ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常

第16話 全然、『ゴミ』じゃなかった

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 それで、知られたらヤバいと言う秘密だけど…。
 おいらも、今日の今日まで知らなかったんだ。
 さっき、にっぽん爺の説明を聞いて初めて分かったよ。

 にっぽん爺は、タロウが身に付けた『クリティカル発生率アップ』の説明で言ってた。

「という訳で、クリティカルの発生率なんて本当に微々たるものだ。
 それな、レベル十まであげて三百%アップと言われてるが。
 剣の達人でも0・四%と言う事だ、いわんや素人なんてどうなる事やら。」

 って。

 おいら、実は昨日、『クリティカル発生率アップ』がレベル十になったんだ。
 それまでは、にっぽん爺の言う通り、『クリティカル発生率〇〇%アップ』ってなってた。
 レベル九で%アップだっけかな…。
 おいら、『%』って何だか分からなかったので、それがどの位の効果か分からなかったの。
 ところが、レベル十になったら書き方が変わったんだよ。

 『クリティカル発生率 百%』って。

 アップと言う文字が無くなっちゃったし、数字も減っちゃうしで、何の事だかさっぱりだったの。
 でも、さっきのにっぽん爺の説明で千回に一回が〇・一%なら、百%って百回に百回と言う事だよね。
 これって、攻撃が全てクリティカルになるってことじゃない?

 因みに、『回避』もレベル十になったんだけど。
 やっぱり、レベル九までは『回避率〇〇%アップ』って書いてあったのに。
 レベル十になった途端に、『回避率 百%』に変わっちゃたの。
 これって、魔物に襲われても完全に回避できるってことだよね。
 今朝なんか、ワイバーンに襲われて、もうダメだって思ったのに…。
 体が勝手にワイバーンを避けたのって、きっとこの効果だよ。

 だとしたら、『ゴミスキル』って、全然ゴミじゃないよ。
 おいらみたいな、小っちゃい子供でも、厄災と言われるワイバーンを倒せちゃうんだから。

 効果が役立たずだと思われていて、しかも、食べるととんでもなく不味い。
 これじゃ、誰もレベル十までスキルを上げようとしないよね。

 レベル十まで上げるのは、むちゃ苦い実を二万個近く食べなきゃいいけないから。
 「いったい、どんな苦行だよ、それ。」ってなっちゃうもん。

 美味しい食べ方が知られていれば、物好きな人がレベル十までスキルを育てたんじゃないかな。
 そしたら、実はゴミじゃないって分かったかもしれないね。

    ********

 でも一番ヤバいのは、『積載増加』だね。
 これ、とんでもないよ。

 効果不明と言われている『積載増加』。
 普通は、スキル欄に『○○%アップ』とか書かれているんだけど。

 『積載増加』は、何にも書かれていないの。
 五歳のあの日、おいらも初めてそれを知ったよ。
 普通効果が記されているところの隅っこに、小さく『★』印が一つ付いてるだけだった。

 そもそも、『積載増加』って名前が意味不明。
 荷馬車じゃないんだから、人間の体の何処に荷物を積めって。

 父ちゃんに聞かされた話じゃ。
 昔、馬車馬に『積載増加』の実を食べさせた人がいたんだって。
 もしかしたら、より大きな荷馬車を引けるようになるんじゃないかと期待して。
 でも、いくら食べさせても、馬車を引く力は全然強くならなかったんだって。
 そのうち、あまりの不味さに馬も食べるのを嫌がって。
 暴れるようになったんで、その人も馬に食べさせるのを諦めたと言われてるらしいの。

 この『積載増加』の実なんだけど、タロウがさっき姫リンゴみたいっていってたモノなんだ。
 姫リンゴが何だかは知らないけど、赤くて、拾って七日もすると爽やか甘い香りがするの。
 かじるとシャリシャリッとした食感で、瑞々しくて甘酸っぱいんだ。
 『クリティカル発生率アップ』の実のような濃厚な甘みじゃなくて、さっぱりとした甘み。
 疲れた時やのどが渇いた時は、『積載増加』の実が一番美味しく感じるよ。

 で、『積載増加』の実を食べ続けてたんだけど、ある日気付いたの。
 おいらのスキルは、『ゴミスキル』ばかりだと思ってたんで。
 スキルの効果に全く期待してないから、スキル欄は殆どチェックしなかったんだ。
 その日、気まぐれに頭に浮かんだスキル欄に目を通すると…。
 『積載増加』の欄に記された『★』印の数が増えているんだ。
 何だコレって思ったね。

 そして、つい先日のこと。
 おやつに『積載増加』の実を食べてたら、頭の中で小さな鐘の音が響いたの。
 こんなの生まれて初めてのことだった。
 辺りを見回しても、鐘なんてないし…。

 頭の中で鳴り響く鐘の音は、中々止んでくれないの。
 どうして良いのか分からないおいらは、とっさに自分の能力を確認したんだ。
 すると、その瞬間、鐘の音は止んだよ。

 どうやら、自分の能力を確認しろという催促だったみたい。
 そんなの、父ちゃんは教えてくれなかったよ。

 おいらは、能力の値を一つずつチェックしたんだけど、変わり映えはしなかった。
 最後に、スキル欄を見ると…。

 『積載増加』の欄、この間まで『★』が九つ並んでいたのに消えてた。
 その代わりにそこに記されていたのは、『積載庫解禁』の五文字。
 他には、何の説明もありゃしない、『積載庫』、なにそれ?

 その時は、どうせ大したものじゃないだろうと思って放っておいたの。
 この時のおいらは、自分のスキルの何の期待もしてなかったから。

 それが、今朝、自分でも予想もしなかったワイバーンの討伐。
 最初は自分でも呆気にとられちゃったけど、…。
 それがスキルのおかげじゃないかと思い至った時、もしかしてと思ったんだ。

 それで試してみたの、ワイバーンを『積載庫』に仕舞えないかって。
 
 できちゃった…。

    ********

 これ、無茶苦茶凄いスキルだよ、そんでもって、無茶苦茶ヤバい。
 おいらみたいなガキんちょでも、あんなでっかいワイバーンを持ち歩けるんだよ。
 いや、持って歩いている訳じゃないけど…。

 どうやら、『積載増加』のレベル九までは準備段階だったみたい。
 このスキル、何処にあるのかは知らないけど、おいら専用の『積載庫』があって。
 仕舞いたいモノを見ながら、『積載』と念じると『積載庫』へ入れる事が出来るみたい。
 まだ、ワイバーンしか入れてないんで詳しい事はわかんないけど。

 明日、シューティング・ビーンズを狩りに行った時にでも色々試してみよう。

 もし、色々なモノが自由に出し入れできるんだったら、むっちゃ便利なスキルだものね。
 これは、何があっても他人に知られたらダメだよね。
 ガラの悪い冒険者に捕まって、一生荷物持ちとして扱き使われるのが目に浮かぶよ。

 おいらは、スキル『積載増加』の秘密は絶対に口にしないと心に誓ったよ。
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