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第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常
第18話 他人の話は最後まで聞こうよ…
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さてと、日課のシューティング・ビーンズ狩りは終わったし、『積載庫』の使い方も確かめた。
そろそろ帰ろうかと思って町向かって歩き出したの。
森を抜けて草原に出てくると…。
「おい、こら、逃げるな!
ちょっと待て!」
昨日から隣のにっぽん爺の家に居候を始めたタロウの叫び声が聞こえたの。
声のする方に目を向けると、そこにいるのはタロウ一人。
一体、何を一人で騒いでいるんだろう。
一人で大声を上げているなんて、ハタ目に見たらアブない人だよ。
何をしているのかと思って近づくと…。
おいらの方に走ってくるタロウ。
その前には、スライムが一匹、ぴょこぴょこと飛び跳ねてこっちに向かってくる。
おいらは、飛び跳ねたスライムが着地する前に手のひらを差し出したんだ。
「はい、キャッチ!」
上手い具合に手のひらの上に着地するスライム。
おいらは、それを逃がさないように両手の手のひらで包み込んだの。
「おお、マロン、助かったぜ。
そいつを捕まえないと、晩飯を買うのに足りなかったんだ。」
スライムを追って来たタロウが、おいらに手を差し出してそんなことを言う。
こいつ、何でスライムを渡してもらえると思っているのかな。
捕まえたのはおいらだよ、タロウに渡す義理は無いでしょうに。図々しい。
まっ、おいら、スライムは要らないから、渡してあげるけどね。
「はい、これ。
でも、タロウ。
たまたま、捕まえたのがおいらだから良かったけど。
他の人にそれは通じないよ。
スライムを捕まえたのはおいら、タロウは捕まえられずに追いかけてただけ。
追いかけていたから自分の獲物だなんて言い分は通じないからね。」
おいらがタロウに忠告しながらスライムを差し出すと…。
「けっ、この世界じゃあ、人の獲物の横取りありかよ。
ネトゲの世界じゃ、他人のタゲを横取りするとヒンシュクなのに。
マナーってもんが、なってねえぜ。」
タロウは不満気な顔でぶつくさ呟いている。
おいらが捕まえてあげたのに、有り難うの一言も無しかい。
イラっときたおいらは思わずスライムを放してしまおうかと思ったね。
だいたい、タロウの獲物だって言うけど、…。
今の状況、おいらがいなければ、このスライム、絶対に逃がしていたよね。
それで、俺の獲物だと主張するのはどうかと思うよ。
「タロウの故郷でどうだったかは知らないけど。
少なくても、スライム狩りで生計を立てている人にタロウの言い分は通じないよ。
捕まえた人に、俺の獲物だから寄こせなんて言ったら絶対にトラブるからね。
袋叩きにされて、半殺しの目に遭っても自業自得だからね。」
おいらが更に忠告すると、タロウは顔をしかめつつも。
「ああ、分かった。
郷に入れば郷に従えと言うし、ここはマロンに従っとくよ。
悪かったな、手間を掛けさせて。」
スライムを受け取ったタロウは、渋々といった顔でおいらに頭を下げたの。
まあ、今回はそれで赦しておこうか。
********
「タロウ、その様子だと大分苦戦してるね。
今日の晩ごはん分のスライム五十匹、まだ捕れないの?」
スライムを渡したおいらは、さっきのタロウの言葉を思い出して聞いてみたんだ。
まあ、こんな所でスライムを捕っている時点で想像はつくけどね。
「ああ、スライムを毎日千百匹捕れなんて、なんて無茶振りだと思ったぜ。
朝からここに来てるけど、全然いやしない。
たまに見つけると、すばしっこくて中々捕まらねえんだ。
ほれ、朝から捕ってて、やっとこれだけだ。」
タロウが差し出した布袋の中を覗くと、そこにいたスライムは二十匹くらいだったよ。
これだと、ウサギ肉の串焼きがやっと一本買えるかってところだね。
男の子で食べ盛りのタロウでは、お腹の足しにもならないだろうな。
「ねえ、タロウ。
にっぽん爺からスライムの捕まえ方を習わなかった?
