ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
上 下
3 / 848
第一章 異世界人?何それ?

第3話 ヒノキの棒でスライムを倒すの?

しおりを挟む
*本日、お昼に1話投稿しています。
 まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
 よろしくお願いいたします。

     ********

 失礼な奴だと思いながら、おいらは目の前の兄ちゃんを改めてマジマジと見たんだ。
 あまり関りになりたくないので、今までよく見ていなかったから。
 それで、今更ながら、幾つかの事に気付いたよ。

 まずこの兄ちゃん、髪の毛が黒かった。
 おいらもそうだけど、この辺の人はほとんどが茶髪。
 中には金髪や銀髪の人も見かけるけど、黒髪の人なんて初めて見た。

 それと、着ている服がとっても柔らかそうな布で出来ていた。
 おいらが着ているゴワゴワの服と全然違う。
 灰色の上下お揃いの布地に見える服は、凄く動き易そう。
 
 独り言をこぼしながら、なにやら考え込んでた兄ちゃんだけど。

 突然、

「あっ、スライムみっけ!」

 そう大声を出して、足元に落ちていた棒っ切れを拾い上げた。
 で、その棒っ切れを振りかぶると…。

 グシャッ!

 いきなり、スライムを潰しやがった。

「ああああ!兄ちゃん、なんてことをしてんの!
 スライムを潰すなんて!」

「ああ、昭和のレトロゲームって言ったら。
 ヒノキの棒でスライムを潰すところから始めるものだろう。
 勇者だって、初めはそうやってレベルを上げるって。
 親父が言ってたぞ。」

 昭和のレトロゲームがなんだか知らないけど。
 この兄ちゃんの親父さんもいい加減非常識だよね。
 スライムを潰しちゃうなんて。

 私が心底呆れて、兄ちゃんを睨んでいると。

「何だよ、その人を非難するような目は。
 ここじゃあれか、『ボクは悪いスライムじゃいよ』ってか。
 それとも、スライムが正義の見方ってか?」

「兄ちゃん、バカ?
 スライムに良いも、悪いもないでしょう。
 スライムは貴重な資源だって父ちゃんが言ってたよ。
 街のスラム屋にもってけば、一匹、銅貨一枚で買い取ってくれるんだよ。」

「スライムが資源?
 いったい何に使うんだよ?」

「おいらに言わせる?
 おいら、ちっこいけど、一応女の子だよ。」

 このお兄ちゃん、ホント、何も知らないんだ…。
 子供だって、口にするのを憚る言葉があるのに。 
 でも、何も知らないなら、教えてあげないとダメかも知れない。

「スライムは何でも食べるんだよ。
 だから、捕まえてトイレの中に放すの。
 何を食べるかは、察してね。」

 他にも肉屋なんかでも重宝してるんだって。
 穴の中にスライムを飼っといて、そこに食べられない部分を捨てるって。 
 肉を取った後の、筋とか、骨とか。全部食べてくれるから。

「なんだ、それだけか。
 脅かすなよ。
 スライムを狩ったら、大変なことになるのかと思ったぜ。」
 
「だって、もったいないじゃない。
 捕まえてトイレの補充に使っても良いし。
 スライム屋に売っても良いんだよ。
 それに、スライム捕りで稼いでいる人もいるんだ。
 スライムを無意味に殺したら、スライム捕りの人に恨まれるよ。」

 スライムは沢山いるから、一匹潰したところで目くじら立てる人はいないかも知れない。
 でも、スライム捕りの人が探している隣で、スライムを潰していたら絶対にトラブルよね。
 この町では、みんな当たり前にスライムは資源だと思ってるから。
 兄ちゃんみたいな人がいると、トラブルのタネになりそうだよ。

「おい、それじゃあ、どうしろと言うんだ。
 どうやって、俺はレベルを上げれば良いんだ!」

 何か、兄ちゃんが叫んでる。そんなの知らないよ。
 ってか、またレベルって口に出しているし…。
 一度痛い目を見ないと懲りないのかね。

「兄ちゃん、さっきの私の忠告を覚えていないの?
 を人前で口にしたら、殺されても文句言えないってこと。
 それに、スライムなんて倒しても、は上がらないよ。」

「そうだ、何でレベルの話題を口にしたらヤバいんだ?
 それを聞こうと思って付いて来たんだよ。
 それに、スライムを倒してもレベルが上がらないってどういうことだ?」

 あっ、また、大きな声で…、聞いている人がいたらどうするの。

「兄ちゃんに、教えてあげる義理は無いでしょう。
 その言葉は禁句なの、ただ、それだけを胸に刻んどいて。
 後、少し頭を働かせたら。
 おいらが倒した『シューティング・ビーンズ』も魔物ななんだよ。
 おいら、もう三年以上毎日これをやってんだ。
 だけど、はピクリとも上がらない。
 たぶん、スライムも同じ、弱い魔物を幾ら倒しても意味ないんだ。」

「げっ、マジ無理ゲー!
 まともな装備も無しで、どうやって強い魔物を狩れって?
 しかも、レベルの情報は禁句だとか言ってるやがるし。
 だいたい、何なんだ、この不愛想なガキは?
 『はじまりのまち』にいるモブの子供は親切なもんと相場が決まってるだろうが。
 やってらんねー、もう日本に帰りたいぜ。」

 不愛想なガキって、本当に失礼な兄ちゃん。
 だいたい、勝手について来て酷い言い草だよ。
 何で、当たり前のように、何でも教えてもらえると思ってるかな。

 おや、この兄ちゃん、最後に何て言った…。

 『にっぽん』って言った?

 これは、もしかしたら、小遣い銭を稼ぐチャンスかも。

しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...