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第一章 異世界人?何それ?
第11話 ヒヨッコ冒険者には罠がいっぱい! ホント、ビックリだよ・・・
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*本日、お昼に1話投稿しています。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
********
にっぽん爺のギルドについての説明は、まだ続いたの。
「それともう一つ、ギルドから依頼を受ける理由があるんだよ。
今の君にも関係する事だから言っておくとな。
何処にでも、駆け出しの冒険者というのはいるものだ。
そうした若者は、今の君と同じでたいていが宿なしだよ。」
にっぽん爺が言うには。
家があって両親がいれば、我が子が冒険者になろうとしたら身を張ってでも止めるって。
駆け出しの冒険者の殆どが、大変な農作業が嫌で、近くの農村から逃げ出してきた連中ばかりだって。
「あっ、さっき爺さんが言ってた、ギルドの宿泊部屋か!」
「良く覚えていたね、その通りだよ。
ギルドで依頼をこなすと、その晩はタダで宿泊部屋に泊まれるんだ。
もっとも、板張りの大部屋の雑魚寝で、毛布の一つも貸してもらえないけどね。
まあ、それでも真面目に依頼をこなして、家を買うお金を貯められれば良いのだけど…。」
ギルドの中には、にっぽん爺みたいに家を買えなんて助言をしてくれる人はいないって。
それどころか、足を引っ張る人は沢山いるみたいで。
ギルドにたむろっている連中が、駆け出しに酒場で酒の味を覚えさせるんだって。
まっ、そいつらがギルドと結託して罠に嵌めているらしいの。
酒に浪費してしまってギルドの大部屋から抜け出せなくなる冒険者が沢山いるんだって。
若い冒険者が力を付けて稼ぎ始めると、次は賭博に誘い、その次は女をあてがうんだって。
そうやって、冒険者が依頼で稼いだ報酬を、ギルドが余すことなく吸い上げるって。
賭博は分かったけど、女をあてがうってどういう意味?
「ギルドのホールってのは、まるで極小の歓楽街さ。
酒も出せば、博打打ちもいる、ギルドお抱えのパパ活娘までいるんだからな。
そうやってギルドの宿泊部屋から抜け出せないようにして…。
無知な若者を、あたかもギルド専属の冒険者に仕立て上げるんだ。
まるで、蟻地獄のようだね。」
にっぽん爺の話を聞いたおっしゃんが顔を真っ青にしていた…。
まあ、ここを出たら、意気込んでギルドに走り込みそうだったものね。
「引くわー!
ゲームやラノベのギルドと全然違うじゃねえか。
それじゃあ、まんま、ヤ〇ザだぜ!」
おっしゃんは、青い顔をしてそう叫び声を上げたよ。
********
「ギルドの話のついでにもう一つ話しておこう。
トレントの狩り方に、ウサギの追い込み討伐と言うのがあるんだよ。」
トレントというのは、『食物採集能力アップ』とか、『鉱物採集能力アップ』とか。
生活に役立つ『スキルの実』をドロップする一番弱い植物系の魔物なの。
これより弱い植物系の魔物はゴミスキルの『実』しか落とさない。
このトレントどんな魔物かと言うと。
槍のような尖った枝で獲物を仕留めて、根っこから獲物の養分を吸うの。
この枝が縦横無尽に動くし、何本もあるしで、凄く手強い魔物なんだ。
で、ウサギの追い込み討伐って、ウサギを探してトレントの方に追い込むの。
ウサギを捕食している間は、トレントが無防備になるんでその隙をついて討伐するんだって。
「でも、このウサギでも追い込むのに冒険者が十人以上必要なんだ。
そうすると、トレントを倒して『スキルの実』を採集しても。
一人当たりの分け前は、大したこと無くなってしまうんだよ。
人を減らすために、豚を一頭買って連れて行くという手もあるけど…。
トレントの餌にする豚が結構高価なんで、やっぱり分け前が少なくなる。
それで、最近流行りなのは、君みたいな駆け出しの冒険者を討伐に誘うんだ。
トレントに近づいた時に、駆け出しをトレントに向かって突き飛ばすのさ。
若い冒険者をトレントの餌にすれば、コストゼロで少人数で狩れるからね。
忠告しておくよ、外でトレント狩りに誘われても絶対に付いて行ってはダメだよ。」
にっぽん爺は、常日頃おいらのような小さな子供に言っているの。
『知らない人に声を掛けられても付いて行っちゃダメだよ』って。
それと、同じような口調でおっしゃんに言っていた。
おっしゃん、騙されやすそうだからね。
「なんだよ、それ、ベテラン冒険者が駆け出しを餌に使うって。
そんなとんでもないこと、良く許されるな。
それって、殺人で裁かれるんじゃないのかよ!」
「誰が裁くと言うのだい?