それに、スライムの狩場のことは何も言われなかった?」
スライムなんて、五歳の頃のおいらだって簡単に捕まえられたよ。
そおーっと、近付いて捕まえるだけだもの。
スライムは地面の振動に敏感で、人が普通に歩くだけども近づいて来るのが分かるんだって。
だから、なるべく忍び足で近付けって父ちゃんが教えてくれた。
「ああ、スライムを捕まえるのにコツなんかあるんか?
ガキでも捕れるんだろう。
爺さんが、なんか言いたそうな顔してたけど。
面倒なんで、聞かずに飛び出して来たぜ。
一々、細かいことを聞いてられるかって。」
どうやら、にっぽん爺がスライムの説明をする前に出てきたらしい。
ホント、他人の話を聞かない奴だな…。
それで昨日失敗したばかりなのに。
「スライムは、ジメジメしたところが好きなの。
草原にはあんまりいないよ。
それに、スライムは振動に敏感だから。
そおーっと近付かないと。
普通に歩いで近付くだけで、逃げちゃうよ。
草原で、草をかき分けて探してたら。
それこそ、早く逃げられちゃうよ。」
「げっ、どうりで逃げ足が速いと思った
それに、俺、ジメジメした場所なんて知らねえぞ。」
そうでしょうとも。
どうせ、バタバタと歩いてたんだろうね、落ち着きなさそうだし。
しかも、にっぽん爺の話も聞かないで、狩場を知らないと堂々と言うし…。
このまま、知らんぷりして帰ることもできるけど。
スライムの狩場を探して、アブない所へ迷い込んでも困るかな。
おいらは、タロウがどうなっても別にかまわないけど。
やっと、同郷の人に会えたにっぽん爺は、タロウにもしものことがあったら悲しむよね。
「タロウ、よかったら、スライムの狩場に案内しようか?」
仕方が無いので、おいらは、この困ったちゃんに手を差し伸べることにしたんだ。
そろそろ帰ろうかと思って町向かって歩き出したの。
森を抜けて草原に出てくると…。
「おい、こら、逃げるな!
ちょっと待て!」
昨日から隣のにっぽん爺の家に居候を始めたタロウの叫び声が聞こえたの。
声のする方に目を向けると、そこにいるのはタロウ一人。
一体、何を一人で騒いでいるんだろう。
一人で大声を上げているなんて、ハタ目に見たらアブない人だよ。
何をしているのかと思って近づくと…。
おいらの方に走ってくるタロウ。
その前には、スライムが一匹、ぴょこぴょこと飛び跳ねてこっちに向かってくる。
おいらは、飛び跳ねたスライムが着地する前に手のひらを差し出したんだ。
「はい、キャッチ!」
上手い具合に手のひらの上に着地するスライム。
おいらは、それを逃がさないように両手の手のひらで包み込んだの。
「おお、マロン、助かったぜ。
そいつを捕まえないと、晩飯を買うのに足りなかったんだ。」
スライムを追って来たタロウが、おいらに手を差し出してそんなことを言う。
こいつ、何でスライムを渡してもらえると思っているのかな。
捕まえたのはおいらだよ、タロウに渡す義理は無いでしょうに。図々しい。
まっ、おいら、スライムは要らないから、渡してあげるけどね。
「はい、これ。
でも、タロウ。
たまたま、捕まえたのがおいらだから良かったけど。
他の人にそれは通じないよ。
スライムを捕まえたのはおいら、タロウは捕まえられずに追いかけてただけ。
追いかけていたから自分の獲物だなんて言い分は通じないからね。」
おいらがタロウに忠告しながらスライムを差し出すと…。
「けっ、この世界じゃあ、人の獲物の横取りありかよ。
ネトゲの世界じゃ、他人のタゲを横取りするとヒンシュクなのに。
マナーってもんが、なってねえぜ。」
タロウは不満気な顔でぶつくさ呟いている。
おいらが捕まえてあげたのに、有り難うの一言も無しかい。
