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第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常
第14話 ドロップしたら、すぐに食べろと言うけれど…
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にっぽん爺とタロウは枝豆を摘まみながら昔話をするといって。
カマドの火を入れ始めたので、おいらは家に帰ることにしたよ。
そろそろ、日が暮れるので屋台で晩ごはんを買わないと。
町の広場まで出て屋台で、ウサギ肉の串焼きとパンを買うんだ。
おいらのごはんの定番メニュー。
今日は臨時収入があったから奮発して、焼いた腸詰を買おうと歩いていると。
「おい、今日、ワイバーンが襲って来たけど、誰か食われたか?」
「いや、見た限り、血だまりは何処にもなかったな。」
「やっぱりか、ワイバーンが大人しく去ってくなんて珍しい事もあったもんだ。」
「大方、町のモンの逃げ足が速くって、一人も捕まえられんかったんじゃないのか。」
「だとすると、また襲ってくるかも知れんな。
しばらくは、用心しておくか。」
広場を歩く人のそんな会話が耳に入った来たよ。
良かった、おいらが倒しちゃったのを見ていた人はいないみたいだね。
町の人は、ワイバーンが諦めて去って行ったと思っているみたい。
おいらは、街の人達の言葉に安堵しつつ、目的の屋台で晩ごはんを買ったんだ。
焼きたての腸詰が凄く香ばしい匂いがして、我慢できなくてその場でかじりついちゃったよ。
口の中でじんわりと肉汁が広がって、とっても幸せな味がした。
おいら、躊躇なく、もう一本注文したよ。
お目当てのウサギ肉の串焼きとパンも買って、あとは家でのんびりと食べることにする。
何? 肉ばっかりじゃ、体に悪いって?
へへん、その点はバッチリ、おいらには頼もしい味方があるから。
********
屋台で買った晩ごはんを食べて、お腹も程よく膨れたよ。
でもやっぱり、お肉ばっかりじゃ、胃もたれするよね。
おいらはテーブルを離れ、土間の隅っこへ向かったの
そこにはずらっと並んだ安物のツボ。
おいらは、その中から一番奥に置いたツボを手にしてテーブルへ戻ったよ。
テーブルの上に置いたツボの蓋を取ると、甘い良い香りが鼻をくすぐったよ。
中には、ツボいっぱいの『スキルの実』が入っている。
これは、七日前に拾ったものだね。
おいらはその中から、橙色の、タロウがスモモと呼んで口にした実を摘まみ上げた。
小さなおいらの手のひらにすっぽり収まるその実は、既に柔らかく、手で簡単に皮がむけるの。
手のひらの上で薄い皮をむき、かぶりつくと…。
「うん、あま~い。」
とっても瑞々しい『クリティカル発生率アップ』の実。
一口齧ると、口の中いっぱいに甘みを広げながらとろけていく。
とっても幸せな気分になれる瞬間だよ。
町の人達は、『スキルの実』はドロップしたらすぐに食べるものだと思っている。
『スキルの実』の賞味期限は一日、精々二日だと言われてるんだ。
なんで、そんなことになったかと言うと、…。
この町で売られている『スキルの実』が全部そうだから。
ドロップして三日もすると、腐って食べられなくなっちゃう。
この町で売られている『スキルの実』など良い方で。
にっぽん爺の調べた話では、一番希少だと言われてる『高速連撃』の実。
ドロップしてから僅か一時間もしないで腐ると言われているらしいの。
らしいのと言うのは、にっぽん爺も実際に見た事は無いから。
にっぽん爺の話では、王都は『高速連撃』の実をドロップする魔物がいる場所に出来たそうなの。
王宮の最奥、王族しか立ち入れないそこに、『高速連撃』の実をドロップする魔物がいるんだって。
王族は、その魔物を増やして、毎日数体ずつ討伐して『高速連撃』の実を食べているらしいの。
もっとも、誰も見た人がいないので、それが事実かどうかは分からないらしい。
王宮の最奥の事だものね。
にっぽん爺は、とある町の図書館にある文献にそんな記録があったって言ってた。
とにかく、腐り易くて持ち運べないものだから。
そこに王宮を造ってすぐに食べられるようにしたみたい。
ただ、これは事実に違いないと、にっぽん爺は言っていた。
『高速連撃』と言うスキルは実在するんだけど、…。
にっぽん爺は、その『実』を売っているのを見たことが無いって。
例え、王都であっても。
王族が貴重なスキルを独り占めしているんじゃないかって。
他にも、希少だと言われている『スキルの実』は殆ど目にする事は出来ないらしいけど。
この国にある大きな町は、みな貴重な『スキルの実』を落とす魔物がいる場所にあるみたい。
だいたい、街の最奥に高い壁に囲まれた王の離宮や貴族の館があるって。
貴重な『スキルの実』を落とす魔物を囲っているんじゃないかって。
********
と言うことで。
世間では、『スキルの実』はドロップしたらなるべく早く食べるモノと相場が決まってるの。
これは、物知りのにっぽん爺でもそう思っているし、おいらの父ちゃんもそう言ってた。
でもね、そうじゃない『実』もあったんだよ。
それが、おいらが食べているシューティング・ビーンズが落とす『スキルの実』なんだ。
さっき、タロウが食べたみたいに、ドロップしてすぐの『実』はどれも無茶苦茶苦いの。
しかも、食べて得られるスキルは、『ゴミ』と呼ばれるスキルばっかり。
だから、誰も見向きもしなかったの。
そりゃそうだ、とっても不味い上、身に付くスキルが役立たずじゃ…。
誰も食べようとしないよね。
だけど、おいらは知ったんだ。
シューティング・ビーンズが落とす『スキルの実』が、実はとっても美味しいということを。
カマドの火を入れ始めたので、おいらは家に帰ることにしたよ。
そろそろ、日が暮れるので屋台で晩ごはんを買わないと。
町の広場まで出て屋台で、ウサギ肉の串焼きとパンを買うんだ。
おいらのごはんの定番メニュー。
今日は臨時収入があったから奮発して、焼いた腸詰を買おうと歩いていると。
「おい、今日、ワイバーンが襲って来たけど、誰か食われたか?」
「いや、見た限り、血だまりは何処にもなかったな。」
「やっぱりか、ワイバーンが大人しく去ってくなんて珍しい事もあったもんだ。」
「大方、町のモンの逃げ足が速くって、一人も捕まえられんかったんじゃないのか。」
「だとすると、また襲ってくるかも知れんな。
しばらくは、用心しておくか。」
広場を歩く人のそんな会話が耳に入った来たよ。
良かった、おいらが倒しちゃったのを見ていた人はいないみたいだね。
町の人は、ワイバーンが諦めて去って行ったと思っているみたい。
おいらは、街の人達の言葉に安堵しつつ、目的の屋台で晩ごはんを買ったんだ。
焼きたての腸詰が凄く香ばしい匂いがして、我慢できなくてその場でかじりついちゃったよ。
口の中でじんわりと肉汁が広がって、とっても幸せな味がした。
おいら、躊躇なく、もう一本注文したよ。
お目当てのウサギ肉の串焼きとパンも買って、あとは家でのんびりと食べることにする。
何? 肉ばっかりじゃ、体に悪いって?