この世界には警察は無いんだよ。
それに法律でさえ、整備されていないんだ。
さっきの可哀想な奥さんの話だって、『可哀想ね』でお終いだったんだよ。
厳しい話をして済まなかったけど。
日本と同じ感覚で動いたら命が幾つあっても足りないからね。
最初に全部伝えておこうかと思ったんだよ。」
にっぽん爺は、『どんなに理不尽でも、王や領主が白だと言えば、黒だって白になるんだ』って言ってた。
だけど、それって当たり前のことだよね。
おっしゃんの故郷は違ったの?
私がそんな疑問を抱いていると、にっぽん爺から尋ねられたんだ。
「なあ、マロンや。
マロンは、この町で暮らしていて、危ない目に遭ったことはあるかね。
楽しく暮らしせているかい?」
危ない目ってのは、ワイバーン襲来は除いてだよね。
ならず者に酷い目に遭ったことがあるかって尋ねられてるんだよね。
「ない、ない。
この町はとても住み易いし、意地悪する人はいないよ。
毎日がとっても楽しいよ。」
私の返事を聞いたにっぽん爺はニッコリと笑って、おっしゃんに言ったの。
「マロンを見てみなさい。
まだ八歳だと言うのに天涯孤独で、それでも楽しいと言っている。
この世界は、普通に生きて行こうと思えば、存外暮しやすい世界なんだ。
繰り返すが、『俺TUEEEEE!』なんて、ゆめゆめ考えんことだよ。
毎日、コツコツとスライムを捕っていれば幸せに暮らせるよ。」
うん、それは父ちゃんにも言われた、平穏に生きたかったら目立たない事だって。
「俺の人生は、この先ずっとスライム捕りかよ!
イヤだー!日本に帰りてー!」
煩いな、耳元で叫ばないでよ…。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
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にっぽん爺のギルドについての説明は、まだ続いたの。
「それともう一つ、ギルドから依頼を受ける理由があるんだよ。
今の君にも関係する事だから言っておくとな。
何処にでも、駆け出しの冒険者というのはいるものだ。
そうした若者は、今の君と同じでたいていが宿なしだよ。」
にっぽん爺が言うには。
家があって両親がいれば、我が子が冒険者になろうとしたら身を張ってでも止めるって。
駆け出しの冒険者の殆どが、大変な農作業が嫌で、近くの農村から逃げ出してきた連中ばかりだって。
「あっ、さっき爺さんが言ってた、ギルドの宿泊部屋か!」
「良く覚えていたね、その通りだよ。
ギルドで依頼をこなすと、その晩はタダで宿泊部屋に泊まれるんだ。
もっとも、板張りの大部屋の雑魚寝で、毛布の一つも貸してもらえないけどね。
まあ、それでも真面目に依頼をこなして、家を買うお金を貯められれば良いのだけど…。」
ギルドの中には、にっぽん爺みたいに家を買えなんて助言をしてくれる人はいないって。
それどころか、足を引っ張る人は沢山いるみたいで。
ギルドにたむろっている連中が、駆け出しに酒場で酒の味を覚えさせるんだって。
まっ、そいつらがギルドと結託して罠に嵌めているらしいの。
酒に浪費してしまってギルドの大部屋から抜け出せなくなる冒険者が沢山いるんだって。
若い冒険者が力を付けて稼ぎ始めると、次は賭博に誘い、その次は女をあてがうんだって。
そうやって、冒険者が依頼で稼いだ報酬を、ギルドが余すことなく吸い上げるって。
賭博は分かったけど、女をあてがうってどういう意味?