イラっときたおいらは思わずスライムを放してしまおうかと思ったね。
だいたい、タロウの獲物だって言うけど、…。
今の状況、おいらがいなければ、このスライム、絶対に逃がしていたよね。
それで、俺の獲物だと主張するのはどうかと思うよ。
「タロウの故郷でどうだったかは知らないけど。
少なくても、スライム狩りで生計を立てている人にタロウの言い分は通じないよ。
捕まえた人に、俺の獲物だから寄こせなんて言ったら絶対にトラブるからね。
袋叩きにされて、半殺しの目に遭っても自業自得だからね。」
おいらが更に忠告すると、タロウは顔をしかめつつも。
「ああ、分かった。
郷に入れば郷に従えと言うし、ここはマロンに従っとくよ。
悪かったな、手間を掛けさせて。」
スライムを受け取ったタロウは、渋々といった顔でおいらに頭を下げたの。
まあ、今回はそれで赦しておこうか。
********
「タロウ、その様子だと大分苦戦してるね。
今日の晩ごはん分のスライム五十匹、まだ捕れないの?」
スライムを渡したおいらは、さっきのタロウの言葉を思い出して聞いてみたんだ。
まあ、こんな所でスライムを捕っている時点で想像はつくけどね。
「ああ、スライムを毎日千百匹捕れなんて、なんて無茶振りだと思ったぜ。
朝からここに来てるけど、全然いやしない。
たまに見つけると、すばしっこくて中々捕まらねえんだ。
ほれ、朝から捕ってて、やっとこれだけだ。」
タロウが差し出した布袋の中を覗くと、そこにいたスライムは二十匹くらいだったよ。
これだと、ウサギ肉の串焼きがやっと一本買えるかってところだね。
男の子で食べ盛りのタロウでは、お腹の足しにもならないだろうな。
「ねえ、タロウ。
にっぽん爺からスライムの捕まえ方を習わなかった?
それに、スライムの狩場のことは何も言われなかった?」
スライムなんて、五歳の頃のおいらだって簡単に捕まえられたよ。
そおーっと、近付いて捕まえるだけだもの。
スライムは地面の振動に敏感で、人が普通に歩くだけども近づいて来るのが分かるんだって。
だから、なるべく忍び足で近付けって父ちゃんが教えてくれた。
「ああ、スライムを捕まえるのにコツなんかあるんか?
ガキでも捕れるんだろう。
爺さんが、なんか言いたそうな顔してたけど。
面倒なんで、聞かずに飛び出して来たぜ。
一々、細かいことを聞いてられるかって。」
どうやら、にっぽん爺がスライムの説明をする前に出てきたらしい。
ホント、他人の話を聞かない奴だな…。
それで昨日失敗したばかりなのに。
「スライムは、ジメジメしたところが好きなの。
草原にはあんまりいないよ。
それに、スライムは振動に敏感だから。
そおーっと近付かないと。
普通に歩いで近付くだけで、逃げちゃうよ。
草原で、草をかき分けて探してたら。
それこそ、早く逃げられちゃうよ。」
「げっ、どうりで逃げ足が速いと思った
それに、俺、ジメジメした場所なんて知らねえぞ。」
そうでしょうとも。
どうせ、バタバタと歩いてたんだろうね、落ち着きなさそうだし。
しかも、にっぽん爺の話も聞かないで、狩場を知らないと堂々と言うし…。
このまま、知らんぷりして帰ることもできるけど。
スライムの狩場を探して、アブない所へ迷い込んでも困るかな。
おいらは、タロウがどうなっても別にかまわないけど。
やっと、同郷の人に会えたにっぽん爺は、タロウにもしものことがあったら悲しむよね。
「タロウ、よかったら、スライムの狩場に案内しようか?」
仕方が無いので、おいらは、この困ったちゃんに手を差し伸べることにしたんだ。
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