ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第一章 異世界人?何それ?

第4話 おいらはマロン、よろしく!

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 ワイバーンに襲撃された時、たまたま、近くにいた兄ちゃん。
 何処か、他所から来たみたいで、見慣れない格好をしている。
 格好はともかく、この辺では子供でも知っている事を何にも知らないようだ。

 そんな兄ちゃんのボヤキの中に、聞き逃せない言葉があった、『にっぽんじん』。

「ねえ、兄ちゃん、もしかして『にっぽん爺』と知り合い?
 『にっぽん爺』と同じところから来たの?」

「『にっぽん爺』?
 なんだ、そりゃぁ?」

「おいらの隣に住んでいる変な爺ちゃん。
 『にっぽん爺』ってば、子供好きでね。
 近所の子供集めては、生まれ故郷の話を聞かせんるんだ。
 それが、凄い与太話ばっかりでさ…。」

 人を乗っけて空を飛ぶ大きな鉄の鳥とか。
 馬が要らない、鉄の車が凄い速さで疾走してるとか。
 そんな、子供でも信じないような事ばっかり言ってるの。

 大人は、『にっぽん爺』を頭のおかしい人だと言って、子供に近寄るなと言うけど。
 『にっぽん爺』の話す夢物語が、けっこう面白くって、子供たちには人気があるんだよ。
 おいらも、話半分にも聞いてないけど、暇つぶしに聞くのは好きなんだ。

「おい、それ本当か?
 おまえ、俺を案内してもらえないか。
 その『にっぽん爺』って爺さんの所へ。」

「良いよ。
 兄ちゃんを『にっぽん爺』の所へ連れてこうと思ってたし。」

 『にっぽん爺』は時々、思い出したように言うんだ。
「もし、にっぽん人だと言う奴を見かけたら俺の所へ連れてきてくれ」って。

 そうすれば、駄賃に銀貨一枚くれるって。
 まさか、にっぽん人が目の前に現れるなんて思わなかったよ。
 失礼な兄ちゃんでイラッとするけど、銀貨一枚は貴重だもんね。
 銀貨一枚あれば、一日分の食費になるから助かる。

     ********

「ところで、おまえ、何ていう名前だ?」

 町へ帰るみちすがら、兄ちゃんが聞いて来た。今更だね…。

「兄ちゃん、人に名前を訪ねる時は、自分から名乗るもんでしょう。
 父ちゃんに言われたよ。
 自分から名乗らないような怪しい奴に、軽々しく素性は明かすなって。」

「けっ、異世界に来てまで教育ババアみたいなこと言われるとは思わなかったぜ。
 俺の名は、龍泉院大洋だ、オーシャンって呼んでくれ。」

「おっしゃんだね、分かったよ。
 おいらは、マロン。よろしくね。」

「おい、オッシャンじゃねえ、オーシャンだ!
 それじゃあ、まるで中年のオヤジみたいじゃないか。」

 細かい兄ちゃんだね、おいらには違いが分かんないよ。

「はいはい、おっしゃんだね。
 何度も言わなくても、覚えたよ。」

「ちくしょう、頑張って考えたネトゲのキャラネームなのに。
 それじゃあ、台無しじゃないか…。」

 私の返事に何の不満があるのか、兄ちゃんはブツクサ言ってたよ。
 兄ちゃんのボヤキを無視して歩いてたら。

「おい、マロン。
 そう言えば、初めから聞こうとしてたんだけどよ。
 おまえ、さっきワイバーンを倒していただろう。
 この世界じゃ、お前みたいなガキがあんなでっかい魔物を倒せるんか。
 っていうか、あれ、図体だけの見掛け倒しか?
 実は、スライム並みに弱いとか?」

 しまった、兄ちゃんに口止めしてなかったよ。
 初めて見る顔だし、私の顔なんかチラッとしか見てないから。
 口止めする必要もないかと思ったんだけど。
 こうして、素性まで明かしちゃうと、口止めしないと拙いかも。

 でもその前に、

「やだな、兄ちゃん、ワイバーンに襲われた恐怖で夢でも見たんじゃない。
 ワイバーンは、厄災みたいなモンって言われてんだよ。
 おいらみたいなガキんちょに倒せる訳ないじゃない。
 おいらや兄ちゃんみたいな、骨と皮しかないような人間しかいなかったから。
 腹の足しにもなんないって、ワイバーンも諦めたんだと思うよ。
 そのまま飛んでいちゃったよ。」

 おいらは、兄ちゃんがハッキリとは見ていない事を期待して惚けてみたんだ。
 すると、

「そんなはずは、無いだろうが。
 俺は、この目で確かに見たぞう。
 ワイバーンが血しぶきを上げて落下するのを。」

 ちゃんと見てやんの…。
 でも、

「なら、そのワイバーンはどこ行っちゃったの?
 血しぶきって言うけど、広場にそんなのなかったよ。
 兄ちゃん、怖すぎて気を失ってたんじゃないの?
 チビってない?」

 私が倒したと言うなら証拠を見せろと言わんばかりに突っぱねて見たんだ。

「そう言えば、ワイバーンの死体が見当たらなかったな。
 なあ、マロン、もしかして、ストレージとかアイテムボックスとか持ってないか?」

「すとれーじ?あいてむぼっくす?
 なにそれ、聞いたことが無いけど?」

「ちくしょう、ファンタジーのお約束、全く無視だな。
 この異世界は…。
 そっか、無いのか。
 おっかしいな、あんなにリアルに見えたのに、ありゃ夢だったんか。
 チビってはいないみたいだが…、一瞬現実逃避しちまったか。」

 兄ちゃんは、自分ズボンの中を覗きながら、呟いている。
 どうやら、上手く丸め込めたみたいだね。

 おいら、嘘は言ってないよ。
 『積載増加』を持っているかと聞かれなかったからね。

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