ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
上 下
5 / 848
第一章 異世界人?何それ?

第5話 お駄賃をもらいに行こう!

しおりを挟む
*本日、お昼に1話投稿しています。
 まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
 よろしくお願いいたします。

     ********

「にっぽん爺、いる?」

 おいらが、小さな家の引き戸を引きながら呼びかけると。 

「おお、その声はマロンか。
 今日は、もう仕事は終いか?
 この老いぼれの話でも聞きに来たんかい。」

 薄暗い家の中、寝室のベッドからにっぽん爺の声が聞こえた。
 ここはにっぽん爺の家、私のお隣さんだ。

 この周辺は同じ間取りの小さな平屋の家がいっぱい建っている。
 引き戸を引いて家に入ると少し広めの土間があって、カマドが設えてあって。
 土間の奥には、一段高くなった板張りの寝室が一つ、ただそれだけの家。

 寝室と言っても仕切りがある訳じゃないから、部屋とは呼べないか。
 今も奥の暗がりに、ベッドで横たわるにっぽん爺の姿が、薄っすら見えるし。

 そうそう、トイレもちゃんとあるよ、土間の隅っこに。

「にっぽん爺に、お客さん連れて来たの。
 なんか、にっぽん爺と同じところから来たみたいだよ。」

 寝台の上で体を起こしたにっぽん爺に、来客を告げると。

 ドタン、バタン。

 にっぽん爺は体勢を崩したようで、ベッドから落ちたようだね。
 体が悪いのに、慌てて起きようとするから…。

「おい、マロン、それは本当か!」

 ややあって、寝室から急ぎ足でこっちに向かってくる音がする。
 狭い家だし、それも大した時間ではなく。
 間も無く、暗がりの中からにっぽん爺が姿を現した。

 ボサボサの白髪で隻眼、隻腕のお年寄り、それが『にっぽん爺』だ。
 そのケガのせいで、急に起き上がったりするのが苦手なんだ。
 おいらには良く分かんないけど、上手くバランスが取れないんだって。

 にっぽん爺、どんな修羅場を潜ってきたのかと言う姿をしているけど。
 おいらたち子供にはとっても優しくて、ここいらの子供の人気者なんだ。

「うん、今、外で待ってもらっている。
 おっしゃん、入って来て。」

 おいらが、外で待つおっしゃんに声を掛けると。

「お邪魔しまーす。」

 と言う軽い挨拶と共におっしゃんが引き戸をくっぐってきた。

「おお、その服はスエットか…。
 スエットを見るのは何年振りか…、もう五十年になるかな。
 懐かしい…。
 たしかに、地球からやって来たようだ。」

 そんな呟きを漏らしたにっぽん爺。
 少し声が震えていて、一瞬泣いているのかと思ったよ。 
 
 どうやら、故郷の衣装を見て、感動しているみたい。
 おっしゃんの服、見ない格好だと思ったら、民族衣装だったんだね。
 にっぽん爺の故郷の方の。

 おっしゃんがにっぽん爺と同郷なのは間違いないようだね。
 ならば、感動に浸っているにっぽん爺には申し訳ないけど…。

 おいらは右手をにっぽん爺の前に差し出したよ。
 あえて、空気を読まないで。

「うん?
 なんだ、マロン、その手は?」

「えっー、にっぽん爺、忘れちゃったの?
 いつも言ってたじゃない。
 『にっぽん人』を連れてきたらお駄賃くれるって。
 銀貨一枚。」

 私の言葉に、一瞬、にっぽん爺は渋い顔をしたけど…。
 少し間をおいて、懐から巾着袋を取り出すと。

「おお、そうだったな。
 悪い、悪い。
 はい、約束の銀貨一枚だ。
 日本人を保護してきてくれて有り難う。」

 その言葉と共に、にっぽん爺はおいらの手のひらに銀貨を乗せてくれたの。
 いつもの優しい笑顔で。

    ********

 貰うモノも貰ったし、おいらはさっさと立ち去ることにしたんだ。
 同郷の人同士、積もる話もあるだろうから、おいらがいたら邪魔だろうし。
 おいらも、シューティング・ビーンズを売りに行かないといけないから。

 にっぽん爺に別れを告げて、立ち去ろうとすると。

「ちょっと待っておくれ、マロンよ。
 ここで、老いぼれの話を一緒に聞いて行かんか。
 隣人のよしみで、この少年の事を何かお願いするかもしれん。
 事情を知っていた方が良いだろう。」

 引き留められちゃった。
 正直、おっしゃんは迂闊な事を口にするんであんまり関わりたくないんだけど。
 第一、態度が失礼だよね、おいらのことをお前とか、ガキんちょとか言って。
 
「えええぇ、ヤダ。
 おいら、これからシューティング・ビーンズを市場に売りに行くんだもん。
 早く行かないと、買取が終っちゃうよ。」

 おっしゃんと関わりになりたくないとは言えないので、豆を理由に断ると。

「それなら、この老いぼれが買ってやろう。
 市場よりは、少しイロを付けてあげるぞ。
 枝豆を摘まみながら、久し振りに日本の話を聞くとしよう。」

 にっぽん爺は、巾着からまた銀貨一枚を差し出してきたんだ。
 おいらが持っているシューティング・ビーンズはだいたい銅貨五十枚分くらい。
 にっぽん爺が差し出したのは、その倍だ。
 おいらは、すぐさま、シューティング・ビーンズを差し出したね。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち
ファンタジー
引きこもりニート山岡勝介は、しょーもないバチ当たり行為が原因で異世界に飛ばされ、その世界を救うことを義務付けられる。罰として異世界勇者的な人外チートはないものの、死んだらステータスを維持したままスタート地点(セーブポイント)からやり直しとなる”死に戻り”と、異世界の住人には使えないステータス機能、成長チートとも呼べる成長補正を駆使し、世界を救うため、ポンコツ貧乳エルフとともにマイペースで冒険する。 ※『死に戻り』と『成長チート』で異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~から改題しました

叶えられた前世の願い

レクフル
ファンタジー
 「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

処理中です...