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第一章 異世界人?何それ?
第13話 にっぽん爺の涙のわけ
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*本日、お昼に1話投稿しています。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
********
「おい、爺さん、どうした?
いきなり、泣き出したりして。
どっか具合でも悪いのか?」
顔色を曇らせて、涙を零しはじめたにっぽん爺。
お年寄りのそんな姿を目にして、タロウはとっても慌ててるの。
にっぽん爺は、懐から一枚の布切れを取り出すと涙を拭き。
穏やかな顔で言ったの。無理しているのがミエミエだけどね。
「私は、ここにやって来たのは令和三年の四月なんだ。」
「令和? なんだ、それは?
ええっと、平成、昭和だろう…、その前は何だったけ?
令和てのは聞いたことがねえな。
爺さん、相当昔の日本から来たのか?」
令和という聞き覚えのない言葉に、タロウは首句を傾げている。
「それとも、ラノベで定番の平行世界ってやつか。」なんて呟やいてたよ。
「聞いたことが無くて当たり前だろう。
私は、君がいた時点よりも五年後の日本から来たのだから。
平成は三十年、いや正確には三一年の途中で終わるんだ。
まだ小学校の時のことだから薄っすらとしか覚えていないが。
君が今あげた三つの事柄は私の記憶にも残っているよ。」
どう言う事?
にっぽん爺がここへ来て五十年経ってて、タロウが今ここに来たのなら。
タロウの住んでいた場所は、にっぽん爺がいた時より五十年の時が過ぎてるよね。
それなのに、にっぽん爺の方がタロウより五年先からやって来た?
何それ、意味が分からないよ。
「ちょっと待て、じゃあ、俺がやって来た平成二十八年の日本じゃ。
爺さん、まだ十歳だったのか。
向こうじゃ、爺さんより、俺の方が年上だったって?」
「ああ、そういうことだ。
この世界との転移現象が時間軸に対してランダムに生じているとは思いもしなかったよ。
私は君が五十年後の日本から来たものだとばかり思っていたんだ。
五十年後の日本の話が聞けるかと思って期待していたのに残念だよ。」
にっぽん爺は、何時か故郷へ帰るんじゃないかと思って必死に生きて来たんだって。
だけど、時間が経つにつれ、もう故郷へ帰れないのではと思い始め。
五十歳を過ぎた辺りから、もう帰れないのだと確信を持ったって言ってた。
ただ、もしかしたら同郷の人に会えるかも知れないとは思っていたそうで。
それが、こっちへ来て間もない人だったら、親切にしてあげようと心に決めてたんだって。
そして、にっぽん爺が去った後の故郷の話が聞けたらと、心から願ってたみたい。
五十年越しに出会った同郷の人、最新の故郷の話が聞けるとにっぽん爺の心は高鳴ったらしい。
なのに、やって来たタロウは、にっぽん爺より過去から来た人だった。
かねてからの念願だっただけに、それを知ったにっぽん爺の落胆は大きかったみたい。
ホント、タロウってば、色々と残念な人だね。
********
私が心底残念な気分でタロウを見詰めていると。
スクっと立ち上がった太郎は、にっぽん爺の隣へ歩み寄り。
笑いながら、にっぽん爺の肩を軽く叩いたの。
そして、
「まあ、そう言わないで、元気出せよ、爺さん。
今はこんなに年が離れちまってるけど。
生まれが五つしか違わないってことは。
日本じゃ、同じ時代を生きたってことじゃねえか。
色々、話があうことだってあると思うぜ。
俺、ゲームやアニメの話は得意なんだ。
きっと、爺さんの良い話し相手になれるって。」
にっぽん爺に、そんな励ましの言葉を掛けたんだ。
こいつ、にっぽん爺の落胆の原因が自分だってわかっているのかな…。
「ああ、そうだな。
勝手に君に期待をしておいて、落胆するなんて失礼な事をしたね。
今日飛ばされた来た君の方がショックを受けている筈だものな。
無神経な言動をとって申し訳ない。
君だって来たくて来た訳では無いのにね。」
馴れ馴れしく肩を叩かれたにっぽん爺だけど、気を悪くする様子も無かったよ。
さすが、大人の寛容さだね。
「考えてみれば、君の姿や言動を見てその可能性に気付くべきだったよ。
スエットなんて見慣れた服装やサブカルに触発されたような言動。
私が日本にいた頃とほとんど変わらないじゃないか。
五十年も時間が流れていて、そんなモノが変わらない訳がない。
そうだね、今晩は昔の日本の話に花を咲かせるとするか。
摘みの枝豆もある事だしね。」
タロウの姿を改めて眺めながらにっぽん爺はそんな言葉を口にしたんだ。
いつの間にか、にっぽん爺はいつもの穏やかな顔に戻ってたの。
完全にということは無いだろうけど、何とか気分が持ち直したみたい。
でも、二人の話を聞いてて、ますます分からなくなったよ。
そもそも、帰れないというのが意味不明だ。
来れたのだから、帰るんじゃないの?
歩いて来たのか、馬車で来たのかは知らないけど、逆に辿れば良いんだから。
タロウは、気が付いたらあの広場にいたような事を言っているし。
何を寝言を言ってるのかと思ったけど、にっぽん爺は自然に話をしていた。
にっぽん爺達の故郷っていったい何処にあるんだろう、本当に不思議。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
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「おい、爺さん、どうした?