「ギルドのホールってのは、まるで極小の歓楽街さ。
酒も出せば、博打打ちもいる、ギルドお抱えのパパ活娘までいるんだからな。
そうやってギルドの宿泊部屋から抜け出せないようにして…。
無知な若者を、あたかもギルド専属の冒険者に仕立て上げるんだ。
まるで、蟻地獄のようだね。」
にっぽん爺の話を聞いたおっしゃんが顔を真っ青にしていた…。
まあ、ここを出たら、意気込んでギルドに走り込みそうだったものね。
「引くわー!
ゲームやラノベのギルドと全然違うじゃねえか。
それじゃあ、まんま、ヤ〇ザだぜ!」
おっしゃんは、青い顔をしてそう叫び声を上げたよ。
********
「ギルドの話のついでにもう一つ話しておこう。
トレントの狩り方に、ウサギの追い込み討伐と言うのがあるんだよ。」
トレントというのは、『食物採集能力アップ』とか、『鉱物採集能力アップ』とか。
生活に役立つ『スキルの実』をドロップする一番弱い植物系の魔物なの。
これより弱い植物系の魔物はゴミスキルの『実』しか落とさない。
このトレントどんな魔物かと言うと。
槍のような尖った枝で獲物を仕留めて、根っこから獲物の養分を吸うの。
この枝が縦横無尽に動くし、何本もあるしで、凄く手強い魔物なんだ。
で、ウサギの追い込み討伐って、ウサギを探してトレントの方に追い込むの。
ウサギを捕食している間は、トレントが無防備になるんでその隙をついて討伐するんだって。
「でも、このウサギでも追い込むのに冒険者が十人以上必要なんだ。
そうすると、トレントを倒して『スキルの実』を採集しても。
一人当たりの分け前は、大したこと無くなってしまうんだよ。
人を減らすために、豚を一頭買って連れて行くという手もあるけど…。
トレントの餌にする豚が結構高価なんで、やっぱり分け前が少なくなる。
それで、最近流行りなのは、君みたいな駆け出しの冒険者を討伐に誘うんだ。
トレントに近づいた時に、駆け出しをトレントに向かって突き飛ばすのさ。
若い冒険者をトレントの餌にすれば、コストゼロで少人数で狩れるからね。
忠告しておくよ、外でトレント狩りに誘われても絶対に付いて行ってはダメだよ。」
にっぽん爺は、常日頃おいらのような小さな子供に言っているの。
『知らない人に声を掛けられても付いて行っちゃダメだよ』って。
それと、同じような口調でおっしゃんに言っていた。
おっしゃん、騙されやすそうだからね。
「なんだよ、それ、ベテラン冒険者が駆け出しを餌に使うって。
そんなとんでもないこと、良く許されるな。
それって、殺人で裁かれるんじゃないのかよ!」
「誰が裁くと言うのだい?
この世界には警察は無いんだよ。
それに法律でさえ、整備されていないんだ。
さっきの可哀想な奥さんの話だって、『可哀想ね』でお終いだったんだよ。
厳しい話をして済まなかったけど。
日本と同じ感覚で動いたら命が幾つあっても足りないからね。
最初に全部伝えておこうかと思ったんだよ。」
にっぽん爺は、『どんなに理不尽でも、王や領主が白だと言えば、黒だって白になるんだ』って言ってた。
だけど、それって当たり前のことだよね。
おっしゃんの故郷は違ったの?
私がそんな疑問を抱いていると、にっぽん爺から尋ねられたんだ。
「なあ、マロンや。
マロンは、この町で暮らしていて、危ない目に遭ったことはあるかね。
楽しく暮らしせているかい?」
危ない目ってのは、ワイバーン襲来は除いてだよね。
ならず者に酷い目に遭ったことがあるかって尋ねられてるんだよね。
「ない、ない。
この町はとても住み易いし、意地悪する人はいないよ。
毎日がとっても楽しいよ。」
私の返事を聞いたにっぽん爺はニッコリと笑って、おっしゃんに言ったの。
「マロンを見てみなさい。
まだ八歳だと言うのに天涯孤独で、それでも楽しいと言っている。
この世界は、普通に生きて行こうと思えば、存外暮しやすい世界なんだ。
繰り返すが、『俺TUEEEEE!』なんて、ゆめゆめ考えんことだよ。
毎日、コツコツとスライムを捕っていれば幸せに暮らせるよ。」
うん、それは父ちゃんにも言われた、平穏に生きたかったら目立たない事だって。
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