ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第一章 異世界人?何それ?

第10話 ギルド、マジにヤバいよ!

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 家を買うことについての説明が終ると。
 にっぽん爺は気乗りしない顔で、一つ付け加えたんだ。
 宿なしが住処とする心当たりを。

「他には、冒険者ギルドの宿泊部屋なんかもある事はある。
 お勧めはせんがな。」

 ああ、冒険者ギルド…、あれはヤバい。

     ********

「おっ、やっとファンタジーの定番が出て来たじゃん。
 冒険者か、カッコいいじゃん。
 ギルドに所属して、クエストをこなすんだろう。
 ギルドランクを上げれば、女冒険者や受付嬢にチヤホヤされるってか。
 何で、そんな良いことを最初に教えてくれないんだよ。
 全く、人が悪いぜ。」

 女冒険者? 受付嬢? 何言ってるんだこのおっしゃん。
 女冒険者なんて見たことないよ、そんなのいるのかな。
 受付嬢は大きな町ならいるかも知れないけど…。
 この町の受付はどう見ても堅気に見えないオヤジだったよ。

 そもそも、冒険者をカッコいいという時点でおっしゃんの感性がズレてるよ。
 冒険者って、ほとんどがならず者みたいな人達だし。
 そうでなければ、おいらの父ちゃんみたいに大人になり切れない大人だよ。

 にっぽん爺は、おっしゃんの言葉を聞いてため息をついたよ。

「ほら、そう言うと思ったから言わなかったのだ。
 この世界で冒険者というのは、不定期雇用者の代名詞みたいなものさ。
 冒険者ギルドだって、ラノベのようにランク制なんて取ってないぞ。
 そもそも、名前の登録すらしておらん。」

 そして、おっしゃんの誤解を解いたんだ。

「なんだ、それ?
 ギルドのことは興味があるぜ。
 なあ、もうちょっと、詳しく教えてくれよ。
 ギルドに入ってパーティ組めば強い魔物だって狩れるんじゃないか。」

 おっしゃんはギルドにどんな期待を持ってんだろう。
 あそこは、そんな良いところじゃないよ。というか、凄くヤバめ…。

 冒険者ギルドって、掲示板に張り紙がしてあって、好きな依頼を受けるの。
 もちろん、自己責任だよ。
 身の丈にあわない依頼を受けると言っても、ギルドは止めてくれいないよ。
 失敗しても、ギルドは必ず儲かるようになっているんだからね。

 にっぽん爺は、そんなギルドの仕組みをおっしゃんに話してたよ。

「ギルドへ行くとな、掲示板があって、そこに依頼が貼ってあるんだ。
 依頼は『特定依頼』と『随時依頼』の二種類。」

「あっ、それならおいらも知っている
 『特定依頼』は誰かがギルドに持ち込む一回きりの依頼だよね。
 『随時依頼』っていうのは、スキルの実とか町で常に必要なモノの採集でしょう。」

 私がつい口を挟むと、にっぽん爺は優しい笑顔で笑って頭を撫でてくれたの。
 
「おお、マロン、その通りだ。良く知ってたな、偉いぞ。
 で、ギルドのがめついところだが、『特定依頼』を受ける時は手数料がいるんだ。
 それが前金で依頼金額の一割。
 因みに、ギルドは依頼者からも『掲示板使用料』として一割の手数料を取ってやがる。
 あくまで『掲示板使用料』だから、ラノベみたいに成功保証なんて良心的なことはしてないぞ。
 要は、ギルドは往復で依頼料の二割を、成功の有無に関わらず懐に入れられるんだ。
 もう一つの『随時依頼』は買取価格が市中と同じなのに、一割の手数料を差し引かれる。
 流石に、どれだけ採れるか分からないから、前払いは無いがね。」

 そう、これも酷いんだ。
 町のスライム屋に持ってけば十匹で銅貨十枚もらえるのに、ギルドへ持ってくと銅貨九枚しか貰えないの。
 しかも、十一匹持ってくと手数料に銅貨二枚とられて、やっぱり銅貨九枚しか貰えないの。
 おいらには何が何だかさっぱりだけど、手数料は端数切り上げなんだって。
 父ちゃんが生きていた頃、ギルドのずるさを教えるため、一度だけやって見せてくれたの。

