ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第一章 異世界人?何それ?

第3話 ヒノキの棒でスライムを倒すの?

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*本日、お昼に1話投稿しています。
 まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
 よろしくお願いいたします。

     ********

 失礼な奴だと思いながら、おいらは目の前の兄ちゃんを改めてマジマジと見たんだ。
 あまり関りになりたくないので、今までよく見ていなかったから。
 それで、今更ながら、幾つかの事に気付いたよ。

 まずこの兄ちゃん、髪の毛が黒かった。
 おいらもそうだけど、この辺の人はほとんどが茶髪。
 中には金髪や銀髪の人も見かけるけど、黒髪の人なんて初めて見た。

 それと、着ている服がとっても柔らかそうな布で出来ていた。
 おいらが着ているゴワゴワの服と全然違う。
 灰色の上下お揃いの布地に見える服は、凄く動き易そう。
 
 独り言をこぼしながら、なにやら考え込んでた兄ちゃんだけど。

 突然、

「あっ、スライムみっけ!」

 そう大声を出して、足元に落ちていた棒っ切れを拾い上げた。
 で、その棒っ切れを振りかぶると…。

 グシャッ!

 いきなり、スライムを潰しやがった。

「ああああ!兄ちゃん、なんてことをしてんの!
 スライムを潰すなんて!」

「ああ、昭和のレトロゲームって言ったら。
 ヒノキの棒でスライムを潰すところから始めるものだろう。
 勇者だって、初めはそうやってレベルを上げるって。
 親父が言ってたぞ。」

 昭和のレトロゲームがなんだか知らないけど。
 この兄ちゃんの親父さんもいい加減非常識だよね。
 スライムを潰しちゃうなんて。

 私が心底呆れて、兄ちゃんを睨んでいると。

「何だよ、その人を非難するような目は。
 ここじゃあれか、『ボクは悪いスライムじゃいよ』ってか。
 それとも、スライムが正義の見方ってか?」

「兄ちゃん、バカ?
 スライムに良いも、悪いもないでしょう。
 スライムは貴重な資源だって父ちゃんが言ってたよ。
 街のスラム屋にもってけば、一匹、銅貨一枚で買い取ってくれるんだよ。」

「スライムが資源?
 いったい何に使うんだよ?」

「おいらに言わせる?
 おいら、ちっこいけど、一応女の子だよ。」

 このお兄ちゃん、ホント、何も知らないんだ…。
 子供だって、口にするのを憚る言葉があるのに。 
 でも、何も知らないなら、教えてあげないとダメかも知れない。

「スライムは何でも食べるんだよ。
 だから、捕まえてトイレの中に放すの。
 何を食べるかは、察してね。」

 他にも肉屋なんかでも重宝してるんだって。
 穴の中にスライムを飼っといて、そこに食べられない部分を捨てるって。 
 肉を取った後の、筋とか、骨とか。全部食べてくれるから。

「なんだ、それだけか。
 脅かすなよ。
 スライムを狩ったら、大変なことになるのかと思ったぜ。」
 
「だって、もったいないじゃない。
 捕まえてトイレの補充に使っても良いし。
 スライム屋に売っても良いんだよ。
 それに、スライム捕りで稼いでいる人もいるんだ。
 スライムを無意味に殺したら、スライム捕りの人に恨まれるよ。」

 スライムは沢山いるから、一匹潰したところで目くじら立てる人はいないかも知れない。
 でも、スライム捕りの人が探している隣で、スライムを潰していたら絶対にトラブルよね。
 この町では、みんな当たり前にスライムは資源だと思ってるから。
 兄ちゃんみたいな人がいると、トラブルのタネになりそうだよ。

「おい、それじゃあ、どうしろと言うんだ。
 どうやって、俺はレベルを上げれば良いんだ!」

 何か、兄ちゃんが叫んでる。そんなの知らないよ。
 ってか、またレベルって口に出しているし…。
 一度痛い目を見ないと懲りないのかね。

「兄ちゃん、さっきの私の忠告を覚えていないの?
 を人前で口にしたら、殺されても文句言えないってこと。
 それに、スライムなんて倒しても、は上がらないよ。」

「そうだ、何でレベルの話題を口にしたらヤバいんだ?
 それを聞こうと思って付いて来たんだよ。
 それに、スライムを倒してもレベルが上がらないってどういうことだ?」

 あっ、また、大きな声で…、聞いている人がいたらどうするの。

「兄ちゃんに、教えてあげる義理は無いでしょう。
 その言葉は禁句なの、ただ、それだけを胸に刻んどいて。
 後、少し頭を働かせたら。
 おいらが倒した『シューティング・ビーンズ』も魔物ななんだよ。
 おいら、もう三年以上毎日これをやってんだ。
 だけど、はピクリとも上がらない。
 たぶん、スライムも同じ、弱い魔物を幾ら倒しても意味ないんだ。」

「げっ、マジ無理ゲー!
 まともな装備も無しで、どうやって強い魔物を狩れって?
 しかも、レベルの情報は禁句だとか言ってるやがるし。
 だいたい、何なんだ、この不愛想なガキは?
 『はじまりのまち』にいるモブの子供は親切なもんと相場が決まってるだろうが。
 やってらんねー、もう日本に帰りたいぜ。」

 不愛想なガキって、本当に失礼な兄ちゃん。
 だいたい、勝手について来て酷い言い草だよ。
 何で、当たり前のように、何でも教えてもらえると思ってるかな。

 おや、この兄ちゃん、最後に何て言った…。

 『にっぽん』って言った?

 これは、もしかしたら、小遣い銭を稼ぐチャンスかも。

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