いきなり、泣き出したりして。
どっか具合でも悪いのか?」
顔色を曇らせて、涙を零しはじめたにっぽん爺。
お年寄りのそんな姿を目にして、タロウはとっても慌ててるの。
にっぽん爺は、懐から一枚の布切れを取り出すと涙を拭き。
穏やかな顔で言ったの。無理しているのがミエミエだけどね。
「私は、ここにやって来たのは令和三年の四月なんだ。」
「令和? なんだ、それは?
ええっと、平成、昭和だろう…、その前は何だったけ?
令和てのは聞いたことがねえな。
爺さん、相当昔の日本から来たのか?」
令和という聞き覚えのない言葉に、タロウは首句を傾げている。
「それとも、ラノベで定番の平行世界ってやつか。」なんて呟やいてたよ。
「聞いたことが無くて当たり前だろう。
私は、君がいた時点よりも五年後の日本から来たのだから。
平成は三十年、いや正確には三一年の途中で終わるんだ。
まだ小学校の時のことだから薄っすらとしか覚えていないが。
君が今あげた三つの事柄は私の記憶にも残っているよ。」
どう言う事?
にっぽん爺がここへ来て五十年経ってて、タロウが今ここに来たのなら。
タロウの住んでいた場所は、にっぽん爺がいた時より五十年の時が過ぎてるよね。
それなのに、にっぽん爺の方がタロウより五年先からやって来た?
何それ、意味が分からないよ。
「ちょっと待て、じゃあ、俺がやって来た平成二十八年の日本じゃ。
爺さん、まだ十歳だったのか。
向こうじゃ、爺さんより、俺の方が年上だったって?」
「ああ、そういうことだ。
この世界との転移現象が時間軸に対してランダムに生じているとは思いもしなかったよ。
私は君が五十年後の日本から来たものだとばかり思っていたんだ。
五十年後の日本の話が聞けるかと思って期待していたのに残念だよ。」
にっぽん爺は、何時か故郷へ帰るんじゃないかと思って必死に生きて来たんだって。
だけど、時間が経つにつれ、もう故郷へ帰れないのではと思い始め。
五十歳を過ぎた辺りから、もう帰れないのだと確信を持ったって言ってた。
ただ、もしかしたら同郷の人に会えるかも知れないとは思っていたそうで。
それが、こっちへ来て間もない人だったら、親切にしてあげようと心に決めてたんだって。
そして、にっぽん爺が去った後の故郷の話が聞けたらと、心から願ってたみたい。
五十年越しに出会った同郷の人、最新の故郷の話が聞けるとにっぽん爺の心は高鳴ったらしい。
なのに、やって来たタロウは、にっぽん爺より過去から来た人だった。
かねてからの念願だっただけに、それを知ったにっぽん爺の落胆は大きかったみたい。
ホント、タロウってば、色々と残念な人だね。
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私が心底残念な気分でタロウを見詰めていると。
スクっと立ち上がった太郎は、にっぽん爺の隣へ歩み寄り。
笑いながら、にっぽん爺の肩を軽く叩いたの。
そして、
「まあ、そう言わないで、元気出せよ、爺さん。
今はこんなに年が離れちまってるけど。
生まれが五つしか違わないってことは。
日本じゃ、同じ時代を生きたってことじゃねえか。
色々、話があうことだってあると思うぜ。
俺、ゲームやアニメの話は得意なんだ。
きっと、爺さんの良い話し相手になれるって。」
にっぽん爺に、そんな励ましの言葉を掛けたんだ。
こいつ、にっぽん爺の落胆の原因が自分だってわかっているのかな…。
「ああ、そうだな。
勝手に君に期待をしておいて、落胆するなんて失礼な事をしたね。
今日飛ばされた来た君の方がショックを受けている筈だものな。
無神経な言動をとって申し訳ない。
君だって来たくて来た訳では無いのにね。」
馴れ馴れしく肩を叩かれたにっぽん爺だけど、気を悪くする様子も無かったよ。
さすが、大人の寛容さだね。
「考えてみれば、君の姿や言動を見てその可能性に気付くべきだったよ。
スエットなんて見慣れた服装やサブカルに触発されたような言動。
私が日本にいた頃とほとんど変わらないじゃないか。
五十年も時間が流れていて、そんなモノが変わらない訳がない。
そうだね、今晩は昔の日本の話に花を咲かせるとするか。
摘みの枝豆もある事だしね。」
タロウの姿を改めて眺めながらにっぽん爺はそんな言葉を口にしたんだ。
いつの間にか、にっぽん爺はいつもの穏やかな顔に戻ってたの。
完全にということは無いだろうけど、何とか気分が持ち直したみたい。
でも、二人の話を聞いてて、ますます分からなくなったよ。
そもそも、帰れないというのが意味不明だ。
来れたのだから、帰るんじゃないの?
歩いて来たのか、馬車で来たのかは知らないけど、逆に辿れば良いんだから。
タロウは、気が付いたらあの広場にいたような事を言っているし。
何を寝言を言ってるのかと思ったけど、にっぽん爺は自然に話をしていた。
にっぽん爺達の故郷っていったい何処にあるんだろう、本当に不思議。
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