対怒らしちゃダメだと。
ただ、妖精族は人と関わろうとしないから、怒らせなければ害はないって。
だから、人は妖精族に関わらないようにし、妖精族のテリトリーには近寄らないんだって。
でも、シューティング・ビーンズの狩り場の横に妖精のテリトリーがあるとは知らなかったよ。
多分、父ちゃんも知らなかったんだね。入っちゃダメって言われなかったから。
「マロンという名前なのね、よろしくね。
別に怒ってなんかいないわよ。
ただ、マロンのような幼子が一人でこんな所にいるのが珍しかったから。
気まぐれに声を掛けただけよ。
でも、マロンは何でこんな所に一人できたの?
町の外は少ないとはいえ、魔物が出るわよ。
子供の一人歩きは危ないわ。」
ビリビリに尋ねられて。
おいらは父ちゃんがいなくなったことやお腹を空かせて食べ物を探しに来たことを話したの。
「そうなの、マロンのような幼い子が一人で生きていくのは大変でしょう。
いいわ、私が力になってあげるわ。
ついてらっしゃい、妖精の森に招いてあげる。」
そう言って、ビリビリはこの場所に案内してくれたの。
そして、おいらに『スキルの実』以外の美味しい果実をご馳走してくれたんだ。
えっ、『ゴミスキルの実』をたらふく食べたろうって?
そこは別腹だよ、せっかく美味しい物をご馳走してくれるのだもの。
それから、おいらはちょくちょくここを訪ねては、ビリビリにご馳走になったんだ。
その時、こんな事も言われたの。
「ここの泉のお水は、万病に効くの。
ここへ来たら、必ず飲みなさい。
そうすれば、大人になるまで病気知らずで成長できるから。」
言われた通り、おいらはここを訪れる度に泉の水を飲んでるんだ。
おかげで、この三年間、病気したことが無いよ。
「ここは妖精族にとっては大切な場所なの。
だから、この森には結界が張ってあって、人が侵入できないようにしてあるの。
マロン、あなたは特別よ。
あなただけは、私が招いたから何時でもこの森に入れるわ。
そして、あなたが連れて来た人も入れちゃうから、変な人を連れてきたらダメよ。
お腹が空いたらここに来なさい。私が美味しいものを食べさせてあげる。
寂しくなったらここに来なさい。私がお話し相手になってあげる。
何か困ったらここに来なさい。私が力になってあげる。」
優しくおいらを迎え入れてくれたビリビリ。
それ以来、時々、シューティング・ビーンズ狩りの帰りに寄っているんだ。
最近は、お腹を空かせることが無くなったんで、もっぱらビリビリとお話するためだけど。
********
確かに、最初に『変な人を連れてきたらダメ』って言われてたよ。
「ゴメンね、変な人を連れて来ちゃって。
でも、タロウはおいらが凄く世話になっているにっぽん爺の同郷の人なの。
にっぽん爺、何十年も同郷の人に会いたいって願ってたんだ。
やっと、出会った同郷の人がスグに野垂れ死にしたら、にっぽん爺が悲しんじゃう。
タロウはこの通り心を病んでいて、頼りないから。
ここじゃないと満足にスライム捕りも出来ないと思って連れて来たの。
お願い、ビリビリ。タロウにスライム捕りだけでも許してもらえないかな。」
おいらは、ビリビリに頭を下げてお願いしたんだ。
おいらの言葉を聞いたタロウが、「えっ、俺ってそこまでか。」とか言ってたけど無視だよ。
「フッ、仕方ないわね。
マロンが我がまま言うことは今まで無かったからね。
いいわ、その男にスライム捕りだけは許可しましょう。」
「わあ、ありがとう、ビリビリ!」
渋々ながら、タロウがここでスライム捕りをする事を許してくれたビリビリ。
おいらがお礼を言うと、タロウに向かって言ったの。
「私の可愛いマロンがこう願うのだから仕方ないわ。
ここで、スライムを捕獲することを許します。
ただし、ここは妖精族にとって神聖な地。
決して血で汚す事は赦さないわ。
この森の中では、虫一匹、スライム一匹殺してはダメよ。
ここの森に入る時は、マロン以外の者を伴うことも許さないわ。
それが、守れない時は何処か結界の外に放り出します。
町に戻れなくても責任は持たないけど、それで良いかしら。」
ああ、約束を破ったら森から叩き出すけど、何処へ飛ばされるか分からないってのね。
この森、結構広いから、町の反対側に飛ばされたら帰ってこれないかも。
「ああ、わかった。
どうやら、ここでスライムを捕らせてもらわないと生活できそうも無いわ。
言い付けは守るから、ここに立ち入るのを許してもらえないか。」
「わかったわ、タロウにこの森への立ち入りを許可しましょう。」
「それは助かる、恩に着るぜ。」
こうして、タロウはここでスライム捕りをする事が許されたの。
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