 それ以来、おいらはギルドって近付かないようにしてるんだ。

      ********

「なんだ、そのボロい商売。
 そんなぼったくりしてたらギルドなんて来る奴いなくなるだろうが。」

「そうでもないぞ、冒険者ギルドへ行ってみるとわかるが。
 毎朝、依頼を受ける冒険者が掲示板の前に群がってるぞ。」

 そうなんだ、朝、町の外へ出ようと思ってギルドの前を通ると。
 こんなにいたのかってくらい、ギルドからガラの悪い人が出てくるの。
 
「何で、ギルドに食い物にされると分かっててギルドで依頼を受けるんだ?」

「一番大きな理由は、魔物が強すぎるからだよ。
 レベルゼロのウサギですら、駆け出しの冒険者じゃ十人掛かりだ。
 ウサギ肉は肉屋では売れ筋の肉だからな。
 肉屋が一々、その辺の冒険者に声を掛けて回るのは大変だろう。
 だから、多少の手数料は目を瞑って、ギルドの掲示板に張らせてもらうのさ。
 冒険者にしても、一人じゃ手に余る依頼が多いからね。
 仕方ないんで掲示板の前で待ち構えて、仲間を募るんだよ。」

「一人じゃ手に余るって、ラノベのようにパーティを組めば良いじゃんか。
 ギルドの中抜きが酷いなら、パーティで直接依頼人を探せば良いだろう。
 ウサギ肉の話なら、肉屋から直接依頼を受けりゃ良いじゃないか。
 ウサギ肉、肉屋はいつだって必要なんだろう。」

 おっ、おっしゃんがけっこうまともな事を言った、…初めて感心したよ。
 でも、にっぽん爺は、顔を曇らせてため息をついたの。

「余りお勧めしないが、一度冒険者ギルドを覗いてみるのも良いかも知れんな。
 行って目にすればわかるが、冒険者なんて協調性の欠片も無いような者ばかりだ。
 恒常的なパーティなんて、すぐに仲間割れして崩壊するよ。
 依頼をこなすために、一時的に共闘するのがやっとなのだよ。
 まあ、しかし、この町でも一度パーティを組んだ若いのがいたんだがな…。」

 にっぽん爺は最後まで話すことなく、言葉を濁らせたの。

「なんだよ、じいさん、気持ちの悪い話し方して。
 最後まで聞かせろよ、そのパーティは今どうしてるんだ?」

 にっぽん爺の歯切れの悪い言葉に、おっしゃんがイラつき気味に尋ねたんだ。

「十人程の若者のパーティだったのだがな…。
 君の言う通り、肉屋からウサギ肉をギルド抜きで定期受注したんだ。
 ある日、そのパーティが泊りがけの狩りから帰ってきたらだな…。
 パーティの拠点として購入した家が燃やされていたんだ。
 でもそれは、まだ良い方で…。
 パーティのリーダーは新婚だったのだがな。
 奥さんが、辱めを受けて、あられもない姿でむくろを晒してたよ。
 火事のあった日に、町の広場でね。
 可哀そうに、まだ二十歳前だと言うのに…。」

 辱め? あられもない? 躯?

 どういう意味? 難しい言葉を使われると分かんないよ。

「おい、それって…。」

「ああ、ギルドの連中に報復を受けたんだよ。」

「なんだよ!それ!
 まるで、ヤ〇ザの連中と同じ手口じゃないか!」

「だから言ってるではないか。
 関わるのは、お勧めしないって。
 日本だって、もぐりの口入屋ってのはその筋の人って相場が決まってただろう。
 ギルドってのは、異世界版口入屋なんだよ。」

 へえー、にっぽん爺やおっしゃんの故郷でも、ギルドみたいなヤバ気なものあるんだ…。
 あんなヤバいものが野放しになってるのって、ここが僻地だからと思ってたよ。
 にっぽん爺たちの故郷って、どんな無法地帯なんだろう?
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