へへん、その点はバッチリ、おいらには頼もしい味方があるから。
********
屋台で買った晩ごはんを食べて、お腹も程よく膨れたよ。
でもやっぱり、お肉ばっかりじゃ、胃もたれするよね。
おいらはテーブルを離れ、土間の隅っこへ向かったの
そこにはずらっと並んだ安物のツボ。
おいらは、その中から一番奥に置いたツボを手にしてテーブルへ戻ったよ。
テーブルの上に置いたツボの蓋を取ると、甘い良い香りが鼻をくすぐったよ。
中には、ツボいっぱいの『スキルの実』が入っている。
これは、七日前に拾ったものだね。
おいらはその中から、橙色の、タロウがスモモと呼んで口にした実を摘まみ上げた。
小さなおいらの手のひらにすっぽり収まるその実は、既に柔らかく、手で簡単に皮がむけるの。
手のひらの上で薄い皮をむき、かぶりつくと…。
「うん、あま~い。」
とっても瑞々しい『クリティカル発生率アップ』の実。
一口齧ると、口の中いっぱいに甘みを広げながらとろけていく。
とっても幸せな気分になれる瞬間だよ。
町の人達は、『スキルの実』はドロップしたらすぐに食べるものだと思っている。
『スキルの実』の賞味期限は一日、精々二日だと言われてるんだ。
なんで、そんなことになったかと言うと、…。
この町で売られている『スキルの実』が全部そうだから。
ドロップして三日もすると、腐って食べられなくなっちゃう。
この町で売られている『スキルの実』など良い方で。
にっぽん爺の調べた話では、一番希少だと言われてる『高速連撃』の実。
ドロップしてから僅か一時間もしないで腐ると言われているらしいの。
らしいのと言うのは、にっぽん爺も実際に見た事は無いから。
にっぽん爺の話では、王都は『高速連撃』の実をドロップする魔物がいる場所に出来たそうなの。
王宮の最奥、王族しか立ち入れないそこに、『高速連撃』の実をドロップする魔物がいるんだって。
王族は、その魔物を増やして、毎日数体ずつ討伐して『高速連撃』の実を食べているらしいの。
もっとも、誰も見た人がいないので、それが事実かどうかは分からないらしい。
王宮の最奥の事だものね。
にっぽん爺は、とある町の図書館にある文献にそんな記録があったって言ってた。
とにかく、腐り易くて持ち運べないものだから。
そこに王宮を造ってすぐに食べられるようにしたみたい。
ただ、これは事実に違いないと、にっぽん爺は言っていた。
『高速連撃』と言うスキルは実在するんだけど、…。
にっぽん爺は、その『実』を売っているのを見たことが無いって。
例え、王都であっても。
王族が貴重なスキルを独り占めしているんじゃないかって。
他にも、希少だと言われている『スキルの実』は殆ど目にする事は出来ないらしいけど。
この国にある大きな町は、みな貴重な『スキルの実』を落とす魔物がいる場所にあるみたい。
だいたい、街の最奥に高い壁に囲まれた王の離宮や貴族の館があるって。
貴重な『スキルの実』を落とす魔物を囲っているんじゃないかって。
********
と言うことで。
世間では、『スキルの実』はドロップしたらなるべく早く食べるモノと相場が決まってるの。
これは、物知りのにっぽん爺でもそう思っているし、おいらの父ちゃんもそう言ってた。
でもね、そうじゃない『実』もあったんだよ。
それが、おいらが食べているシューティング・ビーンズが落とす『スキルの実』なんだ。
さっき、タロウが食べたみたいに、ドロップしてすぐの『実』はどれも無茶苦茶苦いの。
しかも、食べて得られるスキルは、『ゴミ』と呼ばれるスキルばっかり。
だから、誰も見向きもしなかったの。
そりゃそうだ、とっても不味い上、身に付くスキルが役立たずじゃ…。
誰も食べようとしないよね。
だけど、おいらは知ったんだ。
シューティング・ビーンズが落とす『スキルの実』が、実はとっても美味しいということを。
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