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第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常

第20話 若作りにもほどがあるって…

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「あっ、ビリビリ、こんにちは!
 ゴメンね、煩くし…。」

 おいらのすぐ近くで聞こえた澄んだ鈴の音のような声。
 苦情を言う声の主に、おいらが詫びる言葉を遮るように…。

「うおおお!さすが異世界!
 こういうのが出てくるのを待ってたんだ!」

 タロウの奴、叫び声を上げると、声の主をいきなり鷲掴みにしやがった。
 あっ、おバカ!

「い、いきなり、何すんのよー!」

 怒声をあげたソレは、タロウに向かって力を振るったの。

 バリ、バリ、バリ、バリ!

「うぎゃああああああ!」

 雷のような音と共に、目の前に走る眩い閃光。
 そして、響きわたるタロウの悲鳴…。

 閃光が消え去る頃には、足元にタロウが倒れ伏し、ピクピクと痙攣していたよ、  

「ねえ、ビリビリ、これ、死んでないよね?」

「ああ、マロン、久しぶりね。
 そのビリビリは止めてって、いつも言ってるでしょう。
 私にはアルトローゼンという名前があるんだから。
 ところで、この失礼な男は、知り合いかしら?」

 腰に両腕をあてて、プンプンと怒っている小さなお姉さん。
 どのくらい小さいかと言うと、私の手のひら二つ分くらいの大きさ。
 膝丈までのヒラヒラのドレスを着て、背中にはカゲロウのような二枚の翅が生えてるの。
 アルトローゼンって名前は知ってるけど、長くて発音し難いんでビリビリって呼んでる。
 怒るとビリビリって痺れる力を使うから、さっきタロウに使ったやつ。

「うん、昨日知り合ったんだ。
 タロウって言うの。
 ゴメンね、勝手に連れて来ちゃって。
 いい歳して、スライム一つ満足に取れないもんだから。
 簡単に捕れる所と思って、ここに連れて来たの。
 で、もう一度聞くけど殺してないよね、タロウ。」

「平気、平気、私たち妖精族では殺しはご法度なのよ。
 私の電撃を食らっても、十人中八人は死なないから安心して。」

 十人中八人って…、二人死んでるじゃない。
 それ、全然ご法度じゃないよね。

    ********

「うっ、イテテ…。
 おい、マロン、その凶暴なちっこいのはいったい何なんだ。
 ゲームのお約束だと…。
 そう言う愛玩系の魔物は、捕まえれば従魔になる魔物なんだが…。」

 しばらくして、目を覚ましたタロウがそんなことを言ったんだ。
 ビリビリのことを、『凶暴』だとか、『ちっこいの』とか。
 本人を目の前にしてよく悪口が言えるね、もう一度ビリビリ食らうよ…。

「凶暴とは失礼ね、あんたが先に無礼を働いたんでしょう。
 レディを鷲掴みにするなんて、信じられない。
 命があっただけでも、有り難いと思いなさいよ。
 しかも、言うに事を欠いて、私を魔物扱いとは。
 この森を統べる妖精族の長と知っての暴言なら赦しませんよ。」

 緩やかに波打つ長い金髪を逆立てて怒るビリビリ。
 そうこのヒト(?)、この森をテリトリーとする妖精族の族長なんだ。
 見た目二十歳前で、若々しくてとっても美人さんなんだけど、…。
 それでいて、実は百年以上生きているんだってさ。ビックリだよ。
 前に、それを聞いてオバアちゃんだねって言ったら、ビリビリを食らったの。
 レディに年齢の話はご法度だって。

「なんだよ、この世界の妖精ってこんな凶暴なのか。
 妖精って、心優しくって、人の手助けしてくれるんじゃないんかよ。」

 まだ、言うか…。
 何なの、その身勝手な言い分。

「ねえ、マロン、こいつ、何言ってるの?
 妖精と人とは相互に干渉しないという常識を知らないの?
 ヒトの子は幼少の頃から、親に言い聞かされるモノでしょう。
 『恐ろしい妖精の祟りがあるから、妖精の森には近づいちゃダメ』って。」

 信じられないという顔をして、ビリビリが尋ねて来たよ。
 この辺の人なら誰でも知っていることを知らないのだもね。
 ビリビリの顔つきを見るに、既に呆れを通り越しちゃったみたい。

「タロウが変な事を言ってゴメンなさい。
 この人、少し心を病んでるらしいの。
 チューニ病とかいう病気。
 妄想と現実が区別つかなくて、時々変な事を言うんだって。
 それとね、タロウは昨日おいらの住む町に来たんだ。
 何でも、タロウが住んでたにっぽんという所は少し常識が違うらしいの。
 この辺の人なら、子供でも知ってることを知らないんだよ。
 悪いけど、ビョーキなら仕方がないと思って赦してくれないかな。」

「またそれかよ。
 悪かったな常識知らずで。
 いい加減、人を病人扱いするのはやめて欲しいぜ。」

 おいら、タロウのことを庇おうとしてるんだけど。
 何故か、タロウは不満をもらしてる。
 病人扱いが嫌なら、言動を直した方が良いと思うよ。

「フッ。
 余所者で、心を病んでいるのか。
 それじゃ、仕方がないね。
 ここは、マロンの顔に免じて赦してあげましょうか。」

 ビリビリは、ため息まじりに言ったの。
 どうやら、怒りをおさめてくれたみたい。
 今は、タロウを可哀想な人を見るような目で見詰めてる。

 ひとまずは、タロウの無礼な言動を赦してくれたビリビリだけど…。

「さて、その男の無礼な振る舞いには目を瞑るとして。
 マロン、あなたのことは特別にこの森に立ち入ることを許したの。
 変な人を連れてきたらダメって言ったでしょう。」

 やばっ、今度はおいらが叱られる番だよ…。

    ********

*昨日、手違いで次話を一瞬公開してしまいました。
 システム上、一度公開すると取り消しても新着にのらないようです。
 次話21話は、今晩20時30分に公開ましすので、よろしくお願いいたします。
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